新装版 雲の階段(上) (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772075

作品紹介・あらすじ

離島の診療所に勤める三郎は、島で唯一の医師である所長を助け、医師資格を持たない身ながら診療を行っていた。所長が島外へ出かけたある日、観光客の女子大生が急患として運び込まれる。今すぐ手術をしなければ、若く美しい命が失われる。三郎は意を決して、初の大手術に挑むが…。手に汗握る傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 東京から船で7時間かかる離島の診療所。
    そこに、事務見習いとして採用された、相川三郎は、
    診療所の所長・村木の指示で、検査技師として訓練を受け、器用にこなして行く。
    挙げ句の果てに、診察や、手術も手伝う事になる。

    無資格である事に、不安を抱きながらも、医療に関わる事が、楽しくて仕方ない三郎は、日増しに、腕を上げて行く。

    診療所の人々は、反発するが、ただ一人、看護師の明子だけは、暖かく見守る。

    そんなある日、所長の村木が、三日間、東京へ行く事になり「あとを頼む」と出かけてしまった。

    そこへ、東京から遊びに来ていた、女子大生・田坂亜希子が、運び込まれた。
    子宮外妊娠で、早急に手術をしなければ、助からないと。

    電話で所長に指示を仰ぎながら、本と首っ引きで、漸く難手術を終える。

    亜希子は、東京の大病院の院長の娘だった。
    腕を見込まれた三郎は、亜希子の父親から、亜希子の婿になって欲しいと言われる。

    偽医者という事がバレないか、ハラハラドキドキ。
    随分、昔の本ながら、流石、渡辺淳一さん。引き込まれて読んだ。

    それにしても、「自分は、医師資格がないけど、所長が言うから、仕方なくやってる」
    「見つかったら、困る。でも、所長が言うから仕方ない」
    「今からでも、医学に通って、資格を取ろうか」
    「いや、入試が難しいし、学費もない。しかも、時間がかかる」
    「仕方ないから、このまま、無資格で、医者のまねをしておこう」
    なんと、煮え斬らない男だこと。

  • 医師が一人しかいない離島で、事務員として働く三郎。唯一の医師である所長の教えの元、検査技師の仕事を始め、だんだんと医師の仕事まで行うようになっていた。所長不在の台風の日、東京からやってきた女子大生が急患として運ばれてくる。彼女の命を救うために緊急に手術を行うことが必要であり、三郎は一度も行ったことのない難しい手術に踏み切り、見事成功させる。
    そのことをきっかけに、三郎の運命はとんでもない方向へ動き始める。

    医師免許を持たない男に、手術や診察をさせる所長の神経が信じられないと思いながら読んだ。でも、まともな医師の寄りつかない離島で、何も知らない住民はもちろん三郎の素性を知り初めは反発していた職員たちからも少しずつ信頼を得ていく様子をみるとこの離島の中でだけなら……と容認したくなった。
    ただ、命を救った女子大生亜希子に夢中になり、三郎がこれからとんでもなく危険な方向へと進んで行きそうで、ハラハラする。純朴で不器用な三郎が、都会的で奔放な亜希子にどんどん惹かれていく様子、これまで三郎を支え続けてきた看護師の明子との関係の変化など、男女の機微が丁寧に率直に描かれていて、男のいやらしさ、女のずるさ強かさがとてもリアルでさすが渡辺淳一!と思った。

    下巻が楽しみです。

  • 上下巻の長編作で、以前ドラマで観たことがあり、いつか読みたいなぁと思ってた作品。人間としてや男としての狡さが詰まってて良い気持ちはしないが、いつバレるかとハラハラしながら読み進めた。何でも資格化するのは悪いとは言わないが、取得する費用が高すぎるよね。

  • 正に映像化したら生きる作品なのでは

  • ドラマを見終わってから、ざっと読み。ドラマを見終わってから読んだため、主人公は長谷川博己のイメージ。
    ドラマのほうも原作のほうも、どちらもよく描かれているし、展開は大筋で重なっているが、変更しているところも相当あり、それぞれの展開がスリリング。

  • 島の診療所で働く三郎が所長の指示で診療を手伝い、終には所長不在で手術まで行ってしまう(゜m゜;)(島内だけの秘密( ̄b ̄))無免許で医療行為を行う三郎のビクビクする気持ちも分かるけれど、なんかイライラする(#`皿´)(渡辺淳一作品って優柔不断なくせに大胆な男が多い気が…(^^;))「そんなんじゃバレちゃうよ!(゜゜;)」と思っていでも、何故かバレないから読んでいてすごく疲れる(--;)三郎、下巻で「ぎゃふん!」って言っちゃうのかな~(^^;)

  • 評価は2.

    内容(BOOKデーターベース)
    離島の診療所に勤める三郎は、島で唯一の医師である所長を助け、医師資格を持たない身ながら診療を行っていた。所長が島外へ出かけたある日、観光客の女子大生が急患として運び込まれる。今すぐ手術をしなければ、若く美しい命が失われる。三郎は意を決して、初の大手術に挑むが…。手に汗握る傑作長編。

  • 無免許で医師の代行。最初は島民のため、純粋な気持ちが、美女を救ってからあらぬ方向へ。真実を明らかにすることなく、抜き差しならぬ事態になるのは、本来は純粋でないからなのか。2017.3.7

  •  主人公の三郎は、初めは離島の診療所で事務員として働き始めたが、所長の村木に手先の器用さが買われて、簡単な手術をさせられるようになった。高卒の三郎は当然医師免許をもっていないが、離島という特殊な環境と所長の庇護のもとで医者の真似事を続けた。
     所長は、友人の葬儀のため3日間だけ診療所を留守になければならず、その間所長に代わり三郎が一切の診療を行うことになった。留守の2日目まではたいしたこともなかったが、留守最終日に思わぬ急患者が診療所に運び込まれた。
     患者の名は亜希子で、22歳の東京の女子大生である。病因は、子宮外妊娠であった。子宮外妊娠に関して何の知識もない三郎は、至急に東京にいる所長に電話をして指示を仰ぐ。所長から直ちに手術をして、卵管に詰まっている赤ちゃんを摘出せよと言われる。手術の直前に、医学書の子宮外妊娠のページをざっと読んだだけでメスをとった。
     その後、三郎は一命を取り留めた亜希子と個人的に親しくなっていくが、ある日開業医で亜希子の父から、思いもかけぬ婿養子の縁談話を持ちかけられた。三郎にとって棚から牡丹餅であるが、いまさら医者ではないことも告げられず、返事を先延ばしすることでその場をなんとかしのいだ。

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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