猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062772211

作品紹介・あらすじ

お見合い30連敗。冴えない容貌。でも天才。婚活中の弁護士・百瀬太郎は猫いっぱいの事務所で人と猫の幸せを考えている。そこに舞い込むさらなる難題。「霊柩車が盗まれたので取り戻してほしい」。
笑いあり涙ありのハートフル・ミステリー、堂々誕生! 
TBS・講談社ドラマ原作大賞受賞作。2012年4月には、TBSでTVドラマが放映されました。
表紙のイラストはカスヤナガトさん。

感想・レビュー・書評

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  • 再読シリーズその3。
    猫弁シリーズ第一作。今さら知ったが『ドラマ原作大賞』受賞作らしい。だからビジュアルを意識した個性的なキャラクターとドラマチックな展開になっているのか。

    初めてこの作品を読んだときに伊坂幸太郎さんの作品を彷彿とさせる感覚があったのを覚えている。
    ジグソーパズルのように様々な現象、人物や事件の動き、ちょっとした言葉すら複雑にちりばめて最終的に見事に決着させている。伊坂さんもそうだが、どういう頭脳の持ち主なのだろうと感心させられた。

    シリーズを未読の方に少し説明させてもらえれば、主人公の百瀬太郎は東大卒でキャリア15年の弁護士だが、今放送中の剣持麗子のような華々しく攻撃的なタイプとは真逆だ。

    スタッフの野呂法男の言葉を借りれば『「相談事を万事まるく平和的に解決する」ほうにばかり脳が稼働する』『経営努力をしているようには見えない』弁護士なのだ。
    タイトル通りペット絡みの案件が持ち込まれることが多く、解決しても飼いきれないと押し付けられた猫がわんさと事務所に居座っている。

    だがこの作品を読めば麗子タイプとは全く違うし貧乏事務所ではあるものの、百瀬は間違いなく優秀な弁護士であることが分かるとは思う。
    何しろ三年間、お見合い30連敗しながらも結婚相談所に高い会費を支払い続ける能力があるし野呂と七重、二人のスタッフを雇うことも出来ているのだから貧乏といっても頑張っているのだろうと思う。

    このシリーズで度々出てくる、百瀬の母親の教えが実にユーモアに溢れている。
    『万事休すのときは上を見なさい。すると脳がうしろにかたよって頭蓋骨と前頭葉の間にすきまができる。そのすきまから新しいアイデアが浮かぶのよ』
    百瀬はこの言葉を忠実に守り、困ったときは上を向いて乗り切ってきた。本当に新しいアイデアが浮かんでくるのだ。

    だが後に親しい付き合いとなる大福亜子はこれを『泣かないおまじないだったんですね』と指摘する。
    単純に苦しい時悲しい時は空を見上げなさい、ではなくて『脳がうしろにかたよって』『新しいアイデアが浮かぶ』なんて、どうしてそんな言葉が思いつくのか、百瀬の母親もかなりユニークだ。後の作品で登場する母親はだいぶ印象が違ったけれど。

    そう言えば、この時は亜子に対してはっきりとした意思表示をしていなかったのだなと発見。この後亜子との関係がなかなか進まず心配しながら読んだ記憶がある。

    大山さんの作品は一般的な悪人タイプが出てこないのが安心できる。悪事や犯罪があってもフォローだったり救いがある。
    厄介なキャラクターの七重が二度も黄色いペンキで塗った事務所のドアのその色の意味も、分かると何だか素敵に思えてくる。
    一般常識のないキムラタムラの売れない芸人コンビも、理不尽な依頼をしてくるマダムも、片方の靴しか磨いてくれないおばあさんも、隠し事を隠したまま解決したい社長も、一皮むけば心の内が見えてくる。その内側を上手に掬い取り『まるく平和的に解決する』百瀬はやはり天才だ。

  •  大山淳子さんのドラマ原作(TBS・講談社ドラマ原作大賞受賞!)によるハートフル・ミステリー。今回初読でした。遅きに失しました。すでにシリーズ化され、2011〜第1シーズン全5作品、2020〜第2シーズン3作品刊行されているようです。

     なるほど、シリーズ化に納得です。素直に面白かったです。ストーリーとキャラが、完成度高く両立できている印象で、読後のホッコリ感・温かさが、とーっても心地よいですねー。

     お見合い30連敗中の弁護士・百瀬太郎。東大法学部主席卒業だが冴えない容貌とお人好しで、天才とボンクラが同居?
     事務所は、トラブルやら訴訟の果て引き取った猫だらけで、「猫弁」と揶揄される始末‥。
     こんな百瀬ですが、不器用だけど真っ直ぐな魅力がじわじわと伝わってきて、応援したり元気付けられたりするんです。

     プロット作成が入念で、5W1Hが明確でよく練られ、諸々のエピソードが見事につながり収束していく様は、感動的ですらあります。
     また、キャラクター設定も秀逸です。登場人物の性格、ビジュアルがイメージしやすく、生い立ちや境遇がうまく行動動機につながり、各キャラクターが抱えている問題、処理方法も物語の終着点に上手く帰着していると思います。

     なぜか百瀬が引き寄せている厄介な出来事も、人柄で収まるべきところに収まります。
     笑って泣ける、もう、カッコ悪いけど最高にカッコいいヒーローです!

