苺をつぶしながら (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1284
感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768023

作品紹介・あらすじ

人生は美しい。この小説は、乃里子という女の子が生きている様子だけで、それを描き尽くす。瞠目する。――津村記久子

160万部の「乃里子3部作」連続刊行第3弾!
心許なさに1人で泣いたり、口にするのも恥ずかしい失敗をしたり。けっこう試練もあったりする。でも……

私、この作品を書くために生まれてきたのかもしれへんわ。――田辺聖子

35歳の乃里子。剛との結婚解消とともに中谷財閥からも解放されて、仕事も昔の友情も取り戻した。1人暮らし以上の幸せって、ないんじゃない? しかし自分の将来の姿もなぞらえていた女友達に悲しい出来事が。そのとき手を差し伸べてくれたのは……。「誰か」がいるから、1人でも生きていける。(解説・津村記久子)

感想・レビュー・書評

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  • 《言い寄る》三部作でこれが一番すきです。
    乃里子が剛と結婚を解消してからの物語。

    乃里子が生き生きと暮らしている姿を想像するだけで楽しく《まあ何てことでしょう》事件は笑えました。

    三作目にして初めて剛の良さがわかった気がします。
    乃里子と剛の関係性がすごくいい!

    時々乃里子が自分の服装を書いていますが、とてもキュートで、想像するだけでワクワクしました。
    三部作揃えて良かった!

  • 乃里子三部作も遂にラスト。シングルになった乃里子35歳、解放感に満ちた独身生活を謳歌中。結婚生活を経たからこそわかる、一人暮らしの快適さ。仕事に邁進し、仲間達と飲み、年上の女友達との付き合いを楽しむ。「言い寄る」の頃に比べたら、余計な力が抜け、しなやかに日々を楽しんでる感じがとてもいいわ~。
    毎度思うが今回も言う。
    初出昭和56年て信じられない!時代先取りすぎないか!?
    乃里子のファッション描写がとてもいいのですよ、自由業ということもあるけど、年齢感じさせなくて。アメ村の古着屋のバーゲンで服を買う。自分流にカスタムし、アクセサリーも手作りする。そのチープ感が何ともオシャレ!行きつけのお店や、旅行で訪れる軽井沢の描写も最高で、読んでいるだけでときめく。
    テンポのよい、気の利いたセリフ満載の会話劇も相変わらず楽しい。ストーリーの起伏でいえば「言い寄る」の方が心揺らされたかもしれないが、今回は色々経験を積んだ上で、また違ったほろ苦い展開を乃里子がどう捉えるか、も読みごたえあった。心憎い場面もちょいちょいあり、その度「んもうッ!」と身を捩りながら読んでしまう。
    そして、大好きな作家の津村記久子による解説、これがまた乃里子三部作の魅力を的確に捉えて言語化しており、大変素晴らしかった。まさか解説に泣かされるとは…(勝手にぐっときてたんですが)。
    シリーズものは長さもあるしあまり手を出さないタチなんだが、このシリーズに限っては一気にまとめ読みしたくなるほどハマった。何ならもっと乃里子のその後を読んでみたい気になっている。それは叶わないながらも、歳を重ねても乃里子のことだ、明るく自由に(時々何かやらかしながらも)時代を泳いでいるのだろうなと思わされるのだ。

  • 三部作読み終えました。巻末の解説にもありましたが、最初から最後まで、乃里子の変質しない女の子らしさを長い年月を経て読ませていただきました。年取ったら偉くなるんじゃない、達観もしない、自由であるし同時に孤独だけど、生きてたら…新しい出会いとか発見もあるってことを。剛との再会を経て、軽井沢の万平ホテルのロビー、剛を憎んだり出来ない乃里子。ほんとに優しい子なんだなー。飛んだり跳ねたりする乃里子大好き。
    図書館で借りたけど、いずれちゃんと手元に置きたい本。

  • 乃里子3部作のラスト。
    離婚後の乃里子の生き生きと、満ち満ちとした日常と人生観について語られているお話です。
    息詰まりで苦しくなった結婚生活から解放され、何もかも自由だと全身全霊で独身を満喫していても、外へ出れば何となく感じる<結婚前の独身>とは異なる違和感、自分自身の恋愛観の変化は否めない。
    結婚・離婚を経験した後の人付き合いや人生観って本当にガラリと変わりますね。
    男友達は沢山いても、その中の人達が必ずしも恋愛の対象になるとは限らない。乃里子の心情が手に取るようにわかる箇所がいくつもあって、本書が一番面白かったです。
    お互いが一番心地良く感じる関係性について、その到着点がストンと腑に落ちる読後感でした。

