永遠の0 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764131

感想・レビュー・書評

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  • 凄い作品だった。
    間違いなく自分が今まで読んだ作品の中で最上級の作品であるだろうと感じている。
    はじめて喉元まで込み上げてくるような苦しさも味わった。

    戦時中故の深く感じさせられる「生と死」、そして「愛」
    80年位前の日本はこんなにも「生と死」が生活に隣接していて、だからこそ「愛」の形も純粋で深く重い。

    自分自身を見つめ直す機会もくれた。
    今日という日の意味や明日という日の大切さ。周りにいる人達の大事さ。
    気づかないというより気づこうとしない事の多さが嫌という程感じさせられる。
    もう少しだけ噛み締めながら生活していかねばと感じた。

    「平和」と「戦争」
    賛否分かれるテーマではあるが、平和の中にも気持ち悪いくすぶる違和感のような気持ちがあるのも事実。戦争の中にもこの作品のように深い純粋な心があるのも事実。どちらも甲乙つけるものではないのだろうと考えた。

    こうして読後、感想を書いてはみているもののなんだか上手く書けない。
    自分の言葉や感情に深い純粋さが足りない事に気づいているからだと思う。


  • 映画化された年に読み、何年振りかの再読です。もうこれは泣きます。大号泣です。内容がわかっていても泣かずにはいられません。

    最近修学旅行ぶりに、広島の平和記念館、原爆ドームに足を運びました。そしてふと読み返したくなったのです。フィクション小説なのに、永遠の0の宮部久蔵という人はね…と、史実みたいに語りたくなってしまいます。彼たちに思いを馳せ、想像しますが、決して現代を生きる私たちには到達できない境地でしょう。そして「それが普通」の世に産まれたら、世が言う普通を受入れ、そこにそれぞれの意味を見い出すことができるのが人なのだと思うと、人って本当に凄いとも思いました。

    日本軍が自国の兵隊を粗末に扱い、人の命よりも航空機や武器を温存した話。人が操縦するロケット爆弾の桜花。アメリカの博物館に展示されていた桜花の名前がバカボム、すなわちバカ爆弾であったという…。人間魚雷の回天。脱出装置はなく、一度出撃すれば攻撃の成否にかかわらず乗員の命はなかったという。死ぬための訓練…。こんなモノを考えた人は同じ人であろうか?自分と身内のこと以外は同じ人とすら思っていないのでしょうか。兵隊の命を大事に扱ったアメリカ軍との対比がなんとも言えない気持ちになります。ですが、発案した方たちがまずは乗って試したと言う史実があれば、前言撤回しなければならない感想です。

    またメディアの欺瞞や、責任を取らないエリート層が作中でも描かれている。メディアと官僚の組織体制の良くない部分は現在も昔と変わってないのかな?と思わされます。大衆を動かしたい方に動かすにはどうしたって仕方のないことなのかもしれません。第九章カミカゼアタックの武田貴則と新聞記者のやり取りは何度も読み返したい。

    永遠の0の映画公開が2013年なので、この小説を初めて読んだのがもう11年も前になります。当時今よりも遥かに戦争や歴史に対して無知だった私が映画を観て、原作を読み、もっと知らなければと思ったことを思い出しました。エンタメ小説といえど学びの一冊です。宮部久蔵、景浦介山、大石賢一郎、みんなかっこよすぎました。

    • hibuさん
      あささん、おはようございます!
      この作品映画にもなって内容もわかってるはずなのに泣けますよね!
      ウチの息子の再読率NO.1の作品です^_^
      あささん、おはようございます!
      この作品映画にもなって内容もわかってるはずなのに泣けますよね!
      ウチの息子の再読率NO.1の作品です^_^
      2024/03/16
    • あささん
      hibuさん、こんばんは!
      ですよね( ; ; )私も何年後かにまた読みたいです。息子さんと本のお話を共有できるの素敵ですね。憧れます。
      hibuさん、こんばんは!
      ですよね( ; ; )私も何年後かにまた読みたいです。息子さんと本のお話を共有できるの素敵ですね。憧れます。
      2024/03/28
  • 特攻とは、非人道的な恐ろしい作戦。

