海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 740
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778305

感想・レビュー・書評

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  • 2013年本屋大賞受賞作品
    以前に読んだ「永遠の0」と似ているのだが、また一味違う読後感。
    この作品も自分が今まで読んだ本の中で最上級の作品だと感じている。
    出光の創始者である出光佐三さんがモデル。史実とフィクションが組み込まれながらの作品で凄く読み応えのある作品だった。

    国岡鐵造の日本男子としての格好よさが終¹始作品に溢れている。その根底にあるのは人間尊重の精神。強く愛が含まれている。
    こんな男になりたい、目指したい、なってみせたいと作中何回思った事か…

    感想を書こうと思えば作中の様々な局面で幾らでも書けそうだが、つまるところはやはりどの場面でも「愛」だろうと感じる。
    なかでも日田重太郎とのエピソードが最高に胸を打つ。友情とも愛情とも仲間ともなんとなく違い、精神上の繋がりという感じの関係性は言葉では言い表せない。そんな間柄の人は自分にはいない。
    素直に羨ましかった。
    作品とは違うが読後二人を調べてみれば年老いた日田さんが和装で椅子に座り、その後ろからスーツ姿の年老いた出光さんが日田さんの両肩から両手をまわしている写真を発見した。二人の少年のような笑顔で胸がいっぱいになった。
    なんという写真だろうかと胸がつまる。

    最後「仙厓和尚」の「双鶴画賛」に看取られて鐵造は息を引き取る。戦後生き抜く為に一度手放したが再び戻ってきた絵。
    一方の鶴は国岡自身だろう、もう一方はと考えた。色濃い国岡の人生の中で当てはまる人物は幾らでもいる。それもそうだろうとも思うが、そのもう一方の鶴は日本という国にも感じられる。そうして考えてみると国岡だったはずの鶴は今を生きている自分たち日本人に向けている未来になっているのでは?とも感じられた。

    士魂商才、自分も飲食店の店主として忘れないように、また何度でも読んでいこうと決意している。

  • 最高でした。
    あの出光興産の創業者である出光佐三の若き日々から亡くなるまでの物語(作中では国岡鐡造の国岡商店)。
    石油業界にこんな歴史があるなんて知らなかった。
    恐らくすべてノンフィクション。
    事実は小説よりも奇なりという言葉があるけど、どんな物語より劇的な人生だと思う。
    歴史や日本史に詳しくなくても、難しいところはサーっと流して問題ない笑
    充分すぎるほど楽しめた。ガソリンスタンド通る時に見る目変わる。
    出光佐三さんが同じ日本人で良かった。
    若い人こそ読むべき作品だと思う。

  •  主人公(国岡)は、隙あらばチャンスと考え、事業を拡大していく。その豪快さと勘の鋭さに驚嘆した。学生の時から、これからは石油の時代になる。と考えていたことも、圧巻させられた。海賊とよばれてきた意味がすぐに分かった。

     国岡は強さと優しさを併せ持つ男であった。

     社長(国岡)と従業員の信頼ある関係性に心を奪われた。国岡は社員を家族と考え大切にしていた。従業員も皆、彼の魅力に惹きつけられた。

     「国岡と共に懸命に働くこと」この志を共有した仲間たちとの仕事は、何よりも尊い喜びであった。人からの温もりに満ちた職場は、厳しい環境であっても、きっとかけがえのないものなのだろう。自分も身を置いてみたいと心から思った。

     日章丸がイランへ向かう旅路の場面が一番好きだ。死と隣り合わせの航海に、快く承諾した船長(新田)。彼の巧みな技術、責任感、優しさが魅力的だった。ドキドキ、ハラハラの展開に胸が高まった。新田と乗員達とのやりとり、国岡からの手紙に何度も涙で溢れかえった。

     国岡は家族、社員だけでなく、消費者の気持ちを尊重し続けた。利益より世界中の消費者側に寄り添う信念に感銘を受けた。さらに、日本の為、他国の為に舵を取る仕事のやり方は彼にしかできないことだと思った。世界の偉大なる父のように感じた。

     生涯を通して「人は財産である」と人を心の底から大切にする生き方。純粋に素敵だと思った。

  • 学生時代の4年間、出光のガソリンスタンドでバイトしていた私にとって、多少出光佐三氏は知っていたのだが、これほど過酷な環境を生き抜き歴史が作られていたことはまったく知らなかった。
    当時控え室に出光佐三氏のお言葉が飾られていたのを思い出す。(内容までは覚えていないが)

    自伝的小説なのだがミステリーのように先が気になり、当時の状況と重なりあうと歴史書のバイブル的な様相も呈する。
    石油業界のこれまで、国岡商店(出光興産)のこれまでを今更ながら知ることが出来て大満足の一作。

  • もぅ一気読み。なのに途中 涙で何度も……
    伝記であり物語でもあり道徳の教科書でもある。

    出光のホームページ 「5つの主義方針」も読んだ、互譲互助、無我無私 心に刻みました。

    出光佐三 カリスマ経営者と言うより「国士」ですね。
    いゃ、戦後復興にあたった日本人 全てが国士だったのだなぁっと 今日を感謝!

    誇りと自信を失わずにいよう。

  • 学校では教えてくれないような日本の歴史が勉強できる名作!中学くらいの日本史で教えてくれれば歴史に興味を持ったかも。
    今も続くイランとアメリカの関係は石油が大きく関わっていたとは。イランに同情してしまった。。
    しかし色々とイギリスの歴史って真っ黒だな!

  • 在り方について再考する機会に感謝。
    下巻で私が沁みたのは、日田重太郎氏の存在。
    上巻でもその言葉に涙したが、下巻はその集大成。
    国岡商店の本当の生みの親といっても過言ではない。
    フィナーレで蘇るタンク底に笑顔で潜っていく男たちの姿。3人のレンガ職人を彷彿とさせる。
    紛れもなく人間尊重の信念が信頼と希望を生んだ結果だ。
    信念が支えを生み、連鎖していくことの美しさが感じられる素晴らしい小説。

    「たとえ99人の馬鹿ぎいても、正義を貫く男が1人いれば間違った世の中にはならない。」

    「リスクのない商売はない」

    「人生は一度きりだ。ふたつの道はない。」
    ユキと多津子を回想しながらの一言。

    「人間を信頼するという考え方を広めていくことこそ、日本人の世界的使命」

  • 読み終わってしまうのが、惜しいという気持ち。
    子供の頃に耳にした「アポロ」や、意味が分からなかった「民族系企業」という言葉が理解出来て、ストーリーと自分の時代が少し重なり、深みを増した。
    それにしても、徳山製油所を10ヶ月程で完成させてしまった事はあまりにも無茶ではあるが、何か神ががったものを感じる。
    解説で触れてあったが、ストーリーは国岡商店側からの視点で書かれている。一方、相手側の見方も気にはなり何ゆえに国岡商店にその対応をしたのか、ただ潰したいと言うだけではない部分もあると思う。
    少しその所も触れられると、面白みが増すような気がする。

  • めちゃくちゃ面白い。
    出光佐三という人間から勇気がもらえる。
    何十年にもわたって感動させることができる人物こそ偉人であると思った。

  • 出光興産出光佐三の物語
    こういう日本人達がいたからこそ、日本は戦後あんなにも早く復興し、世界の1等国になれたのかと実感しました。小説なので、どのくらい創作が入っているか気になるところ。
    最近出光のガソリンスタンド見かけないな

著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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