モダンタイムス(下) (講談社文庫)

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著者 : 伊坂幸太郎
  • 講談社 (2011年10月14日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062770798

モダンタイムス(下) (講談社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 伊坂さんの作品の中で一番好きかも。
    全体の感想はうまくまとめられないので、とりあえずひとつだけ。

    最後のシーンがすごくいい。
    「勇気は彼女が持っている。俺がなくしたりしないように」
    この台詞、たまらなく好き。

  • 浮気をしたら、妻の依頼した拷問のお兄さんがやってくる…。そんな恐妻家のシステムエンジニアは、謎の失踪をとげた先輩五反田の後をついで、発注元すらわからない出会い系サイトの仕様変更を請け負うことになる。
    そのサイトのシステムの謎を解析するうち、複数の検索ワードに行き当たる。その検索ワードを調べた者に、次々と不幸が襲っているのだ。

    伊坂ファンは多いけれど、私はこれまでぴったり嵌ったことがなくて、周囲の評価や人気とのギャップに、何で私にはわからないのだろうとこっそり「伊坂コンプレックス」だった。
    この本は、その伊坂コンプレックスを払拭できたかも?と思わせてくれた。これから好きになるかも、みたいな仄かな予感!わくわく。(と書くと恋みたい)
    ぽんぽんとテンポのよい会話は気持ちよく、大きなうねりの中で翻弄されながら少しずつ真実に近づいていく流れが絶妙で、面白かった。

    非現実的な出来事が次々と起こり、妙に飄々とした主人公がなぜかそれに巻き込まれていく…という流れは伊坂流そのものと思う(というほど伊坂さん読んでないけど、たぶん)。
    私がこのモダンタイムスにしっくりきたのは、伊坂さんがあとがきでも「この作品にとって重要なのは、事件の真相を隠そうとする力、その力に翻弄されることで、真相そのものではない」と書いているように、メッセージ性がはっきりしていたからだろう。

    “誰それが悪いっていうんじゃなくてな、『そういうことになっている』としか言いようがない出来事であふれている。”
    “アリは賢くないが、コロニーは賢い”
    “真実は、姿を変える。見えているものがすべて本物とは限らない。”

    そして、ツボだったのは奥さんですね。
    いかに妻に気を遣い恐れているかを話す上司たちの話を聞き、「恐妻家にプロアマがあるとすれば、あなたがたはアマもアマ、アマ中のアマだ」と内心毒づく夫(主人公)が面白い。
    世の中で一番嫌いなのは浮気。何事にも動じず潔く、ありえない破天荒っぷり。こんなスーパー奥さんになってみたい(笑)。
    “「人間は大きな目的のために生きてるんじゃないの。小さな目的のために,行動したら?」”
    ここぞというところの台詞がかっこいい。
    最初は単なる恐ろしいだけの奥さんだったのが、事件に巻き込まれていくうち、主人公の奥さんを見る目がどんどん変わっていくのもいいなぁと思った。

    あとがきで、作中の作家を「井坂好太郎」としたのは、単純に小説家の名前を考えるのが面倒だったから自分の筆名を変化させただけだとある。
    でも、作中の「井坂好太郎」の台詞は、伊坂さんの気持ちが多分に込められていたと思う。

    「小説は、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ。」「小説で世界なんて変えられねえ。逆転の発想だ。届くかも。どこかの誰か、ひとり」

  • ある言葉を検索した人は皆襲われたり事件に巻き込まれ、友人井坂には新作原稿を託され、たどり着いた先には可愛い老女と元美人モデルがいて、刺客は何故か拷問され、古い映画にヒントを探す主人公。

    そのうえ井坂には連絡が取れず、結果的に彼から託されたメッセージをもとに、失踪していた先輩と共に国家の英雄を待ち伏せ。

    この辺りからちらりと、ゴールデンスランバーに似ている…と思ったら、やはり同時期に書かれた作品であり、あとがきには「 二卵性双生児のような作品 」とあった。

    システムエンジニアだった伊坂幸太郎本人の経歴も生かされているような、不思議に色々な要素が入り組んだ作品でした。
    「 そういうことになっている」とすべてがシステムの一部にされている不気味さはなんだかリアルで生々しい。

