- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062773942
作品紹介・あらすじ
人を欺けば謀られ、人を信じれば殺される。木曾谷の治世をめぐり反目する木曾家当主の義昌と弟の義豊。武田に殉じるか織田へ寝返るか-谷間に常と変わらぬ春が訪れたとき、兄弟は慟哭の中で身悶えしなければならなかった。武田家滅亡が招いた鬼哭啾啾を活写し、極点での人間の本性を炙り出した傑作戦国絵巻5編。
感想・レビュー・書評
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2020年の一冊目は、伊東潤さんの『戦国鬼譚 惨』。どの作品も最後のどんでん返しが良い。戦国という時代が人を醜くさせてしまうのは分からなくもないが、読んでいて「人はなんと浅ましいのか……」と思ってしまう。その中で「温もりいまだ冷めやらず」だけは、なんだか心が救われる作品。
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短編集。
「木曽谷の証人」(木曾義昌・義豊)
「要らぬ駒」(下條一族)
「画龍点睛」(武田逍遥軒信廉)
「温もりいまだ冷めやらず」(仁科五郎盛信)
「表裏者」(穴山梅雪信君)
人を欺けば謀(たばか)られ、人を信じれば殺される。
木曾谷(きそだに)の治世をめぐり反目する木曾家当主の義昌と弟の義豊。
武田に殉じるか織田へ寝返るか――谷間に常と変わらぬ春が訪れたとき、兄弟は慟哭の中で身悶えしなければならなかった。
戦国絵巻5編 -
滅亡へ突き進む武田家。
崩れ始めると、このようなものなのか。 -
木曽谷の証人 他4編の短編集。いずれも、武田軍の崩落していく姿を外側からだけでなく、内部から崩壊していく事実経過をドラマチックに描いている。親子兄弟すら戦国時代の惨は見逃がすことはない。
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なかなかない視点。
陽の当たらない人たちを照らす。 -
木曽義昌、義豊兄弟、下條氏、武田信廉、仁科盛信、穴山梅雪と歴史の表舞台にはあまり出てこない人物が主人公となる物語が五編
木曽兄弟の話は悲しく、のちに義豊は義昌の子供に・・・ -
信玄死後、一時は盛り返すものの、長篠以降は凋落の一途。
木曽義昌謀反からの瓦解の激しさは史学的にも特筆らしい。
「人は城 人は石垣 人は堀。 情けは味方 仇は敵」
と信玄は言ったらしい。(後年の創作説有り)
極限状態に陥った時、人は何を最優先するのか。
義? 情? 利? 恨? 信? 家? 欲?・・・・・
読み終わるとね、"成程、滅亡する訳だ"
納得する一冊。 -
戦国時代の人を信じる事の危険さを、武田家崩壊にまつわる将たちを中心にまとめた一冊。短編集ではあるのだが、武田家の将と武田家滅亡というイベントがこの短編集に長編としての物語性を与えている。そして読了後に感じるこの無常観。騙し騙され滅び滅ぼされの果てで出てきた最終章のとある家の対比性とその家の大名ですら手を染めねばならぬ黒さに暗澹とする気持ちになる戦国の一面を鋭く描いた一冊。
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木曾義昌、下条頼安、武田信廉、仁科盛信、穴山信君。武田家滅亡により裏切り、あるいは裏切りにあい、結局は悲惨な末路をたどった者たちを描く、連作短編集。自らが誇りに思い恃むものの瓦解、身を切るような思いでかけがえのないものを断腸の思いで差し出したのに報われず、苦い後味。