ジークフリートの剣 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776653

作品紹介・あらすじ

世界的テノールである藤枝和行が念願のジークフリート役を射止めた矢先、婚約者・有希子は老婆の予言どおりに列車事故で命を落とす。ジークフリート同様に“恐れを知らず”生きてきた和之だが、愛する人を喪った悲しみのあまり、遺骨を抱いて歌うことを決意した。そして和行の前に現れた美女──。“舞台”は謎とともに華麗に展開していく。

感想・レビュー・書評

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  • 視覚的な美しさ。見立てとして見たときにうまくいってるとは感じないが、一点に収束し一気に盛り上がるクライマックスは著者の美しい文章も相まってか涙腺が緩む。

  • とてもラストが美しい作品。読み進めていくうちに、登場人物達がニーベルングの指輪の登場人物と重なる点もまた魅力。所々に挟まれているオペラの説明も文体が変わっているため、本編の流れを邪魔せず読める。

  • オペラが題材とはどんなもんだいと読んでみた。
    有名になり、事故で妻を亡くしたテノール歌手の話。

    そんなにミステリー色は強くないが読み応えのある作品。

    ラストが素晴らしい。全てはこのラストのためにあったのだ。

    ラストの情景が目に浮かぶ。
    まさに芸術ミステリーです!

  • 若干いろいろ詰め込み過ぎな感じがしなくもない。オペラのうんちくはともかく女医さんのくだりは主人公のクズっぷりが鼻にもついたしなあ。
    その辺を除いたら綺麗にまとまった一冊だとは思うんだけど。
    ていうかぽっと出てきただけの探偵役が一体なんなんだろうと思ったらシリーズ探偵的な人物だったんですね。知らずに読んだので「うわなんだこいつ急に」くらいに思ってしまった。

  • 本書は『トスカの接吻』のサイドストーリーに位置付けられます。
    物語では、念願叶ってジークフリード訳を射止めた主人公が、舞台で喝采を浴びるまでの苦悩や葛藤が描かれています。
    こうして書いてみると、およそミステリっぽくないのですが、そこは芸術探偵シリーズで卒のない作品を産んできた作者のこと、細かな伏線、暗示的な描写などで、胸打つミステリに仕上がっています。
    しかし、実を言うとミステリとして読まない方がより本書を楽しめるような気がします。作者の名前的に無理な注文でしょうが、ひとまず物語の流れるままに、文字を追うような読み方をオススメします。
    ラストのジークフリードを演じる主人公の姿は、読者である僕も思わずスタンディングオベーションを贈りたくなりました。

  • 140624

  • オペラの内容がメインの芸術探偵シリーズ。
    最後の方まで、事件性を感じさせず、実は事件が起こっていたという仕掛けが面白かった。
    オペラについて、多少詳しくなれる。

  • オペラを主題にしたミステリ……ではあるが、メインは被害者とその婚約者だった主人公の心情や機敏だった。
    というわけで、純粋な謎解きという意味ではやや消化不良の感があるが、著者の狙い自体もそこには無いこともあって、小説としては面白かった。特にクライマックスであるオペラのシーンは迫力がある。

  • 芸術ミステリーシリーズ第4弾。

    <あらすじ>
    オペラのテノール歌手・藤枝和行は、同業者で恋人の遠山有希子に連れられ
    良く当たると評判の霊感師に会いに行く。
    そこで霊感師に”有希子は幸せの絶頂で命を落とす”と予言される。

    その後、藤枝は、ワーグナーの『ニーベルングの指環』4部作の第2夜、
    『ジークフリート』のジークフリート役に大抜擢され、
    有希子も同じ舞台の脇役として出演することになった。
    2人で共演することが夢だった有希子は、藤枝のプロポーズを受け婚約する。

    そんな矢先、有希子が乗っていた列車が事故に遭い、有希子は死んでしまう。
    有希子の葬式に赴いた藤枝は、遺骨から大腿骨を遺品として受け取る。

    哀しみにふける藤枝は、ある日、街で神泉寺瞬一郎と出会い、有希子の話をする。
    すると後日、列車事故を調べた神泉寺から藤枝の元に連絡が来る。

    有希子は列車事故で死んだのではなく、舞台の演出家に殺されたのだ、と。
    有希子は列車に乗る前に演出家に殺され、トランクに押し込められ、
    列車で運ばれてる最中だったのだ、と。

    衝撃の真実を聞かされた藤枝は、動じることなく遂に舞台に立った。
    演目も順調に進んでいたその時、肝心の小道具の剣が見当たらない。
    困った藤枝。
    しかしそこで藤枝は、舞台中も含め、肌身離さず持っていた
    有希子の大腿骨を取り出し
    ジークフリートの剣にし、見事に大役を演じきったのであった。


    <他作品とのリンク>
    『トスカの接吻』で、ジークフリートを演じた後の藤枝が登場してる。
    『美人薄命』では、予言を行った霊感師の人生が明らかになっている。

  • 世界的テノール歌手の藤枝和行が「ニーベルングの指輪」の主役「ジークフリート」を射止めます。恋人の死を乗り越え、本番を迎えるのですが…。
    藤枝和行のプレイボーイぶりと、オペラの蘊蓄が延々と綴られミステリーの雰囲気が出て来ません。
    しかし、最後の最後で占い師が予言した「死んでも好きな男のために役立とうとする」の意味が綺麗に嵌まり、同時に数々の伏線に支えられていることに気づかされます。オペラに全く興味が無い人にとってはあまり楽しめないストーリーかもしれませんが、カタストロフィーが味わえる傑作だと思います。

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著者プロフィール

1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に短篇「人間の尊厳と八〇〇メートル」で、第64回日本推理作家協会賞を受賞。2014年、『最後のトリック』(『ウルチモ・トルッコ』を改題)がベストセラーとなる。2015年刊『ミステリー・アリーナ』で同年の「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「このミステリーがすごい!」6位、「週刊文春ミステリーベスト10」4位となる。

「2021年 『虚像のアラベスク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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