キング&クイーン (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062771986

感想・レビュー・書評

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  • 二度読み必至!! 新たなる「ゲーム」、ここに始まる。

    「巨大な敵に狙われている」。元警視庁SPの冬木安奈は、チェスの世界王者アンディ・ウォーカーの護衛依頼を受けた。謎めいた任務に就いた安奈を次々と奇妙な「事故」が襲う。アンディ(キング)を狙うのは一体誰なのか。盤上さながらのスリリングな攻防戦(ゲーム)――そして真の敵が姿を現した瞬間、見えていたはずのものが全て裏返る!

    <ゲームを始める際の心得>
    一、相手の手を、注意深く読め。
    一、相手の心を、注意深く読め。
    一、考えろ。無限の可能性を疑え。

  • 表題の意味が最後に来るまで分からなかった…
    いつもながらグイグイ引き込まれました。
    どうしてもページを捲る手を止められないけど、ゆっくり味わいながら読んだ方が美味しい本です。

  • 元SPの冬木安奈。成り行きでチェスの世界王者アンディの護衛を依頼される。変わり者のキング、アンディを狙う敵は誰だ?
    物語はアンディがチェスを始めた頃、安奈のSP時代、そして現在が交差しながら進み、否応なしに引き込まれる。ゲームが動き過去と現在が繋がった時、敵の正体が見えて来る。
    チェスを全く知らない私でもグイグイ引き込まれ、驚きの中で読了出来たのは流石。仕掛けがなくても、安奈の過去話や元上司との絡み、面白かったです。天才チェスプレイヤーの天才が故の苦悩。己の全てを賭けられるほど魅了されるものがある事は、幸せと同等の孤独や葛藤があるんだね。凡人の私には難しいですが。

  • 〇 概要
     元警視庁SPの冬木安奈は,ひょんなことから,チェスの世界王者であるアンディ・ウォーカーの護衛の依頼を受け付けた。謎めいた任務に就いた安奈を,次々と奇妙な事故が襲う。チェスの世界王者であるキング=アンディを狙うのは,本当にアメリカ大統領なのか。チェスの基盤さらながらの攻防戦…そしてアンディを狙う真の敵の姿は?

    〇 総合評価 ★★★☆☆
     二人の「アンディ」を誤認させる叙述トリック。SPである冬木安奈を全面的に押し出し,その回想シーンを描くことで,「アンディ」の子ども時代の話をアンドリュー・ノーマンの子ども時代の話と誤認させるという叙述トリックがこの作品の全てであると言っていいだろう。よって,この叙述トリックに騙されたか,それとも,叙述トリックがあると少しでも疑ってこの作品を読んだかで,評価は大きく変わると思う。
     ラッキーなことに私は前者。SPを主人公としたアクションモノだと思って読んだので,まさか叙述トリックがあるとは思わなかった。さすがに,アメリカ大統領が黒幕だろうとは思わなかったが,もう一人の「アンディ」が黒幕だとは全く疑わず,最後で大きな驚きを受けた。こういう読書体験ができたのはラッキー。
     ただし,驚きこそあるのだが,物足りなさもある。後に残らないのだ。叙述トリックモノは,後で作品を読み返したときに「ここの,この描写はそういうことか・・・」とか思う部分がどれだけあるかで,読後のインパクトにつながる。この作品はそれがほとんどない。
     世間的な評価の低さも,これが原因だろう。叙述トリックがあると思わずに読んだ私ですらそうなのだから,叙述トリックだと途中で見抜いた人だともっと評価が低くなりそう。柳広司の小説の上手さ,キャラクター造形の上手さは感じたが,傑作とまではいいがたいか。★3で。

    〇 サプライズ ★★★★★
     この作品のプロットは,アンドレア・ノーマンの子ども時代の話をアンドリュー・ウォーカーの子ども時代の話と誤認させるという叙述トリックにより,黒幕であるアンドレア・ノーマンの存在を隠しているところにある。本格推理小説などであれば,叙述トリックで真犯人を隠すことが推測しやすいが,本作品のような冒険小説・アクション小説風の雰囲気の作品で叙述トリックを仕掛けるというところに意味があると言える。この作品を「叙述トリックがある作品」として読めばサプライズは感じないが,「叙述トリックがある」ということを知らずに読むと,大きなサプライズを得ることになる。私自身はラッキーなことに巧者だった。終盤で,大きな驚きを得たので素直に★5を付けたい。

    〇 熱中度 ★★★☆☆
     ストーリーのテンポはそれほど良くない。アンディの過去の回想シーンだけでなく,冬木安奈のSPを辞めた経緯の回想などが混じるからだ。アンドレア・ノーマンの子ども時代の話をアンドリュー・ウォーカーの子ども時代の話と誤認させるために,冬木安奈の回想シーンも入れているのだと思うが,物語への没入感はやや薄れてしまう。ただ,黒幕は誰なんだ?という関心はあるので,そこそこは熱中して読めた。★3で。

    〇 インパクト ★★★★☆
     叙述トリックに見事に引っ掛かったので,インパクトはある。とは言え,伏線に乏しく,後から「やられたー」とは思いにくかった。そういった意味ではあとに残らないので,★4どまり。

