おまえさん(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (616ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770736

作品紹介・あらすじ

父親が殺され、瓶屋を仕切ることになった一人娘の史乃。気丈に振る舞う彼女を信之輔は気にかけていた。一方、新兵衛の奉公先だった生薬問屋の当主から明かされた二十年前の因縁と隠された罪。正は負に通じ、負はころりと正に変わる。平四郎の甥っ子・弓之助は絡まった人間関係を解きほぐすことができるのか。『ぼんくら』『日暮らし』に続くシリーズ第3作。

感想・レビュー・書評

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  • 文句なしに面白い。一つの大きなストーリーを中心に☆残り柿☆転び神☆磯鮑☆犬おどしと続いていく、どの話も捨てがたい、また繋がってもいる。

    何がいいって会話がいい。言葉に出さずとも、暗黙の了解というか、それぞれが思い遣り、思慮深いのでしょうか
    こんな人情は夢のまた夢。
    平四郎、政五郎下では河合屋丸助、小平次
    弓の助の二つ上の兄「弓の助は五男」三男の淳三郎が出てくる
    弓の助の身内との顔、立場やらいろいろわかる。

    時代言葉ー手代や子飼、夜鷹、風紀紊乱「普段使わない時代物」いいね。
    たまには昔の言葉も、耳障りがいい。 

    侘助も出てくるー何かをすまながってるのか詫びるように俯いて咲くことからこの名がついた。「好きな花です」

    読書によりいろんなことをまた得る

    花を知り音楽を知り地唄やら雅楽やらクラシックやらいろんなことに造詣が深ければ深いほどまた読み方も変わる。かもしれない
    まだまだだなぁ。たどり着けない道はるか!



    恋あり、殺しに盗人
    富籤と
    いろんなことが散りばめられている、退屈しないこんなところがうま過ぎる、

    本文よりー男はどこまでも莫迦で
          女はどこまでも嫉妬やきだ。ー
    いつの時代も男は莫迦なんだ「ごめんなさいな男ども」

    最後に表題「おまえさん」というのがストンと胸に収まるーそうだったのだ。
    宮部みゆきという作家は凄すぎる。
    好きな登場人物は杉村三郎だけでなく、増えるわ
    この作品だけでもどれだけたくさんの人物に心を奪われた。やはり悲しいね。

    面白いだけでなく
    強い感動を覚える。すごいなぁー尊敬。
    読んでる時は楽しいけど
    「おまえさん」の世界にどっぷり使ってる。
    終わりにつけて寂しくなる
    さあ「ぼんくら」「日暮らし」に続いて「おまえさん」今度は何を読もう^_^
    もう手元に
    「泣き童子」「あやかし草紙」がー
    後遺症で
    この時代の言葉を使いたい「アホか自分」

  • 男はどこまでも莫迦で。
    女はどこまでも嫉妬やきだ。
    どっちも底なしだ。
    俺はもう勘弁してもらうよ。

    長い1200頁以上にも及ぶ本格時代推理モノの今回は、本格的な恋のあれこれの話だった。

    人間の心は底なしである。

    宮部の小説はいつも長いが、描いていることはいつもその一点だ。

    雑誌での連載は09年に終わり、後は終章を描くだけになっていたのに、今まで延びてしまい、「申し訳ないから……」と単行本と文庫同時発売になったいきさつは、推測するほかはないが、宮部が恋の落し処に未だ迷っているという証左なのだ、と私は思ったね。同じ年齢(とし)の私が思うのだから、間違いは無いと思うよ。

    白髪の多い薄い鬢を指で掻いて、源右衛門は初めて恥じ入ったようにうつむく。
    「やはり、わからん」
    むしろ学問を続けるほどに、わからないことが増してゆくようだった。
    「それでも、儂は学問をしてよかった。人というものの混沌が、その混沌を解こうとして生み出した学問が、儂にわからぬことの数々を教えてくれた」

  • たくさん出てくる登場人物の人物像が様々で違っていて面白い。
    とくに女性キャラクターの描き方はアガサクリスティーを連想させるもので、女性作家だなあと思いながら読みました。

