ミステリアスセッティング (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062765770

感想・レビュー・書評

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  • 悪いことばかり起こるインチキな人だらけの世界で、愚かで清らかな魂を持ちつづけた女の子の物語。正直、前半は生理的な違和感を禁じえなかったのだけど、まさかその果てにこんなに美しい景色が待っているとは。その化けっぷりに心地よく巻き込まれた。

    どこにいようと、誰といようと、人間は絶対的に独りであることに変わりはないけれど、もしかしたら自分でも気づかないまま独りじゃなかったときもあること。それは、リアルな生活のなかで何かを成し遂げたり、誰かに祝われたりすることでは必ずしもなくて、時間・空間かんけいなくて二次元でもよくて。うまく言えないけど、例えばこの小説を読めたこともそういう瞬間のひとつ。

    金原ひとみさんの解説もすばらしい。以下わすれないように引用:シオリの泣き声は、数十年を経ても風に紛れ、人々を温かい気持ちにさせ続けた。小説とはシオリの泣き声のようなものなのかもしれない。絶望を表し、人に希望を与える。救いのないストーリーが、人を救う。主人公の悲しみが、読者を悲しみから救い出す。そういう意味で『ミステリアスセッティング』は完璧な絶対小説だ。

  • 伊坂さんとの合作を読んで、これを機会にと著者の作品を初めて読了。

    とてもスピード感があり、かつ丁寧な心理描写がなされていた。
    また読後感も爽やかで、素晴らしい読書体験ができた。

    内容に関しては、最初はシオリの痛さに苦笑していたが、徐々に彼女がただの痛い女の子ではないことに気付かされた。そして最後には彼女の優しさや素直さに惹きつけられていた。
    ただ、姉を失ったノゾミがその後強く生きていけただろうかと少し心配になった。

  • 再読。

    吟遊詩人を夢見る音痴な少女、シオリは周囲の悪意と善意に翻弄される日々を送る中、謎のポルトガル人マヌエルが唐突に託された小型核爆弾スーツケース(通称スーちゃん)によってさらなる危機に立たされる。

    と、あらすじだけ書いてみても全く意味不明な物語だが、そんな荒唐無稽さ、シュールさと諧謔味たっぷりの阿部和重の筆致が最高です。

著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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