厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)

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著者 : 三津田信三
  • 講談社 (2009年3月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763066

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厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「わたしをぉ、殺したのはぁ......おまえだよっ!!!」
    「ぎゃー」

    こんな怪談が子供の頃に流行ったが、犯人指名のシーンで次の頁をめくった瞬間、この感覚に似た驚きと恐怖を味わった。

    神々櫛(かがくし)村。
    代々、憑き物筋でありながら同時に憑き物落としを取り仕切る谺呀治(かがち)家と、それに対抗し村を二分する力を持つ神櫛(かみぐし)家。
    村中の至る所に立てられ畏れ崇められている「カカシ様」
    そして正体不明の最も忌まわしき憑き物、厭魅(まじもの)。
    神隠しの噂の絶えないこの村を怪奇小説家の刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた時、不気味な連続怪死事件の幕が上がる。

    『首無の如き祟るもの』が抜群に面白かったのでシリーズ一作目に手を出したのだが、これがまあ怖い。初期の作品なので文章に若干の読みにくさは感じられるものの、それがより気味の悪さを引き立てているのかもしれない。
    村の名前や屋号の仰々しさ、文字は違えど代々同音で「サギリ」と読ませる巫女の一族など、虚構と現実のバランスが横溝正史が4:6なら、三津田信三は6:4。僕らの住む世界と地続きのようでありながら「ここではないどこか感」が漂ういい塩梅。

    村での出来事が、谺呀治家の紗霧の日記、刀城言耶の取材ノート、神櫛家の漣三郎の記述録の視点から語られ、読者はその全体像を俯瞰する形となる。
    走りながら考えるタイプの刀城言耶の、いい意味での迷探偵っぷりに最後までドキドキさせられ(本人には探偵の意識はなく、作中でも指摘されるゴーストハンターの役回りのようだが)、アッと言わされる。犯人は予想の範疇ではあったが(とはいえミステリを読む時は全てを疑ってかかるので当然なのだが)真実に震え上がった。

    ミステリとホラーの融合という難しい試みを成功させているこのシリーズ。ミステリ部分での面白さは『首無』にやや軍配が上がるが、ホラー部分では断然こちらが上。
    全体的な雰囲気はもちろんだが、全ての可能性を論理的に排除した後に残る恐怖。うまいなぁ。

    刀城言耶シリーズ、これからも追いかけていきたいと思います。

  •  怪奇幻想作家の”刀城言耶”が訪れた神々櫛村は、二つの旧家の微妙な力関係の中で神隠しや憑き物、カカシ信仰など古くからの風習と怪異が根付く村であった。そしてその村で怪死事件が起こりそれは連続殺人へと発展していく。

     序盤はかなり読みにくかったです(苦笑)。複雑な人間関係に、ボリュームたっぷりの民俗学の記述や村の記述、そして怪異の描写もボリューミーで話がなかなか進まず、序盤は正直リタイアしかけました。(何度、「早く誰か死んでくれよ」と思ったことか…)

     それでも読み続けたのは、作品に漂う雰囲気が妙に気になったこと、そしてこの刀城言耶シリーズの評判の高さゆえです。一つ目の殺人が起こってからは、徐々に文体にも慣れてきたためかサクサク読め、そして読み終えたときには、「リタイアしなくて良かった」と心底思いました。

     終盤の推理シーンは二転三転し、読者も言耶と同じく混乱しながらこの奇怪な連続殺人の本筋をたどっていく過程をスリリングに楽しめます。(スリリングなのは言耶の推理が危なっかしいからでもありますが)
    推理があっちに行ったり、こっちにいったりするので多重解決型のミステリでもあるわけですね。

     そして、明らかになる真相はなかなかのインパクト!このインパクトのおかげで前半部の苦労は消し飛びました。

     真相の怪奇さもさることながら、論理的に解決できない曖昧さも残しているところがまた憎いところです。

     クセのある作品でしたが、評判に違わない面白さでした。

  • 最近読んだなかで一番の大ヒットでした。
    とにかく、ものすごく面白かったです。そして怖かった。骨太の古典ホラーという感じがしました。
    自分が子供だった頃、夕暮れの帰り道、あの角の向こうになにかおそろしいものがいるのではないか。
    電信柱の陰から、自販機の下から、えたいのしれないものが覗いているのでは……と思った、あの独特の恐ろしさを思い出しました。
    舞台設定もいいですね。戦後の、まだ世の中が混沌としていた時代。光と闇がいっしょくたになっていて、なにかおそろしいものが宵闇に紛れて闊歩していた時代なのだろうなと思いました。

