永遠の0 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

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  • 映画を観ているように頭に映像が浮かんでいるようで、一気に読むことができました。

  • 映画を観る前に一読した。本当に一気読みしたぐらいに熱中した本。泣いたし暗い気持ちにもなる話だったが、なんだか読み終わった後は頑張ろうと思えた。

  • 映画でも見たけど、細かい描写などは本でしか知り得ない。戦争を知らない世代に読んで欲しいと思いました。読後、平和を願う気持ちが深まりました。

  • 内容紹介
    「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、1つの謎が浮かんでくるーー。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。

  • 小説である。

    お話はスターウォーズの着メロから始まる。零戦に乗り、特攻で亡くなった「祖父」について調べたいという「姉」からの電話であった。
    「ぼく」はいくつかの戦友会のつてをたどり、「祖父」のかつての同僚や部下たちの話を聞き始める。たいへんな臆病者であった、きわめて優れた戦闘機乗りであった、そして・・・次々に明らかになる「祖父」の横顔。そして、「祖父」の記憶を通して、語り部たちは戦争や軍の不条理と矛盾に鋭く、深く切り込んでいく。

    そのインタビューは、まるで目の前で語られているような迫力と真摯さで読む者に向かって来る。

    零戦の優れた戦闘能力も、海軍上層部のいかにも場当たり的で拙劣な諸作戦にしても、結局自ら身を賭して戦おうという覚悟もなく、戦闘員を使い捨ての兵器としか見ていない一部のエリートたち(著者はそれを現代の役人たちに重ねてみせる)が、ただの勢いで作り上げたものではなかったのか。そして「大本営発表」を垂れ流したマスコミ、それに無自覚に乗って熱狂した國民たち。

    そこに日本の病巣を見る気がして、背筋が冷たくなった。

    いま、日本人は同じ道を歩いてはいないのか。重要な警世の書である。

  • 百田尚樹が好きではない。
    なので、映画は観たが原作は今まで読まずにいた。
    しかし、この夏、太平洋戦争の体験談に触れたのをきっかけに映画のロケ地にもなった筑波海軍航空記念館にも足を運び、やっと、この原作を読んでみようと思った。
    この作家が好きではない理由が、文章は上手でも、中身がないからであり、ただ史実に基づいた話としては読めるけど、心に響くものがない。「海賊と呼ばれた男」も出光の歴史に興味があって、読んだだけで、「中身がない」印象は強烈だった。そして、この作品も然り。
    でも、ただ史実を復習する意味では、それなりに役に立つと思うが、特攻隊員を「テロ」呼ばわりするなど、左翼的な内容にはただただ腹が立つ。
    戦後72年が経って、戦争を経験した人の話を聞く機会がほとんどなくなって来ている。そんな中で後世へ戦争を語り継ぐ重要さを考えて欲しい。この作品は高校生への読書感想文のおすすめの本として、取り上げているサイトもある。
    しかし、この作品の中に描かれていることが、本当の戦争ではないこと、この作品はあくまでも史実に基づいたフィクションであることを忘れないで欲しい。

  • 戦争は残酷だ。
    戦地へ赴く人にとっても、送り出す人にとっても、何ひとつとして良いことはない。
    国家を守るために戦わなければならないことがあるかもしれない。
    けれど、「特攻」という戦略はどんな時代であってもけっして許されることのない戦略だと思う。
    孫の健太郎が宮部を知る人たちを訪ね、当時の宮部のようすや状況を聞く構成になっている。
    それぞれの人たちが語ることによって、宮部のさまざまな顔が見えてくる。
    徐々に浮き彫りになっていく宮部の人となり。
    数多く語られる細かなエピソードの積み重ねが、当時のどうにもならない閉塞した空気をも伝えてくる。
    強烈な印象を残したエピソードがあった。
    戦死したアメリカ兵のポケットに入っていた胸をあらわにした女性の写真。
    日本兵たちが写真を回し見していると、宮部が写真の裏を確かめてから静かにアメリカ兵のポケットに写真を戻す。
    もっと見たい!と思ったのだろうか。戻した写真に手を伸ばそうとした日本兵に対して宮部は声を荒げる。
    そして「愛する夫へ」と書かれていたと辛そうに言うのだ。
    日本兵もアメリカ兵も関係なく、愛する者を本国に残し出征してきているのだ。
    生きて帰ることが叶うかどうかわからない戦場で、写真1枚を胸に戦死していく若者。
    戦争は、誰にたいしても本当に残酷だ。

    「お前が特攻で死んだところで、戦局は変わらない。しかし・・・お前が死ねば、お前の妻の人生は大きく変わる」と諭された谷川。
    そして彼は戦争を生き延びた。
    ようやくたどり着いた村では、穢れたものでも見るように谷川を見、誰も近寄ってはこない。
    陰で「戦犯だ」と言われ、子どもたちからは石を投げられた。
    戦争中には村の英雄だった者が、戦後は一転して村の疫病神に成り果ててしまったのだ。
    どんなに悔しくてもぶつける相手はどこにもいない。

