十字架 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774413

感想・レビュー・書評

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  • いじめを苦に自殺した中学生フジシュン。
    残された家族、同級生、そして真相を追うメディアの記者達。
    こういったテーマは、読んでいて本当に苦しい。
    物語の初めでフジシュンは自殺してしまうので、彼の本当の気持ちは分からない。
    残された者たち一人一人が背負う十字架はそれぞれの重さで、読んでいる私たちにも、のしかかってくるようにすら感じる。

  • 重松清の本を読みたいという欲求と、題名から手に取った。
    一生十字架を背負うのは、その罪を認めた人にしか出来ない事だと思う。
    読まずにいたら考えなかったことが沢山ある。
    読んでよかった。
    出来ることなら、みんなに読んでほしい本。

  • ずしりと重たく響くテーマだけど、するする読むことができた。
    なにかを背負って生きていくこと。もう区切りをつけたほうがいいという気持ちと、忘れてはいけないという気持ち。

  • いじめ自殺の遺書に名前が書かれてあった。
    それは、一生背負う十字架となる。
    自殺する人の最期の抵抗かもしれない。
    でもそれは、すごい復讐になるのかも。

  • イジメを苦に中学二年生が自宅で自殺した。幼馴染であるが特に仲良くなくイジメの標的になっているのを他の同級生と一緒に見ていた主人公はその遺書に親友と書かれていた事から傍観者から当事者になっていく。「なぜ自分が親友?」という疑問に応える本人はおらず逃げる事も出来ずに背負い続けた十字架。主人公は自分と同い年であり、また小説は20年後の現代まで続いてることもあり、自身の過去を省みさせる強い力があった…。

  • ずっとズルズル重たく、暗い話。一向に気分は晴れない。みんながみんな、苦しみ続けることを良しとしている。身近でこういうことを経験したことのない私には分からない。
    私は卑怯な人間だから、友達ではない人間を、自分がリスクを負ってまで助けることはきっとしない。
    学校という檻の中にいる以上、むやみに声を上げることはとても危険であることを思い出したし、そんな時代もあったなと懐かしく思った。だからこそ教師は、学校内のそういう空気にもっと敏感にならなければいけない。教育には教えるだけでなく育てるという漢字も含まれている。
    もっともっと教育関係の仕事にお金が回ることを願うばかりだ。教育に金をかけられない国は確実に悪い方向へ進むと思う。労働時間が長ければ教育の質は落ちるし、賃金などに関して言えば、働いた分だけの支払いが無いのは良くない。そもそも、教育の質は下げたくないくせに、税金が上がることには反対の我々日本国民にも問題はあるのではないか。家庭で教える事、学校で学ぶことの線引きが出来ていない馬鹿な大人が多いことも問題。改善点はたくさんある。良くなる見通しが無いから残念だ。
    と、何故か政府の方まで考えが及んでしまった…!
    .
    私がいつか母になった時、もう一度読みたい。

    好きなフレーズ:何もしなかった罪っていうのは法律にはないんだよ。

  • 何年かぶりの再読。いじめによる自殺というテーマ故、始めから終わりまで明るい要素はひとつもなくひたすら重い。自殺したフジシュンの遺書に名前が書かれていた為にその後ずっと十字架を背負うことになってしまった裕と小百合。フジシュンの両親とライターの田原の言葉がなければ二人がここまで苦しむ事はなかったと思うとまだ中学生だった二人が可哀想だが、この二人だから逃げなかったんだろうな… フジシュンは裕を一方的に親友だと思っていたが、最後は本当の親友になれたんだと思う。

  • ある日クラスメイトが自殺。その遺書に、親友として主人公の名前が書かれるが、主人公にその意識はない。自殺したクラスメイトの「親友」として、主人公は20年以上にわたって「十字架」を背負うことになる。

    いじめが誰かのみんな人生を変えることはまちがいなくて、殺人であるとも思う。
    だけど、なぜいじめはなくならないのか?

