香菜里屋を知っていますか (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 68
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768344

感想・レビュー・書評

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  • 北森鴻の小説は初めて読んだ。ビアバー香菜里屋の主人工藤哲也が、バーに集う客の謎を解く短編集の最終巻らしい。推理自体はそうなのかもしれないという感じかな。謎を解くなかで人生を感じさせるというのが持ち味なのだろう。工藤が出す料理が素晴らしく美味しそうなのだが、結構手が込んでいて、しかも素材も厳選されているようで、なかなか家では作れそうもない。
    工藤が店を畳んでしまって終わりになるのだが、ちょっと終わり方に唐突感がある。続きを想定していたのかな。作者は亡くなってしまわれたそうだが。

  • 最終巻、の一冊。

    なんとなく雨音聴こえる日は開きたくなってしまう。ビアバー香菜里屋の扉を、本の扉を。

    ついに最終巻。
    淋しさを抱えながらページをめくる。

    懐かしのあの時のあの人、この人…。また第一弾から読みたくなる。

    そして明らかになるマスターの過去。“香菜里屋”に込められた想い。
    まさにほろ苦くてキュッと心掴まれる。

    終焉はまた開始への約束っていう言葉は素敵だけれどやっぱり涙を誘う。

    ほんと、美味しいお料理とお酒と推理と言葉に耳を傾ける時間が好きだったなぁ。

    また北森さんが遺してくれた香菜里屋の、本の扉を開こう。

  • ★3.5
    香菜里屋シリーズの4作目で、全5編が収録された連作短編集。店名を“香菜里屋”とした理由を始め、工藤の過去が明かされる重要な1冊。ラストを飾る表題作は、工藤が不在のまま語られる後日譚で、その後の工藤の生活や胡散臭い時田の魂胆等も後に描かれたのでは、と思える終わり方。その全てが叶わないことが、本当に口惜しい限り。そして、常連客に蓮丈や陶子なんて人が居たっけ?と思っていたら、どうやら別シリーズの主人公らしい。なお、一緒に収録されている「双獣記」は、著者の死によって未完となった作品。もっと読みたかった!

  • 目次
    ・ラストマティーニ
    ・プレジール
    ・背表紙の友
    ・終幕の風景
    ・香菜里屋を知っていますか

    やっちまった!

    北森鴻の作品3シリーズを、今後読もうと思ってリストに入れていたのだけれど、そのうちの一つ「香菜里屋」がタイトルに入っていたので、まずこれから読もうと思って手にしたら、なんとこれが最終巻だった。
    実はシリーズ最初の『花の下にて春死なむ』は読んでいたので、どこから読んでも問題なかった筈なんだけど、実際は問題ありありだった。

    まず、のっけから常連さんのいつもの会話に入って行けない。
    人物の背景がわからないので、探り探り読む。
    香菜里屋のマスター・工藤の友人である香月の視点で語られる事件は、切ない別れの予感をはじめから漂わせていて、そこに香菜里屋のマスターである工藤を登場させるのは、無理やりっぽい気がした。

    その後の作品も、常連たちの環境が変化し、少しずつ今までの香菜里屋の風景が変わっていってるんだろうなあという気がした。
    もうこれ、最初っから最終巻の気配満々じゃないか。
    しかも、最大の謎は明らかにされないまま終わる。

    これはもう一度、ちゃんと順番通りに読むしかない。

    書き下ろしの「香菜里屋を知っていますか」は、古美術商の冬孤堂こと宇佐美陶子と、民俗学の准教授・蓮杖那智という、私が目をつけている2つのシリーズの主役も登場する。
    これらについても順番通りに読もう。
    だって北森鴻、絶対面白いはずだから。

