光待つ場所へ (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776493

作品紹介・あらすじ

初めて感じた圧倒的な敗北。絵には絶対的な自信を持っていた清水あやめ。だけど彼の作品は--。眩しくて懐かしいあの頃をもう一度。

感想・レビュー・書評

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  • 「冷たい校舎の時が止まる」を読んでいたので、あの時の登場人物達のその後を読むのがとても嬉しかったです。
    大学生になり、みんな自分が分からなくなって、迷ってもがいて足掻いて、考えて感じて前に進んでいく。
    新しい出会いで挫折も味わうけど、その分強くもなれる。
    辻村さんは、個性が強くてクセがある人を描くのもとても上手。
    その登場人物の独特な雰囲気や世界観を、頷きながら想像できる。

    他にも読みたい辻村作品が多々ありますが、最近皆さん高評価の「傲慢と善良」を購入しました。
    これは、読むのとても楽しみにしているのです。
    (о´∀`о)

  • -ジャケ買い-という言葉がありますが、私にとってこの作品はまさしくそれにあたります。辻村さんの作品の中でもかなり最初に買った作品でした。ただ、この作品は辻村さんの-奥の院-的一冊。これを読むには上下巻もの含め10〜12冊の事前読破が求められます。読むのをずっと我慢。今日ようやくここまで辿り着いて読むことができました。

    6つの短編から構成されていますが、全体の3分の1を占める〈しあわせのこみち〉に夢中になりました。「冷たい校舎の時は止まる」の清水あやめが登場します。絵の世界に生きようとする者たちの心の葛藤が描かれていきます。『画家になりたいのではない。私には、なるしかないのだ。』と自らを鼓舞するあやめ。全てをかけて絵に打ち込むあやめ、でも結果が伴って来ず、気づいたら交友関係も上手く築けず孤独の中に佇む日々。そんな時に見えた背中、『歩く自分の目の前に、薄く影ができた。影を踏みつけようと少し早足になる。けれど、絶対に追いつけない。』という表現などなど、確かに主人公は「冷たい」のあやめですが、辻村さんの表現の仕方があの時代からずいぶんと変わったことにも驚きました。そして、あやめのもがき苦しみが、嫌というほどに伝わってきました。

    もう一つあげるとすると〈チハラトーコの物語〉でしょうか。この作品はこの副題だけで主人公が「スロウハイツの神様」のトーコだとわかります。『私は、千原冬子。おっしゃるとおり、噓つきだ。 』から始まるこの作品。『観客のいない嘘はつまらない。話した相手を楽しませることができてこそ、嘘話には初めて意味が宿る。』という一節からもわかるとおり、嘘と共に生き、嘘が彼女の生き様とも言えるトーコの人生を深く切り取って行きます。これはもう『スロウハイツ』を読んでいないと見えるものが全く違ってきてしまうと思いますので、読む順番は守りましょう。

    そして、この作品では、『新しい光』『瞳の中の光』『非難するような光』と、全ての短編の中で『光』が色々な表現を使って描かれていきます。ピアノの奏でる旋律さえ『現れる端から消えてなくなり、集める端からこぼれる光か水のように、音が流れる。』というようにとにかくこの作品には光が溢れています。でもその光のある場所に辿り着くのは容易ではない。そこに見えていても簡単には辿り着けない、掴めない光。

    それぞれの作品世界を力強く生きた彼ら、この作品でそんな彼らに再開できたことはとても嬉しかったです。みんな元気だった。それぞれに成長していたけれど、あの時代の彼らそれぞれが持っていた個性はそれぞれに面影として見ることができました。でも彼らもまだまだ大人になる途上にいます。誰もが通る苦難の時期の到来。『この年になって、ようやくわかることがあると思ったよ。俺も、周りも。自分が何者なのか。…何者かになれるのか。諦めないといけないのか。諦められるのか。』でも彼らならその先へ、その先の光待つ場所へきっと向かっていけるだろうと思います。

    辻村さんの作品は「冷たい」も「スロウハイツ」もそうですが上下巻もあってとても長いです。人によっては辟易するような読書量を求められます。でもその分、一人ひとりの掘り下げ方がとても深い。まるで現実世界で他人との出会いから友情を深めていく過程を辿るかのように彼らを深く知っていきます。深く知り合ったからこそ作品の終了とともに別れた彼らのそれからが気になります。だからこそ、こうして再開できた時に、大きくなったなぁ、相変わらずだなぁと、懐かしい気持ちいっぱいになれるのだと思いました。こんな再会の機会をありがとうございました。

    みんな、元気で!またいつか会える日まで!
    (ベタな締め方ですみません…)

