リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)

  • 講談社
3.72
  • (16)
  • (52)
  • (29)
  • (8)
  • (0)
本棚登録 : 368
感想 : 39
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763929

作品紹介・あらすじ

高級車の後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡り、細かく報酬を稼ぐ刑事弁護士ミッキー・ハラー。収入は苦しく誇れる地位もない。そんな彼に暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込んだ。久々の儲け話に意気込むハラーだが…警察小説の名手が挑む迫真のリーガル・サスペンス。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人気作家マイクル・コナリーの新シリーズの第一作。
    正直言って上巻はそれほど面白いとも思わず読んでいたが、後半一気に緊迫感が増し、最後はどう決着をつけるのだろうかとハラハラする。
    (法廷ミステリはそもそも法廷が山場の一つなのでそうなりがちだが)

    「リンカーン弁護士」というタイトルもいい。最初は札束を唸らせている羽振りのいい弁護士の話かと思いきや、事務所を借りずリンカーンで東奔西走して小銭をかき集めている弁護士の話である。

    この後シリーズ化するのも納得の作品で、元々のヒットシリーズと共演する作品もあるそうだ。まずは一番初めの「ナイトホークス」を読んでみようと思う。

  • 最初ちょっと読みずらいと思ったが、どうしてどうして、後半から終盤にかけて、はらはら、キリキリ。ハラー弁護士はどんどん窮地に陥る。ラストは怒涛の終結。

    ドラマ「ボッシュ」に惹かれて、マイクル・コナリーの本を読み始めたが、刑事ボッシュでは敵対者として現れることの多かった弁護士が主人公。同じ犯罪者に対して、刑事ものだと事件があり、分からない犯人を探し出し一件落着となるが、弁護士ものだと、そこから始まる。そこら辺の違いがおもしろかった。

    主人公、リンカーン弁護士ことハリーは、刑事事件の被告を弁護しているが、高い弁護料金はとれない”顧客”が多く、常に何人かの弁護人がいる。それらの裁判模様が逐一描かれ、それが最初ちょっと読み進めるのに苦労したが、メインとなる”金になる顧客”が現れ、やがてその顧客=被告の本当の姿がわかってくるにつれ、前半に紹介された小さい事件が絡み合ってくる、そしてまたこの被告が悪いヤツで・・ ハラー自身を大変な窮地に陥れる。果たしてハラーは窮地を脱出できるのか? その展開に引き込まれる。

    また、検事、弁護士、の言葉の応酬、それをまとめる判事、そして陪審員と、「犯罪」を裁くしくみが興味深い。

    刑事犯罪の被告に対する弁護をしているハラー。亡き父親も高名な弁護士。検事の妻とは8年の結婚生活の末女児を設け離婚したが、今も事件には情報を内緒でもらったりしている。その後また結婚したが離婚し、しかしその女性はハラーの秘書として一緒に働いている。ここらへんの設定がちょっとあり?という気がするが、読んでいるとなんだか納得してしまう。

    2005発表
    2009.6.12第1刷 2012.7.9第6刷 図書館

  • 文句なしに面白い。マイケルコナリーの作品では、初めてのハリーボッシュ以外の物だったが、相変わらず面白い。アメリカの司法制度や裁判の詳細がとても詳しく書かれていて、またその周辺で活動している人々のことも詳しい。とにかく文句なしに面白く、ミステリー好きの人にはお勧め。この作者のシリーズは、経年で主人公も年を取るので、できれば最初から読むのをお勧め。

  • 2012年の今年、見た洋画で、原作を読んでみたいと思ったのは「裏切りのサーカス」(ジョン・ル・カレ「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」)と、これ。映画版はマシュー・マコノヒー主演で、ブラッド・ファーマン監督がメガホンを執った。マコノヒーにとっては久々の当たり役になった。

    エドガー賞処女長編賞受賞作家のマイクル・コナリーによるベストセラー。主人公は裁判に勝つためなら、手段を選ばないLAのスゴ腕弁護士ミック・ハラー。かつて弁護した黒人を運転手に使って、高級車リンカーンの後部座席をオフィス代わりにしている。顧客はチンピラ。検察側との取引によって、刑を軽減させるのが主な仕事だ。

    そんなちょい悪のミックが、大金目当てで暴力事件の弁護を引き受ける。最初は簡単な仕事と思えたが、依頼人のルイスには4年前にミックが担当した別の殺人事件の真犯人ではないかとの疑惑が浮上。そんな時、ミックが依頼していた調査員が殺される…というのが上巻までの筋立て。

    小説版はミックの一人称で進んでいくが、ほぼ原作通りの展開。つまり、小説は映像的にも優れているということだろう。

  •  リーガル・サスペンスは法曹界に身を置く人により副業として書かれ、それが成功に結び付けば作家業として転身、というパターンが多いように思う。だからこそ、業界に身を置かぬが既にプロである犯罪小説作家が、このジャンルに手を付けるというのは、対本職という意味でのハンディを負っており、それゆえに相応の決意と準備とが必要とされるものだと思う。

