現代霊性論 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775168

作品紹介・あらすじ

面白すぎる対談で明らかにされる「神さま」や「幽霊」の現代的意味。本来スピリチュアルって怪しいもんじゃありません。痛快宗教入門

感想・レビュー・書評

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  • 現代霊性論
    内田樹25冊目

    霊性というものが科学的なものかどうかは一旦“判断を停止”して、人々に現象として与えている影響等を分析する現象学的なアプローチから、宗教や共同体の慣習について論議している。死に対する態度というものは往々にして世界でも普遍的な要素が多く、面白い。
    ・墓について:西洋では身心二元論が一般的であるが、アジアでも儒教では身心二元論的な考え方をしていて、死後も魂のよりどころとして位牌が作られる文化があった。それが日本に通じて、墓が作られる。場が持つエネルギーについても面白い。繁華街というものはもともと霊的なエネルギーが強すぎる為、人が住まないことを理由に市場としての役割を与えられたところ。また、河原も元は死体の集積所であったために霊的エネルギーは強い。
    ・名づけることは呪うこと。これは面白い。名前を付けるという行為が、縛りをもたらす効果について。確かに「何々病」とつけると途端にそのような症状が出てくることはよくある。寝ながら学べる構造主義でのソシュールの項では、西洋には「肩がこる」という言葉が存在しないため、肩がこらないという話があったが、その話もこの類だろう。また、明治時代に苗字帯刀というムーブメントがあったが、これは今まで個人としての名前が重要視されなかった村社会から、国家と一対一対応の紐帯(ある種の呪い)が結ばれた瞬間であるという。さらな、かつて名前を他人に知られることを忌む文化があり、官職や地名で呼ぶことが多かったのも、名前を知られると呪いをかけられるという通念からである。漫画デスノートも「名前を書かれたら死ぬ」ノートであり、本質的には呪いである。

    ・宗教ブームの構造分析だが、オウム真理教は内部に整然としたヒエラルキーを作ったことによって、「表」の社会で思うように昇進できない人々を包摂した。信者は徐々に上がっていくランクに満足感を抱き、そちらに嵌まっていく。ラーメン二郎を愛好する人々には宗教的なまでに厳格なルール(早く、無言で食べることや残さないこと)があるが、「表」の世界ではデブ等の罵声を浴びる人が、ジロリアン内で共有される価値観では奨励され、二郎の世界に嵌まっていくのかもしれない(単純にうまいというのも理由だが)

  • 宗教リテラシーを養ってくれる本だと思う。自分はプロテスタントのクリスチャンとして信仰を持って15年以上経ち、毎週礼拝に参加し、クリスチャン男性と結婚もしているので、日本人としてはかなり濃い信仰生活を送っていると自覚があり、だからこそ肯ける話が多くあった。

    特に印象に残ったことは

    ・儀礼は意外に重要。
    →プロテスタントでは儀礼は少ないが、聖餐式、洗礼式はある。賛美歌、「主の祈り」、「信仰12箇条」も共同体感を高めていると思うし、何より毎週日曜日の同じ時間にほぼ同じ礼拝形式を、世界中の仲間が行っているという事実を思い起こす度に、それだけでつながりを感じる。知らない土地に引っ越したりしても教会が地域にあるというだけで、「家族」の様な人達が既にそこにいる様な安心感を持てるのは財産だと思った。

    ・伝統宗教は歴史の風雪に耐えて、揉まれてきたのでおすすめ。
    →もっと近所の神社仏閣を訪れたり勉強したくなった。機会があればイスラム教も。

    ・宗教的であることで、危険な宗教を寄せ付けないことになる
    →周りの人の宗教観を知りたくなった。

    ・村上春樹は宗教的な本
    →そんなこと全く知らず、食わず嫌いだったので読みたくなった。

  • 朝の占いコーナーって日本だけの文化なんだ…

  •  現代の「霊性」について語る対談集。
     既存の宗教から、新宗教、カルトまで、かなり幅広く網羅されていて、かなり面白かった。

     現代の「スピリチュアル」は自己変容や神秘主義を重んじ、なおかつ「メタ宗教・宗教の源泉」として宗教よりも上位に位置づけることが多い、等、興味深い指摘が多かった。

  • 2018年6月10日に紹介されました!

