新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769327

作品紹介・あらすじ

長い尾をひいたおそろしい彗星が地球にむかってくるというので、いつも静かなムーミン谷は大さわぎに。ムーミントロールは仲よしのスニフと遠くの天文台へ出かけ、彗星をしらべてくることに。道中、スナフキンや可憐なスノークのお嬢さんと友だちになるけれども、ぐんぐん彗星は近づいてきて……。

世界中で愛されているフィンランドの作家、ヤンソンが描く「ムーミントロール」のお話は全部で9つ。このお話は、幻の第1作「小さなトロールと大きな洪水」が発表されるまでの長い間、第1作とされていたものです。

感想・レビュー・書評

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  • 恐れられて嫌悪される彗星はソビエト連邦の侵略のアナロジーだろうか。
    「彗星って、ほんとにひとりぼっちで、さびしいだろうなあ……」
    「うん、そうだよ。人間も、みんなにこわがられるようになると、あんなにひとりぼっちになってしまうのさ」
    彗星の孤独は現代ならばウクライナを侵略するロシア連邦の孤立に重なる。

    ムーミン一家らは彗星の衝突に備えて洞窟に非難しようとする。フィンランドはソビエト連邦に侵略された。洞窟への避難が空襲に対する防空壕への避難に重なる。今はロシア連邦がウクライナを爆撃しているため、その思いを一層強くする。

    洞窟への避難を進める間も各人は切手コレクションやケーキなど各々の関心事に気をとられ、カオスである。公務員的な効率性を追求すると各自の行動を一旦全て停止させて計画通りに動かそうとするだろう。しかし、それでは各人を無駄に待たせることになり、非効率であるし、そのように各人に動くものではない。個々人に我慢を強いて全体の効率を目指そうとする公務員的な管理主義は個人主義の世界では成り立たない。

  • 「ムーミン谷の彗星」再読しました。子供の頃はキャラクターしか知りませんでしたが、高校生の時にシリーズ全巻読み、当時アニメしか知らなかったので原作はこんなに哲学的内容だったのかと驚きとても楽しめました。
    登場人物(人じゃないけど)たちはそれぞれ自分の考えを持ち、それがどんなに変わっていても、その考えや行動がその人なんだと思っています。
    そしてムーミンたちは基本的に明るく幸せなのですが暗い気持ちになることもあり、それを作者も登場人物たちも否定せず受け入れているところが良いんですよね。


    ===
    <ムーミンたちの住んでいる谷間は、とてもきれいなところです。そこには小さな生き物たちが、たくさん幸せに暮らしていて、大きな緑の木々が茂っていました(P5〜)>
    ムーミン一家は、ムーミンパパ、ムーミンママ、息子のムーミントロール、そのお友達で小さな生き物(見かけはネズミとワラビーの中間みたいな)のスニフで暮らしています。
    でも最近、天気の様子がおかしいんです。哲学者じゃこうねずみさんは「彗星がぶつかって地球が滅びてしまう前兆じゃ」なんて言います。不安がるムーミントロールとスニフに対してムーミンパパとママは言います。「それなら大きな天文台のある”おさびし山”に行って、本当に彗星がぶつかるのか、宇宙ってどんなものなのか見てきてちょうだい」と言います。重大な旅を任されたムーミントロールとスニフは大張り切りです。「それでママが安心できるなら調べてくるよ!」
    こうして二人は筏に乗って旅をはじめました。途中で旅人のスナフキンと出会います。すぐに気があった彼らは一緒に旅を続けます。スナフキンは、鳥の羽根を付けた帽子をかぶりテントとハーモニカだけを持って気ままな旅ぐらしです。歌を作り、いろんな話を知っていて、物を所有することをとっても嫌がります。「持って帰ろうとすると難しくなるから、見るだけにして頭の中に閉まっておけば、なんでもぼくのものだよ」って言います。
    三人は旅を続けて、”おさびし山”の頂上の天文観測所につきました。そこにいた天文学者さんは言います。「彗星は、4日後に地球に衝突するよ。そうしたらどうなるか?それはわたしたちの研究には関係ないね」大変です!急いでうちに帰らないと!
    三人は帰り道で、ムーミントロールと同じような姿をした、スノークと妹のスノークおじょうさんに出会います。
    ムーミントロールは、おしゃれでかわいいスノークおじょうさんのことがとっても好きになり、一緒にムーミン谷に帰ろうって誘います。

