銀河不動産の超越 Transcendence of Ginga Estate Agency (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771030

作品紹介・あらすじ

気力と体力不足の高橋が、やっと職を得たのは下町の「銀河不動産」。頑張らずに生きる-そんな省エネ青年を訪れる、奇妙な要望をもったお客たち。彼らに物件を紹介するうちに、彼自身が不思議な家の住人となっていた…?「幸せを築こうとする努力」が奏でる、やさしくあたたかい森ミステリィ組曲。

感想・レビュー・書評

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  • 『長針がずっと回らないまま、短針がぐるぐる時間を送るような』

    あれ?私森博嗣の作品を読んでるんだよね?三浦しをんでも、伊坂幸太郎でもなく、森博嗣の作品を。

    文章に紛れる独特のリズムと、鉄でできたような綿飴の味、拒絶に近い人への敬遠の影を少しずつ楽しんだ。

    いつ人が死ぬのだろう。どんな悲しい別れがあるのだろう。最後は全部壊れてしまうのでしょう?と、思いながら読んでいた。でも、そんなことはこの本の中では起きない。絶妙に全てが和らいで感じる。どこか暖かいような。冬の日よく晴れた昼過ぎの日差しのような。

    もちろん、森博嗣なんだから、ただじゃ終わらない。最後の数ページで濃縮された森博嗣を味わう。

    日曜日の午後に珈琲とドーナツを食べながら読むのに、とても良い一冊だった。

  • 備忘録に
    森博嗣の作品であるが、ミステリーでは全く無い。
    ストーリーらしいストーリーがほとんどない。
    オムニバス的だった前半から、後半ではそれらがつながりはじめて…という展開。といっても、特に面白いような展開は起こらず、全体的に話が薄い。


  • 勝手に、もっと難しい硬い文章を書く方なのかと思っていました。
    初めて読んだこの作品は良い意味で期待を裏切られました。
    読みやすくユーモアのある文章力に思わずにやにや。
    やられたなぁと。一気読み。
    他の作品もどんどん読んでみます。

  • ミステリー以外の森作品もたまには良いもんですね。
    何かが起こりそうなシチュエーションの中、淡々と静かに物語が進行していくかんじ。
    以前は、森さん作品はミステリーのシリーズ物以外さして興味がなかったのですが、これを読んだらちょっと意識変わりました。

  • 私にとって初めての森博嗣作品。理系の難しい話かと思えば全くそんなことはなく読みやすい話だった。
    登場人物みんなが個性的ながら、悪者が一人もいない世界。ぼんやりと流されて生きる主人公 高橋にせっかちな私はうずうずしたりしたけれど、優しい人柄と努力を継続できる高橋だからこそ得られた幸せにぐっときた。
    そして、舞台となる高橋たちの暮らす家の進化にもワクワクし、読むのが楽しかった。想像が難しいので是非とも実在してほしい。

    私自身も、今ある幸せを自分の努力によるものだと認めてあげようと思えた、優しい作品!

  • 森博嗣先生の作品に初めて触れたのはあの有名な「すべてがFになる」で、そこから森ミステリの世界にどっぷり浸かった。そしてミステリ以外の森作品にも手が出た。そして本書はまさに森ワールド。いつも流されていて気力が人よりないと感じる主人公。そんな彼が周囲の人からはやめとけといわれる、不動産会社に就職する。そこに訪ずれる奇妙な人々。そして徐々に変化していく主人公の青年。小説という架空の世界でありながら、他人の人生を追体験できる。そんな素晴らしい作品。

  • 森博嗣の長篇小説『銀河不動産の超越(英題:Transcendence of Ginga Estate Agency)』を読みました。
    ここのところ、国内の作品が続いています。

    -----story-------------
    人気ミステリィ作家が放つ、どきどき×ラブコメ×青春小説!

    気力と体力不足の高橋が、やっと職を得たのは下町の「銀河不動産」。
    頑張らずに生きる――そんな省エネ青年を訪れる、奇妙な要望をもったお客たち。
    彼らに物件を紹介するうちに、彼自身が不思議な家の住人となっていた……? 
    「幸せを築こうとする努力」が奏でる、やさしくあたたかい森ミステリィ組曲。
    -----------------------

    文藝春秋が発行する隔月刊の電子小説誌『別冊文藝春秋』に連載後、2008年(平成20年)に刊行された作品です。

     ■銀河不動産の超越
      Transcendence of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の勉強
      Learning of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の煩悩
      Desires of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の危惧
      Misgiving of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の忌避
      Avoidance of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の柔軟
      Flexibility of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の捕捉
      Acquisition of Ginga Estate Agency
     ■銀河不動産の羅針
      Compass of Ginga Estate Agency
     ■解説 遠山涼音

    無気力・無関心・無感動── そんな僕の人生が変わる!!