    人が死んだことを向き合わなければならない。例えそれが辛くても。人生をかえてしまっても。動揺するのが当たり前には、頭を殴られた気がした。
    ケンカしていた酔っ払いを私に止めることはできただろうか。
    子供が、亡くなった母親の肩を抱けるだろうか。

    被害者も加害者も少しづつフジシュンのことを忘れていく。
    それでも、加害者が許されることは絶対にないことを忘れてはいけない

  • 読後にずっしりと重い気持ちになる一冊だった。
    まさしく『十字架』

    登場人物それぞれの立場になって考えると、心が苦しくて苦しくて堪らなくなった。
    そして、どうにもならない苛立ちも覚えた。
    最後まで読んでも、やはり息苦しかった。

    なんで?どうして?どうすれば?
    ずっと考えながら読み進めたけれど、結論が出るのはずっと先になりそうな気がする。
    もしかしたら、死ぬまで出ないかもしれない。

    学生はもちろんのこと、かつて学生だった大人、子供を持つ親は是非読んで、それぞれ考えて欲しいと思う。

  • ここ最近の重松さん本はすべてそうですが、この本も重松さん好きの友人が貸してくれたものです。
    「いじめ」により自殺をした子どもをテーマに扱ったこの本は、とても、とても重かったです。

    親として読むか、子として読むかでも捉え方が随分違うであろうこの本は、核となる事柄があり、4年の歳月を経て小説化したものだそうです。

    「いじめ」は、いじめる側にも、いじめられる側にも焦点がいきますが、この本は「いじめで自殺した子の家族」と「ただ見ていただけの(見殺しにした)クラスメイト」に焦点が当てられています。

    見ていただけの人が何かアクションを起こしてくれたら、先生が気付いてくれたら、そうすればもっと違った結果になったのに。
    それは確かに事実かもしれませんが、最近私はこうしたクラスメイトに罪はないのではないか、と思うようになってきました。というのは、なんの責任も負えない立場で、もし何かアクションを起こしてさらに自体が悪化したら?もし自分にも飛び火がきたら?
    例えば庇ったことでそれまで張り詰めていたその子の心が折れてしまうこともあるかもしれない。先生に伝えたところで、本人が「大丈夫です」と言ったら教師だってそれ以上は踏み込めない。

    そもそも、本人から親や担任の先生等の自分をよく知る保護者に伝えるというのはいじめられてる側にとっては相当にしんどいことだと思います。だからこそ、まずは保健室の先生だったり、文部科学省が提示しているようないじめ相談の窓口が相談窓口になるんだということをもっと周知すべきなのかもしれませんね。

    1人が自殺をすると、そのことによって周りの4、5人が自殺を考えると言われるいる程自殺は影響の大きいものです。
    実際本書にも登場する自殺をした子の家族は、まるで時間が止まってしまったかのような苦しい時間を過ごしていました。自殺や他殺などは本当に多くの人に十字架を背負わせる行為だと改めて感じました。それは本当に重たい。

    「人間って、死にたくなるほどつらい目に遭ったときに絶望するのかな。それとも、死にたくなるほどつらい目に遭って、それを誰にも助けてもらえないときに、絶望するのかな」という問いかけが本書にはありますが、私はどちらでもないと思っていて、「もう希望なんてない」と深く実感してしまった時に人は絶望するんだと思います。すなわち、この先何もいいことなんてない、と思ってしまったとき。

    覚悟して読んだものの、やっぱりこの重さに引きずりこまれて苦しかったです。いじめる程気に入らないなら関わらなければいい、とはいえその人を無視する空気がクラス全体でできあがるのも「いじめ」だろうし、逃げられない(と思われている)学校という環境で無理に過ごさなくてもいい社会、選択肢のある社会にならないといじめはなくならないのではないか、なんていう風に思いました。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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