夕子ちゃんの近道 (講談社文庫)

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著者 : 長嶋有
  • 講談社 (2009年4月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763349

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夕子ちゃんの近道 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • とてつもなくここちよく、ぼくにとっては、とてつもなくスリリングな作品。だって、この作品を読んでいて、何度か電車を乗り過ごした、乗り過ごしそうになった。
    でも、このここちよさは、きっちり、ていねいに物語ることを意識した、作者の力量だと思う。

  • 長嶋有作、記念すべき第一回大江健三郎賞受賞作。
    賞っていうのは与える対象によって賞自体の性格が定められるような部分がありますけれども、
    第一回の受賞が長嶋有のこの作品だとそのあと大変そうな気がします。まだ続いてるんでしょうか、大江健三郎賞。そこら辺無知なのですいません。

    何故大江健三郎賞の受賞作がこの作品だとそのあと大変なのか。
    解説で大江健三郎も語っております通り、この作品、というか近年どころか今までの長嶋有作品に特に顕著な部分として、
    主人公の影の薄さがとても強く、それは日本で言われるところの「純文学」には全く見られそうにない特徴であるからです。
    さらに大江健三郎は、そのことに対して解説で「新しさ」を感じたことを論評で言ってます。
    賞を与える理由として「新しさ」を挙げるとなると、その賞の選考自体がどんどん尖鋭化するのは間違いない。
    というわけで大江健三郎賞、思いきったなーと感じたわけです。

    そのように他の文学作品にはあまり見られないほどこちらの作品は尖鋭的であるのですが、
    なんだか印象としてはゲーム、殺人事件の起きないアドベンチャーゲームみたいな趣で面白かったです。
    大きな事件は起きまくっているわけですが。それこそ殺人事件なんかより現実的な。

  • 芥川賞を取られている方の作品なので文章は巧みなのかもしれないが、私にはなじまない作品であった。会話は、最初は「」が付いているものの、その返答には「」が付いていないという特殊な文章で、集中して読まないと分かりにくい構成になっている。また、情景描写に不足が多いと感じることが多く、状況がすんなりとイメージできないシーンが多々あった。特に大きな事件が起きるわけではなく(妊娠事件はあるが…)、ちょっと変わった日常を不思議な視点から見つめた作品である。作品の紹介に「実験作」と記載があるが、頷ける。

  • アンティークショップを舞台とした連作短編集。
    「透明で背景みたいなひと」と評される主人公は、最後まで、名前はおろか、生い立ちや年齢といったプロフィールの一切を明かされない。自分が何者かである必要がない、人生の中でぽっかり空いた「夏休み」のような時間をきりとった作品なのだとおもう。
    ユーモアを交えた会話や描写、作品全体を包むゆるやかな空気感を楽しみつつ。それでもやはり、人は、ここにずっと留まり続けることはできないのだと感じた。此処から「ぼく」はどこに旅だっていくのだろう。

  • こういうオムニバス形式は好きな形態だ。
    古道具中野商店と同じ、というか、
    裏・古道具中野商店、か。
    いや、どちらが裏でどちらが表か、は、
    ちょっと決められないかもしれない。
    コインの裏表である。
    しかし、今読むと、貴闘力は、何とも言えない。

  • 近道に見えて遠くて、
    その分いろんなものが見えてくる必要なもの。
    背景みたいに透明というのは褒め言葉じゃないように感じるけど、とても必要な存在。
    だけど、それでも透明じゃないと感じてもらえる誰かに出会って欲しいとも思う。

  • なになにが素晴らしかった、って要素を個別に言っていくのがためらわれるくらい全部良かった。
    上手さと良さしかない。
    必然のタイミングで必要な情報を与えるだけの語りがたまらない。
    その「必然のタイミング」を適切に見極めること、つくりだすことが難しいのに……!

    なんだか完成されてて、小説以外の言葉を付随させることに情けなさを感じてきた。読んだほうがいい。

  • ところどころとクスっと笑わせられたり、ほのぼの、楽しく読めた。登場人物みんな愛おしい感じ。

  • 登場人物に癖がありキャラがたっている点は読んでいて面白いと思ったが淡々と話が進むのでなかなか進まなかった。

  • 読書部課題図書その18。読むのは2回目。

  • 購入せず図書館で借りて読んでしまったことを後悔したため購入しました。
    これから先きっと何度も読み返すだろうと思います。
    長嶋有やっぱり好きです。