  •  辻村深月の作品に登場していた人物達のオンパレード。大好きな彼らが織りなす物語。深く感情移入できて、惹き込まれた。

     凍りのくじらの郁也君。その後、成長した彼に出会えて感激した。あんなに儚げな彼が周りから頼られ、人間性を認められ、嬉しくて仕方がなかった。

  • しあわせのこみち、チハラトーコの物語、
    樹氷の街に出てくる登場人物は、過去の
    辻村作品の登場人物とリンクしていると
    いう情報込みで読破。
    樹氷のーは、名前探しの放課後。
    チハラトーコは、スロウハイツの神様。
    とピンと来たが、しあわせのこみちは、
    冷たい校舎の時は止まると分からなか
    った。(読んだのがだいぶ昔だった)
    そのことがあったのか、しあわせのー
    は、あまり印象に残らず。
    アスファルトも、あまり乗らなかった。
    しかし、チハラトーコと樹氷の街は、
    引き込まれた。
    登場人物の性格や生き方、考え方が、
    とても上手く描写されていて、それぞ
    れの人間性が伝わってくる。
    辻村深月は、ミステリーより青春もの
    の方が良作が多いと思う。

  • ふみちゃんや秀人、天木、郁也、里帆子、たえさんにまた会えたのは嬉しい。
    チハラトーコと赤羽環にもね。

    鷹野とか清水あやめの話は、やっぱり冷たい校舎を読んでいないから分からない部分があって、
    やっぱり冷たい校舎に再チャレンジしなきゃなあーと。

    読んでから再読したい。

    途中から公式やすごろくによる
    読む順番を意識してきたけれど、
    私としては、これらの作品より
    もっと感動の大きい作品があり、
    それを読んでいたからこそ、
    辻村深月さんが大好きになって、
    上下巻に渡る大作であっても
    読破できてきたのだ。
    だからこそ、
    私はこんな順番で、勧めたい。

    マイ辻村深月すごろく

    ツナグ ※
    かがみの孤城 ※
    オーダーメイド殺人クラブ ※
    サクラ咲く ※
    朝が来る ※
    ぼくのメジャースプーン ※
    子どもたちは夜と遊ぶ
    凍りのくじら
    名前探しの放課後 ※
    スロウハイツの神様
    冷たい校舎の時は止まる
    ロードムービー
    光待つ場所へ
    太陽の座る場所
    傲慢と善良
    ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ

    まだ読んでない作品もあるので、
    それを省いていますが。
    辻村深月デビューが凍りのくじらとかスロウハイツとかではのめり込めないんじゃないかと思う…

    ちなみに※マークつけた作品がめちゃくちゃ感動するやつ。

  • 『辻村深月すごろく』通りに来ないと、これはなかなか…

    『冷たい光の通学路』小学校教師として、再出発した榊が…
    子供たちと雪合戦をする榊の新聞記事を見たのは…
    彼女はどうしたのか⁇と思っていたが。
    よかった、小学校の教師をしてたんだ、サトちゃん。

    『しあわせのこみち』 T大生になった清水さん。『普通』になれない清水さん。
    勉強、絵画、で、圧倒してきた清水さん。
    そんな清水さんが圧倒され、初めての敗北感を味わう。
    それが…へと。
    T大生となった鷹野も登場。
    深月も間接的に登場。

    『アスファルト』 昭彦がベルリンへ。彼女と訪れるはずだったのに…
    やっぱり深月と鷹野も登場。
    昭彦がいうように、ふたりはずっと一緒にいるんだろう。
    結婚もするし…

    『チハラトーコの物語』 チハラトーコ⁇
    どこにでてた⁇
    赤羽環の登場で、謎が…
    加々美梨里杏だったのか…

    『樹氷の街』天木、秀人、椿ちゃんに、松永、芦沢理帆子、多恵さんが。

    登場人物のその後がわかるのはいいなぁ。
    なんかうれしくなる、なんだろう、親心だろうか?

    ほんとに『すごろく』通りに読んでないと、面白さが半減。

    『スロウハイツの神様』『凍りのクジラ』『ぼくのメジャースプーン』『名前探しの放課後』『冷たい校舎の時は止まる』は読んどかないと。

    チハラトーコのスロウハイツ時代が気になるので、『スロウハイツの神様』、もう一度読もうかと。

  • 自分を特別だと思っている人が、「その他」の人たちと関わって、成長していく物語
    短編集

    樹氷の街は少し毛色が違ったかな
    主人公は松永郁也かな?凍りのクジラで出てくる郁也
    松永郁也は他の物語の主人公と違って、自分に酔っている感じではない
    この物語だけは、自分の秀でた能力を使って「その他」の人たちと繋がりを持つ話かな

