美しいこと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774826

作品紹介・あらすじ

別れた女の服を着て、夜の町を歩き男の視線を浴びる快感にはまった松岡。ある夜、行きずりの男に乱暴された松岡を救ったのは、会社の冴えない先輩・寛末だった。寛末の純粋な愛に惹かれた松岡は「女装」のまま逢瀬を重ね、告白を受ける。叶わぬ愛の苦しさと美しさを描き、舞台化もされた、木原音瀬の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 講談社文庫では、「美しいこと」3分の2まで。

    それまで異性恋愛していた美形サラリーマン。別れた彼女の服を着て、メイクを覚え、女装に快感を得るようになる。美しく装った自分で街に出かけるようになっていく。
    ある時、女装した状態で乱暴された彼を、なんの見返りも求めず助けた男性がいた。同じ会社のサエない純朴な先輩だった。
    女装した自分に好意を寄せてくれる先輩の純粋さに惹かれて逢瀬を重ねる。当然、真実を打ち明ける日は、やってくる。真実を受け入れられない先輩とは、距離が離れていく。
    お互い別の異性と付き合おうとするが、二人で過ごした時間を忘れることができない。
    どうしたら良いのか結論を出せないまま、お互いの存在を探すような二人。
    受け入れてもらえないとわかりつつ、女装もやめて仕事に没頭して、忘れようとする美形リーマン。
    受け入れられないと思いつつ、どうしても気になってしまう優しい純朴青年。
    再確認のため付き合いなおそうという結末となる。
    人として好き、尊敬できるのがたまたま同性であったんだよね。BL枠からはみ出てる作品ですから、読んでね。

    • みんみんさん
      美形が切なくてね(꒦ິ⌑︎꒦ີ)
      美形が切なくてね(꒦ິ⌑︎꒦ີ)
      2023/07/14
  • 「美しいこと」というタイトルに見覚えがあり、よく考えたら舞台化された事を思い出した。高崎翔太くんが体調不良で降板した作品だと。思い出したのを機に読んでみようと思った。
    久々にBL小説を読んだが、BL小説という括りで収めるのは勿体ないほど良い作品だった。久々に恋愛小説らしさに胸が痛くもなった。

  • うぉ〜〜、身悶えた。
    寛末の純朴な優しさと一途な思いにはキュンキュンしたし、同性だと分かってからの困惑や拒絶反応も致し方ないかと思ったり。
    松岡の素性を明かせないまま寛末に惹かれ、拒絶されてからも断ち切れない思いが、痛々しくて苦しかったり。
    BLや恋愛というジャンルはあまり興味がないんだけど、睡眠時間を削るくらいこの世界観に夢中になってしまった。
    やっぱり、木原音瀬さん好きだ〜。

  • まっじで全員よめ!!!!!そこらの恋愛小説と格が違う!!!!blに抵抗ないなら読むべき!!
    てかbl抵抗あっても読め!!無くなるから!!

  • 仕事ですり減った心を癒す方法が、女装して街に出ては男たちの視線を好きにすることだった主人公が、男だと気付かれたことで痛い目をみた時、助けてくれた男と、それから女の格好で会い続け、はじめはどうやって断ろうという思考だったのが、どうやって男だとバレた後も関係を続けていけるだろうに変わっていく。そして自ら正体を明かした主人公に男は当然とも言える反応を返す。ゼロではなく、マイナスまで抉った関係からの出発を余儀なくされた男の愛は届くのか、、、


    初木原音瀬作品。表紙に釣られて買った本。
    私はあまり刺さらなかった。それは抱きしめて一晩過ごしたり、体をくっつけて長く過ごしていて本当に男性が気づかないか?という疑問がずっと頭にあって、そこまで入り込めなかった。残念。
    先は気になるからするする読めるし、BLとしてじゃなく、人が人を愛する物語としてBLに抵抗がある人でも読みやすい本なんだろうな。
    これの舞台化ってすごいな。見てみたい。

  • 『箱の中』が面白かったので、こちらも読んでみることにした。
    『箱の中』以上にこれがBLレーベルで出てたとは!と驚く内容だった。

    始まりはいつもわくわくするのに、何かと理由があって素直にそのまま進んでいけない。それって恋愛をしていれば、人と関わっていけばBLでなくてもあることだ。好きの意味も度合いも相手と自分では違うし、どれだけ示したって理解してくれないこともある。
    人間関係は偶然でも奇跡でもなく、人の努力によってつくられる。前半は寛末が、後半は松岡がそれを教えてくれる。

    恋というのはその人自身じゃなく、その人への幻想でできていると思う。なので松岡の女装姿は、その極端な形として解釈した。幻想でなくて、自分自身を見てほしいと願った松岡の気持ち、苛立ちは痛いくらいに感じる。
    寛末が幻想でなしに、相手のことを見つめるのはこれからだ。
    最初に読み切った時にはラストがもどかしかったけれど、もう一度読んだら、もっと希望が得られるかもしれない。

  • 「箱の中」に続く木原作品の講談社文庫版です。木原ファンの方々同様に思い入れが深く、何度も読み返している作品です。
    何度読んでも、痛くて甘くて胸に迫るものがあります。

