水の中の犬 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767408

作品紹介・あらすじ

「他人の痛みを、自分の痛みに。依頼人の事件を、自分の事件に。いつだって当事者になっちまう。なあ、探偵。彼女のために、何でそこまでやらなきゃならないんだ?」

探偵の元にやってきた1人の女性の望みは恋人の弟が「死ぬこと」。誰かが死ななければ解決しない問題は確かにある。だがそれは願えば叶うものではなかった。追いつめられた女性を救うため、解決しようのない依頼を引き受けた探偵を襲う連鎖する悪意と暴力。それらはやがて自身の封印された記憶を解き放つ。

いったい、何がしたいのか、自分でもわからない。でも――「俺は約束したんだ。必ず助けてやるって」誰も頼れない、追いつめられた依頼人たちが、今日も彼の元を訪れる。礼儀正しくて、誠実。そして、麻薬常習者で、人殺し。木内一裕にしか描けない探偵がここにいる。

感想・レビュー・書評

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  • 再読だが殆ど忘れていた。
    矢能シリーズの第一弾。


    以下、作品紹介・あらすじより------------------------------
    「他人の痛みを、自分の痛みに。依頼人の事件を、自分の事件に。いつだって当事者になっちまう。なあ、探偵。彼女のために、何でそこまでやらなきゃならないんだ?」

    探偵の元にやってきた1人の女性の望みは恋人の弟が「死ぬこと」。誰かが死ななければ解決しない問題は確かにある。だがそれは願えば叶うものではなかった。追いつめられた女性を救うため、解決しようのない依頼を引き受けた探偵を襲う連鎖する悪意と暴力。それらはやがて自身の封印された記憶を解き放つ。

    いったい、何がしたいのか、自分でもわからない。でも――「俺は約束したんだ。必ず助けてやるって」誰も頼れない、追いつめられた依頼人たちが、今日も彼の元を訪れる。礼儀正しくて、誠実。そして、麻薬常習者で、人殺し。木内一裕にしか描けない探偵がここにいる。

  • 面白かった!
    矢能シリーズ第一弾(というより前日譚)
    一応、第一弾と定義されているみたいだけど..
    ハードボイルドミステリー
    3篇からなる短編連作のような展開

    ストーリとしては、ある元警官の探偵の物語
    ■取るに足りない事件
    この探偵のもとに、一人の女性が相談してきます。恋人の弟に付きまとわれ、そいつが死んでしまえばと願っていること。
    探偵はその弟を調べていくうちに、という展開
    バイオレンス炸裂です
    不死身ですね。この探偵

    ■死ぬ迄にやっておくべき二つの事
    今度は別の女性からの依頼。兄を探してほしいとのこと。しかし、その兄は麻薬販売で実刑くらって、出所してからの行方を追うことに。結果、巻き込まれていきます。
    さらに、探偵はヤクザからも命を狙われることに。
    そして、矢能と知り合います

    ■ヨハネスからの手紙
    娘が殺されると依頼してきた母親。
    ここでもアングラ連中とのドンパチ
    さらに明かされる探偵の過去の事件
    そんな中、この依頼の真相にたどり着きます。

    そして、何とも切ない結末に

    暴力描写が厳しいですが、あっという間のストーリ展開でエンターテイメントとして楽しめます。

  • 怪我ばかりしている探偵ですね。
    人も殺してしまうし、最後は•••
    血生臭い小説ですね。
    矢能シリーズの序章かな。

  • 先日読んだ『アウト&アウト』の前編に当たる作品。
    読む順番が逆になってしまったが、それぞれ独立した小説として楽しめるように作られているので、逆でも支障はなかった。

    『アウト&アウト』の主人公である探偵・矢能は、ここでは重要な登場人物の一人(当時はヤクザ)となっている。

    元刑事の探偵である主人公をめぐる、3つの事件を描いた3話からなる連作。
    3話はそれぞれ独立した短編としても楽しめるし、全体が一つのストーリーにもなっている。凝った構成だ。

    ハードボイルド・ミステリの体裁をとっているが、ノワール色も濃い。全体に激しい暴力描写があり、殺し屋・ヤクザ・情報屋など裏社会の人間たちが入り乱れて登場するのだ。

    『アウト&アウト』のときも思ったことだが、ストーリー構成にはかなり荒削りなところがある。
    それでも、魅力的な場面やセリフが多く、登場人物のキャラも立っている。

    そのへんは、人気マンガ家・きうちかずひろとして長らく活躍してきたこの作者ならでは。
    地の文でチマチマ説明するより、登場人物のキャラとセリフと行動で物語をグイグイ駆動していく――それが、生き馬の目を抜くマンガ界で身につけた作法なのだろう。

    印象に残ったセリフのやりとりを引いておく。

    《「人には死ぬまでにやっておくべきことが二つある……」
     唐突に矢能が言った。探偵は矢能に目を向けた。
    「何だ、それは?」
    「ガキの頃、祖父に聞いた。軍隊で教わったそうだ」
    「二つのことって何だ?」
    「人それぞれ違う。一つじゃ足りねえし三つじゃ多過ぎる。そいつにとって二つのことをやり遂げれば、人は満足して死ねるんだそうだ……」(第二話「死ぬ迄にやっておくべき二つの事」)》