  • ある事件を担当・解決したことからペット問題(なかでも猫)専門の弁護士と世間に思われている百瀬太郎。
    優秀な頭脳と優しすぎるハートのバランスが悪く、そのせいか事務所は年中火の車だし、お見合いも上手くいかない。
    そんな百瀬の事務所に舞い込んだやっかいな依頼。

    猫が11匹もいる事務所!
    猫好きにはそれだけでテンションあがります。
    百瀬さんの事務所で働きたい(笑)

    イメージぴったりの吉岡秀隆さんの百瀬さんはもちろん、猫もたくさん出ていたであろうドラマを観損ねたのが残念~。


    以下、内容について。進むにつれネタバレ気味なのでご注意を。

    作者がもともと脚本を書いておられたこと、ドラマの原作として書かれたこと、のせいか、簡潔でテンポが良い文章とシーンの切り替えでサクサク読める。
    反面、情景や心情の書き込みが少し薄い気も。

    平行して進む複数のエピソードと人物がだんだん繋がっていくのが、2時間ドラマ的ご都合主義で「どれだけ世間が狭いのよ?!」と突っ込んでしまったけれど、取りこぼしなく全てのピースが収まるところに収まるのでスッキリする。

    どれだけご都合主義でも、登場人物がみんな幸せになるお話は好きだ。
    「時間をかけてあらゆる制度を総動員し、オールハッピー」に導く百瀬さんのキャラが活きている。

    大河内親子は二人とも素直に表現できないけれど、根っこはとても愛情深い。似たもの親子なんだなぁ。
    母親を超えよう・倒そうと常に考えて、憎むほどになってしまった『究極のマザコン』の息子。
    口では「死ね」やら「犯人が殺してくれてれば」など物騒で親不孝な言葉を言うが、いざ母親が殺された?!となるや赤鬼のような形相で犯人に襲いかかる。
    かたや、ケンカ越しな物言いでわざと怒らせることで息子の背中を押す母親。
    「母親の気持ちなど男にわかるものか」と三千代は言う。
    けれど、わたしは進も心のどこかでわかっていると思いたい。

    ラスト、七重の語る悲しい思い出。ひまわりの色。
    最後にこの人にもっていかれるとは。

  • 「にゃんこ本100選」に載っていたので読んでみたけど、予想以上に面白かった。
    第3回の「TBS・講談社ドラマ原作大賞」というのの受賞作だそう。
    分かりやすく憎めない登場人物と、次々に巻き起こる事件や出会いにテンポ感よく・気持ちよく一気に読めた。最終的にはみんながいいところに収まるのも良かった。
    シリーズ読み進めたい。

  • 猫がらみの事件が多い弁護士の話。
    表紙イラストのイメージで期待したとおり。
    ひょうひょうとした主人公の、ユーモラスな話です。

    百瀬太郎は、キャリア15年の弁護士。
    東大を卒業した年に弁護士となり、大手のオフィスに所属、世田谷猫屋敷事件をまるくおさめました。
    それが評判となってペットにかかわる事件が殺到しすぎたため、独立。小さな事務所を構えて5年になります。
    事務所には10匹を越す猫がいて、事務員の七重は猫の世話ばかりに忙しい。
    もうかっているとはいえないけれど、仕事は途切れなく舞い込みます。

    百瀬は痩せた身体に安い背広を着て、見た目はあまりぱっとしない。
    じつは婚活のため、結婚相談所に通っているが、30連敗中。
    その理由とは?

    靴が汚れた百瀬は、たまたま近くにいた靴磨きの老婆に、片方だけを見事にぴかぴかにしてもらいます。
    靴を買いに行き、シンデレラ・シューズの見事な靴を買ってみることに。普段は買わない高価な品だけど、実に足にぴったり来るのでした。

    霊柩車が盗まれたので取り返してほしいという依頼を受け、これがシンデレラ・シューズの社長・大河内から。
    社長の母である会長の葬儀の後のことでした。
    遺体の身代金を要求する電話がかかってきたので、身代金を届けるなど交渉を一切任せるというのですが‥?

    とぼけたテンポで淡々と進むうち、癖のある登場人物が次第に生き生きと絡み合います。
    ただ、百瀬は天才ということになっているけど、あまりそういう感じはしないですねえ。
    偶然というかめぐり合わせで解決するので、ご都合主義には違いないけど~心地よく読めて、キャラや台詞にところどころ光るものがあるので、十分かも。

    うまくいかない夫婦も母子もどこかで心通い合い、うまくいかない婚活も意外な進展へ。
    文句を言う事務員さえも最後の発言に真意が見えて、と心うたれるハッピーエンド。
    読後感はとても良い!