  • 家庭に入って子育てをするだけが女の幸福ではない!と、真っ向勝負している第三部。この小説が執筆された昭和五十六年の時流を考えると、本当に乃里子は「女の人生革命家」だったのではと思う。自分の人生を自分で選んでいく乃里子は格好良くて、最後はどんな道を選ぶのだろう?と、どきどきしながら見守った。前作『私的生活』ですっかり嫌いになっていたあの人も出てきて、その有様に思わずきゅんとしてしまった自分はかなりちょろい(笑)対して、乃里子の選択には惚れ惚れする。

    『言い寄る』から始まった「乃里子三部作」には、アラサー女性のすべてが詰まっていた。きまった男がいない自分に感じる欠乏感、結婚にともなう煩わしさと閉塞感、再びひとりの生活に戻ったあとの享楽や老後への恐怖──。こんなに女性に親身に寄り添ってくれる本は他にないと思う。「ピッカピカの三十五」になる頃にまた読み返したい。

  • 乃里子のことがどんどん好きになって、自分ならどうするだろうって、自分も彼女のようになりたいとすごく思いました。剛ちゃんに惹かれて、ドキドキして、すごく2人の恋愛に魅了されました。
    これはずっとずっとお気に入りの本になると思います。

  • 古臭く無かったことにびっくり。
    男尊女卑の考え方が、今より強かった時代の小説とは思えない。田辺聖子さんは、強い方だったんだろうなと思う。

    今よりも周りの目に囚われず自由な感じがしたのは、乃里子の性格によるものなのかな?
    少しはすっぱで、あっけらかんとしていて、明るくて、幼くて、魅力的な主人公だった。
    人生を、目一杯楽しんで生きているのが伝わってくる。自分はこんな風に、男友達と冗談を言いながら、お酒を飲んで羽目を外したことがなく、とても新鮮に感じた。剛との関係も大人でないと成り立たないし、作中にある人生のプロ度が高いというのは正にこのことだと思う。

    後書きで3部作のラストと気づいた。
    今作に至るまでの2冊も機会があれば読んでみたい。

  • 津村記久子さんの後書きも大好き。人生時には辛い事、恥ずかしい事を経験する。乃里子は身の回りの状況を時に冷酷なほど分析し、綺麗事でなく本音を綴りながらも最終的に心の赴くまま楽しんでしまう。「人生は美しい、と、台詞で、言うのはたやすいけれども、それを物語として納得させることは至難である。乃里子三部作は、そのことに達成して余り有る。•••乃里子という女の子が、ただ生きているという様子だけで、それを描き尽くす。瞠目する」
    乃里子のように生きていきたい。

  • 最初「苺をつぶしながら」を読み始めてから3部作と知り、
    古本屋で「言い寄る」と「私的生活」を買って読んだ後、本作品を読んだ。
    独身時代は気にも留めない日常が、離婚して自由になるとキラキラした宝石のような日々に変わってしまう。特に友達と過ごす時間のありがたさ。これは私も痛いほどよくわかる。
    また剛と乃里子が会ったときのお互いのぎこちなさ。糸が全く切れた訳ではなく、どこか細くつながっていて、お互いがそれをなんとなくわかっていて安心している。二人の会話は少しハラハラドキドキした。
    そしてほっこりとふんわりと乃里子らしいラシトシーン。この先も乃里子は思い付きで結婚したり、あるいは子どもを産んだりするかも知れない。でもきっと何があっても乃里子らしく楽しく生きるんだろうなぁって想像できる。
    三部作、読んでいる間は私も乃里子になれて本当に幸せで楽しかった。

  • 結婚していた事を服役、結婚歴を前科、元夫を看守と呼びつつも、結婚生活全てを否定する訳ではなく女一人の生活を謳歌する乃里子の姿が瑞々しい。
    女の人生、男と女、女と女、誰かと生きる事、一人で死ぬ事について深く考えさせられた。
    私もいつか「散髪に行ってきます」と言って家を出てみたい。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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