シューマンの指 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062773850

作品紹介・あらすじ

音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。(講談社文庫)

感想・レビュー・書評

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  • クラシック…あまり分からん…
    シューマンとか、ベートーヴェンは知ってるけど、名前だけ…なので、色々、その辺の話をされるとサッパリ(-_-)
    また、その前振りが長い…半分ぐらい…
    いつ誰が死ぬねん!と待ち侘びる。
    えっ!ひょっとして、ミステリーちゃう⁉︎間違えた⁇
    慌てて、カバー裏のウラスジを読み返す…大丈夫や!誰か死ぬ!と再確認。
    …ホッとして読み続ける…でも…まだや〜…
    前半〜中盤:純文学
    後半 :ミステリー
    って感じ。
    後半、急展開で、その辺りは、良かったけど、前半〜中盤がひたすら長く疲れた〜(T_T)

  • こちらの作品のブクログ登録日は2015年2月7日ですが、レビューを書いていなかったので、本日(2021年7月31日)書きます。

    著者、奥泉光さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    奥泉 光(おくいずみ ひかる、1956年2月6日 -)は、日本の小説家。近畿大学文芸学部教授。

    作品の内容を、適当なところからコピペすると、次にとおり。

    音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が語るシューマンの音楽に傾倒していく。浪人が決まった春休みの夜、高校の音楽室で修人が演奏する「幻想曲」を偶然耳にした直後、プールで女子高生が殺された。その後、指を切断したはずの修人が海外でピアノを弾いていたという噂が……。

  • 面白かった。小品しか知らない「シューマン」という作曲家をこんなに愛する人がいるのか、シューマン論に打たれた。
    その上、ミステリで、青春の追憶で、最後まで読まないではいられない、手法、物語の巧みさに、何度も読み返したくなる本だった。
    図書館に返してしまったが、文庫になれば買ってもう一度読みたい。

    作者のシューマン論は、音楽の雰囲気を楽しむだけの、ただの音楽好きの私には、こういった楽譜やコードについての分析はわからないままだけれど、それなりに音楽の世界についての知識を深めさせてくれた。

    この物語は、読んだ後になって、納得できる部分が少なくない。

    そしてシューマンの生き方や、音楽論の中に、作者の深い意図が隠されているという、素晴らしい構成になっている。




    ドイツに留学した友人からの便りで始まる。
    右手中指の先を失った長嶺修人が、シューマンを演奏するのを聞いたというのだ。その上指が揃っていたのを確かめたといってきた。

    それを契機に語り手の回想が始まる。

    まるでシューマンの生まれ変わりであるかのような長嶺修人は、すでに名のあるコンクールで優勝もし、公にも知られる存在だった。

    長嶺修人が指を失った事件が起きる。
    彼が美青年で天才であるに関わらず、あまり見栄えのしない彼女を連れていた。
    そして、師事している先生とは男色関係にあると思われた。

    彼と同じ高校で私は、彼に傾倒し、彼への関心はある意味で狂気を帯びていた。

    長嶺修人のシューマンを三度聞いた、と何度も延べられる。
    高校の音楽室で長嶺修人の弾く「幻想曲 作品17」を窓の外で立ち聞きする。
    そのときプールで女学生が殺される。

    後年、便りがあったように、無くなったはずの長嶺修人の指はどうなったのか、肉体再生の秘話なども披露されているが。

    このプール脇の殺人のあとは、犯人当ての楽しみも生まれてくる。

    「シューマンの音楽には、いつも違った世界が響いているような気がする」という意味の言葉を含め、長嶺修人と私の、一時期の濃密な交わりが詳細に記されていく。
    それは、二人のピアニストがシューマンにとり憑かれた物語である。

    回覧して、いつか本にしようとした5冊のノートの後、途切れていた記述は、6冊目になって私の最後の文章で埋められていく。

    一度だけでなく読み返したい、優れた音楽小説でありミステリだった。


    実に素晴らしい謎が、重層な物語になっている、これを作り出した、同じ作者のものもっと読んでみたいと思った。

  • 奥泉光をまとめて読もうと思って何冊か積んでいたのにようやく着手。まずは比較的頁数の少ない(といっても350頁以上ある)こちらから。

    まずは1984年の手紙で始まる。語り手(手紙の宛名:里橋優)宛ての、友人・鹿内堅一郎からのドイツ旅行中の手紙。鹿内はドイツで「永嶺まさと」のピアノを聞き、本人とも話した、彼の指は再生していた、と報告してきている。さらに別の、永嶺まさとのコンサート評の新聞記事。語り手は、永嶺まさとは指の切断事故にあい、その現場に自分は居合わせたので、その指が再生するわけなどないと今も考えている。今=2008年。語り手は音大を中退して医者になっている。そこから1979年の、永嶺まさとが指を切断した事件にいたるまでの長い長い回想手記が始まる。

    切断したはずの指の再生という部分が気になり(人体再生の秘法をみつけたらしいと鹿内堅一郎の手紙はいう)何か錬金術的な幻想譚かと思い読み進めてしまったのだけど、これは目くらまし。終盤でどんでん返しが複数回ある、基本的にはミステリー。中盤で、ひとつ殺人事件が起こる。しかしそこに至るまでもその後も、基本的には頁の大半はシューマンについての薀蓄と、音大を目指す凡人ピアニストである語り手と、天才美少年ピアニスト永嶺修人(まさと)との、数年にわたる友情と愛憎の物語。

