- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062766135
作品紹介・あらすじ
緊急加筆
失敗は現地・現物・現人の「三現」で学べ!
JAL経営破綻、トヨタのリコールはなぜ防げなかったのか?
事故や失敗は必ず起こるもの。重要なのは、その失敗から何を学ぶかである。電車脱線、回転ドア死亡事故、金融システム障害など、さまざまな場面で発生した実例を徹底的に解明。またJALの経営破綻、トヨタのリコール問題についても緊急補稿。失敗学を生かせば、あなたの仕事や組織は、確実に強くなる!
感想・レビュー・書評
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失敗はなぜ起こるのか。どうしたら再発を防げるのか。失敗の経験を社会の共有財産にすべく「勝手連事故調」に奔走する畑村先生の発想と行動力に頭が下がる。本書で扱われている事例は以下の通り。
第1講 想定され得ることは必ず起こる(六本木ヒルズの大型回転ドア事故)
第2講 人の注意力には限界がある(日本航空の連続トラブル)
第3講 追いつかなかった企業改革のスピード(JR福知山線脱線事故)
第4講 ゼロからつくり直すことの大切さ(金融システムの失敗)
第5講 見たくないものは見えない(リコール隠し)
第6講 起こる前に起こった後のことを考える(火災に学ぶ)
第7講 それぞれの立場から見える風景(JCO臨界事故)
第8講 トップの孤独(ロケットの打ち上げ失敗)
第9講 「現地・現物・現人」が理解の基本(JR羽越線脱線事故)
文庫版増補ではこれに加えてJALの破綻とトヨタのリコール問題についても触れられている。
失敗をしないためにどうするかを考えるだけでなく、失敗した場合にどう対処するかを考えること、そこから教訓を引き出していくことの重要さを痛感させられる。組織が失敗を忘れて社内文化が外の社会と乖離していく時間がだいたい30年、という指摘が妙にリアルだった。「駆け込み乗車がなぜ危険か」の説明にも超納得。
「現地・現物・現人」の重要さを説く第9講では著者が『数に強くなる』で説いていた、数字をおおざっぱに推定して把握する作業を見ることができて、これも面白い。
十九歳以下の子供の死因のうち最も多いのは「不慮の事故」であるという。「不審者」の排除に躍起になる前に、「失敗学」「危険学」の知見を皆で共有する方が、多くの命を守ることになるのではないだろうか。
いずれの事例もわかりやすくまとめてあり、記憶に残る事例についての具体的な話なので非常に面白い。更なる分析や違う見方も可能だと思うが、ここを出発点に「三現主義」で考えていきたい。おすすめ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実際の失敗事例をもとに、その失敗に対してどのような対策を講じるべきかを実際の対応と共に記している本。
著者の言う通り、『3現と個の独立のための参考書』という表現が的確でした。
失敗事例の紹介が続くので、延々と報告書を聞かされているようで、途中で飽きてしまうところでした。
失敗マンダラと失敗知識データベースの存在を知れたのは良かったかもしれない。 -
著者畑村氏がANAの第3者委員会として、提案を示された話はとても参考になった。これがきっかけで、解説されている失敗事例を自分でも調べるようになった。
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具体的な失敗事例にスポットを当て、そこから学ぶべきポイントを整理して示すという手法で理系的発想で問題解決を図ろうとする本である。文系の人にも是非読んでもらいたい。著者である畑村先生は,今年6月に原発事故の事故調査・検証委員会の委員長に就任され、このほど中間報告を発表した。
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六本木ヒルズの回転ドア事故や、JR福知山線の脱線事故、三菱自動車のリコール隠し問題など、じっさいに起こった事故や事件を例に取り上げて検討を加えた、失敗学のケース・スタディです。
前著『失敗学のすすめ』(講談社文庫)は、個人と組織の両方に渡って、「失敗学」の発想が語られていましたが、本書は組織の失敗についての検討が中心になっています。
さらに、JRの脱線事故で運転手が厳しいタイム・スケジュールに置かれていた背景には、駆け込み乗車をおこなうなど、自分本位な乗客の態度にも問題があったのではないかという指摘がなされており、「失敗学」の考え方が社会全体に浸透することで、より安全で暮らしやすい社会が実現されるのではないかという著者の考えが示されています。 -
冒頭で説明されている、失敗の原因、行動、結果を類型化した「失敗まんだら」は、自分の仕事における失敗の分析に活用できそうだ。
過去の重大事故についての分析事例が示されており、分析結果としては大変勉強になるものの、なぜそのような分析結果になったのかについての説明や方法は、この本にはあまり記述されていない。実際に自分の目の前で起きた失敗事例をどの類型に当てはめるのが適切なのか、についての方法論についての説明がほしくなる。 -
本質安全
あり得ることは必ず起こる
人間の注意力には限界がある。
マニュアルの弊害。考えなくなる。
マニュアルを作った人は賢くなる -
手抜きと効率化は違う。
「結論」に至るスピードが重視されすぎて、「そこそこ」の結論で満足することが当たり前になってしまった。
「この程度でもきっと大丈夫」という、根拠のない思いこみのなかにキケンが潜んでいることがある。
自分は、心配性だと悲観していたが、ただ、心配するのではなく、冷静にリスクを認識し、対策を打っていければ、それはひとつの能力になると思う。 -
職場で職員の実務能力を向上させ、ひいてはミスを減らすために研修プログラムを企画したり、ミスの原因分析と対策策定の活動に多少関わったりしている。取り組み始めて、やっぱり巷でよく聞く畑村氏の失敗学は避けて通れないかなと思ってググっていたら、「失敗知識データベース」や「失敗まんだら」に出会い、そしてさらには畑村氏の著書をしっかり読んでみようと思って購入した本。大変参考になった。失敗に向き合うことでよりよい組織・社会を目指す畑村氏の地道な努力に脱帽。