    「 人間は大きな目的のために生きているんじゃない、もっと小さな目的のために生きている。 」
    『 小説で世界なんて変えられねぇ。でも届くかもしれない、どこかの誰か、一人 』この言葉が印象的。

  • ある複数の言葉を同時検索すると、社会的抹殺の憂き目にあうという話。その裏には国家的プロジェクトが失敗したという秘密が隠されていた。「魔王」「モダンタイムス(上)(下)」の3冊を続けて読んで、作者の伝えたかったことがやっとわかった。「ゴールデンスランバー」にも通じることだが、国家という大きな組織が個人に牙をむいたとき、個人は抗いようがない。今回の場合、さらに「国家命令」を実行に移している個々人には、その忌まわしい事態に加担しているという意識もなく、まさに「モダンタイムス」の歯車のごとく粛々と働いている不気味さ。

  • 村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を思い出した。
    ソフィスティケートされた社会では、投げた小石が誰にぶつかるか分からない。それは自分に跳ね返ってくるかもしれない。
    作品のテーマはそんな感じ。

    伊坂作品を久々に読みましたが、作品のテンポ感を「そうそう、こんな感じだった」と思い出しながら楽しみました。
    もうちょっと重さが欲しいかな。

  • 人は、知らない事があったら、まずネットで検索する。

    けど、この本を読むと、検索をするのが怖くなる。

    検索したことで、自分の興味を持っていることを知られたり、誰かに情報を盗まれたり、と個人情報が漏れてしまうんじゃないかと不安になる。

    個人情報が漏れたことで、自分の身に危険が。それだけでなく、家族、身近な人達の身にまで危険が起こってしまうのではないかと。

    最近は情報社会で便利になったけれど、逆に危険なこともたくさんあると、改めて思った。




    印象に残った言葉。
    "人生を楽しむには、勇気と想像力とちょっぴりのお金があればいい"


    色んな小説にも引用されているチャップリンの台詞。

    逃げないで、恐れないで、踏み出そうとする勇気。

    それから、物事をじっくりと考える力、相手を思いやる心(イマジネーション)。

    それとちょっぴりのお金。
    有りすぎても、無さすぎても不幸になるのがお金。ちょっぴりあるくらいが一番幸せになれると思う。

    この言葉は、人生を支えてくれる言葉だな、と思った。

  • 上下巻読了。
    面白い!ラストは一気読みでした。

    最初、主人公の状況には救いがないし…全体的に暗くよどんだ雰囲気だし…。苦手だな。読むの止めようかな…。と思ってました。
    どのへんからだろうか。それがいきなりはまってて自分でもびっくり。そのまま後半はもうまさに一気読み!
    面白くて面白くて、ここで止まるのはもったいない!って。もうちょっとだけ!って、結局睡眠時間削られました(笑)

    そして相変わらずの軽妙な会話。つい真似して使いたくなる(実際日常で使ってたらすげー嫌なヤツになると思いますが(笑))
    でもこれだけはいつか言ってみたい。
    「その真相は気に入りません。チェンジです」って。
    痺れたなぁ~。

  • 漫画誌で掲載されたこともあり、作品全体の長さもあいまって作品自体の疾走感とは裏腹に、長さを感じた作品ではあった。

    小説としては、途中に生まれるもやもやが最後には爽快な程に晴れ渡る感覚を覚え、やはり伊坂の小説は読後感が良いと思わせてくれる。
    伏線の回収もあり、尚且つ思いもよらないとこから伏線が現れるのもやはり伊坂幸太郎作品が面白いところ。

    加えて、モダンタイムスに関しては特にそうなのだけれど、シリアスな展開もある中で、緊張感の中に時折あるユーモアさがいい具合に緊張とリラックスを行き来させてくれる感覚にもなる。

    作中にもあるように小説は沁みるものという表現を最後には感じることができ、小説に答えが載ってる訳じゃない、こういう終わりもありだよなと笑いにも似た爽快感がありました。
    終わり方、あれは最後にジョーカー切ったって感じもありましたが、、、笑

    唯一の不満は最初からあった謎が結局わからずじまいなことでしょうか。
    とはいっても最早こじ付けな不満で、もうそれはそういうことで!といった感じにすらなっている自分がいます。

  • おもっしろかったー!

