ミノタウロス (講談社文庫)

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著者 : 佐藤亜紀
  • 講談社 (2010年5月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766517

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ミノタウロス (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 希代の物語の語り手、佐藤亜紀の人気作。何よりも構想の巧みさと雄大さに感嘆する。物語はロシア革命の混乱期にあったウクライナを舞台に展開する。しかも、キエフやオデッサならともかく、日本の読者のほとんどが聞いたこともないようなミハイロフカやエリザヴェトグラドといった地が選ばれている。1917年の2月革命から10月革命、そしてソヴィエト連邦の成立と観念的に理解したつもりになってはいても、あれだけ広大なロシアの地。そんなにスムーズに革命が遂行したはずがない。そこに展開する作家の想像力にはただただ驚嘆するばかりだ。

  • 第一次世界大戦のあった帝政ロシア崩壊直後のウクライナ地方が舞台。
    成金青年が殺人や強盗等の悪事を尽くしながら狂奔する物語。

    どうやらこういった悪者物語はピカレスクロマンとのこと。
    1人称で物語が進み、坊っちゃんだった青年が徐々に変貌していきます。

    主人公の青年は殺人・強盗・強姦等をどんどん行います。
    まさに弱肉強食の地獄で必死に生きようとします。
    っというよりもみんな悪事をするのが当たり前の状況です。

    物語はかなり堅い文章ですが、読みごたえを求める方にお勧めの作品です。

  • ロシア革命を背景とした、不良少年の転落話。
    と云ってしまうと身も蓋も無いのですが、
    文章が大変巧みで、それだけで最後まで引っ張られて
    しまったと言っても良いです。
    殆ど改行しない、行間を読めとか云う下らない装飾も無し。
    ギッチリ詰まった日本語がとても美味しゅうございました。
    ストーリーはタイトルのミノタウロス通りとして、
    それでも中盤のシチェルパートフとの遣り取りは
    心臓にギュッと来るものがありました…
    ラストはあっさりした物という印象ですが、
    その湿った世界観と云うか、臭いから抜け出すのに
    暫く時間がかかりそうです。

  • 佐藤亜紀さんの作品はほぼ読んできましたが、やっぱりいいですね。
    いえ、世間的な評価とかストーリーのおもしろさとかじゃなくて…こう、読んでるうちに空気や臭いが感じられる気がするのが好きなんです。もちろん、この時代のウクライナに行ったことはないんですけどね笑

    バルタザールの遍歴と同じく、転落の物語。
    でも転落と言っても、テイストはかなり違います。
    この結末じゃなきゃ、救いはなかったのかなぁ。

  • 読後に残る後味の悪さと奇妙な清々しさと達成感がなんとも言えない。ロシア革命に翻弄されたウクライナを舞台にしながら、歴史的背景を親切に解説する気なぞ微塵も感じられない、暴走機関車のようなピカレスクロマン。

  • 悪いヤツが悪いことを散々やるお話です 笑。
    舞台は帝政ロシアが崩壊した自分の、ウクライナ。
     
    ピカレスクロマンの傑作、と言われるだけ合って、
    この小説には人を殺してもなんとも思わない糞野郎ばかり出てくるだけ有り、話の筋はそれなりに凄惨で残酷です。
     
    そういうのが苦手な人は読まないほうがいいかも。
     
    加えて、かなり重めの文体なので、腰をすえて読むことをオススメします。
    ただ、厳しい冬・農奴の生活の様子の描写は見事。
    妙に生々しいです。
     
    ただ、主人公の、どこか爽やかさすら感じるくらいの無法っぷりは一読の価値アリ、だと思います。
     
    ・・・しかし、ロシア系の名前はなんでこんなに分かりづらいのか 笑

    なんとかコフとかなんとかヴィチとかばっかで、

    「コイツ誰だっけ!?」

    って良く読み返しました、、。

  •  硬い文章が時々読みたくなるのだが、読み始めて後悔するほど硬くて、全然進まない。特に登場人物の名前が覚えられず、最初は前に戻って確認しながら読んでいたが、途中から覚えられないまま読んでいて、その人が死ぬと安心したのだが、回想で名前が出てくると、くうと思った。メモしながら読むべきであった。

     お坊ちゃん育ちの青年の地獄めぐりであった。仁義もなにもなく、仁義があるのは余裕のある時だけ、それでも意地だけはある。現代の世界でも難民の生活や紛争地帯はきっと同様の地獄が存在しているであろうことを思うと心が痛い。

     女性に対してむごい描写や辛辣な表現が多々あるのだが、男性作者が書いたら読めたものでない感じがした。特にマリーナというお姫様みたいな女がひどかった。きっとそういうタイプが嫌いなのだろう。