    彗星が迫ってきて、地球の様子も変わってきました。とても暑くて、海は干上がり、どこもかしこも灰色です。ニョロニョロの大群はどこかに移動するし、動物やトロールたちも安全だと思う場所に避難しようとしてます。
    でもムーミントロールたちは、ムーミン谷の家を目指します。自分たちが戻るまでパパとママは絶対待っていてくれているに決まっています。ちょっと遊びに行ったときのようにね。
    ほら!ちゃんと待っててくれました。おかえりなさいのケーキを焼いて、いつもと全く同じように家を綺麗にして。
    でも彗星がぶつかるなら頑丈なところに隠れなければいけません。ムーミン一家、スナフキン、スノーク兄妹、哲学者じゃこうねずみさん、そして途中で出会った収集癖のあるヘムル族のヘムレンさんは、みんなで洞窟に入ることにしました。
    でもちょっとした行き違いでスニフがすねて洞窟を飛び出してしまいます。ムーミンママは「あの子は少しの間一人になりたいのよ」と見守ります。でも心配したムーミントロールが探しに行こうとすると「これはしなくちゃならないことなの。早く行きなさい」と送り出してくれました。
    ムーミントロールはスニフを必死で探して二人は仲直りして洞窟に戻ります。


    ついに彗星がやってきました!
    隕石は降り注ぎ、地面はグラグラ揺れ、山は崩れ、彗星も地球も悲鳴を上げています。

    …翌朝、みんなで外に出てみると…、地球は滅びていないし、干上がった海も帰ってきました。ああ、どうやら彗星はしっぽがちょっとかすっただけで宇宙に飛び去ったようです。みんなに怖がられる彗星はきっとずっと孤独なんでしょう。

    さあ、みんなでお家に帰りましょう。

  • 癒しを求めてムーミン谷へ!
    ムーミンのシリーズの中でこの作品だけは再読だったが、あまり物語のあらすじを覚えていなかったので1から楽しめた!
    なんなら過去に読んだ時より破天荒な物語を楽しむことが出来たように思う

    いや〜、定期的に口悪かったりするけど憎めない可愛さ!
    ムーミントロールもだけど、キャラひとりひとりが定期的に毒を吐くのが個人的には面白い!
    可愛い見た目してるくせにお口の悪いギャップにふふっと笑ってしまう
    ムーミントロールはこれと決めたら突っ走っちゃうし、小さなスニフは臆病だけど時の自分見てもらいたいタイプだし、スナフキンは途中でキャンプアイテム捨てさせようと誘惑するし笑
    個性的な子達が沢山でもうそこがツボになる
    (過去に読んだ時はそこがあまり好きくなかった気はするけれど……)

    彗星が地球に落ちるかもしれないという一大事の時に行く小さな冒険
    ムーミンママとパパ、子供たちに冒険行かせるなよー!と突っ込みたくなってしまった笑
    ムーミントロールと小さなスニフ2人だけの冒険は、たくさんの仲間たちに出会う
    スノークのお嬢さんって、名前ないのかな…可哀想と思うほどスノーク(兄)、スノークのお嬢さん(妹)的な感じで物語が進んでいく
    お名前が兄の付属品みたいな扱いだけど、お嬢さんはそれで良いんかい!?とか思ってみたり
    冒険も紆余曲折
    お金が無いのにお店に寄ってみたり、竹馬に乗って海を横断してみたり(お店は最終的に無償だった←えっ、なんで!?笑)
    ツッコミどころは沢山だけど、同時に閃にも溢れてるからすっごく楽しい
    竹馬もそうだけど、竜巻が怒った時にスカートを小さな気球代わりにして空を飛び帰るまでの時短に使ったり、洞窟の中で彗星墜落の危機を回避したり
    次はどんな奇想天外な事が待っているのだろう?とワクワクさせてくれる
    ワクワクドキドキの作品は、小さな子達に読み聞かせしてあげたくなるような楽しい物語

  • 小学生くらいのときに一度、ムーミンシリーズを読んでみようと思ったのですが、途中で挫折しました。
    …というのも、登場人物たちがみんな自分勝手だと思ったから。
    私の目には、彼らが超マイペースだったり、自分のことばかり考えているように映っていました。
    「お姉ちゃんだから我慢」と言われることの多かった私は反発したくなってしまったのです。

    今回読んでみたら、ずいぶん印象が変わっていて驚きました。
    彼らのマイペースさや好きなことを好きなようにやっている感じは"自分が自分らしくふるまえて、周りもそれがあたりまえだと思っている"…ということなのですね。
    そう思えたのは、自分が大人になったこともあるし、長女の呪縛を気にしなくなったからかもしれません。
    彗星接近という大ピンチにも関わらず、自分の蒐集している切手のことばかり考えているヘムルのことも「しょうがないなぁ…」と苦笑しながら温かい目で見守る余裕ができていました。

    ムーミントロールが、スノークのお嬢さん(アニメだとフローレンでしょうか)を大切にしたい、という気持ちがひしひし伝わってくるのがよかったです。
    スナフキンから彼女の話を聞いたときには「女の子はみんなばかだよ」なんて言ってたくせに。
    男の子のかわいらしい一面にほっこりさせられました。

