闇の喇叭 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778787

作品紹介・あらすじ

探偵行為が禁止された世界で少女「空閑純」は殺人事件の解決に挑む。有栖川有栖が探偵の存在意義を問う、新シリーズ堂々開幕!

感想・レビュー・書評

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  • けっこう好きでした。序章の世界観が掴めなくて困惑したけど、主人公が登場してからはトントンと読めました。高校生なのもいいし、青春としてもミステリーとしても。探偵業で見つかると捕まるというのが面白い。
    男は男、女は女、強圧的な日本、に、しない為には、、意外と日本の事や現代を考える題材にもなってリアルタイムでした。

  •  探偵行為が禁止された日本を舞台に両親が探偵の女子高生、空閑純が地元で起こった殺人事件に巻き込まれていくミステリー。

     まず設定が面白い! 太平洋戦争で北海道がロシアの占領下に置かれた日本が舞台になっています。またこれも突飛な雰囲気ではなく、プロローグでしっかりとそれに至る歴史的背景にも触れられているので無理なくそうした設定が受け入れられます。

     単独のミステリとして読むよりも、強大な力に挑まざるを得なくなった少女の物語の序章という風に読むのが正しいでしょうか。

     あとがきによると元々はこの作品をシリーズ化する構想はなかったそうですが、著者の有栖川さん自身がどんどん続編を書きたい思いが強くなって、続編刊行に至ったそうです。個人的には有栖川さんナイス! という感じです(笑)。ここで終わるのもなくはないですがやっぱり気になりますしね。

     本格ミステリだけでない、有栖川さんの新境地になりそうなシリーズ作品です。有栖川さん作品では学生アリスシリーズが非常に待ち遠しいですが、そんな待ち遠しいシリーズがまた一つ増えてしまいました。とりあえずは次回作の来月の文庫化を楽しみに待ちます。

  • ソラシリーズ一作目。
    探偵行為が禁止された国、日本で警察組織に対して探偵として活動したいソラ。
    今作はその設定とソラの今後への動機付けなのかと思います。

  • ソラシリーズ

  • このシリーズは、独特の世界観で面白いかも。

  • 私的探偵行為を禁止する法律が成立した平世21年の日本―。女子高校生の空閑純は、名探偵だった両親に育てられたが、母親はある事件を調査中、行方不明になる。母の故郷に父と移住し母の帰りを待つ純だったが、そこで発見された他殺死体が父娘を事件に巻き込む。探偵の存在意識を問う新シリーズ開幕!


    ・レビュー


    あらすじ紹介文うまいなぁ。この文量でまとめようとするとまさに上の要約になるね。ただこの文で想像するレベルよりはずっと面白い。この小説はヤングアダルト向けと言われているけれど、結構誰にでも面白く感じる内容じゃないかな。

    でもそうはいっても、僕もできれば高校時代に読みたかった小説だなとは感じた。それともあるていど大人になった今のほうがむしろ良かったのか、青春時代に読みたかったと思うこと自体が楽しめている証拠なのかもしれない。そういう意味では、やはり十代後半から三十歳前くらいの世代が一番シンパシーを感じる小説かもしれない。

    だから今作は青春ミステリとするのがジャンル分けとしては妥当だと思う。

    ミステリは大別すると2種類あって、一つは古典や新古典といったストーリーよりもトリックを重視したりするもの。有名どころでは綾辻行人の『十角館の殺人』とか筒井康隆の『ロートレック荘事件』はこのあたりに分類されるかな。もちろんエラリー・クイーンやアガサ・クリスティーの一部作品もトリックの方が強いことがある。強いことのほうが多いかもしれない。未読が多いので断言はできないけれど。

    もう一つはストーリーや動機、社会、事件背景、時代、そういうのを存分に利用した登場人物の心理情景に共感や感動の要素を詰め込んでいくミステリ、あるいはこれは上記のトリック型を内面的に持っている場合はある。トリックも素晴らしくストーリーもなかなかに深いというのはまれに存在する。世間的にストーリー重視なもので有名なのは貫井徳郎の『慟哭』とか道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』とかかな。もっと解りやすいところだと東野圭吾や伊坂幸太郎のミステリはこのタイプだと思う。未読が多いからこれも断言できないし聞くところには『容疑者Xの献身』あたりはさっきちょっと触れた両面性を持っていたりするのかもしれない。でもやはりトリックは見破れる範疇かな。

    この『闇の喇叭』は後者で間違いない。ストーリー重視であり、トリックはそこそこ、といった感じ。ただそこそことは言ってもなかなか凝った事件が起きていたりもするのでトリックや犯人当ての要素も楽しめるレベルだとは思う。ただしそちらに気を取られてストーリーがぼやけてしまうならば、いっそ謎解きは捨ててストーリー小説として読んだほうが感動できるんじゃないかな。

