しずかな日々 (講談社文庫)

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著者 : 椰月美智子
  • 講談社 (2010年6月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062766777

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しずかな日々 (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 少年の夏を描いた作品というと『夏の庭』が真っ先に浮かんでいたのだが、
    これもまた忘れられない一冊となるだろう。
    登場人物の誰かを死なせて劇的にしようとする作為がないあたりは、非常に良心的だし、
    淡々と描いているのに叙情豊かに感じるのは作者の筆力かな。
    何しろ遅読の私が、一日で読み終えたのだ。
    そうか、子どもはこうして大人になっていくんだなと、読後数日経過しているのに、いまだに
    深い感慨に浸っている。

    小学5年の主人公「枝田光輝」が語り手で話は進む。
    冷静に、静かにふりかえるその語り口が、まさにタイトルにふさわしい「しずかな
    日々」で、勉強も運動もからきしダメな自分を自嘲するでもない。
    ただ、その後の展開で、なぜそうなのかが少しずつ明らかにされる。
    むろん、説明らしきものはない。ただ、読み手に想定させるのだ。
    そうか、子どもはこうして人生を「降りて」いくのかと、涙もろい私などは
    何度も涙腺がゆるんでしまった。

    そして、小さな小さな希望が学校生活に生まれていく過程が、また心憎い。
    人に名前を呼ばれて話しかけられた時の新鮮な驚き。
    あだ名がついたときの驚きと喜び。遊びに誘われた時の気持ちの高揚。
    今日の楽しさが明日への希望に繋がっていく行程が、秀逸な描写で綴られていく。

    突然居候することになった祖父の家、祖父の存在。そして新しい友だち。
    そこを基盤に、あとはもう、どこにでもある夏休みの風景だ。
    花火だのラジオ体操だの草野球だの水泳大会だの、そして自転車で遠乗り
    したことだの、宿題の制覇だの。
    だが、読み手は枝田少年と一緒になってどんどん心の翼を広げていく。
    決して幸せとは言いがたい現実でも、受け止めて成長していく少年を、
    いつの間にか応援してしまうのだ。

    終盤になって祖父に、顔も知らない父親のことをようやく尋ねるという
    構成も素晴らしい。
    これを聞いたおかげで、自分の生をようやく肯定し、前を向いていけることだろう。
    その後の、大人になった主人公が少年時代をふりかえるラストは、もう小津作品の
    名画のように心に残る。
    未来につながる希望、これをこそ子どもは本能的に欲しているんだなと、
    それを自分はこれまでの人生で子どもたちに与えられたかなと、そんな反省も
    込めつつ、ひとりでも多くの人にこの一冊をおすすめ。

    (最後に、お祖父さんの作るおにぎりと漬物が、すごく美味しそうなのであります。)

  • 小学五年生の少年・えだいちが、
    おじいさんの家で過ごした、きらめきの夏休み。

    ”はじめて”がいっぱいだった小学生のころ。
    前の日にはできなかったことが、次の日にできるようになるうれしさ。
    毎日がワクワクの連続で、明日のことばかりを考えていた。

    ラジオ体操の朝の空気。
    照りつけるような日差し。
    ノースリーブのワンピースと麦わら帽子。
    ときおり、耳がびーんとしびれるほどのセミの合唱。
    アサガオ、ひまわり、プール、絵日記。
    やさしかったおばあちゃん。
    塩をかけて食べたスイカ。
    薬缶で麦茶を煮ている香ばしい匂い。
    そういえば、昔の麦茶は甘かった…。
    遊び疲れて畳の上でお昼寝。
    目が覚めるとお腹の上にタオルケットがかかっていた。

    通り過ぎてみてはじめて気づく人生の至福の時間…。
    よみがえってくる記憶は、音のないしずかな世界。

    ツクツクボウシの声が聞こえる。
    この季節に、この本を読むことができてよかったです。

    児童書ですが、
    これはかつて”えだいち”だった方々にぜひ…。

  • 素晴らしい小説。児童向けだからと、こんないい本を読み逃している人がいたら大きな声で言ってやりたい。「子供時代の君が本の中で待ってるよ」
    このブログのおすすめで、多くのひとが推薦していたので読んでみたが、皆さんには感謝したい。「素敵な小説をありがとう」
    内容はあえて書きません。読んでみてください。

  • 初の椰月美智子作品です。
    ドツボでした。
    作品からにじみ出るやわらかい雰囲気とか、文章の感じとか、お話の流れとか、好きだー!!って思いながら読んでました。

    おじいさんの家で暮らし始めるところからが話のメインになると思うんですけど、そこに行くまでの話もとても好きです。
    押野のキャラがとてもいいし、三丁目の公園は優しくて、転校したくないって泣いてしまうところは、読んでいてじわっときました。
    おじいさんと暮らし始めてからの話も素敵でした。
    特に押野のロボット工場の話とか。こういう、些細だけど子供にとっては大きな出来事がきっかけで、僕らは成長してきたんだよなあって思うと、さびしいようなあたたかいような気持ちになりました。