  • ムーミンシリーズ2作目。解説にもあったが、1作目同様まだ暗めの作風。登場人物も増えてきた。家も友だちも整ってきて、これからの物語が楽しみ。








    ★だれでも、すっかり安心していられる谷なんだよ、あそこは。目をさますときはうれしいし、晩にねるのもたのしいのさ。


    ★人間も、みんなにこわがられるようになると、あんなに、ひとりぼっちになってしまうのさ

  • よくよく確認すれば、この本は“小さなトロールと大きな洪水“の次の巻であり、“たのしいムーミン一家“より前の話だった。
    “たのしいムーミン一家“が先だと思っていたので、どうりで、哲学者・ジャコウネズミがムーミン屋敷になぜいるのか、当たり前に利用している洞窟に対してこの洞窟は僕が見つけたんだぞ!というスニフ、などの知らぬエピソードの違和感があったわけだ笑
    しかしアニメ版だと“ムーミン谷の彗星“は映画版として採用されているので、少し違和感があった。

    何はともあれ、本書ではジャコウネズミ、スナフキン、スノーク、スノークのおじょうさんらの初登場回となる。
    『←この先 野外ダンス場 売店』p130
    という挿絵がシュールで可愛い。

    「そうだな。ぼくは、見るだけにしてるんだ。もってかえろうとすると、むずかしいものなんだよ。そして、立ち去るときには、それを頭の中へしまっておくのさ。ぼくはそれで、かばんをもち歩くよりも、ずっとたのしいね」p60

  • 子ども時代に、果てしなく長く感じたムーミン。
    大人になっても改めて読んでみたら、あっさりと読めてしまった。

    最初ムーミン谷にいるのは、ムーミンパパ、ママとムーミンとスニフだけだった。
    ジャコウネズミから「彗星がぶつかる」と聞いたムーミンとスニフが、天文台目指して旅をする途中でスナフキンに出会い、天文台からの帰路にスノークたち(アニメ版でいうフローレン)とヘムレンさん出会い、仲間を引き連れてムーミン谷に帰ってくる。

    自称哲学者のジャコウネズミの言い分、私は「ほんまかいな?」な目で見てしまったけど、本当に彗星はやってきた。でもぶつかりはせず、彗星のしっぽがかすっただけ、というエンド。
    彗星について言えば、本当かどうか怪しいジャコウネズミ情報に端を発して大冒険することになるんだもんねぇ。
    誰もジャコウネズミを疑わないあたり、ムーミンの世界だなぁ。

    ムーミンママは、小説で読むと、アニメで見てたよりもずっと「ムーミンママ」だった。
    ムーミンママって、何事も受け入れるのが早いんだよね。疑ったり、騒いだりしないで、地球が割れちゃう!という情報すら「あらまあ、そうなの」とあっさり受け入れちゃう。
    すっとぼけてるように見えるけど、ムーミンへの優しさと愛情があるから、本当にあったかい。
    一番好きなキャラです。

    ムーミン、ちゃんと読みたかったから、これから少しずつ読んでいこうと思います。



  • 昔、小学生頃に読んだ記憶のあるムーミンのお話は“彗星”だった。赤い彗星がムーミン谷に迫る。薄暗く重たい雰囲気のなか、どっしりマイペースを崩さないママや、最後のときまで心地よさを手放さないスナフキン、憎たらしさやぴかぴかの正義感を兼ね備えた素直で可愛らしい仲間たち。誰が欠けても出来上がらない、完璧な物語。

  • 赤く光らせた彗星が地球に向かって進んできている。
    ムーミン谷は大騒ぎ!
    彗星を調べるために天文台へと出掛けますが…。
    竹馬出てきた時は「?!!」ってなりました笑

    スナフキンやスノークのおじょうさんと出会う
    ここではまだミィは出てこない
    おっとりしてたり忙しなかったり、いろんな性格の登場人物がいる ただみんなに共通していることは
    自由に自分らしく生きている

  • ムーミンの全集を買ったので読み始めた。
    この物語はムーミントロールたちがムーミン谷へ引っ越してきたからの出来事になる。原因不明の現象を調べるために旅に出るムーミントロールとスニフ。その旅先にてスナフキンやスノークのおじょうさんと出会うことに。やがて明かされる地球に迫る彗星。果たして彼らはどうなるのか!?というような話。
    スナフキンの性格が良い。どこか飄々としていて、彼の万物に対する姿勢に惹かれる。個人的にはスニフは気に食わんが、それでも多様な在り方を見せる様々な生き物が寄り添って生きていくことに意味があるのだと思った。

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著者プロフィール

1914年、ヘルシンキ生まれ。画家・作家。父が彫刻家、母が画家という芸術家一家に育つ。1948年に出版した『たのしいムーミン一家』が世界中で評判に。66年、国際アンデルセン賞作家賞、84年にフィンランド国民文学賞を受賞。主な作品に、「ムーミン童話」シリーズ(全9巻)、『彫刻家の娘』『少女ソフィアの夏』(以上講談社)など。

「2023年 『MOOMIN ポストカードブック 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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