十字架 (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 476
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774413

感想・レビュー・書評

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  • 罪を忘れずに背負っていく事とはどんな事なのかを教えてくれる本。でも人は生きていれば忘れてしまう時もあって、そうでなければ生きていけない。けれども忘れてしまう事も出来ない、そうして生きていく事も出来ない。憎まれるのも憎む事もずっと続けるのは辛い。

    • workmaさん
      四季子さんのコメントを見て、読んでみたくなりました
      四季子さんのコメントを見て、読んでみたくなりました
      2021/12/14
    • 四季子さん
      重松清さんの本は読み始めるとグイグイ引き込まれて止まらなくなります。機会があれば是非。
      重松清さんの本は読み始めるとグイグイ引き込まれて止まらなくなります。機会があれば是非。
      2021/12/19
    • workmaさん
      四季子さん
      コメントありがとうございます♪四季子さんの本棚すてきなので、時々遊びに行きますね♪
      四季子さん
      コメントありがとうございます♪四季子さんの本棚すてきなので、時々遊びに行きますね♪
      2021/12/19
  • イジメにより中学二年生で自殺したフジシュン。
    遺書に「親友」として名前のあがった主人公やその家族が、罪の十字架を背負い生きていく様を描いた作品。
    テーマが重く、読み進めるのが苦しかった。それでも、最後まで読まなければいけないと思った。

    いじめた側・いじめられた側ではなく、その周りにいて何もしなかった傍観者に焦点をあてた本作。

    守ることだけが大人の役目ではない。分かるけど、主人公たちが背負わされた十字架はあまりにも重すぎた。
    いじめの傍観者の罪深さが、主人公が背負う十字架の重さとともに描かれているけれど、これだけ主人公が苦しむのならば、正義感を振りかざして生徒を学校に閉じ込めておきながら、いじめに気付かない教師や、いじめの加害者となった生徒らの罪はもっと大きいのではないか?

    苦しい長編だったけど、読み終えるときにはほんの少しだけ息が楽になった。そんな終わり方でした。

  • いじめを苦に自殺した中学生と、遺された者の物語。

    遺書に名前を記されていたのは、いじめの主犯格2人と想いを寄せていた女の子、そして"親友"である主人公の真田裕の4人だった。裕は思った。一方的に親友にされた挙句、十字架を背負わされた、と。

    十字架を"背負わされた"から"背負う"まで意識が変わるには、どれだけの苦悩があっただろう。

    いじめは無くなることがなく、今でもニュースになる。
    遺された者がどれだけの十字架を背負って生きていくのか、想像力をはたらかせてほしい。親になった今だからこそそう思う。


    「親は、学校で起きたことをこの目で見るわけにはいかないんだよ。だから信じるしかないんだ。ウチの子は元気でやってる、毎日を幸せに過ごしてる……。だから親はみんな子どもに訊くんだ。学校どうだ?毎日楽しいか?って」

    「心配するのは、親の仕事だ。子どもを信じるのも親の仕事だ。だったら、子どもが、学校は毎日楽しいよ、って言ったら信じるしかないだろ」

    「人間って、死にたくなるほどつらい目に遭ったときに絶望するのかな。それとも、死にたくなるほどつらい目に遭って、それを誰にも助けてもらえないときに、絶望するのかな」

  • 人間関係ってほんと複雑。自分が仲良いと信じてる相手でも実際はそうでもなくて、むしろ嫌われてたりする。恋人関係も。自分では気づきにくいからタチが悪い。
    この中だと親子が一番安定した人間関係なのかな。親は望んで子どもを得るから絶対的な愛情。子ども側も一人ずつしかいない両親への信頼。うざいと言いつつも離れられない関係。読後、意外と互いのこと気にかけてるかもしれないと思った。
    作中の小百合さんの言葉が印象的だった。「ほんとうに大変です。(略)生きていくしかないんだなあ、と思っています」どんな状況でも、自分ができる事をして過ごしていく。行けるとこまで行く。意外と単純な面もあることに気づいた。