    〇 読後感 ★★★☆☆
     アンドリュー・ウォーカーがアイスランドに引き取られるというラストこそやや救いがあるが,アンドレア・ノーマンは悲惨な人生を過ごしている。冬木安奈はやや救いがある。トータルで見ると読後感はそれほど悪くない。ただし,読み終わった後の感想は,叙述トリックだけが頭に残ってしまうので,読後感はあまり関係ないかも。

    〇 キャラクター ★★★☆☆
     冬木安奈,アンドリュー・ウォーカー,宋連花,首藤武紀など,それなりにキャラクターは立っている。冬木安奈の回想シーンに出てくる入江康憲,ちょい役の袴田店長やリコまで,それなりに個性的。柳広司の小説の上手さが感じられる。キャラクターは★4を付けたい。

    〇 希少価値 ★☆☆☆☆
     柳広司は人気作家といっていいだろう。(講談社文庫)100周年書き下ろしという話題作。希少価値はないだろう。

    〇 メモ
    〇 プロット
     ときどき挿入されるアンディの子どもの頃の話を,アンドリュー・ウォーカー(アンディ)の子ども時代と誤認させる叙述トリックが仕掛けられている。
     物語の最後の部分で,アンドリュー・ウォーカーを中尾大樹と李周明という二人のチンピラが襲い,失敗するが,これは真犯人であるアンドレア・ノーマンの作戦だった。中尾と李の襲撃をわざと失敗させ,自らアンドリューを銃殺しようとするが,安奈に阻まれて失敗する。
     キング&クィーンというタイトルにも二重の意味がある。キングはアンドリュー・ウォーカーだが,クィーンは冬木安奈ではなく,アンドレア・ノーマンを意味している。
    〇 冬木安奈
     ヒロイン。元SP。現在はバー「ダズン」のバーテンをしている。ひょんなことからチェスの元世界王者や「アンディ・ウォーカー」の警備をする。
    〇 袴田店長
     バー「ダズン」のマスター。ゲイ。
    〇 リコ
     クラブ〈マグノリア〉のホステス。
    〇 北出課長
     殉職した冬木安奈の父の警察学校の同期。安奈をSPに推薦する。終盤で,おとりとなって中尾大樹と李周明の襲撃を失敗させる。
    〇 宋連花
     安奈にアンディの警備を依頼した女性
    〇 アンドリュー・ウォーカー(アンディ)
     チェスの元世界チャンピオン。腎臓を悪くしており,余命あと1年と言われている。
    〇 首藤武紀
     冬木安奈のSP時代の上司。
    〇 中尾大樹と李周明
     アンディを襲っていたチンピラ。
    〇 入江康憲
     安奈がSPを辞めるきっかけになった事件の被害者
    〇 アンドレア・ノーマン
     もう一人のアンディ。この作品の真犯人であり黒幕。自分の人生を台無しにし,9・11のテロで姉を失った原因がアンドリュー・ウォーカーにあると考え,同人の殺害を計画した。

  • 元SPの不愛想な女性が、チェスの世界チャンピオンを狙った事件に巻き込まれていく話
    題名の由来は最後になるとわかる

  • 元spがチェスの世界チャンピオンの護衛をする話

    最後のオチは全く気づかなかった
    全体的にわざとらしさ感が気にはなったけど引き込まれた

  • ジョーカー・ゲーム以外の柳広司イマイチだなぁ・・・って思ってたがこれは面白かった!!
    ラストまでなんでキング&クイーンなのか解らなかったが、なるほど、と思った。
    久々にちょっと読み返してみたいと。

  • 面白かったし、騙された。
    チェスのことはよく知らないけど、それでも楽しめた1冊。

  • 本作で意味ありげに引用されているJ・L・ボルヘスと言えば、今や有名無実化した文芸部のM下さんを思い出すわけですが(笑)、本編の内容に関わってくるわけではないので特にこれ以上は触れません←

    チェスのチャンピオンである男の信奉者が、「チャンピオンが何者かに命を狙われている!多分、黒幕はアメリカ大統領!!」と、元SPのヒロインに助けを求め、当初は渋っていたヒロインもやがてチャンピオン周辺のキナ臭さを嗅ぎ取って独自に動き始める、というのが、主軸となる現在進行形のストーリー。

    そして、もう1つの軸となるのが、「チャンピオンがチャンピオンになるまでの軌跡」を描いた、過去のストーリー。

    この「2つ」のストーリーが交互に語られ、やがて意外な事実が最後に明らかになる、という「意外なラスト」系ミステリです。

    このタイトルを明示されておいて、このオチに気付けなかった私の頭って、何てお花畑なの←

    その一言に尽きます。
    でも、その方がいい読者って言えるよね。ね?←←

    キングが「彼」なら、クィーンは誰か?

    そう自問できる読者は不幸です!←言い過ぎ

    あとは、容疑者が大統領って提示をしちゃった時点で、さぞスケールのでかいインターナショナルなビッグネーム達の思惑が交錯するサスペンス展開なんでしょうな?!
    と思ってたら、意外とこじんまりしたとこにランディングしたのが一番の意外な展開でした。

    柳先生、もしかしなくても、短編の方が面白いかもしらん←

  • おもしろかった。最後まで読んでタイトルに納得。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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