    特攻要員は本当に死を恐れなかったのか—。

    改めて戦争について考えさせられる作品。




    私は『永遠の0』を実話だと思って読んでいました。

    しかし違ったようで、特攻作戦に関わった実在の人物のエピソードをオマージュしている小説です。

    大筋はフィクションですが、登場人物は実在するので、特攻隊を中心として見た太平洋戦争の様子を知ることができます。
    (小説であるという事を忘れてはいけない。真実を知りたければ記録を読み学ぶべし。)

    太平洋戦争を生き残った零戦パイロット、坂井三郎中尉の実戦の記録『大空のサムライ』が元になっているようです。


    死んだ実の祖父の生涯を調べる事になった主人公健太郎。

    戦友会で祖父の事を知っている元軍人達から祖父の素顔が語られる。

    「臆病者」と言われた祖父が生に執着する理由。

    それは、愛する妻と娘のためだった—。

    ラストは意外な展開でした。


    私は実在の話だと思っていたので、ラストを読んで「あれ?」と違和感を感じました。

    あまりにも出来すぎな展開…。

    フィクションでしたら、納得です。

    泣きました…。
    ラストで…と言うよりは、海軍の特攻隊に対する仕打ちの酷さに涙が出ます。

    軍人達の非人道的な扱いや悲惨さは描かれているものを上回る見方をするとしても、私たちの想像以上に辛い経験であっただろうと思いました。

    戦後民主主義国家となり平和な時代を生きる主人公(健太郎)は26歳。
    特攻で亡くなった祖父(宮部久蔵)の生涯は26年。

    生きて帰りたいと願う宮部の軍人として弱腰な態度に、部下達の評価は冷たい。

    元海軍飛行兵曹長、井崎源次郎が病院で語った話。

    ーーーーー

    「たとえ敵機を撃ち漏らしても、生き残ることが出来れば、また敵機を撃墜する機会はある。しかし—」
    小隊長の目はもう笑っていませんでした。
    「一度でも墜とされれば、それでもうおしまいだ」
    「はい」
    小隊長は最後に命令口調で言いました。
    「だから、とにかく生き延びることを第一に考えろ」
    この時の宮部小隊長の言葉は心の底にずっしりと響きました。
    (本文より)

    ーーーーー

    生き延びなければ無駄死にである。

    祖父の生き方、考え方を知り主人公は成長します。

    日本軍の戦術である特攻は、零戦で突撃するだけではありませんでした。

    人間が操縦するロケット爆弾の『桜花』
    人間魚雷の『回天』
    (回天に関しては最近知りました。この小説ではあまり触れられていませんが、名称は出てきます。)

    よくもこんなに非道な作戦を考えだしたなと思うほどです。
    100%生きて帰れません。
    これらを操縦する為、若い兵士達が一年かけて特訓するのです。

    死ぬための訓練なんて、どんな気持ちか想像もできません。
    当時はそれが当たり前という教育が施されていました。

    特攻も志願という形をとっていましたが、希望しない申請をした兵士は上官に呼ばれ説得されます。
    最終的には半ば強制的に志願兵という事になるのです。

    桜花に関しての作中でのエピソードは心を抉られます。

    (アメリカのスミソニアン博物館に展示されていた『桜花』を見た岡部。
    そこに書かれていた名前は『バカボム』だった。)

    ーーーーー

    「BAKA-BOMB、すなわちバカ爆弾です。私は息子夫婦が隣にいるにもかかわらず、声を上げて泣きました。悔しくて、情けなくて—いくら泣いても涙が止まりませんでした。しかし本当のところは、『BAKA』そのものずばりだったのです。すべての特攻作戦そのものが、狂った軍隊が考えた史上最大の『バカ作戦』だったのです。しかしそれだけで泣いたのではありません。そんなばかな作戦で死んでいった高橋たちが、ただただ、哀れで、哀れで、涙が止まらなかったのです」
    (本文より)

    ーーーーー

    帝国主義思想の当時、反対の声を上げることなんて軍部に反する行為。
    とてもできません。

    酷すぎて泣けてきます。


    私達が中高で教わった『歴史』は、近代になるにつれ大雑把な印象です。

    大昔の歴代将軍名や年号の暗記等は何かの役に立つのでしょうか?
    教員や作家になればもちろん暗記していて当たり前なのかもしれません。
    ですが大抵は役に立ちません。