    面白かったので、このシリーズのほかの作品も読むことにする。

  • 自分にとって、「本読み」と言えばI井さんとK恵さんですが、本作はK恵さんから薦められました。
    ほぼ1日で読了。
    風邪を引いて布団から出られなかったのもありますが、もう、圧倒的なスピード感で一気に最後のページに到達しました。
    何が面白いって、この主人公の探偵が完全に頭がイカれているということ。
    依頼人の事件を自らの事件として引き受け、敢えて「火中の栗」を拾いに行きます。
    でも、スーパーマンじゃないんです。
    それどころか、痛い目を見ることの方が多く、瀕死の重傷を負ったりするから目も当てられない。
    それでも、懲りずに敵と見定めた相手の元へ向かいます。
    その執拗なことったらもう。
    なぜ、依頼人のためにそこまでするのでしょうか。
    必ずしも義侠心からってわけじゃない、どちらかというと生まれ持った悲しい性といった感じ。
    そこに、とても惹かれました。
    にしても、よくまあ、次から次へと事件が起きるもんです。
    さすがに、たまたま探していた人を追って入ったアソコが、アノ現場というのは、ちょっとご都合主義が過ぎると感じましたが、木内さんだと許せちゃう。
    もっとも、私は木内さんの小説作品を読むのは初めて。
    ただ、漫画家のきうちかずひろさんには中学、高校時代を通じてずいぶんとお世話になりました。
    そう、不良漫画の金字塔「ビーバップハイスクール」です。
    あれを読んで、どれだけしなくてもいいケンカをしたことか。
    木内さんは映画監督としても活躍しています。
    マルチな才能ですね。

  • えぐいのだけど、なぜか惹かれてしまう不思議。
    視点が変わりながら語られる物語は、臨場感があって、場面を脳内でイメージとして確立しやすい。…だからこそそのえぐさが際立って、途中でやめようかと何度も思ったのだけれど。
    結局最後まで読みきってしまった。
    探偵の、強いのか弱いのかわからないその生きざまが、強いインパクトを与える。三件の依頼による三編のストーリー構成だけど、一本の繋がりある映画のよう。特に、探偵の傷や怪我がその繋がりを象徴してるようなところが面白かった。あと、ヤクザのくせして矢能という男がなんとも魅力的に思えるのはわたしだけ?エピローグもよかった。「アウト&アウト」が続編ということなので、読もうか迷いどころ。

  • 著者木内氏は、『ビーバップハイスクール』が有名な漫画家でもあります、今作の存在は漫画家木内氏の手による、ということでちょっと気にしてました。そのような中、マイミクさんが高い評価をつけてらしたので手にしました。

    3つの短編からなっています。主人公は元警官の探偵、彼の名前はとうとう最後まで語られることがなかった。よせばいいのに面倒なことに自ら進んで首を突っ込んでしまう、おせっかいなのか?親切すぎるのか?はたまた危険に己を追い込む被虐性嗜好があるのか?腕っ節がそれほど強いわけじゃないのに、とにかく食って掛かる。のっけからコテンパンにやられます、これほど読者の痛覚に訴える主人公もいないだろうと思う。彼が被る傷を含め、暴力の描写は読者の胸に強く突き刺さる。そしてやりきれない結末が、名前のない探偵の虚無感をさらに煽る。

    というように序盤は陰にこもる探偵の痛々しさにやりきれなくなるのですが、中盤に入り、探偵の命も、殺し屋に狙われあとわずか!という時彼に絡んでくるやくざ、矢能の存在が物語りの色彩をガラッと変えます。彼のセリフはこの作品の全てであると自分は確信しました。

    「お前がくたばったら…後は俺に任せろ」

    たったこれだけのくさいセリフが、眩いばかりの光でゾンビのごとく意味もなくただ傷を負う探偵に血を通わせた気がしました。最近では一番痺れたセリフでした。しかしながらさらにやりきれない結末が…

    終盤ではハードボイルドの正統である、主人公探偵の一人称で物語が語られます。ここは構成として非常に巧い、前の二つは神の目視点で語られていたので血の通った主人公を感じる効果が生まれています。探偵の過去、心の傷も明らかとなるのですが、さらに大きなトラブルと危険な相手に破滅的な予感がします。予感通りの終末となり、名前のない探偵の物語は終わり、その凄絶な最期は己の眼を熱くさせたのでした。

    エピローグでは探偵事務所をやくざ矢能が引き継ぐこととなっており、続篇『アウト&アウト』へと流れていきます。

  • 己の信念に基づいて行動するのが男であり、そんな愚か者を主人公にするのがハードボイルド小説である。
    とにかくかっこいい。探偵もやくざの矢能も男の中の男であり、男が男に惚れるとは、この二人の関係をいうのだろう。情報屋や木野、ヤンの存在感も圧倒的である。
    そして唯一のマドンナ・美容院の女の子は、最近現れない探偵のことをどう思っているのだろう。

  • 何回読んでも 素敵。
    探偵に惚れるし 矢能にも惚れる!
    かっこいいし 他人のために一生懸命に生きるって素敵なことだなあって思う。
    命をかけられるくらい 人のことを想えるような人になりたいって思わせてくれる小説

  • 本当に偶然目について買った本。タイトルから、もがき苦しむ主人公が出て来るのだろうと共感を得られる内容を期待して買ったら、いい意味で予想を裏切ってくれた。
    途中は、作者の代表作を全く知らなかったので、暴力やら何やらの描写と展開の早さに圧倒されたが、最後がいい。
    人の不器用な生き様が、他人の人生に思いがけない影響を与えることもあるのだと思う。
    決して、何か影響を与えてやろうなんて計算ではできないことだ。

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著者プロフィール

1960年、福岡生まれ。2004年、『藁の楯』(2013年映画化)でデビュー。同書はハリウッドでのリメイクも発表されている。他著に『水の中の犬』『アウト&アウト』『キッド』『デッドボール』『神様の贈り物』『喧嘩猿』『バードドッグ』『不愉快犯』『嘘ですけど、なにか?』『ドッグレース』『飛べないカラス』『小麦の法廷』がある。

「2022年 『バッド・コップ・スクワッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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