  • 辻村深月ファンはたまらない。

    今までの作品のスピンオフ集。4話+プロローグとエピローグ的に分かれた1話の全5話。
    『冷たい校舎の時は止まる』〜3話、『スロウハイツの神様』〜1話、『凍りのくじら』と『名前探しの放課後』合算〜1話。

    あの作品の登場人物と再び会え、それぞれの成長を知ることができた喜び。
    また、前日譚【樹氷の街】には涙が…。特に好みは【チハラトーコの物語】。

    みんな悩み、自分を見つめ、前に進んでいるんだなぁ。もう、気持ちは保護者です。

    • セシルの夕陽さん
      さてさてさん、ありがとうございます♪

      はい、講談社の辻村深月すごろくも終盤に差し掛かりました!
      今までの登場人物に再会できて感無量です。
      ...
      さてさてさん、ありがとうございます♪

      はい、講談社の辻村深月すごろくも終盤に差し掛かりました!
      今までの登場人物に再会できて感無量です。

      書名もみんな光に向かって歩いて来たという意味が込められていると感じました。
      そして、辻村深月先生は、デビュー作で名刺代わりになったという『冷たい校舎…』の登場人物に格別な想い入れがあるような気がします。
      ご自身と同じ名前を登場させていますし。

      そうそう、【冷たい光の通学路】の登場人物チサト先生だけが、記憶から抜けてまして(//∇//)
      金のピアスを半分ずつ分けあったくだりです。。。探索してサトちゃん=チサト先生とまでは分かったのですが。
      私の記憶、どんどん抜けていくことを痛感してます。
      2022/01/29
    • さてさてさん
      セシルの夕陽さん

      すごろく、そうですね。本当にそんな感じです。辻村さんの一連の作品群は間違いなく続き物第一思います。初めて辻村さんの作...
      セシルの夕陽さん

      すごろく、そうですね。本当にそんな感じです。辻村さんの一連の作品群は間違いなく続き物第一思います。初めて辻村さんの作品を読む方が、この作品をそのスタートに選ぶ危険もあり得ますが、書店で手にしても本のどこにも順番的に先に読んではいけませんと書いていないのでリスクがありますね。すごろくを順番に進んだからこそ感動が待っているのであって、この辺り辻村さんの作品はなんとかならないのかなあとは思います。
      私もどんどん記憶が抜けてしまっていて、「スロウハイツの神様」に繋がる「ハケンアニメ」が読めていないのがずっと気がかりです。
      いずれにしましても私も感無量な思いを再度したくなってきました。時間がもっと欲しい…つくづくそう思います。
      引き続きましてよろしくお願いします。
      2022/01/29
    • セシルの夕陽さん
      さてさてさん

      私は、辻村深月作品リンクも「ハケンアニメ」「本日は大安なり」の残り2冊で終わりそうです。

      講談社の文庫本帯には、辻...
      さてさてさん

      私は、辻村深月作品リンクも「ハケンアニメ」「本日は大安なり」の残り2冊で終わりそうです。

      講談社の文庫本帯には、辻村深月すごろくが書いてあるので、辻村深月作品を初めて読もうとする人が、その帯書きに気付いてくれることを願うばかりです(≧∇≦)

      こちらこそ、またよろしくお願いします!
      2022/01/29
  • 5編の短編集。
    若い世代の登場人物が、「光待つ場所へ」と、階段を1歩踏み出す話が連なる。
    どの話も過去作とのリンクが強く、具体的には、
    「冷たい校舎の時は止まる」、「ロードムービー」
    関連が3話。
    「スロウハイツの神様」関連が1話。
    「凍りのくじら」、「ぼくのメジャースプーン」、「名前探しの放課後」関連が1話。
    (「ぼくのメジャースプーン」をより楽しむのに「子どもたちは夜と遊ぶ」)という感じ。多分。
    最初の話「しあわせのこみち」は、単体でも楽しめるが、それ以外は関連作の読了後に読むべき作品。その方が、この作品をより深く堪能できるから。
    多恵さん郁也と理帆子、椿や秀人、環たちにまた会える喜びや優しさが満ちていました。
    …スゴロクもあと1作品を残すのみ。

  • 5編の短編…どれもすごく良かった。

    主人公の考え方がリアルで共感出来る一方で、私もこんな考え方が出来たらと羨ましくもある。
    樹氷の街が1番ささった。各々違う立場なのだけど、登場人物全てに羨望の気持ちがおおきい。こんな中学時代を過ごせたら、今の私は色々違ったかもしれない。結局、幼かったんだろうなと思う。

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著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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