私たちが星座を盗んだ理由 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778206

作品紹介・あらすじ

難病の女の子のため、星座を一つ消して見せる男の子を描く表題作ほか、ラストに残酷なまでに衝撃的などんでん返しが待つ傑作短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 『5つの物語すべてに驚愕のどんでん返しが待つ』

    『優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で残酷に反転する衝撃は、快感ですらある』

    との事だが、私には驚愕というよりは、「おお!」と感心させられた印象を持ち、残念ながら、快感を覚える程の衝撃は感じなかった。
    そもそも、これって、どんでん返しなのか?

    とは書きつつも、別に北山さんのミステリ論を否定するつもりはなくて、なんというか、渋いところ付いてくるなというのが一つと、どんでん返し以上に印象深かったのが、伏線の見事さで、これは、どの作品もそう感じたが、特に「恋煩い」と、真相を知った後の「妖精の学校」は、思わず読み返したくなるほどの素晴らしさで、「なるほどね~」と。

    また、物語のジャンルも、高校生と恋とおまじないが絡み合った「恋煩い」、謎の孤島で目覚めた少年に、ここは一種のネバーランド? と思わせる、「妖精の学校」、借金を背負わされた男が、事故死した彼氏のことを知らない彼女と、彼氏の振りをして、メールのやり取りをする展開がスリリングな、「嘘つき紳士」、石喰いというファンタジー要素が、人間心理の奥を揺さぶる、「終の童話」、姉の同級生に恋していた妹の思いと、姉の思いの交錯が切ない、表題作の「私たちが星座を盗んだ理由」と、様々で飽きさせない。

    しかし、私が最も心に残ったのは、いずれも、過去に自己嫌悪に苛まれる出来事を持った主人公が、まるで、それを償おうとするかのように行動しようとするけれど、結局、反転させられる事に、「ほら、やっぱりね」と肯きたくない気持ちが強かった事で、特に「終の童話」に至っては、あれを責めるには、あまりに無慈悲なのではないかと思わせるくらい、彼がずっと抱き続けてきた彼女への思いの一途さは尊いと思ったのだが・・まあ、結末自体はあんな終わり方なので、人それぞれの捉え方が出来る点に、まだ救いがあるのかもしれないし、こうしてみると、自己嫌悪しながらも、それを忘れずに、なんとか前を向こうとしてるのだから、そうした点に、人間の善悪両方の面を持ちながらも、どこか自分に対する厳しさをちょっと覗かせるところに、愛おしさを感じられたのは、良かったのかもしれない。

    それにしても、「恋煩い」は惜しかったなぁ。
    私の中では、5つの短編の中でダントツの好みだったが、最後の衝撃的な一文を、その前の解答編でなんとなく推測出来てしまったのが、その衝撃度を下げてしまったようで残念だった。

    しかし、それでもあれは、ここ最近読んだミステリの中に於いて、久々に体験させてもらった、周囲の気温が2~3℃下がったんじゃないかと思わせる、そんな感じと言えば分かってもらえるだろうか。

    というわけで、「恋煩い」は、今の季節に間違いなくおすすめの作品です。

  • 北山猛邦先生の短編作品。
    それぞれがクライマックスまで良い雰囲気を醸し出しているのにその後の展開で一気に萎えさせて嫌ミスに持って行くのがとても素晴らしく心地よいと感じました。
    それぞれの感想
    ①恋煩い
    これが一番怖かったかなという印象。恋の魔法に魅せられて怖いところに嵌っていく所がとても怖かった。まさかの未必の故意が関わっているとは、犯人の目的が恐ろしかった、しかも勘違いなのがまた悲しい。そしてラストのあの単純な「死ね」の一言。やっぱり人間は恐ろしい。

    ②妖精の学校
    ネットで考察があふれている作品。ディストピア感や『約束のネバーランド』感がある。最後の数字が緯度と経度を表わしているのかなというのは直ぐにわかるが意味を調べてゾッとしました。情報統制とは恐ろしい。

    ③嘘つき紳士
    一番オーソドックスかな?でも女性は怖いなぁと、そしてそれに引っかかる男も男だと感じた。

    ④終の童話
    まさかのファンタジー。『Dr.STONE』味も感じる作風だが、破壊させた石像は元に戻せない模様。なぜ破壊されたのか、そしてエリナはどうなるのか、結末はどちらでもとれるような結末だが、どちらにしてもあのときの幸せは戻らないのだなという切なさもある。

