僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062777018

感想・レビュー・書評

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  • 迷っているのであれば、買って損はない本です。少なくとも、「本物の資本主義」社会での自分の立ち位置を言語化するのに役立つのではないかと思います。

    本書の元となった単行本は2011年に刊行されました。著者は刊行時点で既に、そこから10年あまりの日本における資本主義の深化をかなり的確に推測していたのだと思います。2022年現在だからこそ納得、共感できる内容が非常に多かったです。
    そのことは他方で、本書も「コモディティ化」を免れ得なかったことを示しているような気がします。10年後を的確に予言したばかりに、10年後の今日では現状を説明するにすぎないものになってしまったのだと推察します。
    実際に、従前は「エキスパート」でしかなかった専門職が「マーケター」として振る舞うケースや、「投資家」そのものとしてビジネスを遂行するケースが増えつつあります。そのような業務に従事していなくとも、そのようなマインドセットを持ち合わせていることは当たり前に求められるようになったと感じております。
    そのような仕事の変容を予測したのは間違いなく本書の功績ですが、この先の生存戦略の参考とするには不足する内容となっているのも否めないように思います。

    また本書が10年前に考慮しきれなかった点として、資本主義が部分的に先鋭化しなかったことが挙げられるかと思います。
    会計主体論の立場として、著者は「会社は株主のもの」以外に答えはないと述べられました。私も原義的にはそうだと学びましたし、その主張は資本主義の本質を構成する重要な要素だと思います。
    しかし、近年はSDGsやESG投資のコンセプトが普及したり、賃上げ税制が整備されたりと、株主資本主義の修正が求められる傾向にあります。少なくとも他のステークホルダーと株主の利益をある程度併存させる方向で調整がなされている段階です。
    「社会の公器」であるとまでは言わないとしても、会社が何に責任を負うか、ひいては「投資家のあたま」で何を考えるべきかが変質していることには留意が必要だと感じました。

    著者の瀧本さんは2019年に惜しくもご逝去されたそうです。彼が2020年代の日本社会をどのように記述し、そこでの生き方をどうハックするのか、それを知ることは叶わなくなってしまいました。しかし、それを考える足がかりは本書に記されているのだと思います。
    決して無内容な本ではありませんし、意外と元気が出るような、背中を押されるようなことも書いてあります。キャリアの岐路に立っている方や、チャレンジしようとしている方に有用な書籍だと思います。

  • 【資料ID】 97160208
    【請求記号】 159.7/T
    【OPAC URL】https://opac2.lib.oit.ac.jp/webopac/BB50043249

    「大学で学ぶ本物の教養には深い意義がある、という価値観は世界で共通している」

    将来成功するために学生時代は何をやったらいいか、社会に出てからのステップアップやキャリアプランについて学生のうちから考え続けることに意味はあるのか。

    資本主義社会を生きていくための武器とは。

    どうすれば本物の自分の武器にできるのか。

    社会に出てから本当に意味を持つのは・・・

    是非手にとってお読みください。

  • 読んで欲しい一冊。

  • ビジネス、世の中の本質をつく名著

  • ・コモディティ化:市場に出回っている商品が、個性を失ってしまい、消費者にとってみればどのメーカーのどの商品を買っても大差がない状態。

    人材も「コモディティ化」するが、本書では、そうではない人材「スペシャリティ」となるために目指すべき4タイプが提言されている。
    それは、「マーケター」、「イノベーター」、「リーダー」、「インベスター(投資家)」であり、どれか1つではなく状況に応じて4つの顔を使い分けることが望ましいとされる。
    マーケターとして、「差異」を生み出すためにために、顧客が共感できるストーリーを作る。
    イノベーターとして、既存のものを今までと違う組み合わせで提示する。
    リーダーとして、優秀ではない人たちもマネージする。
    投資家として、計算管理可能なリスクの範囲で、ハイリスク・ハイリターンの投資機会をなるべくたくさん持つ。
    自分の頭でじっくりと物事を考える大人になるために、リベラル・アーツを学ぶ。それが上記の姿につながってくる。
    そして、夢中になり実際に自分の力でやったことだけが、本物の自分の武器になる。

    本書は若手がメインターゲットではありますが、まだまだ働いていかないといけない30〜50代も含め、幅広い世代が本書を読むことで、自分の人生のこれからについて考えるきっかけになるはず。
    今後の若手育成に向けてもとても参考になった。

    これ以上新著が出てこないと思うととても残念ではあるが、瀧本哲史さんが残された他の本も読んでみたいと思う。



    ====
    ▼▼コモディティ化
    ・市場に出回っている商品が、個性を失ってしまい、消費者にとってみればどのメーカーのどの商品を買っても大差がない状態。

    ・商品・部品だけではなく、人材もコモディティ化する。
    →資格やTOEICの点数で差別化しようとする限り、最終的には「安いことが売り」の人材になる。

    ・「スペシャリティ(speciality)」だけが生き残れる。
    →ほかの人には代えられない、唯一の人物(とその仕事)