    「魔王」から50年後の世界が舞台だと知ってずっと読みたかったのですが、難しそうだな~長いしな~と手つかずのまま。しかし伊坂作品なら面白いに違いない!と意を決して読書してみたところ、続きが気になって気になって読むのをやめられませんでした。

    多少難しく感じる部分もあったものの、それを補うエンターテイメント性があったと思います。ただ、魔王を読んだ際に感じた社会への焦燥感や、自己の確立性の重要さなどは感じられませんでした。

    ファンタジーな設定と現実社会の結び付け方がうまいなあ。潤也くんと詩織ちゃんの、「呼吸」後の様子が知れてよかった。

  • 実家に忘れてきました、何を?勇気を。

    このような書き出しで始まる、主人公はいきなりの大ピンチ!帰宅したところ見知らぬ男に殴り倒され、イスに縛り付けられ拷問を受けようとしている。しかもその状況を画策したのは彼の美しい若妻なのである。

    春が二階から落ちてきた。

    過去に読んだ「重力ピエロ」の書き出しである、春と泉、二人の兄弟の追想シーンから始まる。

    なんと書き出しにこだわる作家なのだろうと改めて思った、文豪川端康成氏の代表作「雪国」の有名な書き出し「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」これがまとまるまで数十回の書き直しがあったというが、伊坂氏はどうなのだろ?印象的過ぎるきらいがあり、そのままでは状況もわかりずらいだろう、にもかかわらず冒頭から読者をその世界に引きずり込むに、容易いのである。

    「ゴールデンスランバー」と執筆時期が被っていたようである、作品の根底にある警鐘というか恐れるべきものは、なるほど似てるように思える。今作において自分なりに一言で作品を述べるなら「真実とは?」である。真実とは実際に起こったことでなく、大多数の人が真じる事象が真実になり得る。これは恐ろしいことであり、10~20年先の、ネットがさらに社会に食い込んだ作品世界では現実味も甚だしい。

    主人公は巻き込まれる、こうあろうとする世界が邪魔者を排除する為のシステムから追われ、逃げて、反撃しようとする。恐ろしいのはシステムなるものの正体が「ない」ということなのだ。その中にあっても、人間が、組織、システムに組み込まれ個性を失う恐怖を、作者は払拭してくれる。タイトルにもあるとおり喜劇王チャップリンの作品を引き合いにして…

    「人生に必要なものは勇気とユーモアと、ちょっとのお金」

    伊坂氏のチャップリンに対する思いに共通の思いを感じて嬉しくなる。その他にも「独裁者」「ライムライト」「殺人凶時代」などへの言及があった。

    スピードも、状況の変化反転も慌しいが一気に読ませてくれる、会話も伊坂調は健在でユーモアもいい、結末はややモヤっとしたものが残るがキッチリ型をつけ過ぎても作品の世界観を壊すことになってしまうのだろう。

    かくて最後は書き出しとの対比となるセリフが印象的である。

    「勇気は妻が持っています、僕が失くしたりしないように」

    主人公の妻は得体の知れぬ恐ろしさがあったのに、いつのまにかかわいらしく愛妻に収まっていた。読者の感情も同じなんだろう、これが一番の伊坂マジックに思えた。

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5年前の惨事-播磨崎中学校銃乱射事件。奇跡の英雄・永嶋丈は、いまや国会議員として権力を手中にしていた。謎めいた検索ワードは、あの事件の真相を探れと仄めかしているのか?追手はすぐそこまで…大きなシステムに覆われた社会で、幸せを掴むには-問いかけと愉しさの詰まった傑作エンターテイメント。

モダンタイムス(下) (講談社文庫)のKindle版

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