  • 上巻でまどろっこしいと感じた人々の絡みも下巻では重要な設定だったと納得。史乃、信之輔、みな哀しい。

  • ぼんくらシリーズ3作目。前2作が面白くて続けて読み耽ってしまった。本作はかなりの分量の長編であるが飽きさせない。後半では愛憎の感情に焦点を当てすぎてちょっと冗長な感もあったが、読後感の良い、次を次をと読みたくなる作品。残念ながら現時点ではこの後はまだないようだが。
    本作では、シリーズ主人公のぼんくら同心、井筒平四郎と脇を固める甥の弓之助、長屋のお徳さん、政五郎親分と養子のおでこに加え、若き同心間島信之輔とその大叔父である本宮源右衛門が加わり良い味を出している。弓之助が絶世の美男子に対し、信之輔は剣術(捕物術)の達人で性格も素直、全てにおいて優秀だが、金壺目のご面相がため息をつかせるほど残念。この信之輔の初恋が捜査の足を引っ張る。事件は辻斬りとも思える殺人に端を発し生薬屋主人の殺人事件へ。一見繋がりのなさそうな事件が、源右衛門の見立てで繋がっていく。この事件の推移を中心に物語は進むが、同時並行で挿入されている、おでこの実の母親を取り巻く出来事、富くじにあたった仙太郎という男が起こす横恋慕事件が、物語全体の深みを増させている。
    時代小説であることを忘れさせるほど、巧みに人の心理を描いており、加えてウィットに富んだ文章はさすが宮部みゆき。

  • 「ぼんくら」「日暮し」に続く、本所深川の同心・井筒平四郎が
    主人公の、江戸を舞台のした時代劇シリーズ、第三弾。
    ・おまえさん 十九~二十一・・・弓之助の謎解きに衝撃が!
    ・残り柿・・・おでこの実の母おきえの動向と語る告白に政五郎は。
    ・転び神・・・賑やかになった丸助の周辺。助っ人淳三郎が登場!
    ・磯の鮑・・・逡巡する信之輔を立ち直らせたのは多くの人の言葉。
    ・犬おどし・・・二人の行方が判明・・・そして、おまえさん!
    きっかけは様々です。それは些細なモノかもしれない。
    たまたま聴いてしまったこと。
    しかし、その後の人生は綱渡り。
    それで生まれた因縁を断ち切って綱を渡り切れれば良いが、
    因縁に飲まれて足を踏み外せば、奈落に落ち、悪事を重ねる。
    おまえさん本編は謎解きから始まり、暴かれた首謀者たちの、
    逃走で一旦幕が引かれる。
    続く3編の事件の幕引きの間にも捜索は続き、
    最後の1編で「おまえさん」の幕が閉じ、完結する。
    男はどこまでも馬鹿で、女はどこまでも嫉妬やき。
    恋は盲目と言いますが、これが物語の核に。
    多くの登場人物が描く人間模様は、絡み合って終結を迎えますが、
    相変わらずの方々のみならず、新しい登場人物も個性的で、
    また、シリーズに登場していた人物も名前だけでも登場するのが、
    なんとも嬉しい。それと終盤に登場する淳三郎が、良いんだな。
    それにしても、人だなぁ。
    恋もあれば嫉妬あり、人だからこその愛憎劇だなぁと、しみじみ。

  • 「ぼんくら」から始まる同心 井筒平四郎と周辺の人々の物語の最終巻を読み終えた。村上豊さんのひょうひょうとした挿画も味わいがあって、手に取るのが楽しみなシリーズだった!

    宮部さんの時代小説は、人物造形や描写について、その背景や人物描写がとても丁寧で、作り込まれたあざとさも感じず自然で、興味深く読み易いという印象。

    おそらく、宮部さんと描かれる登場人物たちの程よい距離が、読んでいて心地よいと感じるのだと思う。遠すぎず、近すぎず、それぞれ魅力もあれば、誰しも認めたくない人間の業や性由来の気性に、どこか自分を重ねながら読んでいるのかもしれない。

    ただ、この長編シリーズ、さすがに最終編のため、多めの登場人物たち。記憶がすぐ飛ぶので、忘れないうちにと、私自身がこの下巻は消化試合の感否めず。

    女性の嫉妬にスポットを当てている描写が少しばかり多めで、事件の種明かしも「さもありなん」。もう少し毛色の違うエピソードや背景があれば、さらにぐいぐいだったかな。

    個人的には、おでこ君の実母おきえの来た道、行く道が人間臭くて良かった。自分勝手で、子を捨てる事すら厭わない女性。女性の道を選んだようでいて、実は自己決定をきっちりと。宮部さんが善悪ではなく、描き切っている様が心地よかった。

