- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062776653
作品紹介・あらすじ
世界的テノールである藤枝和行が念願のジークフリート役を射止めた矢先、婚約者・有希子は老婆の予言どおりに列車事故で命を落とす。ジークフリート同様に“恐れを知らず”生きてきた和之だが、愛する人を喪った悲しみのあまり、遺骨を抱いて歌うことを決意した。そして和行の前に現れた美女──。“舞台”は謎とともに華麗に展開していく。
感想・レビュー・書評
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視覚的な美しさ。見立てとして見たときにうまくいってるとは感じないが、一点に収束し一気に盛り上がるクライマックスは著者の美しい文章も相まってか涙腺が緩む。
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とてもラストが美しい作品。読み進めていくうちに、登場人物達がニーベルングの指輪の登場人物と重なる点もまた魅力。所々に挟まれているオペラの説明も文体が変わっているため、本編の流れを邪魔せず読める。
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オペラが題材とはどんなもんだいと読んでみた。
有名になり、事故で妻を亡くしたテノール歌手の話。
そんなにミステリー色は強くないが読み応えのある作品。
ラストが素晴らしい。全てはこのラストのためにあったのだ。
ラストの情景が目に浮かぶ。
まさに芸術ミステリーです! -
若干いろいろ詰め込み過ぎな感じがしなくもない。オペラのうんちくはともかく女医さんのくだりは主人公のクズっぷりが鼻にもついたしなあ。
その辺を除いたら綺麗にまとまった一冊だとは思うんだけど。
ていうかぽっと出てきただけの探偵役が一体なんなんだろうと思ったらシリーズ探偵的な人物だったんですね。知らずに読んだので「うわなんだこいつ急に」くらいに思ってしまった。 -
本書は『トスカの接吻』のサイドストーリーに位置付けられます。
物語では、念願叶ってジークフリード訳を射止めた主人公が、舞台で喝采を浴びるまでの苦悩や葛藤が描かれています。
こうして書いてみると、およそミステリっぽくないのですが、そこは芸術探偵シリーズで卒のない作品を産んできた作者のこと、細かな伏線、暗示的な描写などで、胸打つミステリに仕上がっています。
しかし、実を言うとミステリとして読まない方がより本書を楽しめるような気がします。作者の名前的に無理な注文でしょうが、ひとまず物語の流れるままに、文字を追うような読み方をオススメします。
ラストのジークフリードを演じる主人公の姿は、読者である僕も思わずスタンディングオベーションを贈りたくなりました。 -
140624
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オペラの内容がメインの芸術探偵シリーズ。
最後の方まで、事件性を感じさせず、実は事件が起こっていたという仕掛けが面白かった。
オペラについて、多少詳しくなれる。 -
オペラを主題にしたミステリ……ではあるが、メインは被害者とその婚約者だった主人公の心情や機敏だった。
というわけで、純粋な謎解きという意味ではやや消化不良の感があるが、著者の狙い自体もそこには無いこともあって、小説としては面白かった。特にクライマックスであるオペラのシーンは迫力がある。 -
世界的テノール歌手の藤枝和行が「ニーベルングの指輪」の主役「ジークフリート」を射止めます。恋人の死を乗り越え、本番を迎えるのですが…。
藤枝和行のプレイボーイぶりと、オペラの蘊蓄が延々と綴られミステリーの雰囲気が出て来ません。
しかし、最後の最後で占い師が予言した「死んでも好きな男のために役立とうとする」の意味が綺麗に嵌まり、同時に数々の伏線に支えられていることに気づかされます。オペラに全く興味が無い人にとってはあまり楽しめないストーリーかもしれませんが、カタストロフィーが味わえる傑作だと思います。