    話はひとつの村の中にあるふたつの家の話に山神様といった信仰や、厭魅といった出会ってはいけないもの が絡み合って構成されています。
    憑き物 ミステリーとホラーと民俗学的な要素が組合わさった話の筋は、京極夏彦の京極堂シリーズとすこし雰囲気が似ていると思うのですが、あちらがミステリーに主軸を置いているとすればこちらはホラー寄りです。
    犯人と呼ぶものは確かにいるのですが、それよりも圧倒的に説明がつかないもののほうが印象に残り、それが良い余韻となってぞくぞくします。
    続刊も何冊か出ているようなので手に取りたいです。

  • 得体の知れないモノの恐さ、しみじみと。

    クセになりそう?
    自問自答。

    恐い本が好きな小学生の気持ち分かった気がします。やっと・・・
    ひとりじゃなくて友達とキャーキャー言いたいんだよね。
    誰か助けて・・・

  • 閉鎖的な村での怪事件。土俗的なホラーミステリ。
    山神。カカシ様。憑き物。厭魅…怪異に支配された村での、もはや現実にはありえないような、事象や事件。
    ページの大半を、風習や伝承の解説に充てることにより、物語の禍々しさに拍車をかける。
    基地外じみた殺人現場は、人間の犯行には全く思えない。圧倒的な恐怖と膨大な謎を残したまま終盤へ。
    これからなにが起こるのか?興奮と寒気が同時に訪れる。
    そこに待っていたものは、まさしく本格ミステリである。論理的な解決に次ぐ解決。!!と??がここまで頭を駆け抜けたことはかつてないであろう。
    そして驚天動地のカタルシス。ここまでの大トリックには、もはや完膚無きまでの敗北である。
    ホラーとミステリの要素で欠けているものがない。全くもって油断していた作品である。薀蓄ばかり、難しい用語ばかり、名前が覚えられない?そんなくだらないこという人は、はじめから読み直し!!

  • 細かな伏線の解説には驚き。でもその場面を読み返す気にはならない。
    最後の二転三転する中には、「それはムリがあるやろ」ってものもあり。読んでて疲れる。

  • 長いです。 すごく長く感じました。説明くさい文章が結構長く続いたように感じます。 途中から飛ばし飛ばし読んでしまいました。

    発想は良かったと思います。 最後も、ゾッとするような後味を残して終わり、そこも良かったです。

  • すごく本格推理小説プラスホラーの組み合わせをした作品なのだけれど、うーん
    ゾッとする場面もあるにはあるけど(祠の下から此方をジッと凝視する何か…、穴からスーッと異常に首が伸びたモノが顔を出すとかの場面はめっちゃ不気味で怖い)、すぐにくど過ぎるくらいの説明?解説?が入って白けてしまう…のがね。

    閉鎖的な村の歪なお家関係と民俗学がよく複雑に絡み合ってて難しかった、読む分には。そうだ、盛り沢山すぎるんです、要素が。一冊の小説にもったいないくらい肉付けがされていて、それで読むのが大変で時間がかかった。

    犬神家だっけ?あれの雰囲気によく似てる。
    ただ、犯人の正体がやや反則じゃない?って最後悶々としました。いや、証拠もちゃんとあるんですけど、もしかしてあの人が犯人⁈あっ違った…えっあの人が犯人⁈また違う…とどんでんでん返しが続きやっとこさ、犯人明かされるが、意外すぎてふわ〜とする。

    民俗学は奥が深い!

