赤い指 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062764445

感想・レビュー・書評

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  • 加賀恭一郎シリーズ7作目は、家族の問題を扱った作品。嫁・姑の確執、母親の溺愛と父親の無関心が生んだ精神未熟なモンスター、そして父・息子の反発。

    中学生の息子(直巳)が少女を絞殺。息子を溺愛する母親(八重子)に懇願され、隠蔽工作に奔走する父親(昭夫)。人倫にもとるシナリオ。昭夫は、果たして人の道を踏み外してしまうのか。全てお見通しの加賀恭一郎はどう裁く?

    所轄の刑事加賀と組んだ捜査一課新米の松宮(加賀の従兄弟)は、父親に対する加賀の態度に反感を覚えつつも、加賀の捜査手腕に舌を巻く。芝居じみたちょっと出来すぎな展開で、やや興ざめ。

  • まあ、ミステリーには違いないんだけど、テーマとしては重いなぁ。
    八重子が根本的な原因なんだけど、実際こういう人珍しくないような気がする。育てられ方の問題だろうか。何か間違ってる。もちろん旦那も、それを止められない、諌められないのが情けない。

  • 加賀恭一郎シリーズ7作目
    新作の「あなたが誰かを殺した」を早く読みたいという気持ちを抑えて、順番に7作目を読みました。

    今作は主人公の思いの変化が詳細に描かれていて、心が揺さぶられるくらいに感情移入しました。親と子の絆を感じられる物語でした。

    また、シリーズを重ねて、加賀恭一郎の思考や慧眼に厚みのようなものを感じて、より一層魅力的な人物になっているなと思いました。次作の新参者が楽しみです。

  • 東野圭吾による加賀恭一郎シリーズ第7作

    住宅街にある公園のトイレで女児の死体が発見された。
    捜査一課の新米刑事松宮と所轄の加賀恭一郎、従兄同士の二人がペアを組んで捜査にあたる。

    読者には、犯人も犯行の状況も冒頭で明かされる。
    加賀たちは、その真相をどう暴いていくのか…

    加賀の勘と推理が冴え渡る。
    松宮のみならず上司たちまでもが舌を巻く。
    聞き込み捜査の時の細やかな気遣いもしかり。
    今回は、迷うことなく一直線に解決に向かっていった印象だ。

    そして、最後は加賀と父親との関係に涙した。
    真面目で頑ななところがそっくりの親子なのだ。

    さまざまな家族の形がある。
    親はどんな形であれ自分の子供のことを守ってやりたいと思うものだが、それは時として歪んだ形となってしまうこともある。
    歪んでしまった形を元に戻すのもまた家族の役割。
    家族の在り方について考えさせられる作品だった。

  • 【感想】
    何度か読んだ本で、本当に面白いのだけど、読後のこのモヤっとした陰鬱な感じは変わらない・・・
    どの家庭でも起こりうる、そして起きれば防ぎようのない、決して「対岸の火事」ではないトラブル。
    「仕事三昧で家庭を顧みる事が出来ない」という点、「親の介護」という点、「実子が犯す犯罪」という点。
    非常にデリケートで、これって事故のように回避することが中々難しいのではないかと思う。
    自分に子どもができて家庭を持った際、果たしてうまく生きる事ができるのかなぁ?

    本作品は、加賀恭一郎シリーズの中でも、トップクラスにメッセージ性のある作品だと思う。
    また、加賀親子のギクシャクとした中にも、お互いを知り思いやる気持ちが垣間見えたあたりは、本当に面白かった。


    【あらすじ】
    どこの家でも起こりうること。
    だけどそれは我が家じゃないと思っていた。
    平凡な家庭で起こった、2日間の悲劇

    人は事件の裏側にある別のものを隠し、苦しんでいる。
    加賀恭一郎は、その苦しみから救済し、人の心を解きほぐす。
    「刑事の仕事は、真相を解明すればいいというものではない。いつ、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ」

    少女の遺体が住宅街で発見された。
    捜査上に浮かんだ平凡な家族。
    一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。
    「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。
    刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は? 
    家族のあり方を問う直木賞受賞後第1作。


    【引用】
    p80
    怖い理由はそれだけではない。
    もし警察に通報するのであれば、これほどの恐怖は感じないはずだった。
    正当な理由のもとでなら、死体を段ボール箱に入れることも、さほど苦痛ではないと思えた。
    自分のやろうとしていることのあまりの非道徳さに怯えているのだ、と昭夫は気づいた。


    p129
    「事件に慣れることなんてない。殺人を担当している間は特にそうだ。
    遺族が泣く姿を見るのに慣れるようじゃ、人間として問題がある。
    俺が訊いたのは、刑事という立場に慣れたかという意味だ。」

  • っすぅーっと入り込めて最初から最後まで面白かった。
    今の所シリーズの中で1番好き。

  • この作品で東野圭吾にはまりました。
    単なるサスペンスではなく、人の切ない心の機微が伝わってくる作品でした。

  • 【加賀恭一郎シリーズ7】再読。

    住宅地で発見された少女の遺体…犯行家族の闇、人生の終盤に振り返る想いを折り込んだミステリー。

    犯行現場の前原一家と、加賀親子の対比や、加賀の従兄弟:松宮刑事も登場し、幅をひろげている。

    2009年に単行本で読んでから、14年経過…大筋は覚えていたのに、今回は鼻の奥がツンとして涙が滲んだ。シリーズを順番に読んだ甲斐があった。

    加賀は30代半ば、洞察力で頭角を表している。

  • 衝撃だった。父母も絶賛していた。
    家族のお話、である。

    東野圭吾さんはどうしてこうも「どうしようもなく悲しい人間の性」を映し出すのが上手いんだろう。
    これは実写化でも観たが、本でもテレビでもとにかく良かった。良かった、というのは…悲しいのと、悲しいのと、本当の愛の痛さと……

    東野圭吾さんシリーズで1作選べと言われたら、
    私はこれを選ぶかもしれない。

  • シリーズ物だったから買った一冊。

    事件は読者は犯人がわかっている状態で、どう警察が事件を解決するかの話しだった。

    こうゆう構成だと、事件解決のドキドキが薄れる感じがするが、自分は好きな構成だった。

    罪を犯した我儘な息子、隠そうとする母親、言い返せず流される父親
    父親がしっかりしていれば、よけいな罪を犯さず済んだのに

    嘘をついたことでいろんな人を傷つけた事件だった。

    主人公とその父親の関係には感動した。

    表面上ではぎくしゃくしたように見える親子関係だが、実は父親と繋がっていた。
    涙がでそうになる最後だった。

    主人公の洞察力はすごい。
    このシリーズだんだん面白くなってきたと感じた小説でした。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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