  • いじめが原因での自殺。
    まだ14歳なのに。。と考えると胸が苦しくてたまらない。
    遺書に親友と書かれた子、片思いをされていて電話がかかってきたのに冷たい態度で切ってしまった子、子を亡くした親。
    それぞれが十字架をかかえて生きていく。
    重くてつらいテーマなだけに余韻がすごい。

  • 『人は、死にたくなるほど辛い思いをした時、それとも死にたくなるほど辛い思いをした時に誰も助けてもらえない時、どちらで絶望を感じるのか』(省略)
    読んだ直後は即後者を選んだ。
    あと一歩前に出たら空(くう)、なんなら崖の淵に足半分出ちゃってる様な、少しでも重心をずらしてしまったら終わるそんな状況を想像したから。
    でもこの状況の時にはもう既に虚無かともその後に思った。やっぱり分からない。

    『寂しさは、両方で分かち合うものではない。自分は寂しがっていても相手も同じように寂しがってるとは限らない片思いみたいに。相手がそばにいないから寂しいのではなく、そばにいない相手が自分が思うほどに自分のことを思ってくれていないんじゃないかと寂しい。その寂しさが寂しい。』(省略)
    が1番好き。本当にそうだと思う。しっくりきた。

    涙が溢れ出る程の感動というより、じわじわとしんしんと感情が積もる感覚がありました。

  • 古本屋で「あ。この重松作品まだ読んでないわ」と購入したけれど、いじめがテーマと知りひとりの子どもの親としては目を背けたくなるような話になかなか手が伸びず長い間積読であった。

    ようやく手に取るも最初の数ページで心臓が大きく波打つ。
    やめてやめて、死なないで。お願い話して。誰か、話を聞いてあげて。生きていれば、生きていれば!と。心で叫ぶ。

    いじめと言えば1986年のお葬式ごっこ、として有名になってしまった事件がある。
    私は当時はいなかの高校生で同じTeenagerとして衝撃的な事件だった。
    それから四半世紀。その間にもメディアで取り上げられるいじめの事件もひとつやふたつじゃない、
    きっとそれ以外にもふつうに日常的にこどもたちのあいだでは存在しているのであろう。
    何も変わっちゃいない。むしろさらに陰湿でひどくなった。うそでしょ、と言いたくなるような凄惨な事件もある。

    その間に私もひとりの子どもの親となった。この小説のユウくんのように。
    こどもには、学校はどう?楽しい?友達はいる?そんな問いかけを毎日のようにしてきた。
    『その答えを信じるしかないのだ、親は。』

    フジシュンのお母さんのひとつひとつが胸にささる。
    ユウとサユを歓待する。告訴のすすめを断る、少ない思い出話を繰り返し繰り返し。
    何度も本から目を逸らしそうになる。苦しい。もうやめて。
    小学生の父親となったユウくんが、息子と彼が憧れている友人との関係を妻から
    聞き、自分とフジシュンに重ね合わせ慟哭するくだりで鈍い痛みが極限に達する。

    ゆるしてなんかいない、ゆるせるわけなんかない、ゆるしてもらえなくていい・・
    それぞれの思いが、当事者じゃないとわかるはずなんかないのに、私になんて
    その苦しみ、わかるわけないのに、苦しくてでも読まなければ。

    最後のサユのユウくんに宛てた手紙で少し救われる。

    森の墓地のことは知らなかった。こんなにも美しい「旅のおわり」。
    いつか訪ねてみたいと思う。

    中学教師となった旧友がユウくんに「子どもと付き合いたいのはせいぜい小学校低学年まで。
    あとは一気に大学生あたりになってくれればいい」というセリフに激しく共感。

  • いじめを苦に自殺した中学生。そのまわりの人間模様を描いた作品。とても重い内容で考えさせられることが多かったけれど読んでよかった。人の細かい感情の変化がすごくうまく書かれてて、流石重松清だなと思った。
    この世界観に一気に引き込まれて、気づけば読み終ってた。読後感は意外と清々しい感じでした。

  • タイトルから予想はしていたけれど終始重く暗い。
    とことんテンション下げたい人におすすめ(?)
    自分に子供ができたらもう一度読み返したい。

  • 十字架とナイフ

著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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