    第二次世界大戦の開戦。
    宣戦布告の手交が遅れ、結果的に卑怯な奇襲になってしまった真珠湾攻撃。
    しかし、当時の駐米大使館員の職務怠慢を責める者はひとりもおらず、戦後も誰ひとり責任を取ってはいない。
    上層部が考え出した「特攻」作戦。
    歴史上に残る非人間的で狂った作戦だったと思う。
    国民の命をないがしろにする国家に未来はない。
    国とはいったい何だろうか。「一億総玉砕」という言葉が終戦間際には使われていたらしい。
    軍部は何を考え、日本にどんな未来を見ていたのだろう。

    平和な時代に育ち、戦争のことを何も知らないままに机上の理論だけで特攻の人たちを「テロリスト」だと言いきるジャーナリスト・高山。
    せめて、少しはその目と耳で取材をしっかりとしてから言ってほしいと思う。
    当時の新聞は大々的に紙面を使い、戦争賛美への素地作りに大きな役割を果たした。
    国民を煽り、ある方向へと誘導していったのは他ならぬ新聞社ではなかったのか。
    当時手紙類には上官の検閲があり、遺書さえも例外ではなかった。
    戦争や軍部に批判的なもの、軍人にあるまじき弱々しい内容は許されなかった。
    だからこそ、遺される者への思いを行間に込めて書いたのだ。
    「喜んで死ぬと書いてあるからといって、本当に喜んで死んだと思っているのか」
    高山の言葉に激怒する武田はその心は高山には届かない。
    「喜んで死を受け入れる気のない者が、わざわざそう書く必要はないでしょう」と切って捨てる。
    思いやりのない人というよりも、想像力・共感力がないのだろう。
    ほんの少しでも当時の状況をきちんと調べる気があったら、死に臨んだ人たちがどんな思いで飛び立っていったか想像してみればわかることだろうに。

    組織の末端にまでくだらないヒエラルキーがあったと言われている日本軍。
    その中で、いったい誰が「特攻などに行きたくない」と言えただろうか。
    そもそも「特攻」のようなものが戦略として認めた時点で、軍の最高幹部たちは指揮官としての資格を失くしたのだと思う。
    想像しようにもあまりにもすごすぎて想像出来ない。
    もしもいま、見上げる空に敵機がいて攻撃を受けたとしたら。
    そしてそれが、毎日のように続いているとしたら。
    遠い昔の話ではない。
    その時代を生き抜いてきた人たちが、実際にいまも生きているのだから。
    真っ向から戦争反対を唱えている物語ではない。
    けれど、戦争の残酷さや悲惨さは十分に伝わってくる。
    そこから何を汲み取り何を感じるのか。
    それは読者にまかされている。
    撃墜された特攻機から回収された宮部の遺体。
    その胸にあった写真を見て、故郷に残してきた家族に思いをはせるアメリカの兵士たち。
    とても印象に残った場面だった。
    立場の違いはあっても、どちらの兵士にも家族があり愛する人がいて、無事に帰ってくることを信じて待っている。
    本当に戦争は残酷だ。

  • 私は戦争が嫌いだ。平和を望む多くの人と同様に。

    しかし…私は戦争の何を知っていると言うのか。

    この本を読むことはずっと避けてきた。零戦や真珠湾攻撃の内幕など、「第二次世界大戦文庫」などというふざけた本を出していた出版社に一時的に籍を置いていた私は、戦後10年以上経過してから生まれた「戦争を知らない」世代たちの中でも、知識として多くを持っていた。憎むべき戦争について書かれた本など、手に取るつもりもなかった。

    それが…なぜ、この本を読む気になったのか。誰かの書いたレビューに引っかかるものがあったような気もするが、判然としない。

    読んでよかった。いや、読むべきだった。読まねばならなかった。戦争のなんたるかも知らぬままに憎んでいた私のみならず、何も知らないまま、真実を知ろうとしないままに平和への希求を声高に叫ぶ人たちは、この本を読まなければならない。

    多くを言葉にしても伝わらないと思う。しかし、伝えたい思いが…私の中に初めて、正しい形で芽生えた。

    人として生きることの難しさ、大切さ、正しくあろうとすることの気高さ、人を守るということの無償の喜びと哀しみ。

    期せずして出会ったこの本から、私はこれまでの未熟な自分に足りなかったものをすべて学ばせてもらったと確信している。

    おそらくこれは、私が知る限りにおいて、最も正確に太平洋戦争や特攻を世に問うルポルタージュだ。虚飾のかけらもない、真実の物語だと思う。

    これを読み、戦争の何が間違っているのか、何を憎むべきなのかを正しく知ってから、あらためて戦争を心から否定してほしい。

    宮部少尉の気高い魂、あふれる人間愛。涙が止まらなかった。

    ジブリの「風立ちぬ」に心動かされた人へ。私もその一人だったからこそ。零戦は生まれてはならなかった。あれは高性能の殺人兵器でしかない。高性能であったがゆえに、大日本帝国海軍は多くの若者を乗せたのだ。高性能の道具は美しい。その容姿も動きも。だからこそ人の心を狂わせる。宮崎駿監督もそれを知る人なのだと思うのだ。