  • 三津田信三の刀城言耶シリーズ第1長編『厭魅の如き憑くもの』を読了。

    この「刀城言耶シリーズ」は、ミステリとホラーが融合された作品になっている。

    1作目は辺境の村が舞台。憑き物筋の家系であり、対立する二つの旧家の人物相関図が複雑で、片方の家には漢字は違うものの「サギリ」という名前の人物がやたらと存在する。ミステリ好きな人は、この辺に何かありそうだと勘ぐってみたりするはず。
    それと民俗学的な話も出てきて、村では「カカシ様」と呼ばれるものを祀っており、事件との関連性が深い。
    全体的になかなかのホラーテイストで、夜に読むのは少し怖い。

    本作は文庫化の際に村の地図が付いたという。どうやら単行本には付いていなかったようだ。確かに読んでいて村の道の話に差し掛かると、文章だけでは解りづらいと感じた。地図を付けたのは正解だろう。

    この作品は、章ごとに主要人物の視点から書かれたものになっている。つまり作中の視点の話だが、最初にその説明をしている点も良かった。稀にどの視点からの描写なのか分からなくなる作品がある。しかし最初に説明をしておけば混乱もないし、章の名前も誰の視点から見たものか解りやすいものになっているので(たとえば「~の日記より」など)、その点では読者を迷わせることはないだろう。まぁ数あるミステリの中には、わざと視点を分かりにくくさせ読者を騙すというトリックもあるにはあるのだが。

    推理のシーンにもリアリティがあった。シリーズを通しての探偵役である刀城言耶が、最後に犯人を追い詰めるシーンで、何回か推理を間違えながら真相に迫っていくのは、ほとんどのミステリでよくあるような一発で犯人をズバリ当ててみせる推理よりも現実的だと感じた。彼は飽くまでも怪奇幻想作家なので、むしろそれでこそ納得がいった。

    実はこのシリーズは一見事件が解決しても、最後まで読まないとそれが本当に人為的なものなのか、そうでないのかが判らない。ホラーものの特性を活かして読者を最後まで驚かせようとする。これが刀城言耶シリーズの醍醐味と言えるのかもしれない。

  • これは怖い…でも、面白い!!刀城言耶の迷探偵っぷりには、みんなもっと怒っていいと思う。なぜそんなに自信満々なのだ言耶。
    本当に、一作のなかに収めてしまうには勿体無いくらいのアイディアの数々!そしてシリーズ通してのどんでん返し!いやあ、次巻への期待が高まりますね。

  • シリーズ第一作にして、非常に野心的な作品です。この犯人指摘はすごい!
    犯人の正体があまりにも意外すぎるのですが、随所に張られた過剰なまでの伏線がその結論を意外と無理なく導き出す、と気付いたのは本編を読み終わって長い溜息をついた後でした。

    要するに、今回も完敗ってことですわ\(^o^)/←←←

    真相解明へのヒントと見せかけた思わせぶりな描写や会話にもかなりページを割いていますが、そこが特に怖いんですね〜。「蛇足的に物語の補足の役割は果たしていますが本筋には関係ありません」なエピソードがあったり、だけどそこが犯人解明に繋がるエピソードと重複した要素を持っていたり…と、撹乱させられます( ^ω^ )←嬉しい

    まあでも読んでる最中はそんなこと分かる筈もないので、推理しながら丹念に文字を拾っていく人にはひたすらホラー描写が続くのは恐ろしいですね。読んでる最中、物音がするたびビビったのは私です( ^ω^ )←

    個人的には、「室内の密室」以外にも登場した、「自然の地形が作り出した密室状況」「関係者の立ち位置が作り出した密室状況」が堪らなく興奮しました(笑)。
    こういう魅力的なトリックを惜しみなく出してくれる作品は、それだけでもう評価高いですね〜。

    最新作のミズチの如き沈むものを先に読んでしまったので、ミズチに比べると洗練度やキャラの魅力が若干劣る印象は受けましたが、それは読む順序を無視した私が悪いですね(笑)


    神々櫛村ーー二つの旧家が勢力を二分する村を怪奇幻想作家・刀城言耶が訪れて間も無く、毎朝行われる儀式の最中に男が殺害される。
    その後、立て続けに関係者が不可解な状況下で殺害され、刀城は刀自に請われて真相究明に乗り出すが…。

  • 物語自体は戦後日本の閉鎖的な山村を舞台とした変死事件を中心に進む。田舎、神隠し、慣習、巫女憑き、憑き物信仰、こんな語感に惹かれたのが始まり。ただ、登場人物の名前が同音など読みにくい部分が沢山。量とも相俟って読了までに時間がかかる。