    毎日がなんとなく気怠い“省電力”青年・高橋は、惨敗続きの就職活動の果てに「ここだけはやめておけ」と言われた銀河不動産に入社した… 「いろいろ見せてもらううちに住みたい家が見えてくる」という曖昧な資産家夫人や、「寝ている間に日光浴したい」というミュージシャン、「スウィングしている部屋に住みたい」という芸術家等々に部屋を斡旋しているうちに、彼自身がとんでもない家に暮らす羽目に、、、

    ついには運命の女性までが… 無気力青年・高橋はサラリーマン生活をまっとうできるのか? 極上のユーモア・エンターテインメント!

    危険を避け、できるだけ頑張らずにすむ道を吟味し、最小の力で人生を歩んできた高橋青年に感情移入しながら読み進めました… 青春小説要素が強かったかな、、、

    ミステリを期待して購入していたので、ちょっと肩透かしを食った感じでしたが… 銀河不動産を訪れる奇妙な要望を持った客や、「奇妙な館」に集まる不思議な人々との交流を経て、高橋青年が成長する姿が微笑ましく感じられて、いつの間にか自分がその館に住んでいるような気分に陥ってしまいましたね。

    秋の夜長にピッタリの優しい気持ちになれる不思議な物語でした。

  • 久々に読んだ森先生の本。やはり面白い!!
    SMシリーズ読み返そう!


    四月は君の嘘風に表現すると、モノクロだった人生が主人公の人生が、不動産屋に就職し、様々な人たちの人生に触れることで色づいていく物語。
    天才が出てくるわけでも、殺人が起きるわけでもない、とびきり仰天するドラマもない。ただし客はみんなちょっと変。
    いつの間にか引き込まれる。

    登場人物への共感は難しい。主人公は熱量が低いし、みんな好き勝手に生きてるし。
    なんで面白いのか。なんで?と言われたら、無理やり捻り出さずに、何ででしょう?とか聞き返そうなくらい熱量が低い、その絶妙な空気感

  • 「すべてがFになる」や「スカイ・クロラ」シリーズとはまた違った森博嗣さんで爽やかで読みやすかったです。
    読み進めていると、人との出会いの中で流され続けた結果、幸運にも物事が上手くいく主人公と感じました。
    しかしある登場人物の最後のセリフで全てが繋がり、まるでミステリィのトリックが分かった時のようにスッキリしました。

    「幸運といったものはこの世にはない。あるとすれば幸せを築く能力。幸せを築こうと努力をしたということだけ。その能力と努力によって、順当に作られていくのが幸運なのです。」

  • 完全無気力、日々頑張らなくていい方法を模索して生きてきた青年・高橋が就職したのは、大学から「ここだけはやめておけ」と言われた銀河不動産。
    顔も口も声もでかい気力満々の社長・銀亀元治と、年齢不詳、控えめだけど鋭い洞察力を備えた事務員・佐賀佐知子と共に社会人生活のスタートを切った高橋は、ひょんなことから客である大地主の間宮葉子から、超個性的な間取りの家を借り受けることになる。

    ――玄関ホールの左右に一段低い部屋が二つ。とても大きい。左右対称だった。いずれも、奥へ行くほど天井が高くなる。奥の壁の高い位置半分は、全面がガラス。そちらは方角では北になる。青一色の空が、窓の外に見えた。異様に大きい空間である。とても、住宅とは思えない――
    まさに「ノースライト」の家。工学部建築学科助教授だった森さんの意匠を空想して物語に入り込む。

    何事にも白黒をはっきりとつけない、よく言えば人柄がよく、悪く言えば優柔不断な高橋は、どんどん周りに流されていく。行きがかり上とかひょんなことからといった事情の積み重ねで、彼の住む家がだんだん変貌を遂げていくのは想像の範囲内で、ありがちなコメディを見ているよう。

    と、ここまではなんだかな~って感じだったんだけど、この物語の肝はラストの間宮邸でのやり取りにある。
    ――幸運といったものは、この世にはない。あるとすれば、幸せを築く能力、それを持っていた、幸せを築こうという努力、それをしたというだけのことです。その能力と努力によって、順当に作られていくのが幸運なのです――
    ここに来て振り返る高橋の生き方、人との関わり、そんなにうまくいくわけないよな~って思いながらも、彼でなくてはこうはならなかったな~と、ちょっと爽快で、ほんのり温かい気持ちで読み終わりました。

    余談:昨日読んだ「森には森の風が吹く」ではこの作品について森さんは、
    ――この作品を読んで、「真面目にやっていれば、いつか報われるという教訓」を読み取った人がいるようだが、そんなことを読み取られるとは、まだまだ作家として脇が甘いというしかない。真面目にやっていても、報われないことの方が多いだろう。と正直に書いた方が、ずばり通じるのだろうか――
    と書いていた。やっぱり相当天邪鬼だわ~

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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