    ▼▼コモディティにならず主体的に稼ぐ6タイプ

    ◆今後生き残れない2タイプ(今は大丈夫)
    ①「トレーダー」 :商品を遠くに運んで売ることができる人
    ②「エキスパート」 :自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人

    ◆これからも生き残る4タイプ
    ③「マーケター」 :商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人
    ④「イノベーター」 :まったく新しい仕組みをイノベーションできる人
    ⑤「リーダー」 :自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人
    ⑥「インベスター=投資家」:投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)
    →一人のビジネスパーソンが状況に応じて4つの顔を使い分けることが望ましい。

    ▼マーケター
    ・マーケターは、新しくない要素の組み合わせで「差異」を作り出す。

    ・「コモディティ化」が進む世の中で、唯一の富を生み出すキーワードは「差異」。
    →「差異」とは、デザイン・ブランド・会社・商品が持つ「ストーリー」。

    ・商品で差をつけることは難しい。
    →差をつけるには、ターゲットとなった顧客が共感できるストーリーを作ること。


    ▼イノベーター=起業家

    ◆イノベーション
    ・訳語としては「技術革新」よりも「新結合」の方が本質を捉えている。
    →「既存のものを、今までとは違う組み合わせ方で提示すること」がイノベーションの本質。
    →特定分野の専門家よりも、いろいろな専門技術を知ってその組み合わせを考えられる人間になる。

    ◆その業界で「常識」とされていることの反対のことを検討してみる。
    →何かを聞いたら反射的にその逆を考えてみる。


    ▼リーダー

    ・革命的なことを成し遂げるリーダーの多くは、ある種の人格破綻者か、新興宗教の競争のような自己愛の塊。
    ◆「駄馬」を使いこなす
    ・リーダーには、優秀だがわがままな人をマネージするスキルも大切だが、優秀ではない人をマネージするスキルの方が重要。


    ▼投資家

    ◆「投資」と「投機」の違い
    ・投機:一攫千金を狙う賭け事。ゼロサムゲーム。短期的。
    ・投資:ゼロからプラスを生み出す行為。誰かが損をすることはない。長期的。

    ◆リスクがとれる範囲のハイリスク・ハイリターンの選択肢をたくさん選ぶ
    ・「ローリスク・ローリターン」より、「ハイリスク・ハイリターン」の投資機会をなるべくたくさん持つこと。
    →ただし「計算管理可能なリスク(Calculated Manageable Risk)」の範囲内であること。自分で管理できる範囲でリスクをとる。

    ◆株式投資ではない形でのインサイダー取引
    ・「投資」とはお金を投資することだと思われているが、本質的には、自分の労働力、時間、人間関係を投資することでもある。


    ▼▼自分の頭でじっくりと物事を考える大人になる

    ▼「リベラル・アーツ」を学ぶ
    ・リベラル・アーツとは、人間が自由になるための学問。歴史、哲学、芸術、文学、自然科学全般。
    →幅広い分野を横断的に学ぶことにより、「物事をさまざまな角度から批判的に考える能力」「問題を発見し解決する能力」「多様な人々とコミュニケーションする能力」「深い人格と優れた身体能力」などの力を身につけることを目指す。

    ▼自分の力でやったことだけが、本物の自分の武器になる
    ・社会に出てからのステップアップやキャリアプランについて、学生のうちから考え続けることは意味がほとんどない。
    →社会に出てから本当に意味を持つのは、インターネットにも本にも書いていない、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけ。

  • きろく

  • エッセンシャル版ということで、大事なところが短くギュッと詰まっていて、短い時間で読めたが、得るものは多かった。

    大学生くらいで読むと、今後の人生を考える上でとても参考になりそうだなと思った。
    自分も今後は以下の点を気をつけていきたい。
    •コモディティにならずに、スペシャリティを持った人になる
    •自分の頭で物事を考える
    •リスクは自分自身でコントロールする
    •社会に出てから本当に意味を持つのは、インターネットにも紙の本にも書いていない、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけ

  • 子供に読ませたい本でした。

    イノベーションは革新ではなく、
    新結合と捉える。
    これは確かにそうだと思いました。
    筆者が繰り返し言っている
    自分の頭で考えることがなぜ大事なのかが
    わかる本です。

  • 社会に出る時に必要な考え方をしれた気がする

  • 何事もその意味を自分で考え行動することの大切さを実感する。ただ流されるだけの人間にはならない!

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著者プロフィール

京都大学客員准教授、エンジェル投資家、教育者。1972年生まれ。麻布高等学校、東京大学法学部を卒業後、大学院をスキップして直ちに助手に採用。専攻は民法。任期終了後は学界に残らず、マッキンゼーへ入社。3年で独立し、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建などを手がけながら、エンジェル投資家として極めて初期段階の企業を15年以上にわたって支援し続ける。京都大学では教育、研究、産官学連携活動に従事。「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当し、人気NO.1若手教官として「4共30」講義室を立ち見に。各界において意思決定を先導するリーダーを育てることを目標に、選抜制の「瀧本ゼミ」を主宰。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代への教育に力を入れていた。2019年8月10日永眠。

「2022年 『瀧本哲史クーリエ・ジャポン連載集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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