    あちこちに蓑笠を被せられたカカシ様が立ち、崇められている村で、見立てられた変死体が発見されるのだが、何よりも衝撃を受けるのは、その文章の怖さ。想像力を掻き立てられて戦慄する恐怖の場面は一度や二度じゃなかった。山で出会ってはいけないとされている、厭魅と書いて「まじもの」と呼ばれる妖怪が、文章の向こうからじっと覗いているような気すらした。幼い兄と弟が、常世橋を渡り禁足地の九供山に足を踏み入れる場面。型代を川へ流す巫女の背中に囁き続ける声。地蔵堂の影から地面すれすれに顔を出し、こちらを見つめる少女。ミステリ部分よりも、この禍々しい気配に怯えながら1頁ずつ読み進めていった。結果、先が気になる展開が続き、最後にも驚かされ、読んでよかったと思う。

    刀城言耶シリーズは、1作目が一番読み難く徐々に洗練されていくのだが、反面、民俗学ホラー要素はこの1作目が一番強い気がした。緻密な情景描写に裏打ちされたおぞましき厭魅に、おそらく肌が粟立つことでしょう

  • 刀城言耶シリーズ第1作目。
    三津田信三の「刀城言耶シリーズ」は、
    その表紙画像のインパクトもあって
    これまでずっと気になっていたのだけど
    未読のまま来ていたシリーズで
    やっと1作目から追いかけることができた。

    読んでみると、最初のシーンからいきなり雰囲気に呑まれた状態に
    なってしまって、本を読んでこんなに怖い思いをしたのは
    久しぶりの経験。

    憑き物云々の類似とかは抜きにしても、
    この情報が凝縮された小説世界にどっぷりとハマり込んで
    濃密な読書体験をするというのは、京極作品で感じたそれと
    似ているように思えた。

    中身に関しては、ホラーとミステリーの融合、という枕詞で
    語られることの多いように思う本作だけど、
    自分の受けた印象としては、
    ミステリー要素がある和風ホラー小説のように思う。

    なんというか、読んでいて頭の中が
    「この殺人はどういうトリックで行われたんだろう」
    という風には持っていけない。
    「誰が犯人なんだろう」くらいは思えても、
    雰囲気に酔い、怖さが先に勝って、
    純粋にミステリーとして読むことがなかなか難しかった。

    ミステリーの部分に関して、
    紗霧の日記、漣三郎の記述録、刀城言耶の取材ノートと
    3つの視点で物語が展開されている点は
    ミステリーとしての仕掛けになっている部分なのだけど
    「おわりに」の中で真相が語られている下りでは
    少なくとも自分は「へ、そうだったの・・・」状態で
    効果的に機能していたとは言えないように思えた。

    時に怖がりながら、時に民俗学的薀蓄に必死についていきながら
    読み進めていった感じなので、作者の仕掛けに
    ほとんどスルーする形で終わりまで来てしまった。

  • 惜しい。
    大量に盛り込まれた因習や対立は雰囲気作りに上手く活きていると思う(些かやりすぎの感はあるが)。
    しかし、「推理とホラーの"融合"」と呼べるかどうかは難しいところ。推理とホラーが場面ごとに入れ替わり立ち替わりに顔を出し、上手く融け合っていないように思える。例えば、解決の場面になると主人公があまりにも迷探偵然としているのが気になった。あそこまで自信満々に「これだ!いや間違えた!」と行ったり来たりするのでは無く、もっと訥々と語っても良かっただろうと思う。私個人のイメージでは京極シリーズの関口のような語り口調を期待して居たのだが。

    とにかく、雰囲気自体は素晴らしい。嫌いではないが、(いい意味で)厭な小説である。

  • 一部で話題の本格ミステリ×ホラーシリーズの一作目。

    ホラー小説としても、ミステリとしても読める贅沢な一品であるが要所要所に挟まれる憑物信仰などに関する薀蓄が登場人物の口を通して説明されるのがかったるく感じる。全部で600ページあるが薀蓄だけで200ページくらいあるんではないだろうか。

    次々ととある一家の人間が死んでいくのだが、やはり殺される人間にもドラマがあってこそ連続殺人ものの醍醐味だが、キャラ描写が薄いので被害者の誰が殺されてもそこまで衝撃がないのは残念だった。

    殺人以外にも様々な謎が散りばめられていて、果たしてそれがホラー的なオチなのかミステリとしてオチるのかが最後まで判断出来ないのが今作の見所だが、逆に謎解きパートがラストの60ページほどに凝縮されていて、読む方は矢継ぎ早にオチを披露されて理解に苦労した。

