裏切り涼山 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062768405

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  • 浅井家の滅亡を決めた男が、
    行方知れずになった娘に逢いたいがために、
    篭城中の別所家へ侵入する。

    目指すは裏切り者を探し出し、開城させること。

    だが、もくろみはなかなかうまくはいかず、
    城はどんどん追い詰められていく。

    篭城という状況をかなりリアルに描いていると
    思います。

  • 秀吉の播磨制圧は苦境に立っていた。
    盟主別所家の居城三木城を包囲して一年。見通しが立たない。
    竹中半兵衛は、ある男を城に入れ、調略による開城を進言する。

    涼山。
    かつては浅井家の家臣だった。
    信長方に内通、浅井家滅亡のきっかけを作った男。

    半兵衛の要請を再三固辞していた涼山にもたらされた情報。
    自害したはずの娘が三木城内にいる。


    寺本生死之介。
    滅亡した尼子家、十勇士の生き残り。
    秀吉に仕え、毛利家に復讐する機会を窺う。
    忠義に生きてきた生死之介にしてみれば、裏切って主家を滅ぼした涼山は唾棄すべき相手。
    半兵衛の下知に従い、嫌悪しつつも行動を共にする。

    やがて生死之介が知る涼山の真実。
    そして涼山が知る娘の真実。
    慟哭と希望。

    城内の家臣団は一枚岩でなかった。
    城に入った農民たちに対する配慮も残酷なもの。
    疲弊する農民の心は別所家から離れていくのに、それが解らない家臣団。
    実は当主別所長治もまた苦しんでいた。


    忠義―――こんなのは嘘。

    一番は不安、そして恐怖。
    新しい時代が判らない。
    覚悟がない。

    ならば、抗うだけ抗っての死。
    美意識ではなく、無策無能が生み出す無駄死。
    それに飾り物の当主と領民まで巻き込んで。

    浅井家の時代、それに気付いて行動、裏切り者の汚名を着た涼山。
    その代償として家族も失った。

    その再現だった。
    知っている人間だから、竹中半兵衛は涼山に託した。

    涼山自身、三木城で守りたいものが出来た。
    だから闘った。
    付き従う者も増えてきた。
    誰もが気が付いた。
    生きるために勇気を出す事を。

    涼山が赤子に語りかける。
    「そなたは、何で身を立てる
      坊主はやめておけ。座禅は足が痛いぞ・・・・・・・
       侍も戦ばかりの辛い日々だ・・・・・・・・・
        領主が下手な戦をすると、百姓もえらい目にあうな・・・・

           何をやっても、人間は大変だなあ 」


    いつの時代だって、人間は大変っすよ。

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著者プロフィール

中路啓太
1968年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得の上、退学。2006年、「火ノ児の剣」で第1回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞、作家デビュー。2作目『裏切り涼山』で高い評価を受ける。綿密な取材と独自の解釈、そして骨太な作風から、正統派歴史時代小説の新しい担い手として注目を集めている。他の著書に『うつけの采配』『己惚れの記』『恥も外聞もなく売名す』など。

「2022年 『南洋のエレアル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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