  • とうとう終わってしまった…物語の終焉がそのまま作者の逝去を連想させる気がしてならない。

    ビアバー「香菜里屋」に集う客たちの謎を解き明かしてきたマスター工藤であるが、最終巻では彼の過去、秘密、謎などが明かされることとなる。最終話「香菜里屋を知っていますか」では北森氏の作品群に登場するキャラクター総出で工藤を想うような構成となっており、ファンには嬉しい展開なのだろう。

    工藤と対を成す香月の存在を大きく感じた、結婚するとは思わなかったが…

    工藤と香月、ものすご既視感を感じていたものがやっと思い出された。

    「しろくまカフェ」における しろくま と グリズリー である。

  • 空腹と戦いながら読んでいたこのシリーズも、これで一区切り。

    といいながらも、那智さんや冬狐さん達とクロスオーバー的な知り合いであっただけに、
    他の作品での再登場を楽しみにしていたのですが、、それだけに北森さんの早すぎる死が惜しまれます。

    いつかどこかで”香菜里屋”に出会えることを祈りながら、花の下にて~から読み返してみようと思います。

  • 北森鴻さんの香菜里屋シリーズ第四弾で完結編。工藤のその後とか、香菜さんがどんな女性なのかとか、もっと続きが読みたいけど、北森さんは2010年に亡くなっているので、無理です。工藤マスターの作る料理がとても美味しそうでした。

  • シリーズ完結編。未完の「双獣記」も収録。
    表題作である「香菜里屋を知っていますか」で
    北森作品のメインキャラ達が続々登場!
    主要キャラ達によって、過去に工藤達に降りかかった
    事件の真相が導き出される。
    「優れた酒場は賢者の集まりだよ」
    蓮丈那智のこのセリフに鳥肌立ちましたよぉ~
    そして店名である香菜里屋の意味。
    そうだったのかぁ~・・・ちょっとしみじみしました。
    ここでシリーズは終わってしまうけど、北森氏が
    生きているならば、どこかで工藤のその後を
    描いていたのでは・・・と思って切なくなりました。

  • 香菜里屋シリーズがこれで終わってしまうのは何だか寂しい。この巻は一言で纏めると「旅立ちの巻」、マスターの工藤さんも常連さん達も新しい生活に切り替えた方が何人もいます。

    「香菜里屋を知っていますか」の章では香月夫妻以外は、これまで出てきた常連さん達ではなく、他のシリーズのキャラクターが登場しているようです。したたかですね〜〜!ま、そのうち読んであげましょう。

    最後に「双獣記」という香菜里屋とはまったく関係のない飛鳥時代の話が載っていた。面白い話なんだけど…香菜里屋の余韻に浸って本を閉じたかった。その辺の構成を少し考えて欲しい。ジャズのCD聞いていたのに最後に演歌を聞かされたような感覚。

  •  世田谷区・三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」。客から持ちかけられた謎の数々をマスターの工藤哲也が解き明かす連作短編集の完結編となる第4弾。「ラストマティーニ」「プレジール」「背表紙の友」「終幕の風景」「香菜里屋を知っていますか」の5編を収載。また、飛鳥時代を舞台にした伝奇アドベンチャーで、未完となった「双獣記」も収録。
     シリーズ完結編は、終末や別れを強く感じさせる短編が並びます。老店主が作った最後のマティーニがテーマの「ラストマティーニ」。「プレジール」では、3人の女性常連客で結成した居酒屋探検隊“プレジール”の岐路が語られます。「背表紙の友」では、常連の東山が会社を辞めて岩手・雫石の旅館の番頭に。工藤の元に香菜から十数年ぶりに手紙が届く「終幕の風景」。「香菜里屋を知っていますか」では、「香菜里屋」の過去が明らかとなります。
     いやぁ、本音を言えば、もっと「香菜里屋」シリーズの新作を読みたかった。けれども、著者が明確にシリーズを終わらせていますし、冗長さやマンネリ化をよしとしない「引き際の美学」も、このシリーズらしいといえるかもしれません。しかし、何より、2010年に著者が若くして亡くなったのが残念でなりません。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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