    2011年にTBS・講談社第3回ドラマ原作大賞を受賞した作品。
    すでにドラマ化され、続きも出ています。

  • 大山さん好きの友人が貸してくれた小説。
    でも何故か、方言を文字で読むのが苦手な自分は以前、この小説の始まりのページを巡りすぐ閉じてしまった。
    それから数ヶ月…いい加減ちゃんと読まないと…友人に返却出来ない…と覚悟を決めて新たな気持ちでページを巡りました!
    …と思ったらもうその後、手が止まらず!笑
    面白かった!
    各々の場所で各々の出来事が起き、これらはどーやって繋がっていくのかが気になって、そして何より猫弁百瀬さん、まこと先生、亜子さん、七重さん、大阪弁のお二人、大家の梅園さん、なにより何より大河内三千代さん…もう登場人物の魅力がハンパない!
    皆の魅力に引き込まれ読み耽ってしまいました。
    もっと早く読んでおけば良かった!
    覚悟を決めて再度この小説を手に取って良かった!良い出会いでした。
    続きも楽しみです。

  • ミステリというよりもライトノベルという感じ。バタバタと軽過ぎて最初はなかなか読み進めるのが厳しかった。半ばを過ぎると大筋の結末も読めた(もちろん読めない部分もいくつかあったが)。
    うっかり第3作までまとめ買いしてしまったので、次作以降がもう少し読み甲斐がある事を願うばかり。

  • 猫弁5連発。
    やはり一作目が一番おもしろい。目の前にいる全ての人を幸福に導くべく奮闘する百瀬さんにただただ癒される。
    ドラマには興味なかったのですが、木村役がNON STYLEの石田さんと知り、機会があれば見ようかなと…。
    大福さんがわりと阿漕に婚約者の座に収まってて、2作目以降のかわいい亜子ちゃんとは一味違う。

  • こんなに大団円なすべてが幸せに包まれるような
    ハッピーエンドがあるんだろうかというほどの幸せに
    包まれた読後感でした!!!!!

    読んでいる途中は、見えてくる筋もいくつかあったりするので
    こんな感じかなぁ…なんて下手に推理なんてしてたら
    当たっている部分も細かく予想を超えてくれることが
    たくさん用意されていて、最後は号泣でした。

    いやな人も出てくるのに、最後にはすべてをまぁるくしてくれる
    猫弁こと百瀬弁護士。気弱なようで芯がしっかりとした
    根っからの優しいあったかいヒーローです。
    ほんとうに優しい人はココロが強い人。百瀬弁護士はほんとうに
    そんなタイプのステキな人でした。

    ちょっと…と思う登場人物もいつしかステキで
    大好きな人に変わっていく、ほんとうに幸せな物語でした。
    続編も買ってあるので、読むのがすごく楽しみです!

    • しをん。さん
      おおお!
      そんな素敵な本だったとは…。
      古本屋さんで表紙が凄く素敵で、手に入れたのですがいざ一文目を読んでみると…。

      これを機に、また読ん...
      おおお!
      そんな素敵な本だったとは…。
      古本屋さんで表紙が凄く素敵で、手に入れたのですがいざ一文目を読んでみると…。

      これを機に、また読んでみようと思います^^♪
      2012/12/02
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡えぬちゃん

      本の後でドラマを見てみたけど、ドラマもほんっとに
      ステキな世界でステキだねーー♡
      本ではドラマに書かれてなかっ...
      [♥óܫò]∠♡えぬちゃん

      本の後でドラマを見てみたけど、ドラマもほんっとに
      ステキな世界でステキだねーー♡
      本ではドラマに書かれてなかった細かな部分を補完してくれて
      それが1つ1つすごくあったかくてステキだったよ~♡

      こからもあったかい百瀬さんシリーズが長く続いてほしいよね♡
      2012/12/03
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡紫苑さん

      ご都合主義で進んでいくところもあるんですが[笑]
      でも、ここまでのハッピーエンドならそれも構わないから
      ど...
      [♥óܫò]∠♡紫苑さん

      ご都合主義で進んでいくところもあるんですが[笑]
      でも、ここまでのハッピーエンドならそれも構わないから
      どんどんハッピーな方向にオネガイっ!!!って思っちゃうぐらい[笑]
      みんなが優しさに溢れてしまうハッピーエンドで
      こんな法律の魔法が使える人がいたらステキだなぁって思う1冊でした♡

      紫苑さんにとってもステキな魔法でありますように☆
      2012/12/03
  • 【再読】
    久しぶりの再読でしたが読んでよかった!やっぱりこのシリーズ好きだなぁ。

    全てが丸く綺麗におさまる。
    そんな上手い話って思うかも知れませんが人の心のすれ違いってボタンをかけ違えただけで、猫弁先生のように丁寧にかけ直していけば綺麗におさまるものかも知れません。

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著者プロフィール

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。2011年、『猫弁~死体の身代金~』にて第三回TBS・講談社ドラマ原作大賞を受賞しデビュー、TBSでドラマ化もされた。著書に『赤い靴』、『通夜女』などがあり、「猫弁」「あずかりやさん」など発行部数が数十万部を超える人気シリーズを持つ。

「2022年 『犬小屋アットホーム!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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