    ラストもよかったとは思うんですけど、一気に大人になってしまったので、ちょっとさびしかったです。
    この作者の他の作品も読んでみたいと思いました。

  • 読み終わったあと、胸がきゅうんとして少し泣いた。
    もう戻れない、苦しいほど眩しくて暑くて無我夢中だったあの頃、小学生だった私はどこかでこのキラキラの終わりを予感してたようなきがする。
    あの頃には戻れないけど、このキラキラは確かに自分の中に息づいて、今の自分を形作っている。
    そんなことをふと思った。

  • 夏はどこか懐かしい。ラジオ体操、プール、宿題ドリル、自由研究、花火…。すべてが新鮮で驚きに満ちていた子どもの頃の、遠い記憶に包まれる優しい物語。

    主人公 えだいち君と草野球仲間(押野、じゃらし、ヤマ)の豊かな感受性に触れて、なんだか清々しい気分。私も彼らと一緒に、おじいさんの家の涼しげな縁側で、漬物をぽりぽり食べたくなった。もちろん熱いお茶も!

    「そんな難しく考えんでも、自然にしてたらいい」
    おじいさんの名言と調和した穏やかな最終章、心に沁みるなぁ。

  • なんてことはない日々の連続が今の自分に続いている。

    幸せ。何も大きな事件は起きないのに(小学生にとっては大事件かもしれないけど)、最後まで引きつけて離さない話。主人公は小学5年生の枝田光輝。父親は不在。彼の一人称で小学5年生の夏休みを中心とした「あの頃」の話。小学5年生になり、新しい友人・押野と出会う。そこから少しずつ変わっていく「えだいち」。新しい仕事を始める(何やら新興宗教?)母親と離れ、祖父と二人で暮らし始めた日々。

    主人公の成長が愛おしい。何かをきっかけに、少年は目を見張るほどに成長していく。ひねた「大人」になるのではなく、「子ども」を脱していく。それは、新たな世界を得たことも、自分の気持ちを言えるようになるということも、母との距離も、祖父の家で与えられた役割も、すべてが関わっている。この話は大人になった主人公が、過去を振り返っているが、このように「あれが自分の大人の一歩だった」と振り返る時期が誰にでもあると思う。それが、このような愛おしい記憶であるならば、幸せだろう。

    かつて子どもだった人にも、これから大人になろうという人にも、優しい話。

  • 夏休みって大人になった今でもウキウキする。
    それって、小学校時代の記憶だったり思いでだったりするわけで、懐かしい思い出なんだけど鮮明に記憶されてるのは小学校の夏休み。
    ラジオ体操やカブトムシや花火、度胸だめし。
    この本の中でも一番気に入っているのは、押野が泊まりにきて二人で夜語りあい、夜空を見上げる。昼間言えなかったことも、夜の闇にまぎれてしまうと許されるような気がする。とえだいちが感じる一瞬。
    野間児童文学賞、坪田譲治文学賞のダブル受賞の感動作に納得。

  • 一人の少年の、小学校5年生の夏休みの思い出を綴った物語。

    本当に特別なことは何もない、普通の小学生の普通の夏休み。
    友達と遊ぶこと、小さな冒険をすること、そして、ただ笑いあうこと。
    大人になると、多分、きっと、忘れてしまいそうな、小さな小さな思い出だけど、でも、その瞬間瞬間を精一杯生きている子供たちにとっては、何一つ欠かすことの出来ない大切な思い出なのだと思います。

    読んでいて、胸がいっぱいになりました。
    涙が出そうになりました。
    なんとも言えない、すごくすごく、不思議な感情が溢れてきました。

    おじいさんとの距離が少しずつ縮まっていく様子も、なんだかとても微笑ましかったです。

    とっても素敵なお話でした。

  • 友達もいなくて勉強も運動もからっきし、小学五年生の男の子である主人公の夏の記憶。
    ターニングポイントとなる友人との出会い、母親と離れての祖父との暮らし。
    「夏の庭」を思い出した。
    繊細でみずみずしくてすこやかで泣きたくなるほどやさしい。
    なつやすみ、ってなんてすてきなんでしょう。って思い出せる小説でした。

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しずかな日々 (講談社文庫)の作品紹介

おじいさんの家で過ごした日々。それは、ぼくにとって唯一無二の帰る場所だ。ぼくは時おり、あの頃のことを丁寧に思い出す。ぼくはいつだって戻ることができる。あの、はじまりの夏に-。おとなになってゆく少年の姿をやさしくすこやかに描きあげ、野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞した感動作。

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