     田舎者の訛りが新潟弁で面白かった。

  • 歴史もっと勉強するんだったー!と思わずにはいられない。

    時代背景がすでにロマンを感じると思って読んだものの、勉強不足で知識が追いつきませんでした…

    それでも、十分楽しめましたし、のめりこむことのできる一冊でした。
    強いて言えば主人公の周辺が淡々とかかれていく感じが、普段読む本に比べて心理描写少なめで物足りなかったかな?という感じです。

    他の作品も有名なようですので読んでみたいと思います。

  • 舞台はロシア革命後の混乱極まるウクライナの片田舎、主人公は地主の小倅で、教養はあるものの故郷を出奔して悪逆の限りを尽くす転落劇である。

    読み終えて呆然としてしまう。

    この世界は一体なんなのだろうか。このリアリティは何か。この酷い状況はなんだ。(戦争の悲惨さなんて生易しいものではなく、ロシアの大地の広大さと人間の身勝手さに目の前が暗くなる)こんなに胸の悪くなる内容なのに、読み終えて、こんなにも爽快なのはなんでだ。

    どちらを向いても盗みと強姦と人殺し、殺しても殺されてもお互い様というような「のらくろども」の一人である主人公の、時折垣間見える人間らしさが妙に切ない。
    彼は語り手である。だから「粋がってる」「強がってる」「悪ぶってる」だけで根はいいコなんじゃないかと思えてしまうのは、ちらりと描かれる女性たちの彼への眼差しのせいかもしれない。
    待て、これは小説だ。そうだとしたら、なんという二重三重構造なのか! 著者の技量と冷静さに感服というか、もうひれ伏すしかない。

  • 第29回吉川英治文学新人賞受賞作。帝政ロシア崩壊直後が舞台のピカレスク小説。

    帝政ロシア崩壊直後の混乱の中で、人間が単純な生と単純な快楽を貪り食う存在となってうごめく様を描いている。引用文にもある通り、語り手である主人公はそれを美しいと語っている。確かにそれはまぎれもない「自然」で、この世界の見事な景色や動物たちの営みがもつ美しさと共通するものがある。弱肉強食、それはこの世界のシンプルな真理であり、余計なものを取り去ったシンプルなあり方こそ自然で美しい。
    が、現代日本の「真っ当な」道徳観では、そんなものを見ても美しさに陶酔する前にどうしても吐き気を催してしまう(苦笑)。よって面白くて一気に読んだが胸が悪くなってしまった。

    主人公含め登場人物全員が屑と悪人。作中で主人公がやたらと屑呼ばわりされているが、まあ屑なのだけれども特別腐っているわけでないような気がする。皆が皆殺しも強姦も略奪も平気でやるので。それでもそんな「のらくらども」にも主人公が屑呼ばわりされるのは「人の心が最初から備わっていない」のと「相手を選ばない」かららしいのだが、私にはよく理解できない。皆惨たらしく人を殺す屑だと思うのだが……。ごろつきにしかわからない線引きがあるのだろうか。
    村が崩壊したのも兄が死んだのも主人公に原因がある。が、確かに主人公は女を孕ませたり強姦したりして女の兄や恋人をキレさせたが、この作品世界では何も特別なことではない。主人公の母親にしたって強姦されているわけで、そのおかげで主人公の本当の父親はわからないのだし。兄の死だってギャンブルで全財産擦った自業自得ともいえるし。
    まあ、皆五十歩百歩のろくでなしだ。主人公が百歩の方だったとしても。

    ただまあこの主人公(と他の悪人も)、本当に人の心がないとも断言できない。終盤の「トリスタンとイゾルデ」の映画上映のシーン、あそこで本人たちにとっても不思議なことだが皆静かに涙を流すのだ。「どうしようもない代物」と評していた映画なのに。
    それからつるんでいたウルリヒの女を殺されて主人公も何か思ったようだし、ウルリヒが描く最新型の飛行機を見てこれを作ろうと考えたり。他にも時たま人の心が垣間見える。
    余計なものを剥ぎ取って生そのものになった「悪人」の中にも、人として生まれた以上は人の心がこびりつくように残ってしまうものなのだろうか。人間のふりをして立たざるをえないのだろうか。

  • 日本人が書いたとは思えない。渇いた魂の放浪を描いたノワール大作。

  • ミノモンタは何処に行ったのであろうか?ってのは激しくどうでも良かったりする。

    こんな意味不明なギャグなどどうとでも良くなるくらいのリアリティーのある話。典型的にはかなりご都合主義的な部分も見られるが、それであったとしても違和感なく読み進むことが出来る。