    ⑤私たちが星座を盗んだ理由
    星座を消すことはまぁ無理だろうなとは思っていたが、南十字星であるところがとても面白かった。そして姉の死の真相もまぁだよなぁというような真相だがその後の夕兄ちゃんの家族の描写がとても切なかった。姫子のやったことは何も意味が無いというのがとても悲しく切ないと感じました姫子がかつて追っていた男の子に似たそっくりな男の子が姫子を絶望させるという皮肉がとても素晴らしかったです。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    アキ:伊藤美来
    トーコ:黒沢ともよ
    シュン:畠中祐
    海野隆:島崎信長
    ウミネコ:花江夏樹
    ヒバリ:種崎敦美
    ツバメ:佐倉綾音
    クイナ:内田真礼
    男:諏訪部順一
    ウィミィ:杉田智和
    エリナ:茅野愛衣
    ジャックネッタ:細谷佳正
    ワイズポーシャ:子安武人
    夕兄ちゃん:浪川大輔
    姫子:安野希世乃
    麻里:鬼頭明里

  • どんでん返しの短編集。最初の恋煩いから衝撃的だった。単なる女子高生の恋のおまじないの話かなーとか読んでいたけど最後にやられた。妖精の学校はあんまり。嘘つき紳士、終の童話、私たちが星座を盗んだ理由はジャンルが多彩でいい感じのイヤミスだった。

  • 読みたかった本。勝手に連作と思い込んでたので少し戸惑ったが、どれも優しくて甘やかな話で素敵。好きなのは、一歩間違えば変なイヤミスになりそうな『恋煩い』とラストの謎がモヤモヤする『妖精の学校』美しい情景が印象的な『終の童話』だった。

  • 2020/11/28読了
    #このミス作品54冊目

    5つの短編。
    短編ながらしっかり練られた
    ストーリー展開とオチが秀逸。
    ファンタジー調の作品も
    ぶっ飛びすぎず引き込まれる。
    ほかの長編作品も読んでみたい。

  • 恋のおまじないにのめり込んでいく女子高生を狙う圧倒的な悪意。
    秀逸な青春小説が土壇場で反転するラスト一行に戦慄必至!((((((゜ロ゜;
    『恋煩い』、

    目覚めれば記憶がなく、絶海の孤島にある「妖精になるための学校」に入学させられていた少年。
    大人にならずに子供のままでいられる世界に違和感を覚えた少年は
    クラス委員長のウミネコたちと島からの脱走を企てるが…。
    ラスト一行の数字をヒントにネットで検索すると
    物語の根底を覆すある事実が浮かび上がります。
    二度読み必至!
    『妖精の学校』、

    事故で死んだ青年の携帯を利用し、どん底の人生を逆転するため
    死んだ青年の彼女に近づく男…。
    これまたラストで意外な真相が暴かれる!
    『嘘つき紳士』、

    触れただけで人間を石にしてしまう石喰いという怪物と村人とのスリリングな死闘。
    10数年の月日が流れ、ある時村に石化した人間を元に戻す能力を持った怪しい男が現れる…
    愛する者を石にされた少年の哀しみが胸に沁みる
    『終の童話』、

    七夕の日、夜空に輝く星(首飾り座)を消して、首飾りにして病室の姉にプレゼントすると言った男の子。
    その言葉どおり、七夕の夜空から
    星座が一つ消えた…。
    病弱な麻里とやんちゃな姫子の姉妹、
    そして二人の憧れである夕兄ちゃんの悲しき三角関係をリリカルに描いた表題作
    『私たちが星座を盗んだ理由』

    など、ミステリーの醍醐味が存分に味わえる
    切れ味鋭い全5話の短編集です。


    ラブストーリー、ファンタジー、現代を舞台にした犯罪劇、童話など
    バラエティーに富んだ形をとりながら、
    江戸川乱歩が名付けた「プロバビリティの犯罪」や
    ある島についての歴史的認識、
    東京での借金難民の実態と携帯による犯罪への警告、
    星に関する詳細な知識と
    普通の顔をした人間の中に巣くう圧倒的な悪意など
    1話1話なかなか考えさせられるところもあり、
    なおかつすべてのストーリーにドンデン返しが用意されていて
    (すべての作品がラストの数行で見事に反転する構成はお見事!自分の予想の遥か斜めを行く結末だったし!)

    おそらくはミステリー好きじゃなくともページを繰る指が止まらなくなること必至です。
    (個人的には『恋煩い』と『妖精の学校』に引き込まれた。巧妙に仕掛けられた伏線とその回収の妙、そして背筋が凍るようなラストの衝撃が切れ味抜群でした!)