    さてと、次は「あかんべい」読もう。楽しみが続く。

  • 手に手を取って姿を消した二人、消えた娘を想う若い同心、その他もろもろ番う男女と居場所のない者のお話を散りばめながら人斬りの事件は解決を迎える・・・

    あ~、丸助おじさんが癒し・・・。
    今回お徳さんはひたすら美味しい料理をふるまうおかみとして登場。もっと長屋のしっかりもののおばちゃんとしての彼女が見たかったなぁ。弓之助のお兄ちゃん淳三郎がいいキャラとして新登場。
    分厚い上下巻でしたが、宮部センセは一人の人間を描くのでもある時は人のいい人物としてまたあるときは卑小な輩として両面を描くようにしているのかしら。
    単なる悪役でもなく、ただの気弱な運のない人でもなく。
    描かれ方がぶれなかったのは平四郎さん、奥方、お徳さん、弓之助&三太郎(おでこ)&淳三郎兄ちゃん、政五郎夫婦、丸助おじさん。
    この人たちは役割が固定しているからブレないのかな。
    星がみっつなのは、下手人が何を考えどういうつもりでそうしたのか、また思い違いを誰かが正したりしなかったのが悔しいのでこんだけです。
    恋ってそんなに人を狂わせるものなのかしら。
    共感できず。

  • 上巻で弓之介がある程度、事件の道筋をつけ、
    下巻ではその謎解きと事件のその後がたっぷりと。

    うーん、女の子はわからん。
    恋は盲目、恐ろしや。

    丸助さん、夜鷹のお仲さん、
    弓之介の兄の淳三郎のやり取りが楽しく、
    ちょっと重めの事件に光を指していてホッとしてさせてくれる。
    淳三郎が活躍するような続きを期待してしまう。

    前2作の方がが人情ものの色が強かったのでサクサク読めたなぁとは言え、よく見れば、今作が1番ページ数多くボリュームがあるので、それからすると、やっぱり続きが気になってサクサク読めたのであった。

    やっぱり宮部氏のシリーズものは続きを期待させてくれる。

  • 今年の「読み初め」にしようと思って我慢していた、とっておきの一冊。元日と二日にわたって読みふけって、たっぷりと堪能した。こういう全幅の信頼感を持って読んでいける作家さんはちょっと他に思いつかない。素晴らしかったです。

    時代小説は苦手で、宮部さんの作品も現代物が好きだ。でも、本作に連なるシリーズは楽しんで読んできた。いつも感じるのは、登場人物がみんな生きていて、ほんの端役に至るまで人間としての奥行きがあることだ。のっぴきならない「その人らしさ」が立ち上ってくるようだ。特に、善人とは言えない人たちの描写に力がある。「人間」というものを抉りだしていくその筆致は、現代物ではしばしば胸に痛すぎる気がしてしまうが、こういう時代物ではワンクッションある感じがして、ほっとする。

    善人といえば、本シリーズおなじみのお徳さんがその代表だろうが、本作では丸助さんという、これまた絵に描いたような「いい人」が登場していて、しみじみ温かい気持ちにさせてくれる。こういう人たちが、宮部作品では実は主役なんじゃないかといつも思う。こういう人間を書きたいから小説を書いているんじゃないかなあと勝手に思ったりしている。

    考えてみると宮部さんの書かれるものではいつもそうかもしれないが、本作では特に、印象的で語りたくなる人物が目白押しだ。老番頭の善吉さん、本宮源右衛門、弓之助の兄淳三郎、玄徳医師、夜鷹のお仲…、まだまだいるが、どの人をとっても主人公となる物語が作れそうだ。いやまったく素晴らしいです。

    • じゅんさん
      ホントに!ホントに!(*^_^*)
      ほんの脇役である人までが、しっかりと血肉を持った人物として立ちあがってくるのが嬉しいですよね。
      玄徳...
      ホントに!ホントに!(*^_^*)
      ほんの脇役である人までが、しっかりと血肉を持った人物として立ちあがってくるのが嬉しいですよね。
      玄徳医師だって、お仲だって、顔の輪郭や佇まいまで私の頭の中に浮かんでますもの。

      そっか、お徳さんや丸助さんが主役・・。(*^_^*)うんうん、そんな風に思うと、新年早々気持ちが温かくなります。
      たまもひさん、どうぞ今年もよろしく!でございます。
      2012/01/03
    • たまもひさん
      こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。
      昨年は多くの方にとって大変な年になってしまいました。被災者の方を思えばたいしたことはないので...
      こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします。
      昨年は多くの方にとって大変な年になってしまいました。被災者の方を思えばたいしたことはないのですが、私個人もちょっと辛いことの続いた一年でした(たなぞうがなくなったことも、その中のちっちゃな一つかもしれません)。
      今年はなんとか良い年になってほしいなあと祈りながら、力づけられるお話をまず読みたいと思い「おまえさん」をとっておいたんです。本当に宮部みゆきさんはすごいですね。
      今年もたくさんお話しさせてください。今年の初コメントありがとうございました。
      2012/01/04
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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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