    時代の流れを知ることは大切ですが、現代に最も近い時代に重点を置くべきだと思います。
    道徳や総合の時間に、学ぶべき事はたくさんあったのでは?と今となっては疑問です。


    この小説は、フィクションという形であっても、特攻隊目線での太平洋戦争の悲惨さが流れでわかる1冊となっています。
    子供達が手に取って読んでくれるなら、エンタメという形であれど、必要なのではないかと思いました。



  • どんなに多くの人から支持されようとも、ベストセラー作品にはなかなか手が出せないたちである。そんなあまのじゃくが一転、何故本書を選んだかというと…テレビ番組で某ミュージシャンがこの作品を絶賛していたことがきっかけだった。何ともたどたどしくグダグダな紹介だったんだが、その熱さが妙に印象に残り、翌日には購入していた。
    生きて帰ると絶えず言い続けた天才パイロットは終戦の年、特攻で命を散らした。実はその人が本当の祖父・宮部久蔵だと知らされた、終戦から60年の夏。司法試験浪人の健太郎とフリーライターの慶子の姉弟は、宮部の足跡を辿るべく、彼を知る人物を訪ねて歩く。
    「今」を生きる若者が「過去」の身内の生涯を探る…正直、ありがちな設定とは思った。だが読み進めていくうち、「今」の場面位はベタでもよいのではと感じるようになった。宮部の旧知の人物達から語られる戦時下の話が大きく比重を占め、その重さ、今更知る当時の過酷さには愕然とする。これまでいくつもの戦争の本を読んできたが、海軍を詳細に描いた作品を読むのはほぼ初めてと言ってよい。真珠湾、ラバウル、ガダルカナル、レイテ…概要しか知らなかった戦いの現実を知り、壮絶さ、理不尽さに体が震えた。空での戦いのすさまじい緊迫感。零戦がどれほど優れた戦闘機だったかも改めて知った。
    読んでいくと、撃墜王と呼ばれた日本海軍の戦闘機搭乗員・坂井三郎など、実在の人物らとの絡みも見られる。まったく違和感がなく読めて、どこまでがフィクションだかノンフィクションだかわからなくなるほどだった。徐々に明らかになっていく宮部の人物像。臆病者と揶揄された彼の信念。天才的な空戦技術。彼の人間性に、読むほどに惹かれていく。それは、宮部との日々を語る元兵士たちもであった。ただただ、目の前の戦いに必死な彼らを襲う数多の悲劇。その都度涙腺は決壊し、時には怒りでページを繰れなかったりもした。「桜花」という人間爆弾は初めて知ったが、その非人間的発想、命をあまりにも軽視した当時の海軍上層部に対し、はらわたが煮えくり返って…何ともやりきれない思いで、読みながら苦しく、猛烈に悲しかった。
    結末に向けての伏線の張り方は見事だ。胸が張り裂けそうに辛かったクライマックスを経て、ラストへの展開はやはりまた涙涙の連続。戦争の悲惨さを伝えつつも、エンタメ作品としてしっかり仕上げたところに、放送作家時代に培った百田氏の底力を実感した。
    文庫売上数で驚異的な数字を叩き出しているようだが、映画公開に向けてさらに数字を伸ばすことでしょう。売れるのも納得です。今出会えてよかったと心から思う。某ミュージシャンに感謝。
    読み終えてから映画の公式サイトで予告編を見て、そこでもまた号泣。映画公開が本当に楽しみだ。

  •  今年一番感動した本。
     太平洋戦争や特攻隊については人並み以上の知識があり、隊員の遺書を目にしたこともあって、かなり深く知っていたつもりであったが、隊員一人ひとりの心情をここまで心から考えさせられる本に出会ったことはなかった。
     本書はフィクションであるが内容がリアルで、涙なくして読めない。また臆病といわれる主人公が、実は神業を持つエースパイロットで、家族や同僚を思い、周りを助けていくという王道の伏線回収が物語としても楽しめる内容であった。

  • 娯楽作品としても秀逸でしたが、単なる娯楽作品ではなかった。フィクションとノンフィクションの見事な融合により、過去の過ちを知るきっかけとしてはこの上ない教材とも言える作品でした。