  • 憑き物とか妖怪と聞くと別の作家のやたら分厚いシリーズを思い出すがこちらはミステリー色が濃い。次々と語り手が代わる構成に何かあるなとは気が付いたが入れ替わりに叙述と2つトリックを重ねられると驚くしかない。ただ読み飛ばした部分も多かった。好きな人は好きだろうが、ミステリーとして読むと癖が強すぎたか。最後までモヤモヤさせる構成はホラーを楽しむには最高だろう。

  • このおどろおどろしい表紙と題に惹かれ(爆)、一体どんな内容なのか、半分こわごわどきどきしながら期待を持って(笑)購入してみた。
    ところが、、、
    読み始めたのっけから、あまりのおどろおどろしさに続読を挫折(--;。
    いろいろあって(何)、ようやく続きを読むに至ったわけだが・・・
    先にも書いたが、まずのっけからこの話はとにかく、怖い(--;。
    いきなり祈祷所みたいな場所から始まり、イタコならぬ「案山子様」を前に憑き物落し(汗)
    まぁその描写が凄く怖い(T_T)・・・またその憑き物落しが終わった後、憑座(簡単に言えばいたこ役)の役目の紗霧が憑依させた依代を川に流して帰るまでの様子も、もう読んでて逃げ出したくなるくらい、怖い。
    ・・・私が耐え切れず「この話がホラーなら読むのやめとこ(--;」と思った気持ちも、そんな出だしだったからなんである。

    だが更に読み進むと、この話しの舞台となる暗く小さな山村へ、一人の客がやってくる。
    「探偵役」刀城言耶の登場である!
    この物語の中でまず第一に私が「面白い!!」と思った登場人物は、やはりこの刀城言耶だ。
    だいたいこいつが登場した側から、その特異な性格がモロ出しで、興味ある話題にはTPOを忘れずかずか入り込んでゆくずーずーしさに、まー度肝を抜いた!
    (殺人事件の舞台となる神々櫛村へ向かう道中のバスの中で、村人の噂話にいきなり首を突っ込むくだりなど、読んでてヒヤヒヤしたほどだ(--;)
    ・・・だが彼がやってきたことにより、迷信や言い伝え、しきたりに塗りこまれた暗く陰鬱なこの村に、一条の光が差し込み、ぼんやりとした「希望」のようなものが生まれてくる。
    刀城言耶というなんとも風変わりな、それでいて憎めない彼の性格も多分に影響しているのだろうが、彼の論理的分析により、それまでただただ気味が悪いとされてきた出来事も、濃い霧が少しずつ晴れてゆくように日の光が当てられ、解明されてゆくのである。
    読み進んでゆくにつれ、次々死人が出てゆくのは仕方ないとして(苦笑)、
    初め真っ黒に塗りつぶされた絵が、少しずつ漂白され全貌が明らかになってゆくような、そんな感じで謎が解明され、少しずつ安心感をともなってゆく。

    だが最後まで読み終えた後も、依然としてこの物語の中には釈然としない謎が残る。
    なんとも薄気味の悪い感覚・・・(別れを告げてバスに乗り込んだ刀城言耶自身がそのことに気付き愕然とするのだが、)
    この物語の中には、合理的説明だけでは決して片付けられない、其処かしこの闇に潜む禍々しい気配、村に伝承されている怪異、その境界線が非常に曖昧である不気味さが、常に存在するのである。

    最後に。友人はこの小説のことを簡単に、
    「そうですね。。横溝正史みたいな感じですよ。
     刀城言耶は言ってみれば金田一耕助みたいな感じでしょうか」
    と表現していた。
    なるほどそうかもしれない。だが、私に言わせると刀城言耶は金田一耕助よりアクが強い(笑)。
    いいヤツではあるんだけど、金田一のように温厚で人畜無害的な感じでは、ない。
    事実は事実として伝え、自分の意見をはっきり言うし、事件の最中でありながら自らの好奇心を決して隠そうとはしない。
    刀城言耶というキャラクタが活き活きと動く(関わる)ことが、闇く澱んだ何かを搔き回し、一本の筋道を立て、光を当てる。
    それが、この物語の面白いところだと私は思った。