    このレビューで、読んでみようと思われた方へのアドバイスがひとつ。

    前半は面白くもないし共感もできないかもしれない。綿密な取材を基にするがゆえに説明的で、しかも特殊で専門的な知識が詰め込まれていて、戦争嫌いなら読む気も失せるだろう。

    ただひたすら、宮部少尉の人柄とその人生を見つめてほしい。大切な答はすべて、宮部さんの生きた軌跡に見出せる。

    私はあらためて、戦争を憎む。ただ、今は戦争の何を憎むべきかを知っている。

    秀作でした。

    • うめさん
      こんにちは。いきなりですがgreen flashさんから見てこれは脚色がない真実だと思いますか?勉強不足なので僕にはよく分かりません。教えて...
      こんにちは。いきなりですがgreen flashさんから見てこれは脚色がない真実だと思いますか?勉強不足なので僕にはよく分かりません。教えて下さい。高校生の時に沖縄で戦争体験者から話を聞きましたが、感動なんて出来なかった。本当に怖かったです。その時戦争を舐めてた本気で思いました。
      2013/12/27
    • greenflashさん
      うめさん コメントありがとうございます。

      小説ですからもちろん創作ですし、脚色のないはずはありません。

      でも、戦時中の特攻隊...
      うめさん コメントありがとうございます。

      小説ですからもちろん創作ですし、脚色のないはずはありません。

      でも、戦時中の特攻隊員、特攻要員、戦闘機乗りたちの心の中にあったものや、史実として書かれていること、大日本帝国軍の実態は本当のことだと思います。

      誰も望んで死のうなんて思わない。
      階級社会における命令の絶対的拘束力。

      これが特攻の真実のひとつの側面であることだけは、確かだと思います。

      私たちは、肯定すべきことまでを全否定したり、否定しなくてはならないことをやり過ごしたりしないようにしなくてはならないのだと切に感じました。

      アメリカに好意的に描かれていたように見えませんでしたか? 百田さんはそうなのかもしれませんが、あの中に描かれたアメリカ…兵の命を大切にするアメリカも、また真実でしょう。

      肯定すべきを肯定できる。否定すべきを否定できる。これが平和を築くために必要な最低条件だと、私は信じています。

      2013/12/27
    • うめさん
      返信ありがとうございます。
      勉強になりました。
      返信ありがとうございます。
      勉強になりました。
      2013/12/27
  • 「娘に会うまでは死ねない,妻との約束を守るために」.
    そう言い続けた男は,なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか.

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    序盤からぐいぐい吸い込まれ,久々に大号泣.
    劇的なストーリー展開でも癖のある文章でもないのに,何故か引き込まれてしまう不思議な構成と文章.次が気になって仕方ないけれど,読み終えたくないジレンマ.こんな小説に出会ったのは久々だ.
    「娘に会うまでは死ねない」「必ず生きろ」と言い続けた宮部は何故零戦に乗ったのか.
    明示的には書かれていないけれど,何となく分かる気がする不思議.分かった気になってるだけか.それでも良い.私の読書満足度が満たされたことに変わりはない.

    ■文章構成
    意図した/しないに関わらず,宮部と出会った人は何かしらの影響を受けているのが印象的.
    そして,宮部の死後,関係者が様々な形で娘を救うことになる展開に,「参りました」と作者に感服.

    ■零戦乗りのかっこよさ
    零戦乗りのパイロットが格好良すぎる.
    零戦乗りとして,そして,零戦そのものに対するプライドにぐっと来た.
    終盤で,「零戦はもう無敵じゃないんだ・・・」と悟るとこで思わず涙.

    ■何が何でも生きる
    個人的教義として,「人は何が何でも生きなければならない」と思っているので,宮部の姿勢は全面的に共感した.
    「何が何でも生きろ」と部下に伝え,自分自身が何より生きることを第一に考えた宮部.
    やっぱりそうだよ.人は生きなきゃいけないんだよね.
    「お国のために命を捧げる」そういう小説も嫌いじゃないけど,
    もっと.人の欲や本能に忠実な方が好き.

    うーん.何だか上手くレビューが書けないわ.
    でも本当,とても素敵な小説.

  • 百田尚樹の文章は簡潔すぎるし、筋もシンプルで、伏線もひねりもトリックも、これといったものは何もない。
    でも、これだけ見せつけられたら、もう何も言えない。

    特攻のパイロットは天皇陛下万歳の異常な殉教精神をもったテロリストだったのか?
    そんなことはない、と思う。
    戦時中という異常な状況の中でたまたま狂気に陥っていたのか?
    そんなこともないと思う。

    ただ、普通の人間が、必死で生きていると、死ぬことでしか全うできない人生がたくさんあったのだと思う。
    結局、圧倒的な戦争という災禍に比すれば、戦後の思想なんて左翼も右翼もハナッタレの甘えた寝言にしか思えなくなる。
    戦争反対も軍隊礼賛も、のうのうと言ってられたもんではない。
    人間として生きるということはこれほどの力と犠牲が必要になるのだ。

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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