  • 吉田篤弘さんの世界観から、現実離れした部分を薄めたような…

    読んだ時の精神状態にもよるのかもしれないけれど、話の整理がし辛いというか…語り手は存在感も個性も薄い「僕」。

    夕子ちゃんの妊娠騒動以外にこれといった出来事もなく、店長とフランソワーズと瑞枝さんの関係もはっきりしないまま、淡々とした日常がある。

    合わない作家さんなのかもな…

  • 短編集の集まり
    もう三十だよ と話す女。

  • インパクトのある事件が起こるわけでもなく、どんな話?って聞かれたら困る…けどなぜか、たまに読みたくなるお話。この世界の住人になりたくて。登場人物たちが周りにいてくれたら、少し優しく生きられる気がする。

  • 遠回りが、案外一番の近道なんじゃないかと思える。立ち止まって考える時間。ちょっと空っぽになってみる自分。でも、やっぱり「今まで」は残っている私。
    人生、織り込まれて生きているね、私たち。色合いはどんな仕上がりになるだろう。

  • なんだかぼやぼやした主人公と、個性的な周りの人びと。古道具屋を中心に淡々と話が進みます。
    長嶋さんの、主人公を通したぼやきともつぶやきとも言える描写が大好きで、普段生活で感じるくだらない発見やモヤモヤが物語のあちこちで出て来る度ニヤニヤしてしまいます。
    巻末に大江健三郎賞受賞時の大江氏の選評が載ってます。凄く的を得て魅力が分析されていて、あぁやっぱり良いなと再確認できました。

  • さらりとした日常の中にある物語。穏やかな中にも味わい深さというか心地よさがある。
    ゆるりと過ぎていく毎日っていいものだなぁ。

  • 長嶋有はいいなぁーと思った。

    雑貨屋さんだかなにかのはなし。

  • フラココ屋のガラスを掃除する場面が印象的。あわあわのスプレーを〇にしてきれいに拭いていく。窓拭きやらないとな。
    これでお話は終わり、と思ったら、最後の章がはじまった。文庫化に伴い過筆された部分。みんな幸せでよかった。

    大江健三郎さんの言うように海外の言語に翻訳されてもきっとどの国でも共感される文章、内容だと思う。

  • 「フラココ屋という古物屋の2階に主人公の青年が住んでるんだよね」そう、最後まで名前すら明らかにならないけど、と答えながら私は店のパソコンの黒いキーボードを叩く。「Yの押し具合がいつもより柔らかくない」あれ、そんなわけないでしょう。でもそれって、この小説のゆるさに似ていないですか。

    本作品の文体を真似ると、こうなる。かぎカッコの使い方が特徴的だ。会話の半分がはみだしている。文章の区切りを弱くして、登場人物のゆるい人間関係を表しているようだ。ある古物屋の店長と店員、常連らの日常を描いた短編7編が連なる。

    主人公である住み込みの店員「僕」は、ややはみ出している人たちに囲まれ、細くもなく太くもない河の流れのように暮らす。緩やかに過ぎる時間を肯定も否定もせずにいられるのは若さゆえの特権。時間を惜しく思う大人や、青年に差しかかかる少年たちの切羽詰った振る舞いを身近にして、それでもなおブレそうにない「僕」について、どんな人間なのか確たる証拠が示されていない。だからこそ、読者は自身を投影しやすく、それでいて第三者の視点を保ったまま物語が展開してゆく。

    「猛スピードで母は」で芥川賞の長嶋有。バツイチの母に対する小5の心情を淡々とした文体で読者に生々しく感じさせた受賞作と違い(それがこの作家の真骨頂と思うが)、ちょっとずつ謎解きを投げ掛けながら、ゆるゆるとした時の流れを綴っている。

  • 穏やかな日常と近所づきあい。

    盛り上がる何かがあるでもないけど
    不思議感漂う温度と色合いがよかったでした。

  • 骨董屋フラココ屋を舞台とした短編集。

    非常に淡々としている。
    人間模様はだんだん変化していくけれど、大きな事件やハラハラするようなことがあるわけではない。
    こういう普通さが楽しめるときは味わい深い作品になるだろう、良くも悪くも人とタイミングを選ぶ作品だと思う。

  • 夜、窓から射し込む信号の光のまぶしさ。

  • 普通の文章なのになんかジーンと来ちゃうのはこの人だからなんでしょうか。悲しいシーンじゃなくても涙出そうになります。

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夕子ちゃんの近道 (講談社文庫)の作品紹介

風呂の撹拌棒を人にあげたがる女、鋸を上手に使う娘、北の湖を下の名前で呼ぶフランス人、そして空気の抜けるような相槌をうつ主人公…。自覚のない(少しだけの)変人たちがうろうろと、しかし優しく動き、語りあう不思議なユートピア。柔らかな題名とは裏腹の実験作でもある、第一回大江健三郎賞受賞作。

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