  • 【目次】
    目次 [003-007]
    文庫版のためのまえがき(二〇一三年三月 内田樹) [011-017]

    第一章 霊って何だろう? 019
    神さまや幽霊については現象学的アヲローチが有効です/WHOによる霊性への取り組み/日本の祖霊信仰と死生観の変遷/地名と「場の力」/繁華街の多くは霊的スポット?/身体感度を鈍くする現代人

    第二章 名前は呪い? 047
    名づけることは呪うこと/霊に個性はあるのか/名前の持つ力/男女共同参画社会の欺隔/「自明の前提」を系譜的に考えてみる/「葬式をやらない」は許されない

    第三章 シャーマン、霊能者、カウンセラー ――民間宗教者のお仕事 077
    供養とは故人のふるまいを繰り返すこと/コミュニケーションの三タイプ/大衆の生活に入り込んでいた民間宗教者/名医とシャーマニズム医療

    第四章 スピリチュアル・ブームの正体 095
    都市ほど占いが流行る/宗教の本質と「魔境」/メジャー宗教の裏バージョン/「ハレ・ケ・ケガレ」の三態/「ハレの常態化」とその危険/ポスト新宗教とナショナリズム/危険な宗教の「つまみ食い」/オウム真理教はマジだからああなった

    第五章 日本の宗教性はメタ宗教にあり 129
    大本を作った出口王仁三郎/鈴木大拙が考えた霊性/コナン・ドイルとスピリチュアリズム/宗教と国家権力/シャーロック・ホームズの推理法/村上春樹の作品に見る霊的な説話/本物の哲学者は幽霊の話をする?/ポスト新宗教に影響を与えた「神智学協会」/アメリカの宗教性の変遷/ヨーガ、スピリチュァル・ケアから『死ぬ瞬間』まで/日本独自の「スピリチュアル・コンベンション」

    第六章 第三期・宗教ブーム―― 一九七五年起源説 167
    日本に三度あった宗教ブーム/カルトかどうかのチェック・ポイント/宗教が持つ三つの特徴/一九七五年という分岐点/新入社員のボーナスが五百万円だった時代/カウンセラーは信用できない/閉じた教団には要注意

    第七章 靖國問題で考える「政治と宗教」 195
    首相の靖國参拝に反対する理由/高橋哲哉と小林よしのりの共通性/死者を正しく祀らないと崇る/「死者の声が聞こえる」という傲慢/宗教を道具化する靖國問題/靖國神社に求められる覚悟/世俗と宗教を分離するイスラム/国民国家は新しい概念

    第八章 宗教の本質は儀礼にあり 221
    ユダヤ教が繋いだユダヤ人の民族性/イスラムにおける「ラマダーン」の絆/宗教と一流詐欺師の共通点/「お悔やみ」の難しさ/「共食」と「個(孤)食」

    第九章 宗教とタブー 243
    「いただきます」は宗教行為か?/「お清めの塩」の問題/生き物から食べ物への移行/儀礼が軽視されてきた近代社会/「お経はわからないから、ありがたい」場合もある/儀礼の持つ「裏の顔」/インドには泥棒のカーストがある/だんじり祭の美意識/タブーとしての「豚食」/事件は橋の上で起こっている/クロスロードは異界へのドア/起源が言えないのが儀礼

    質問の時間 278

    おわりに(釈徹宗) [322-327]
    図表「おもな新宗教・ポスト新宗教の推移」 [114-117]

  • WHOが霊性を憲章に盛り込んだ的な話は良く目にしてたけど、結局欧米の反対で否決されたっていう後日談は知らなかった。
    あとポリティカルコレクトネス的な葬儀場でのお清め塩配布無しの配慮に内田が怒ってたのに対して、浄土真宗の釈がむしろ、浄土真宗も死は穢れではないという本来の仏教の立場から塩はやめましょうとな立場という話を持ち出した所が面白かった。

  • 釈先生の議論が冴えてます。

  • 本書は二〇一〇年二月に講談社より刊行された単行本を加筆したものです。

    二〇〇五年九月から半年間、神戸女学院大学で行われた「現代霊性論」の講義録をもとに加筆、編集したものです。

  • 宗教だとか霊性だとかっていうのはよくわからないけど、どっかでいろんな大切なこととつながっているんやろうなぁ、ということを思った。
    このお二人が本書のなかでしゃべっていることも、人間にとってとても大切な作法のはず、なんやと思う。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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