ミステリアスセッティング (講談社文庫)

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著者 : 阿部和重
  • 講談社 (2010年2月13日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765770

ミステリアスセッティング (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 悪いことばかり起こるインチキな人だらけの世界で、愚かで清らかな魂を持ちつづけた女の子の物語。正直、前半は生理的な違和感を禁じえなかったのだけど、まさかその果てにこんなに美しい景色が待っているとは。その化けっぷりに心地よく巻き込まれた。

    どこにいようと、誰といようと、人間は絶対的に独りであることに変わりはないけれど、もしかしたら自分でも気づかないまま独りじゃなかったときもあること。それは、リアルな生活のなかで何かを成し遂げたり、誰かに祝われたりすることでは必ずしもなくて、時間・空間かんけいなくて二次元でもよくて。うまく言えないけど、例えばこの小説を読めたこともそういう瞬間のひとつ。

    金原ひとみさんの解説もすばらしい。以下わすれないように引用:シオリの泣き声は、数十年を経ても風に紛れ、人々を温かい気持ちにさせ続けた。小説とはシオリの泣き声のようなものなのかもしれない。絶望を表し、人に希望を与える。救いのないストーリーが、人を救う。主人公の悲しみが、読者を悲しみから救い出す。そういう意味で『ミステリアスセッティング』は完璧な絶対小説だ。

  • 伊坂さんとの合作を読んで、これを機会にと著者の作品を初めて読了。

    とてもスピード感があり、かつ丁寧な心理描写がなされていた。
    また読後感も爽やかで、素晴らしい読書体験ができた。

    内容に関しては、最初はシオリの痛さに苦笑していたが、徐々に彼女がただの痛い女の子ではないことに気付かされた。そして最後には彼女の優しさや素直さに惹きつけられていた。
    ただ、姉を失ったノゾミがその後強く生きていけただろうかと少し心配になった。

  • 久々の阿部和重の作品だが、相変わらず物語のスピードが素晴らしい。息つく暇もなく、一気に読んでしまった。思い返すと大傑作の「シンセミア」もそうで、一晩であの上下巻を読んでしまったのが懐かしい。

    本作は一人の孤独な少女が巻き起こす奇跡の話であり、スピード感溢れる語り口で、孤独な戦いを挑む彼女の姿に惹きつけられてしまう。ケータイ小説として書かれたという背景は個人的にはあまり感じず、短文を重ねながらの語り口は速度を高めるのに効果的に寄与していると感じた。冒頭とラストが、円環を描くようにリンクする小説技法もこの人らしい。

  • 【本の内容】
    歌を愛し、吟遊詩人を夢見ながらも、唄う能力を欠いた19歳の少女シオリ。

    唄うことを禁じられ、心ない者たちにその純粋さを弄ばれても夢を抱き続けるシオリに、運命はさらなる過酷な試練を突き付ける。

    小型核爆弾だというスーツケースを託され、東京の地下深くにひとり潜ったシオリが起こした奇跡とは。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    主人公の妹が辛辣で、冒頭挫折しそうになったけれど、読み通したら予想と違う読後感だった。

    歌うのが好きなのに音痴なシオリは、吟遊詩人を諦め作詞家を志望する。

    人々から騙され酷い目に遭うのに、最後には彼女が世界を救う。

    心身にずしんと響く作品を書き続けてきた著者の描写に、後ろから支えられているような気持ちになった。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • アベカズによる少女小説。純真無垢で幼気な少女が人々の悪意に晒されながら、ただ一人世界を守るために戦い抜く。悲劇であって悲劇じゃない。だって吟遊詩人になれたんだもんね。深読みなんていらない。アベカズならではのエンタメ。

  • 不運で少し頭の弱い女の子の短い半生を描いた小説。おもしろかった。

  • 初期の論文調から脱皮して、ほどよく読みやすい感じになってきた安部氏。
    ストーリー展開はあいかわらずの跳躍ぶりだけれど、まとまりがあって読みやすいし、面白い。

  • ふつう、だと思った。
    設定なのかな、特に心に響くこともなくなんとなくで読み終わってしまった。
    歌の意味が分かったら違うのかもしれない。
    金原ひとみが帯で「これなくしては生きていけない」と書いてあるからあとがきを見てみたら、文脈としては阿部和重の本全体のことを指すらしい。この本用のあとがきなのだから帯にひいても問題ないのかもしれないけど、あまり好ましくない作為を感じた。
    おじいさんの正体、というのは面白いと思った。
    そう考えると話に無駄がないかも。

  • 阿部和重の作品は核爆弾とドラッグを足して評論家で割ったみたいな小説が多い気がする。文学が被爆した。

  • 再読。

    吟遊詩人を夢見る音痴な少女、シオリは周囲の悪意と善意に翻弄される日々を送る中、謎のポルトガル人マヌエルが唐突に託された小型核爆弾スーツケース(通称スーちゃん)によってさらなる危機に立たされる。

    と、あらすじだけ書いてみても全く意味不明な物語だが、そんな荒唐無稽さ、シュールさと諧謔味たっぷりの阿部和重の筆致が最高です。

  • 「グランド~」はあれでしたが、今作は非常に読み易かったです。
    音痴でありながらも歌い人を目指すシオリ。彼女がとことん不幸に苛まれる。
    荒唐無稽でありながらも現実味のあるストーリーです。最後に何を見出したのか。それは読者次第ではないかと

  • マッチ売りの少女かどうかはわからないけど、物語のつぼをおさえていますよね。

  • 色々な意味でどうしようもなかった。あまりにも、あまりにも。
    頁をめくるごとに日常が非日常へとどんどんスピードを上げて迫っていく。
    作者の悪意すら感じるほど純粋でふわふわした主人公の少女も、
    その彼女に関わる登場人物たちも、物語を語る老人の独白も、
    読み終わった後なんてゆうかもうただただ恐ろしかった。
    ただのエンタメ小説として読むこともできる。しかし探ればキリがない何か。
    阿部和重凄いなぁー、そして怖いなぁーと思ってしまった一冊。

  • 3/2
    阿部和重の作品で頻出の、読んでいて気分の悪くなる人物は健在。
    携帯電話での配信ということで(文の長さはあまり変わらないものの)改行は多くなった印象。
    登場人物に語らせる手法は相変わらず。

    ただ、ちょっときれいにまとめすぎちゃった感はあります。

  • 阿部和重ってこういう小説を書く人だったんですねという意外性がまずひとつ。

    この物語では吟遊詩人をめざすシオリ(※音痴の女子高生)の視点から描かれていて、シオリ自体が信頼しえない語り手であるがゆえにあまりに真実が曖昧模糊としている。
    誰が信じるべき人間なのかも決められないし覚悟もないのに他人に愛されたがり、そのくせ自分の欲望だけは絶対に曲げない態度は個人的に嫌い。
    こういうありかたを純粋とは呼ばないのでは。
    それから後半のスーツケース急すぎ無理矢理すぎ
    きれいにまとめようとしすぎて好きじゃない

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