風のマジム (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778879

感想・レビュー・書評

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  • R3.9.12 読了。

     まじむさんの明るくて地道に努力していくひたむきさと原田マハさんのきれいな文章や沖縄弁などのとりこになってしまった。まじむのおばあやおかあの存在もうらやましかった。今時あまり日常的でないかもしれませんが、毎朝仏壇に祈っているシーンも印象的でした。
     まじむさんの一大プロジェクトは、本当に周りの人たちに恵まれて成し遂げることが出来て良かったと思います。人材は宝ですよね。最後、まじむさんが大好きなおばあがこの沖縄産ラム酒を飲んでどんな顔したんだろうな?
    沖縄産のラム酒をやまやさんで探してみようっと。
    いつか沖縄にそして南大東島に行ってみたいなあ。
    『真心(まじむ)こみてい。』

    ・「仕事ができるということは、自分に自信を持ち、人を思いやり皆と強調すること、そして着実な努力を一歩一歩続けること、他人を尊敬し、常に謙虚に人の忠告に耳を傾け笑顔を忘れず前進すること…実際にはなかなかできないが、仕事の出来る人の在り方、
    そしてより良い人生の歩み方を本書から学ぶことが出来る。」(解説より)
    ・「出世のためでも、お金のためでも、売名でもない、全ての邪心を捨てた純粋な好奇心と情熱が人を成功に導く。」(解説より)

  • 大好きな原田マハさん。
    読友さんのレビュー「登場人物の方言、沖縄の空気感がとても心地良かった」を見て読んでみました。
    ご紹介ありがとうございます!

    強く感じたこと2つ。
    まだ行ったことのない沖縄のサトウキビ畑で、いつか風を感じてみたいなぁ。
    お酒を楽しめるっていいなぁ。(私は超弱いので)

    最初から最後までいい”風”が吹き渡っている、爽やかな一冊でした♪

  • 何の取り柄も無さそうな派遣社員が、ラムに魅せられて事業化するというサクセスストーリー。夢物語では無く、地に足が付いたような内容と思ったらモデルがいたそうだ。
    意地悪な先輩、邪魔をする女上司など蹴散らして真っ直ぐに向かっていく姿が清々しい。
    マジムとは真心のことだそうだが、まさにそう感じた。実際に製造されたラム酒が、本当に飲みたくなった。

    追記(2023.05.03)
    捜していたラム酒のコルコルが近所の生協にありました。先行して飲んでいたバカルディより爽やかな味がしました。

  • 2023.7.21 読了 ☆9.3/10.0


    沖縄県産のさとうきびを使ってラム酒を作りたいと夢
    を語っていた派遣社員が、ある日見つけた社内ベンチャーコンクールに応募したことから始まる、会社を説き伏せ、伝説の醸造家を口説いて、夢を叶えて女社長になるといった実話に基づいた物語です。


    タイトルにある『風の』は、ラムの原料がさとうきびで、風に吹かれて育つことから、風が育てるお酒ということ、
    『マジム』は沖縄の言葉で『真心』であり、主人公・
    伊波まじむの名前です。


    "まじむ。お前も育っていけ。いいことも悪いことも、全部、風に吹かれれば、なんくるないさ"


    まじむに語りかける祖母の、歌のような、詩のような言葉に最初から心を揺さぶられます…


    そしてこの本を通じて、お酒とは何か、そしてどのように作られるか、そしてそれがどんなに神秘的で、生命の営みの果てにあるものに人間の知恵を加えて創られた産物であるかを心底思い知り、感動しました。


    お酒一本にこんなにも多くの人々の思いが詰まっているのだと気付かされます。


    沖縄の歴史、風土、文化、自然の豊かな情景、そして精糖、お酒作り、夢を持ち続けることの偉大さ……


    本書は、エンターテインメントという体を採りながら人生において大切なことをそっと、遺憾なく差し出してくれる。


    ああ、沖縄に行きたくなる。そして風に吹かれながら目を瞑ってこのラム酒を飲みたくなる…


  • これ、爽やかで元気になるヤツだー(*^^*)/

    沖縄県産のさとうきびを使ってラム酒を作りたいと夢物語を語っていた28歳派遣社員が、会社を説き伏せ、伝説の醸造家を口説いて、夢を叶えて女社長になるといった実話に基づいた物語

