シンセミア(上) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062775489

作品紹介・あらすじ

神町。この片田舎の町では暴発寸前の欲望が渦巻いていた。伊藤整文学賞、毎日出版文化賞をダブル受賞した、興奮必至の超傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 神町トリロジー(三部作)の第一部。

    とても知的だが呆れるほどお下劣。
    そして、上巻最後まで読んだが、全く中身がない笑
    恐ろしい小説だ。

    下巻へ続く。

  • やっと巡り合えた気がする、インタレストな日本の小説。

    つねづね日本には19世紀ヨーロッパの近代文学的な、例えばフランスのゾラ、バルザックそしてユゴーの書いたような小説がないのか?と思っていた。ロシア帝国時代のドストエフスキーやトルストイのような重厚粘着質な小説もないなあ、と(わたしの浅学かもしれないが、知る限り)残念に思っていた。

    そう、時代と土地と人間群像を俯瞰した小説。その人物に深く入りこんで、冷徹に描いているのだけどその実客観性が色濃く、外側から見ているようでいてその人物に執着したような描き方の小説。

    わたしが好きな桐野夏生さんの小説がそういうところあるとは思っている。けれども阿部和重さんの小説のように重層構造ではなく、時代や人間を俯瞰したようではない。もちろん作風なのでいいわるいではない。

    まだ上巻読了だけなので感想完了ではないが、年代記的なおもしろさと人間模様がエネルギッシュに描かれているし、土地の歴史と時代のなせるわざと人間の雑駁なバカらしさとが満載でおもしろい。

  • 芥川賞を受賞した「グランドフィナーレ」はその評価に悩んだものだけど、一方でシンセミアは紛れもなく力作だと思った。

    神町の共同体としての描写はとても濃密。創作だとはとても信じられないような気持ちになった。
    この本を読んでいる間だけは、自分もこの町の中にいて、人々の有り様を近い目線で観察しているような没入感があった。

    登場人物は悪い意味で癖の強い人々ばかり。
    インモラルな性癖や暴力性が包み隠さず描かれるので、苦手な人は苦手かも。

    人間の剥き出しで汗臭い欲望を書くのに長けた作家だとは認めつつ、それに少し食傷気味になってしまった。果たして下巻はどうなっていくのか。

    あと、登場人物が多すぎて、間が空くと誰が誰だか忘れてしまいそうだったw

  • こういう多くの人が出てくる群像話は好きです。
    はじめのうちは人の把握に疲れますが、読み進めると各登場人物のキャラが際立ってきます。
    偏った性癖を持つキャラが多くて楽しめました。

  • フォークナーの流れで共同体物語の傑作である阿部和重の「シンセミア」を再読。長い小説だがあっという間に読み終わる。すごい小説である。まともな登場人物が全く出てこず、とことん安っぽく、馬鹿馬鹿しい内容が盛りだくさんだが、読み進めるうちにどんどん引き込まれていってしまう。それらの描写の集積が、一つの共同体の歴史としてしかと刻み込まれる。圧巻の完成度、恐るべき著者の技術。現代文学の最高峰である。

  • 記録

  • 語り手がどんどん入れ替わって怒涛の情報量に圧倒されるのが楽しい!新しい語り手を「この人はまともかな?」と最初思っても、もれなく全員クズ。しかも愛すべきクズじゃなくて、愛せないクズ。笑 話の展開が読めない、勢いに乗って一気読み。

  • フォークナーのヨクナパトーファ・サーガや、中上健次の路地ものを引き合いに語られることが多い阿部和重の神町サーガ。以前から気になっていたのだけれど、なんせ分厚い上下巻が多いので躊躇してたんですが、やっと着手しました。とにかく登場人物が多いので、忘れないために一気読み。作者の出身地である山形県の神町を舞台に戦後混乱期から現代にわたって繰り広げられる町のダークサイド。

    上巻での印象は、とりあえずこの小さな町に変態が多すぎる(苦笑)あまりにも全員が変態すぎて誰にも感情移入できないのがつらい・・・わりとまともかと思っていたある人物が最低なロリコンスカトロ野郎だったのにもがっかり・・・。しかしとりあえずぐいぐい読めます。

  • 作者にとっては、山登りに喩えられる上巻。あるいは積み木にも。あらゆる人物の視点が交錯しながら、神町が破滅へと向かう顛末が語られる。

  • 全2巻。現代を象徴する退廃と破滅のアレゴリーか。腐りきった魑魅魍魎の跋扈するカオスの世界に救いはない。あとに残るのは束の間のアドレナリンの産物である淫靡で衝動的な刹那の興奮のみ。インパクトはあるか。

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著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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