    歴史から学ばなければならない。
    帝国軍エリート幹部達の夜郎自大。それはなにも太平洋戦争当時に限られたことではなく、現代においても通じるものがある。などなど、そんなふうに色々と考えさせられる作品でした。

  • 10年ぶりの再読。やっぱり文章そのものに惹かれるものがあるので、読んでて心が満足します。

  • 「生きて帰る」という妻との約束を果たすため、生きることに執着し続けた宮部久蔵はなぜ特攻に志願したのか、読み進めていくうちに明らかになる真実を知ったとき、とても心が動かされた。
    教科書だけではわからないことが沢山あった。

  • サイン本があるらしく、それが欲しくて本屋さんに電話を掛けまくり…。
    しかし、どこも売り切れで結局は古本で購入。

    新聞や、ネットにも「120万部突破!」と書いてあって、ミーハーになるのは抵抗があったが…。


    読み終えた後の複雑な気持ち。

    暫く、読書に手が回らなかった。

    ああ、この本に会えてよかった。


    お正月、祖父母に会ったときに、戦争の話を改めて、聞いてみようと思う。



    過去に犯した過ちを、ちゃんと見据えなければならない。

    • honno-遊民さん
      百田尚樹なら、時代小説だけど「影法師」も感動ものの傑作ですよ。お勧めものベスト10に入ります。
      百田尚樹なら、時代小説だけど「影法師」も感動ものの傑作ですよ。お勧めものベスト10に入ります。
      2013/01/02
    • しをん。さん
      hongoh-遊民さん
      あけましておめでとうございます♪
      これからも、よろしくおねがいします(●^o^●)

      そうなのですか!確かに、「影法...
      hongoh-遊民さん
      あけましておめでとうございます♪
      これからも、よろしくおねがいします(●^o^●)

      そうなのですか!確かに、「影法師」もよく見かけますヽ(^o^)丿
      早速、探して読んでみようと思います
      2013/01/02
    • honno-遊民さん
      こちらこそ、よろしくお願いします。今年もまた、感動を呼ぶ傑作にめぐり合いたいですね。まず、宮部みゆきの大作「ソロモンの偽証」に取り組みたいと...
      こちらこそ、よろしくお願いします。今年もまた、感動を呼ぶ傑作にめぐり合いたいですね。まず、宮部みゆきの大作「ソロモンの偽証」に取り組みたいと思います。
      2013/01/04

  •  戦前から軍へ入隊し、海軍航空隊のパイロット・指導官として、戦地で過ごしてきた宮部久蔵。彼は「生きて妻子の元へ帰りたい。死にたくない」という信念を持ち続けていた。しかし、終戦間際に特攻隊への道を選び、命を落とす。飛行技術に優れ、優しい人物であった。生きることへの執着心がこれ程まで強かった男が何故特攻隊の道へ。彼の生涯をたどる物語が始まる。

     お国の為に命を捧げることが当たり前とされていた戦時中、「死にたくない」という心持は当然のごとく反感をかった。しかし、特攻隊指導官の彼を慕っていた予備学生が多く存在した。「皆さんは日本に必要な人達です。この戦争が終われば、必ず必要になる人達です」
    宮部の発言に心が震えた。

     特攻隊は、勇敢極まりなく、悲しすぎる存在だと新たに実感できた。終戦まで残り五か月弱。そこから始まった戦略である。戦争に携わってきた人々はすでに分かっていた。アメリカには敵わないこと。戦闘機で敵の戦艦に体当たりする彼らは、ほとんどが学生であった。さらに、その戦闘機は体当たりの前に落下するものばかりだった。特攻隊=テロリストという考え方まで生まれ、やるせない気持ちで一杯になった。

     第二次世界大戦において、日本は敗戦する。とかなり前から分かっていたにもかかわらず、長期に及んだ。早くに手を引けば、沢山の命が助かった。きっと広島・長崎の原爆投下は行われなかった。そして、特攻隊という存在もなかったであろう。戦争の犠牲者は他国からだけではない。自国から犠牲になった命と心があったことを決して忘れてはいけないと思う。引くに引けない。割り切れない。そういった人の醜い感情から多大な犠牲が生まれる。

     かなり前から読みたいと思っていた一冊。重たい時代背景ではあるが、心温まるエピソードが散りばめられている。衝撃と感動で溢れかえった物語であった。一生忘れることはないだろう。

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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