    ただどの話も読後感は残酷だったり救われなかったり、
    ダークでビターな苦味が残るものや
    切なさが残るもの(はっきり言ってバッドエンド)ばかりなので、
    綺麗なハッピーエンドや
    すっきり解決した話が好きな人には
    やや不満が残るだろうし、
    好き嫌いのハッキリとした作品だと思います。

    しかしながら、僕個人としては
    北山さんは初読み作家だったけど、
    映像喚起力に優れた、
    童話的でファンタジックな世界観がかなりツボだったし、
    また次も読んでみたいな。

  • これがどうどんでん返しになるんだろう、、と読み進めてトラウマ級のどんでん返しだったり残酷だったり悲しみだったりいろんな終わり方があって全ての物語楽しめました。
    また読みたいと思える作品でした☺︎
    ※2話目の「妖精の学校」はどこがどんでん返しか分かりづらかったのでネタバレ感想を参考にさせていただきました。
    意味がわかった時本当にゾッとします、、
    サイレンが鳴った時建物に入りカーテンを閉めて隠れなければいけない理由
    背の高くて体格のいい魔法使いとは目を合わせてはいけない理由
    意味がわかって読み返すと全ての文章が怖くなります

  • 童話とミステリーを合わせたような、5編の短編集。

    短編集だと感情移入しづらい場合が多いけど、本作はどれもすぐに世界観をとキャラクターが馴染んで、熱中して読みすすめられました。お話の舞台もバラエティーにとんでいて飽きさせません。

    好きなのは『妖精の学校』と『終の童話』の2つ。どちらも作者の発想力と独創性を感じ取ることができました。少し変わり種の短編ミステリー、おすすめです。

  • 5つからなる短編集。
    それぞれに繋がりはないけれど、そのどれもが少し不思議な、少し不穏な空気を纏った5つの物語。

    恋煩い
    恋する少女が誰しも通る〝おまじない〟と言う通過儀礼。一人称で進むので、少女の知らぬところで何かがあるなという期待を裏切らない展開ではあるけれど、ちょっと上手く行きすぎかな。

    妖精の学校
    これはなかなか難解。見知らぬ部屋で目覚めた少年は自分の名前を思い出すことができませんでした。妖精の学校でおこるあれこれ。ではあるけれど…結果、リドルストーリー。謎。
    (考察が検索で出てくるけど、だから?とさらに悩む笑)

    嘘つき紳士
    借金に追われた男が、携帯電話を拾ったことにより、犯罪行為に及んでしまう。嘘つき紳士というより嘘つき野郎なんだけど(笑)所詮はキツネとタヌキ。ちょっと上手く行きすぎかな。

    終の童話
    人を石に変え食べてしまう怪物、石喰い。
    昔々のこと、小さな田舎の集落が〝石喰い〟に襲われ、村の人たちは次々と石にされてしまった。
    それから10年、かつて少年だった青年は、愛する人との〝別れ〟にどうケジメをつけるのか。

    私たちが星座を盗んだ理由
    幼い私の恋心。幼い私の寂しさ。恋も寂しさも人を惑わす。優しい姉と幼馴染の彼。2人の間で揺れ動く少女がしたこと。
    星座トリックは面白いけど小学生にはどうかな。

    どれもストーリーは面白いのだけれど、詰めが今一歩という感じでした。ドンデン小説というよりイヤミス小説。いろんな意味でモヤッと…(^^;;

    今年の28冊目

  • 5つの短編集で、どれも最後にウッとさせる。
    表題の作品が気になったが、何でそのまま綺麗に終わらせてくれないんだ、と感じた。
    そこも含めても満足です。



    優しく、美しく、甘やかな世界が、ラストの数行で、残酷に崩壊する快感。景色が反転し、足元が揺らぎ、別な宇宙に放り出されたかのような、痛みを伴う衝撃。かつて、まだ私たちが世界に馴染んでいなかった頃の、無垢な感情を立ち上がらせてくれる、ファンタジックな短編集。ミステリの醍醐味、ここにあり!


    難病の女の子を喜ばせるため、星座を一つ消して見せる男の子を描く表題作ほか、5つの物語のすべてに驚愕のどんでん返しが待つ傑作短編集!

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著者プロフィール

2002年、『『クロック城』殺人事件』(講談社ノベルス)で第24回メフィスト賞を受賞しデビュー。代表作として、デビュー作に端を発する一連の〈城〉シリーズなどがある。

「2022年 『月灯館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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