  • シリーズ一作目ということで期待してたけど、全然怖くなかった。どうでもいいことにページ数使いすぎで、肝心の部分は早送り。なので怖さが伝わってこなかった。同じ読みで、字が違う名前の女性がたくさん出てくるので、誰が誰なんだか、ちょっと混乱した。最後のオチもちょっと無理があるんじゃ…といった感想。

  • 山奥の神々櫛村で起きた連続怪死事件。
    犯人は密室から煙のように消え、遺体には奇っ怪な装飾。
    まるで死者本人が何かに憑かれて自死を演出したような...。
    刀城言耶が取材で得た数々の資料と、その余白を埋める神の如き視点が村を覆う禍々しきものを具現させる。

    憑き物信仰、憑き物筋の家系と村を支配する土着の因習。
    怪異と共存して暮らす人々の民俗学的な掘り下げがあり
    数々の伝承や怪異譚で丁寧に舞台整備がなされていて読み味不穏。
    探偵役も全能感はなく、むしろ謎に対して卑小な存在に描かれていてホラーみを損なわず。

    怪奇小説家 刀城言耶が記した怪奇事件、第一作目。

  • 本格ミステリ的な部分には、全然ついていけない。トリックは個々の殺人についてではなく全部ざっくりまとめてみたいなもので、謎解きのカタルシスが全然ない。ややルール違反なのではないかと思う。そんなあんた、節操のない解決してええんやろか。。。と悪い意味で衝撃を受けた。
    ホラー的な部分は、とても面白かった。因習の村というのは、横溝的でステキだし。でも見せ方は今風で、ホラー映画みたいに緩急をつけて怖いシーンが襲ってくる。特に好きなのは河原のエピソードと石段とお堂のエピソード。
    民俗学的な部分もすごく面白かった。神様と邪神が実は同じなんじゃないかとか、民間伝承の謎にじっくりと取り組んでいるような疑似体験をすることができた。
    新本格的な試みは諦めてホラーに専念すればいいのに。
    最後の二転三転する謎解きシーンとかうざったいったらありゃしねえ。

  • 憑き物の恐怖 カカシ様の戦慄 連続する人死にの謎
    戦慄の本格ホラー推理!山深い村に蔓延る恐怖の連続!神々櫛(かがぐし)村絵図、現場見取り図を追加、待望の文庫化!

    神々櫛村。谺呀治(かがち)家と神櫛(かみぐし)家、2つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶(とうじょうげんや)」シリーズ第1長編。

  • どことなく横溝作品の雰囲気を持つ、本作品。三津田作品はこれが初読みです。正直、あまり怖さは感じなかったのですが、和ホラーの雰囲気や最後の種明かしは面白かったです。
    そして、これから読む方は、単行本の一番最初に書かれている家系図は頭にちゃんと入れてから、読み進める事をお薦めします。なんせ、「サギリ」だらけで、漢字だけを見ているとどちらのサギリさんでしたっけと、一々家系図に戻る事態に陥りますから・・・

  • 得体の知れない恐怖の書きぶりに背筋がゾッとして、最後の仕掛けに意表を突かれる。ホラーとミステリのお互いがそれぞれの持ち味を生かしながらも、お互いの邪魔をせずに上手いこと共存しあっている。

  • こういうのも叙述トリックと言うのだろうか。面白かった!多重どんでん返しで何度も状況がひっくり返るので解決編なのにいい意味で安心感がなく、引き込まれる。しかもどれも真相に採用してもいいくらいのネタなので贅沢な気分に。登場人物みんなちょっと変な気配がしたくらいでこの世の終わりの如く騒ぐのがホラーを通り越してシュールで面白い。あれだけあった怪異のほぼ全てにキチンとしたオチがついていてとても良かった。あと、読み難い漢字が多いけれど忘れた頃に再びフリガナを振ってくれるので凄く助かりました。紗霧が可愛かった。

  • 第1作目も面白かった!少し、ホラー寄りだけどそれはそれで良し。第2作目はミステリー寄りなので、楽しみだ!

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神々櫛村。谺呀治家と神櫛家、二つの旧家が微妙な関係で並び立ち、神隠しを始めとする無数の怪異に彩られた場所である。戦争からそう遠くない昭和の年、ある怪奇幻想作家がこの地を訪れてまもなく、最初の怪死事件が起こる。本格ミステリーとホラーの魅力が圧倒的世界観で迫る「刀城言耶」シリーズ第1長編。

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