    かなり暗い話でモラルも酷いものでありながらも、不思議に主人公に共感でき世界観に引き寄せられる。

    ラストは破滅的に進んでしまうのはある意味仕方がないとは思いつつも、若干の安易さが感じられて少し残念。

    それでも、作者が言うだけの力を持った作品だと感じられる。

  • 第1次世界大戦のウクライナをこれでもかもリアルに描いた小説。戦争まっしぐらの現代と照らし合わせて、いかに人が、同じことを繰り返しているだけなのかを感じた。

  • 無法者が支配する、暴力の世界。北斗の拳の世界にしか思えないな…。支配者はラオウではなくてハートだけど。人間の姿をした人間でないもの。

  • う〜ん、ドライな作品。
    面白い様な、面白くない様な作品。
    何ヶ所か心に引っかかるフレーズがあった。

    不思議な作品、、、、、、

  • ゲームのシナリオならゲームオーバーになるようなところから物語に火がつく。ちょうど中盤あたり。客観視すれば素晴らしき転落人生に他ならないのにも関わらず、主人公はそれを『自由』として享受しているのが面白い。

    物は考えよう。捉え方によって変わるものもあるのよーってことを再確認。

  • ロシア革命下のウクライナを舞台に、成り上がり地主の息子として生まれた主人公の出生、転落、狂走、そして終焉を描くピカレスク浪漫。
    よく練られた社会背景と、達観した語り口の乖離が味を出しています。

    なかなかページを捲る手が進まず、読了に時間がかかりました…。
    社会情勢を押さえていると、もっと面白く読めると思います。
    自分には少々難解でした…勉強不足。

  • あんまりふだん読んでないタイプの本なので、いまひとつ読み方が分からない、てのが本音のとこ。何のために読むんだろ?とか、そんな疑いがちょろっと起こったりする。(てことで、私はふだん目的らしきものがあって本読んでんだなー、てことを自覚したりするわけですが)
    前半はやっぱり私も冗長だなあ、て気分で読んでたんだけど、後半、特にラストに向かっての疾走感みたいなものに引き付けられてった。
    しかし、ヒトってなんだろね。

  • 追う者は追われる者。表題があらわすものはグロテスクだ。

    小百姓から地主に成り上がった父を持つ主人公は、その教養に反して、不義不道徳を重ねて敵をつくり、逃げ隠れをくりかえす。
    自分の命を狙う人間が確かにいるのに、自分をとらえようとするものがなんなのかわからない。自分がなにに突き動かされているのか、わからない。不気味で狂暴な男だと思った。

    主人公は銃を何度盗まれても奪い返す。銃は力の象徴だ。目的のない疾走が、なにに向かうものなのかわかった気がした。

    いつか暴発するのだろうと知っていても面白い。

  • この作品を「冗長」と書いている人がいたが全く逆だろう。

    「天使」のあまりの速度に狼狽した反省から、この作は意識してゆっくり読むようにしている。
    何せたった1行の紹介文で初出演した人物が、ほんの数ページ油断した後に、その舞台の主役になっているんだから。

  • 冗長な文章ですっきりしない。これがピカレスクロマンですかね?
    まあ、そういう惹句を使ったのは出版社であって著者ではないのですが、私には合わない文体です。

  • 「嵐のような賞賛を巻き起こしたピカレスクロマンの傑作」と文庫裏に書かれてました。この人は、『バルタザールの遍歴』でファンタジーノベル大賞をとった人で、その受賞作を読んで私は結構な衝撃を受けたのですが、何故かそれ以降の作品を読む機会がありませんでした。
    それにしても、この人のこの緻密さと豊富な知識、(正しい意味での)確信犯めいた思い切った筆致は何だろう。デビュー作を読んで感じたものが、時を経てそのままグレードアップしているみたいだ。

    さらりと読めるたった数行にどれだけのものが込められているのかを思うとどきどきする。けれど私はこの作家がこの作品を書いているところを見たわけでもないし、直接彼にインタビューしたわけでもないので、ひょっとしたらその数行は本当にさらりと書いているのかもしれないけれど。それはそれでどきどきする。違う意味で。いや、同じ意味かもしれない。骨太だと感じる作品だった。
    ロシア革命とかウクライナ内戦についてもっと知識があればもっと楽しめたのかもしれない。

    この本は解説(文芸批評家・岡和田晃氏)も秀逸。というか、本当に「解説」たる解説だった。時代背景や、神話、寓意性、本作の登場人物たちの分析などなど。文芸批評家という肩書きをもって、おそろしく面白くない、そして作品を台無しにする解説を読んだこともあるので、コノヒトスゴイと素直に感じた。

  • 面白かったような、そうでも無いような。
    同系統の話を続けて読むきにはなれないな。

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帝政ロシア崩壊直後の、ウクライナ地方、ミハイロフカ。成り上がり地主の小倅、ヴァシリ・ペトローヴィチは、人を殺して故郷を蹴り出て、同じような流れ者たちと悪の限りを尽くしながら狂奔する。発表されるやいなや嵐のような賞賛を巻き起こしたピカレスクロマンの傑作。第29回吉川英治文学新人賞受賞。

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