     アメリカン・クライム・ノヴェルの現役頂点に立つ作家と言って過言ではないコナリーでさえ、本書の執筆に5年を費やしたそうである(ボッシュものだと通常執筆にかける時間は2年)。法曹界もののスリラーが、作家にとっての新ジャンルとは言え、質の高い創作が常に求められる頂点の作家であればこそ、かくも慎重なる5年であったことだろう。この作品の、どのページからもそうした並々ならぬ創作側の苦労と決意が滲み出ている気がする。

     これまで、なぜ誰も書かなかったのだろうと思われるのが、まず表題ともなっているリンカーン弁護士のような存在である。事務所を持たず超零細経営で、裁判所から裁判所へと渡り歩き、ケチな報酬をちびちび稼ぐという、何だか夢のないリアリズムいっぱいの商売に従事する弁護士のことであるらしい。

     我らが主人公ミッキー・ハラーはどうであろうか。事務所はリンカーンの後部座席、保釈を勝ち取ってやった犯罪者を報酬の支払い一部として運転手として用立て、広告に記載されている連絡先は、元妻兼マネージャーの住居の電話を当てがっている有り様だ。

     ミッキーは、依頼人としてとうとう金の成る木を掴まえる。不動産女王からの依頼により、息子を暴行事件の容疑から逃れさせて欲しいというケースである。有能な調査員とのコンビにより調査が進むにつれ、事件は、過去にミッキーが弁護を手がけたある裁判に結び付く。

     過去の自らの判断への懐疑が産む、罪悪感にプラスして、なけなしの正義感。別れた妻二人と残された娘の命を危険に曝しながら、捜査線上に浮かび上がる邪悪なものへの脅威が徐々に増してゆく。

     LAの迷路のような世界、煮立った鍋の底のような世界を、職業と生命を賭けて切り抜けようと足掻く壮年弁護士のサスペンスに仕上がったこの一作。

     コナリーはまたも新たなアンチヒーロー像を作り上げたのである。彼の行手には、完璧なサスペンスを楽しめる複雑な迷宮。次回作も既に上梓されているそうで、そこではボッシュとの競演が見られるらしい。これまた実に楽しみな話である。

  • 私の中では『ユダの窓』と本作品がリーガル・ミステリの双璧。
    長めの助走を経て、物語は一気に加速する。中盤にサスペンス色を際立たせた、リーガル・ストーリーの挟み撃ち。この構成は素晴らしく、どうやっても抗うことのできない吸引力となって、読者を確実に支配する。サスペンスフルな展開の中にも、リーガル・ミステリとしてのテリトリーをキープしているので、全体のトーンは統一されている。
    保釈保証人や調査員、検事である元妻や囚人など、脇役が次々と事件に絡んでくるストーリーもいい。その辺りに無駄な動きは一切なく、また過剰にキャラを利用して話を歪めるという欲深さもない。
    刑事弁護士という主人公の立場は、いろんな局面でクローズ・アップされる。小さな手掛かりから繋がる謎の連鎖は読者を驚愕させ、主人公を苦境に立たせる。法廷シーンだけがリーガル・ミステリではないことを実感させられるだろう。弁護士という職業を逆手にとり、弱点を物語の根幹に据えた作者の手腕には脱帽するしかない。 続編を所望する読者も多いのでは?
    マシュー・マコノヒー主演で映画化されるそうだが、彼は若干あくどさに欠ける。『エンゼル・ハート』の頃のミックー・ロークが私のイメージに近いかも。

  • 久しぶりにリンカーン弁護士シリーズを読み返してみる。

    やっば面白い!
    お金の心配がつきないミッキー頑張れ〜
    このまま下巻へいきます!

  • ミッキー・ハラーシリーズの最初の作品。
    大人気作家だから褒めるのは照れちゃうんだけどやはり面白いよね。
    主人公が弁護士でなお、ハードボイルド。
    下巻も直ぐに読む。

  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    高級車の後部座席を事務所代わりにロサンジェルスを駆け巡り、細かく報酬を稼ぐ刑事弁護士ミッキー・ハラー。収入は苦しく誇れる地位もない。そんな彼に暴行容疑で逮捕された資産家の息子から弁護依頼が舞い込んだ。久々の儲け話に意気込むハラーだが…警察小説の名手が挑む迫真のリーガル・サスペンス

    感想は下巻で

    The Lincoln lawyer by Micheal Connelly

  • 映画をみたような・・・

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

Michael Connelly:1956年生まれ。LAタイムズ元記者。代表作としてはボッシュ・シリーズ、リンカーン弁護士シリーズがあり、当代随一のストーリーテラー。

「2023年 『正義の弧(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

マイクル・コナリーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
マイクル・コナリ...
村上 春樹
マイクル・コナリ...
トム・ロブ スミ...
マイクル・コナリ...
マイクル・コナリ...
ドン・ウィンズロ...
ジェフリー ディ...
村上 春樹
マイクル・コナリ...
マイクル・コナリ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×