    この小説には重要な要素が三つある。推理小説、探偵という存在への問題提起、青春、という三要素だ。
    これらがバラバラにならずに綺麗に融合しているからこの小説は作品として高いレベルで完成していると思う。読んでいて僕が思い出したのは城平京の『名探偵に薔薇を』である。これは名探偵であるが故の苦悩を描きつつ、それと平行する形で推理小説的なトリックや謎解きが描かれる。二つの要素は融合はしているが本質的なところで分離されている。多分意図された分離で、分離しているからこそ両面が強調されていて傑作になり得た。
    『名探偵に薔薇を』が隣り合わせる平行線的にテーマと推理性を融合させたとすれば、『闇の喇叭』は推理小説であり、そこに不可欠な探偵役がおり、それでいてそれが否定されるという青春がある、といった三重螺旋的にテーマの融合が成されていると思う。

    それが成功しているのは、世界が我々とは違うからである。この作品の世界は、大昔に読者が生きているこの現実世界とは分岐して変化した世界である。つまりパラレルワールドだ。

    冒頭を読んでいると「なんだなんだ?歴史小説かこれは」と思うかもしれないが、これは世界観の理解に必要な序章だ。ここを読み飛ばすとその後の「探偵」の特殊性が理解できない。
    戦時中の描写であるが虚実入り交じる展開で、どこからか決定的に「歴史が変わる」のが判る。史実が変わり、今の日本とは少々違う状態になる。つまり何かが違っていたら、戦後はこうであったかもしれない的な日本なのだ。そのあたりが丁寧に冒頭で説明されていて、戦争の話だったりするのでちょっと嫌煙されるかもしれないが、ここを理解して、比較的簡単な本編に入ってくれればきっと楽しめるはず。
    ちなみにこのような歴史の変化とともに発展してきた作中の日本では、私立探偵が法律で規制されている。私的探偵行為、警察類似行為、といった感じかな。つまり推理小説もよくないものとして考えられており、探偵をやっている人はバレると捕まる。そういう探偵が表立って行動できない世界だということだ。
    だから、探偵の娘が主人公のこの小説が特殊な心情を抱えていることが判るだろう。これにより探偵が探偵でありながらその誇りを認められず、世間からは否定されている存在という、「そういう歴史の世界」が生まれる。だからこの作品の主人公は探偵という立場に対して複雑な心境を持ち、反発の力がある。これこそが現実世界でいうところの青春であると言っていいと思う。そして重要なのがこの作品はシリーズ一作目として、探偵未満の主人公の物語だということ。だからトリック的要素はレベルが決して高いとはいえない。だけれどもあえてその立場からミステリを描く探偵小説だからこそ面白い。主人公の成長が気になるという感覚、そこが魅力だといえる。

    もっといえば、決して舞台がミステリ向けではないのだ。あとがきによるとモデルは福島の太平洋側の町のようだ。田舎の小さな町で起きる殺人事件、規模はとても小さい。だからこれは探偵未満の主人公の出発点で、これから探偵になるための物語である。次作を読めばそれが読めるようになっているし、ここでやめれば読者の想像の域にそれがある。
    そしてこの田舎町で主人公が同級生たちと深めていく友情もまさに青春小説のようで面白い。ミステリが隣り合わせる青春というのがなかなか新鮮で、読んでいて楽しかった。
    続きはブログで(http://x0raki.hatenablog.com/)

  • 話の冒頭が難しくて挫折しかけた。
    今の日本とは違う世界線のお話。
    その設定を頭に置きつつ読むので読了までいつもの2倍時間がかかった。

    世界線が違うからと言ってファンタジーではなく
    もしかしたら今の日本がこうだったかもしれない…
    と思うリアリティ。なかなか楽観的に読めなかった。

    ただただ奥歯を噛み締めて読んでいた。
    シリーズ物だけど次の作品は読まないかもな…
    そう思っていたが。。
    作者あとがきまで読んでいったら、次も読もうかな、という気持ちになってくる。不思議だ。

    この一冊で完結と捉えても良さそうだ。
    作者は当初そのつもりで書いたらしい。
    続きを読むかは、最後まで読んでから考えてもいいと思う。

  • 大好きな有栖川先生の作品だけど、これは今まで読んだのとはタイプが違う感じ。
    これまで読んだ約20冊の有栖川作品はあっと言う間に読み終わったけど、これは全然読み進めれなくて、読了までにこれほど時間がかかったのは初めてでした。
    なんとなく、私が好むミステリとは違って、なんとなく思想的な感じがして、私は苦手です。 このシリーズはもう読まないと思います。
    (2023/10/8、他の読書管理サイトからお引越し。レビューは読了日に記載。)

  • 平世21年、探偵行為が禁止され、探偵狩りが行われている世界線の日本で、探偵の両親に育てられたソラの物語。シリーズもの一作目なので、ここで終わり!?という結末。
    物語の始まり。
    続きを読むしかない。
    ミステリーだけど青春小説でもある。ソラの行く末が気になる。幸せになって……。

  • 探偵が禁止された世界。最初なんかよく分からんかったけど読み進めていったら理解出来て面白かった。

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著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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