厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

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著者 : 三津田信三
  • 講談社 (2009年3月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763066

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「わたしをぉ、殺したのはぁ......おまえだよっ!!!」
    「ぎゃー」

    こんな怪談が子供の頃に流行ったが、犯人指名のシーンで次の頁をめくった瞬間、この感覚に似た驚きと恐怖を味わった。

    神々櫛(かがくし)村。
    代々、憑き物筋でありながら同時に憑き物落としを取り仕切る谺呀治(かがち)家と、それに対抗し村を二分する力を持つ神櫛(かみぐし)家。
    村中の至る所に立てられ畏れ崇められている「カカシ様」
    そして正体不明の最も忌まわしき憑き物、厭魅(まじもの)。
    神隠しの噂の絶えないこの村を怪奇小説家の刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた時、不気味な連続怪死事件の幕が上がる。

    『首無の如き祟るもの』が抜群に面白かったのでシリーズ一作目に手を出したのだが、これがまあ怖い。初期の作品なので文章に若干の読みにくさは感じられるものの、それがより気味の悪さを引き立てているのかもしれない。
    村の名前や屋号の仰々しさ、文字は違えど代々同音で「サギリ」と読ませる巫女の一族など、虚構と現実のバランスが横溝正史が4:6なら、三津田信三は6:4。僕らの住む世界と地続きのようでありながら「ここではないどこか感」が漂ういい塩梅。

    村での出来事が、谺呀治家の紗霧の日記、刀城言耶の取材ノート、神櫛家の漣三郎の記述録の視点から語られ、読者はその全体像を俯瞰する形となる。
    走りながら考えるタイプの刀城言耶の、いい意味での迷探偵っぷりに最後までドキドキさせられ(本人には探偵の意識はなく、作中でも指摘されるゴーストハンターの役回りのようだが)、アッと言わされる。犯人は予想の範疇ではあったが(とはいえミステリを読む時は全てを疑ってかかるので当然なのだが)真実に震え上がった。

    ミステリとホラーの融合という難しい試みを成功させているこのシリーズ。ミステリ部分での面白さは『首無』にやや軍配が上がるが、ホラー部分では断然こちらが上。
    全体的な雰囲気はもちろんだが、全ての可能性を論理的に排除した後に残る恐怖。うまいなぁ。

    刀城言耶シリーズ、これからも追いかけていきたいと思います。

  •  怪奇幻想作家の”刀城言耶”が訪れた神々櫛村は、二つの旧家の微妙な力関係の中で神隠しや憑き物、カカシ信仰など古くからの風習と怪異が根付く村であった。そしてその村で怪死事件が起こりそれは連続殺人へと発展していく。

     序盤はかなり読みにくかったです(苦笑)。複雑な人間関係に、ボリュームたっぷりの民俗学の記述や村の記述、そして怪異の描写もボリューミーで話がなかなか進まず、序盤は正直リタイアしかけました。(何度、「早く誰か死んでくれよ」と思ったことか…)

     それでも読み続けたのは、作品に漂う雰囲気が妙に気になったこと、そしてこの刀城言耶シリーズの評判の高さゆえです。一つ目の殺人が起こってからは、徐々に文体にも慣れてきたためかサクサク読め、そして読み終えたときには、「リタイアしなくて良かった」と心底思いました。

     終盤の推理シーンは二転三転し、読者も言耶と同じく混乱しながらこの奇怪な連続殺人の本筋をたどっていく過程をスリリングに楽しめます。(スリリングなのは言耶の推理が危なっかしいからでもありますが)
    推理があっちに行ったり、こっちにいったりするので多重解決型のミステリでもあるわけですね。

     そして、明らかになる真相はなかなかのインパクト!このインパクトのおかげで前半部の苦労は消し飛びました。

     真相の怪奇さもさることながら、論理的に解決できない曖昧さも残しているところがまた憎いところです。

     クセのある作品でしたが、評判に違わない面白さでした。

  • 最近読んだなかで一番の大ヒットでした。
    とにかく、ものすごく面白かったです。そして怖かった。骨太の古典ホラーという感じがしました。
    自分が子供だった頃、夕暮れの帰り道、あの角の向こうになにかおそろしいものがいるのではないか。
    電信柱の陰から、自販機の下から、えたいのしれないものが覗いているのでは……と思った、あの独特の恐ろしさを思い出しました。
    舞台設定もいいですね。戦後の、まだ世の中が混沌としていた時代。光と闇がいっしょくたになっていて、なにかおそろしいものが宵闇に紛れて闊歩していた時代なのだろうなと思いました。

    話はひとつの村の中にあるふたつの家の話に山神様といった信仰や、厭魅といった出会ってはいけないもの が絡み合って構成されています。
    憑き物 ミステリーとホラーと民俗学的な要素が組合わさった話の筋は、京極夏彦の京極堂シリーズとすこし雰囲気が似ていると思うのですが、あちらがミステリーに主軸を置いているとすればこちらはホラー寄りです。
    犯人と呼ぶものは確かにいるのですが、それよりも圧倒的に説明がつかないもののほうが印象に残り、それが良い余韻となってぞくぞくします。
    続刊も何冊か出ているようなので手に取りたいです。