    有名ピアニストを母に持ち、若くして国際的なコンクールで1位を取り、将来を嘱望される天才かつ美少年ピアニスト永嶺修人が、語り手が高3のときに同じ学校に1年生として入学してくる。高慢で、他人を見下し、近づけない修人が、語り手にだけは興味を示し、やがて二人は音楽について語り合うようになる。さらに語り手の昔からの同級生で病気で1学年下になった鹿内堅一郎という人物が加わり、彼らは修人の愛するシューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」にちなみ、三人だけの「ダヴィッド同盟」を結成、交換日記のようなものを始めることに。

    修人の持論は、演奏などしなくても音楽はそこにある、演奏はむしろ音楽を破壊し台無しにする、人間が演奏するしないに関わらず音楽はもうすでにそこにある、だから演奏する必要はない、という天才ピアニストとしては矛盾したようなもので、語り手は修人の演奏を3度しか聞いたことがない。

    その一度目が、彼が「幻想曲の夜」と呼び何度も思い出すある夜。忘れ物をとりに学校に戻った語り手は、音楽室のピアノで修人がシューマンの「幻想曲」を弾くのを耳にする。音楽室で月光を浴びながらピアノをひく美少年、この場面は本当に幻想的で美しい。学校に残っていた美術教師・吾妻も、語り手と共に幻想曲を聞く。しかし曲が終わるとどこからか悲鳴が聞こえ、2人は女生徒の死体をひきずりプールに投げ込む殺人者の姿を目撃。そこに語り手からその前に電話で呼び出された鹿内も現れる。被害者は岡沢美枝子という女生徒だったが、犯人は捕まらず・・・。

    これ以上はネタバレになるのであらすじは割愛。

    殺人事件が起こってからも、起こった後も、なかなか全貌が見えないのでやや退屈するむきもあるかもしれないが、終盤は怒涛のどんでん返しの連続。そこまでに引っかかっていたいくつかのこと(なぜ「永嶺まさと」と平仮名表記されることがあるのか、いつもやや唐突に現れ主要人物になってる吾妻先生の動向、殺人犯の最初の告白の内容のチープさ、「幻想曲の夜」に鹿内を呼び出したのは誰だったのか、など)が全部綺麗に回収されて、とても気持ち良かった。修人がシューマンと読めることも気になってたのだけれど、作者のお遊びかと思っていたのでこれが伏線だったことも意外だった。

    シューマンについてはあまり知らなかったので勉強になりました。ちゃんと聞いてみよう。語り手の心理の屈折加減もとても興味深い。音楽を文章で表現するのは至難の業であろうに、そこは流石。さらに「幻想曲の夜」や、別荘での告白の場面などとてもロマンチックで美しかった。

  • これがいつミステリーになるの?と思いつつ、よく知らないクラシック音楽の世界の話に引き込まれ、そのうちにどんでん返しの連続で一気読み。

  • 小中の音楽の授業ってなんであんなにつまらないのでしょう?
    漫画や映画や小説で取り上げられる音楽家達は皆さん個性的で興味深く、その音楽にもついつい聴き入ってしまいます。
    今回はシューマンについて詳しくなりました。ありがとうございます。

    でも残念ながら小説としては星3つかな。

  • 前半は、ほぼ音楽と作曲家に関する記述で捲っても捲っても一向に動かない展開に挫折しそうになった。物語も半分過ぎ、事件が起こって以降は(自分の)気分も乗ってきたのかスラスラ読めた。そして、一番の衝撃は本当にラスト10ページ!
    シューマンを改めて聴きながら読んでみたい。

  • シューマンに対する知見が全くない僕でも、一種のシューマン論評を読んでるかのように魅力的な音楽性、フラジールな人物像を学んでいるという感覚。前半は特に。
    これはミステリーになりうるのか?と思ったら急に殺人事件。後半はあれよあれよと畳み掛ける展開で一気に読み進めてしまった。

    それでも音楽を文字で表現するときの幻想的形而上的言葉の紡ぎ方が心にじわっと染み込む感覚が好き。後、言葉のチョイスも深遠で幅広くて、比喩表現も巧みで好みな文章だった。

    総じてストーリーとしてはどんでん返し系。こんだけ語り尽くした物語がまさか。。。って驚きは初めてでやられた!というか推理はもう諦めてた!

  • ミステリの要素もあるけれど、それよりも音楽の小説、幻想的な青春小説として。
    シューマン自身ではなく、その分身を物語の中心に据えることで、シューマンやシューマンの作品をいきいきと語った作品なのであるなあ。
    演奏や曲の、迫力のある描写はさすが。
    物語にでてきたシューマンの楽曲を順に聴いていこう。

  • 本題に入るまでがあまりにも長く、久しぶりに途中で投げ出したくなった。ミステリ特有の「なんとなく大事そう」なフレーズも分かりにくくて、かつオチも急展開過ぎてついていけなかった。苦手。唯一、装丁だけは好き。

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著者プロフィール

作家、近畿大学教授

「2011年 『私と世界、世界の私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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