西南シルクロードは密林に消える (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765015

作品紹介・あらすじ

悲惨で絶体絶命で、しかも滑稽な旅がある!

中国四川省の成都を出発し、ビルマ北部を通って、最後にはインドへ――幻の西南シルクロードに挑む著者の前には、圧倒的なジャングルと反政府少数民族ゲリラの支配する世界屈指の秘境がたちふさがっていた。混迷と困難を極める旅なのに、これほど笑えるのはなぜか。究極のエンタメ・ノンフィクションついに登場。

高野秀行の世界はテレビカメラはついていけない。――関野吉晴(解説より)

第1章 中国西南部の「天国と地獄」
 中国……四川省~貴州省~雲南省
第2章 ジャングルのゲリラ率軍記
 ビルマ……カチン州1
第3章 密林の迷走
 ビルマ……カチン州2
第4章 秘境・ナガ山地の奇跡
 ビルマ……カチン州~ザガイン管区
第5章 異常城市
 インド……ナガランド州~ベンガル州

感想・レビュー・書評

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  • 私は他人に比べて好奇心旺盛なほうである。野次馬根性もかなりある。
    それでも、この作者高野秀行には到底敵わないな、と思う。
    思い立ったら即行動。
    後先考えずに飛行機に飛び乗る。
    さすが早稲田の探検部などに入るような人間は只者ではない。

    その辺境作家、高野秀行のシルクロード旅行記。
    シルクロードといっても一般的なシルクロードではない。
    中国四川省の成都を出発し、ビルマ北部を通り、最後にはインドに着くシルクロードである。
    そのルートを制覇したものがこれまでに誰もいないことを知り、高野は挑戦しようと、親友のカメラマン森清と旅に出る。
    正規の外交ルートではないため、熱帯雨林の困難な道のりを幾多の軍事兵士や住民などのサポートを受けながら、旅は続く。
    半ば、というよりも現実的には違法行為の旅である。
    その旅のさなかで出会う様々なアクシデント。
    これがまた、凄まじく面白い。
    幾多の冒険と困難の数々。
    汗まみれ、泥まみれになり、体力の限りを尽くしながらの道のり。
    ゲリラ部隊同士の確執、離れ離れになっていた親子の再会など、サスペンス、スペクタクル感満載での作品になっている。

    高野秀行の旅行記は本当に面白い。
    「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、誰も書かない本を書く」というモットーどおりの出来栄えで、ハナマルを上げたいぐらいの面白い本だ。

  • 祝「謎の独立国家ソマリランド」講談社ノンフィクション賞受賞!

    長年の高野ファンとして、これは本当に嬉しい。まだ持ってなかった本を買うことで、ささやかながらお祝いの気持ちを表すことにした。これは単行本を友人にあげちゃったので、そのうち買おうと思っていた一冊。

    あらためて、本当に面白いなあと思う。なんでこれがほとんど評判にならなかったのか不思議だ。基本的に「ソマリランド」と同じ、よくわからないものを自分の目で確かめたいという、そのごく個人的な思いから高野さんの旅は始まる。実際の旅は、まあとんでもない事の連続で、反政府ゲリラやら、ゲリラよりおそろしい警察やら軍やら入り乱れ、雨のジャングルを徒歩で行くという凄まじいことになる。(このときのヒルの襲来がすごーくコワイ)

    極めつけは、奇跡的に刑務所行きを免れたインド不法入国のくだり。高野さんはいまだにインドに入国できないが、身ぐるみはがされた最初のインド体験といい、カルカッタは因縁の地だよね。

    ビルマからインドへとあっけなく国境を越えながら、その文化的な違いの大きさを高野さんは肌で実感している。今回そこがとても印象に残った。

    どなたかが「謎の独立国家~」を評して、「特に高い志もなく」と批判的に書かれていたが、いやまさにそここそが高野ノンフィクションの真髄だろう。人を啓蒙しようとか、ましてや名声やカネを手にしようとか、そういう動機では全くなく、ただただ自分の好奇心、タンケン心に導かれてどこまでも行くところが高野さんの最大の魅力なんだから。ジャーナリズム臭のないその持ち味をこそ、多くのファンは愛しているのだと思う。どんなシビアな場面でも、高野さんは常に等身大の人間だ。その絶妙なバランス感覚が、この本や「謎の独立国家~」でも遺憾なく発揮されている。

  • 久しぶりにドキドキワククしながらページをめくる手が止まらなくなった!というか、高野秀行氏の作品は基本的に目を通してきたはずだったのだが、この作品はするりと抜け落ちていて、存在自体最近知ったのだ。なんでもっと早く気づかなかったのだろう。もしかしたら、ファンになった当初の頃の私は純粋に冒険とかUMA系の話とかが好きすぎて、政治的な内容だったり、歴史に重きを置いた内容の場合は後回しにする傾向があったから、そのせいで読み飛ばしていたのかもしれない。