    一般向けと腐向けでは、ここがボーダーラインなんだなということを今回はっきり認識しました。
    「箱の中」でも、その先が描かれている続編は収録されていなくて惜しいなと思っていたのですが、今回も同様の扱いで納得しました。
    BLを敬遠する読者が、「文学」として容認できるのはあくまでも美しいことの上下までなんですね…
    確かに、センセもひとまずここで物語を完結させているので、編集上の意図だけではないようにも感じます。
    それでも、「愛しいこと」さらには「愛すること」が収録されていないのは、ファンとして大変もの足りない気がします。
    「愛しいこと」は、BL色が本編以上に強く、読者願望もそれに応えているセンセのサービス精神も顕著だけど、なによりストーリー展開としてここは絶対外せない!と思うものがあるんです。
    私はそこでボロ泣きしてしまったんですけど…
    まだまだ松岡は数々の試練を乗り越えなければならなくて、この後の展開はもっと胸を打つものがあるので残念です。

    「愛しいこと」は、何度読み返しても感動してしまうのですが、小説の常識から言えばハードルが高すぎるんでしょうか?
    二人がハッピーエンドになるかならないかというところが、BL的には大問題でも、一般的には男同士の恋愛ストーリーにどこまで感情移入できるかというところのほうがまずは第一関門かもしれません。

    この機会に、木原作品の面白さに目覚めてくれる読者がさらに増えたらいいなと思っています。
    そして、読む人の気持ちをざわつかせて痛くさせるくせに、その先には感動と至福が待っている木原作品のエクスタシーを、ぜひ完全版で味わって欲しいなと思います。

    • komopyさん
      「愛すること」はもともと非売品でサービス小冊子でした。その後電子版で配信されていましたが現在どこも配信停止になっていて、たいへん残念です!小...
      「愛すること」はもともと非売品でサービス小冊子でした。その後電子版で配信されていましたが現在どこも配信停止になっていて、たいへん残念です!小冊子はメルカリですごい値段で売買されているみたい…
      2020/07/06
    • komopyさん
      補足で、「愛しいこと」はHolly Novels版の「美しいこと」(下)に収録されていますが、現在Holly Novelsレーベルがなくなっ...
      補足で、「愛しいこと」はHolly Novels版の「美しいこと」(下)に収録されていますが、現在Holly Novelsレーベルがなくなってしまったので、こちらも手に入れるのは困難な状況です。
      2020/07/06
    • みな太郎さん
      ご丁寧にお返事くださってありがとうございます!
      そうなんですね^^;それを知ってさらに読みたくなりました...
      ご丁寧にお返事くださってありがとうございます!
      そうなんですね^^;それを知ってさらに読みたくなりました...
      2020/07/06
  • ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか分からなかった。希望にも絶望にも感じた。最近失恋をした自分にはあまりにも苦しかった。自分の一部は愛されている感覚があるのに、自分自身には好かれている実感がない。苦しすぎる。でも、読んでよかった。私が最近失恋したからか、2人がどうなるのか正直期待した。リアルで現実味があると思った。

  • 解説ではBLというジャンルの幅広さと可能性について述べられているので、個人的になぜこの作品が一般文芸として扱われているのか、しばらく考えてみた。

    営業職の主人公・松岡が女装でストレス発散していたある夜、中年男に乱暴されそうになって途方に暮れていたところ、どんくさい総務の先輩・寛末に助けられる。
    それをきっかけに、寛末に惹かれた松岡は自分の正体を明かさないまま女装をして、寛末との交流を続ける。

    化粧映えする女装姿の松岡に惚れた寛末は、猛烈なアタックをするが、松岡が男だと知った途端、手のひらを返した様にひどい仕打ちをする。
    寛末をあきらめようと四苦八苦する松岡に対して、これでもか!と空気を読まない寛末は、松岡の前に現れては彼を苦しめ続ける……。

    身も蓋もなくまとめれば、そういう物語。

    苦しいと解りながらも何故、松岡は寛末を好きでい続けるのか。
    松岡は有能営業マンで知的かつ行動的。
    所謂、デキる男だ。
    片想いに酔うほど、本来なら頭は悪くないはずである。

    そもそも恋愛とは苦しいものだ。
    恋愛は理不尽なもので、決して答えはない。
    ただ苦しい。決して楽しくはない。

    その苦しさが全編通して描かれていて、苦しいと解りながらもズブズブと寛末を想い続ける松岡に、読者は
    「ああ、こんな気持ちになったこともあったナァ」
    とか
    「こんな情熱的な恋を一度はしてみたかったナァ」
    とか思わせる……ような気がする。

    それは古今東西、文学のテーマとして扱われ続けた普遍的なものであり、本作が一般文芸として扱われる理由なのだと思う。

  • 思い通りにはいかないことを、きちんと描く。
    恋愛の滑稽さと苦しみがこれでもかと波のように展開し、容赦がない!と悲鳴を上げそうになった…。
    同じ夢を見ていたつもりが一瞬で暗転する、残酷だけど鮮やかな筆致にうっとり。そして木原さんは情緒が未成熟な人を書くのが上手い…。
    ただ、この収録の仕方は慈悲がないのでは、と思った(笑)
    ノベルス版の下巻が読みたくてたまらない。

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著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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