  • 得体の知れないモノの恐さ、しみじみと。

    クセになりそう?
    自問自答。

    恐い本が好きな小学生の気持ち分かった気がします。やっと・・・
    ひとりじゃなくて友達とキャーキャー言いたいんだよね。
    誰か助けて・・・

  • 今まで読んだどのホラーよりも恐ろしく、そしてミステリとしての驚きは最上級そのそれである。因習の蔓延る閉鎖的な村に憑物筋の家、山神様への信仰と【厭魅】と呼ばれる最も悍ましき存在。そして村中に佇む山神様の化身【カカシ様】。そんな世界観の中で起きる連続殺人に民俗学の見地から分析を加え、時にその蒐集に熱中してしまうものの、合理的な論理で真相に迫る刀城言耶。物語は取材記録や日記、記述録などの複数の異なる視点から描かれることで複雑な様相を呈する。ミステリとしては真相に届きそうで届かず、悩ましいラインを上手く突き、表面上は人間の仕業とは到底思えない不可解な状況。次々に死んでいく関係者の死に方は人外の存在を色濃く示唆する密室や不可能犯罪。そして読者が推理を巡らせ、右往左往しているうちに、思わぬ方向から強烈な仕掛けが明らかになる。そしてホラーとしての結末は、解決のその先に尾を引き……

  • 閉鎖的な村での怪事件。土俗的なホラーミステリ。
    山神。カカシ様。憑き物。厭魅…怪異に支配された村での、もはや現実にはありえないような、事象や事件。
    ページの大半を、風習や伝承の解説に充てることにより、物語の禍々しさに拍車をかける。
    基地外じみた殺人現場は、人間の犯行には全く思えない。圧倒的な恐怖と膨大な謎を残したまま終盤へ。
    これからなにが起こるのか?興奮と寒気が同時に訪れる。
    そこに待っていたものは、まさしく本格ミステリである。論理的な解決に次ぐ解決。!!と??がここまで頭を駆け抜けたことはかつてないであろう。
    そして驚天動地のカタルシス。ここまでの大トリックには、もはや完膚無きまでの敗北である。
    ホラーとミステリの要素で欠けているものがない。全くもって油断していた作品である。薀蓄ばかり、難しい用語ばかり、名前が覚えられない?そんなくだらないこという人は、はじめから読み直し!!

  • 細かな伏線の解説には驚き。でもその場面を読み返す気にはならない。
    最後の二転三転する中には、「それはムリがあるやろ」ってものもあり。読んでて疲れる。

  • 長いです。 すごく長く感じました。説明くさい文章が結構長く続いたように感じます。 途中から飛ばし飛ばし読んでしまいました。

    発想は良かったと思います。 最後も、ゾッとするような後味を残して終わり、そこも良かったです。

  • すごく本格推理小説プラスホラーの組み合わせをした作品なのだけれど、うーん
    ゾッとする場面もあるにはあるけど(祠の下から此方をジッと凝視する何か…、穴からスーッと異常に首が伸びたモノが顔を出すとかの場面はめっちゃ不気味で怖い)、すぐにくど過ぎるくらいの説明?解説?が入って白けてしまう…のがね。

    閉鎖的な村の歪なお家関係と民俗学がよく複雑に絡み合ってて難しかった、読む分には。そうだ、盛り沢山すぎるんです、要素が。一冊の小説にもったいないくらい肉付けがされていて、それで読むのが大変で時間がかかった。

    犬神家だっけ?あれの雰囲気によく似てる。
    ただ、犯人の正体がやや反則じゃない?って最後悶々としました。いや、証拠もちゃんとあるんですけど、もしかしてあの人が犯人⁈あっ違った…えっあの人が犯人⁈また違う…とどんでんでん返しが続きやっとこさ、犯人明かされるが、意外すぎてふわ〜とする。

    民俗学は奥が深い!

  • 三津田信三の刀城言耶シリーズ第1長編『厭魅の如き憑くもの』を読了。

    この「刀城言耶シリーズ」は、ミステリとホラーが融合された作品になっている。

    1作目は辺境の村が舞台。憑き物筋の家系であり、対立する二つの旧家の人物相関図が複雑で、片方の家には漢字は違うものの「サギリ」という名前の人物がやたらと存在する。ミステリ好きな人は、この辺に何かありそうだと勘ぐってみたりするはず。
    それと民俗学的な話も出てきて、村では「カカシ様」と呼ばれるものを祀っており、事件との関連性が深い。
    全体的になかなかのホラーテイストで、夜に読むのは少し怖い。

    本作は文庫化の際に村の地図が付いたという。どうやら単行本には付いていなかったようだ。確かに読んでいて村の道の話に差し掛かると、文章だけでは解りづらいと感じた。地図を付けたのは正解だろう。

    この作品は、章ごとに主要人物の視点から書かれたものになっている。つまり作中の視点の話だが、最初にその説明をしている点も良かった。稀にどの視点からの描写なのか分からなくなる作品がある。しかし最初に説明をしておけば混乱もないし、章の名前も誰の視点から見たものか解りやすいものになっているので(たとえば「~の日記より」など)、その点では読者を迷わせることはないだろう。まぁ数あるミステリの中には、わざと視点を分かりにくくさせ読者を騙すというトリックもあるにはあるのだが。

    推理のシーンにもリアリティがあった。シリーズを通しての探偵役である刀城言耶が、最後に犯人を追い詰めるシーンで、何回か推理を間違えながら真相に迫っていくのは、ほとんどのミステリでよくあるような一発で犯人をズバリ当ててみせる推理よりも現実的だと感じた。彼は飽くまでも怪奇幻想作家なので、むしろそれでこそ納得がいった。

    実はこのシリーズは一見事件が解決しても、最後まで読まないとそれが本当に人為的なものなのか、そうでないのかが判らない。ホラーものの特性を活かして読者を最後まで驚かせようとする。これが刀城言耶シリーズの醍醐味と言えるのかもしれない。

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