    そもそも西南シルクロード、という聞き慣れない単語である。なにソレあの有名なシルクロードの一種?くらいの印象しか受けないが、イントロダクションの高野氏と同行者となる森氏の居酒屋トークを読むと、すぐにそれが全くベツモノのシルクロードであることが分かる。歴史的に謎多きルートであることも。行程全体が危険地帯を通るルートであることもあって、一般的には紹介もされていないし研究もそんなに進んでいないらしい。ふむ。面白そうだ。(って思えるようになったということは、私も大人になったのだろう。)

    シルクロードという単語から連想する景色というと、なんというかこう、悠久の砂漠とからくだに乗った商人たちとか、大河や石畳の町を抜けてゆったり旅をしていく、みたいなイメージが浮かびがちだと思うのだが、高野氏の西南シルクロードの旅はそんな旅情は1ミリもない。ジャングル、そしてゲリラ、だ。(ゲリラなんて単語、ゲリラ豪雨くらいしか日常で使わないよな…。)しかも、そんな過酷な旅路を「面白く」してしまうのが高野氏の凄いところ。たまたま高野氏が出会った人々が面白いわけではなく、高野氏が「引き出して」いるのだ。自分自身の体調管理すら危うい長い旅のなかで、いろんな危険と遭遇しながらも、その「土地」や「人」や「歴史」への冷静かつ愛情深い目線がうかがえる。それ故、この人が書いた旅行記も、冷静さと同時に慈愛やユーモアに満ちているのだろう。また、何よりの魅力は、その過酷な状況を「楽しみながら前に突破していく」スタイル。旅だけじゃなくて、人生もこうありたいと思わせてくれるし、そうやって生きていればきっと、どこかで合点がいくというか、納得できるというか、なんとかなる、ようになっているような気がする。(まぁこの旅行の後、高野氏はインドから入国を拒否されるという痛いお土産ももらってきてしまったわけだが。)

  • めちゃくちゃ面白いだけでなく、ミャンマーやインドの少数民族問題について勉強にもなり、素晴らしい本です。

  • 中国からビルマに入ってジャングルを踏破してインドに入ってカルカッタまで行く話。(密入国あり)

    ビルマとかミャンマーの本を読もうとするとこの本が必ずと言っていいほど参考文献に入っているので教養として読んでみた。

    面白い、というか無茶をしまくってるのに淡々と書いているので、冷静に読み直すとそのすごさがわかる。
    褒め言葉としての「頭おかしい」が使える不思議な書物。
    あとそれ以上にこの地域に関して妙に詳しくなれる素敵な本。

    聖女を装わなくてはならないスーチーさんと言ったあたりが慧眼だったと思う。

  • 中国からタイ・ミャンマーの「ワ」州を抜け、インドへ。中国の出国手続きもなく、タイ・ミャンマーへの入国も税関を通ってないので、インドへは不法入国状態。「ワ」のあたりを徒歩で制覇していく様子も、インドから奇跡的に日本に帰国するのも、読んでいてワクワクする冒険譚です。アヘン王国と合わせて読むともっと楽しめると思います。

  • 最初はあまり面白くないなと思ったが後半一気に面白くなった。現地の人との交流やドンデン返しなど面白い面白い。
    ミャンマーは色々変な国だな。数年前に行けてよかった。今はもうクーデター&コロナで行けなさそうだし

  • 最近、高野さんの作品にハマっている。かなり遅いかもしれないが、「恋するソマリア」を初めて読んでから、その圧倒的な体験と描写のうまさ(臨場感というか自分も探検をしている気にさせてくれ、時にはハラハラし、時にはクスッと笑ってしまう)に惹かれて、同著者の作品(アヘン王国潜入紀、本作)を次々と読んでいるが、どれもぶったまげる内容ばかりだ。非現実的すぎて、ノンフィクションでありながら、一種の「冒険小説」のような楽しみがある。一生に一度こういう冒険をしてみたいと夢想してしまう。
    実際は過酷な探検の日々だと思うが、それを感じさせない楽しそうな描写がそう思わせてくれるのかもしれない。
    とにかくものすごくおすすめである!

  • 2020/08/28

    ドキドキハラハラという、今時使わないけどまさにそれでドキドキハラハラしつつも、ぷぷと笑ってしまう場面も多い。ここ半年ぐらい高野秀行さんの本を読み進めていて、なぜにインドに入国できないってやつをようやく読むことができた(笑)すみません、いつも図書館で借りたり、ブッ●オフで購入してました。これからも活躍してほしいので新刊の納豆のやつは購入しようと思ってます、いや、まじで。納豆、食べれないのですけどね。

  • とてもとても面白かった。ユーモアと暖かさのある文章で、もの凄く危険な旅がそれだけじゃない、人々との交流や現地の人々のくらし、文化をとてもわかりやすく、でも時に鋭い考察を交えて、決して押し付けがましくなく、伝わってきた。ホモサピエンス全史の次に読んだという偶然も、より理解が深まってあっという間に読めた。なんだろう。初めて読むタイプのノンフィクション。次の高野秀行さんの本も絶対読む。

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著者プロフィール

1966年、東京都八王子市生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」がモットー。アジア、アフリカなどの辺境地をテーマとしたノンフィクションのほか、東京を舞台にしたエッセイや小説も多数発表している。

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