    タイトルの『風の』は、ラムの原料がさとうきびで、風に吹かれて育つことから、風が育てるお酒

    『マジム』は沖縄の言葉で『真心』であり、主人公・伊波まじむの名前である

    トットットット、液体を注ぐ心地よい音。。。

    立ち上る芳醇な香り、夏の果実、乱れ咲く南国の花々、さとうきびの森、海を感じさせる風。。。

    CMにでもなりそうな絵面

    風にそよぐさとうきび畑を眺めながら、真心込めて作った「風の酒」を飲んだら、ゼーッタイ美味しいと思う

    沖縄にも行ってみたくなります

    お勧めです♪

  • 『Uターン』という言葉に何を感じるでしょうか?
    生まれた都道府県から、いったん県外へと移住し、再び生まれた都道府県へと帰ってくることを指す『Uターン』という言葉。その割合が全国一高い都道府県、それが沖縄県です。実に県外に出た人のうち、7割もの人が帰ってゆくという沖縄。そして、東京一極集中が叫ばれる中、東京に次いで人口増加率第2位にランクされるこの県には、他の都道府県とは全く違う物差しで測るべき、人を呼び寄せる魅力があるように思います。青い空、青い海、そしてゆったりと流れる時間、様々な魅力に溢れた沖縄。そして『沖縄語』とも呼ばれる独特な方言もどこかとても魅かれるものを感じます。この作品の主人公・伊波まじむ。おばあがつけてくれたというその名前『まじむ』とは『真心』を意味する『沖縄語』です。

    『ひいおばあの代から、伊波の家は豆腐屋を営んでいる』という豆腐屋の娘まじむ。『おばあは国産大豆にこだわって、北海道は十勝の農家から直接仕入れている』という店は『他の店より少々高くても、誰もが競って買いにきてくれる』豆腐屋です。高校を卒業後、東京の大学に進学するも『ずっと違和感を覚え続けた』というまじむ。『東京でないとできないことをこの先やりたいわけじゃ無い。ふるさとでなければできないことをやっていきたい』と卒業後はなんの迷いもなく沖縄に戻ります。でも、『派遣社員で、簡単なデータの入力やコピー取り、お使いやおやつの買い出し』の日々に、『自分がいま、何をしてるのか。何をしたいのか。すっきりと青空が見えないのは、どうしてなんだろう。風が、吹いてこない』ともやもやした日々を送るまじむ。そんな時、全社員を対象とした『社内ベンチャーコンクールの募集告知』を目にします。一方でさとうきびを原材料として造られるラム酒の魅力を知ったまじむ。『こんなにさとうきびがいっぱいあるのに、沖縄のラム酒っていうのがないのかね。宝の持ち腐れぇさ』というおばあの言葉をきっかけに『純沖縄産のラム酒をこの世に生み出す。風の酒を、造る』と決意し、コンクールへの応募に向けた準備をスタートします。

    『ざわざわ、ざわざわと風に揺れる、見渡す限りのさとうきび畑。道にせり出すように、勢いよく茂るさとうきびの葉』、『行けども行けども風景が変わらない。案内標識も道しるべもない。ただただ、さとうきびの緑の波がみずみずしく続くばかりだ』といった南大東島の風景。行ったことはなくとも、ここに挙げた二つの表現だけでもその島の景色が目の前に浮かんでくるような瑞々しい表現に冒頭からすっかり島の魅力に囚われてしまいました。

    また、これは秀逸だと思ったのは、沖縄の方言『沖縄語』を作品中で標準語と巧みに併記しているところです。難しい漢字の右側に小さくルビが振られるのは他の小説でも一般的だと思いますが、この作品では、標準語の右側に『沖縄語』が、もしくは逆に『沖縄語』の右側に標準語がルビのように併記されているのです。他にもこういった試みがされている作品もあるのかもしれませんが、私はこの作品で初めて目にし、とても驚くとともに、そのアイデアに感心しました。例えば『でーじ助かりました』と書かれていてもなんだか意味不明ですが『でーじ』の横に『すごく』とルビが振られているとどうでしょうか。これですらっと読めるだけでなく、単に『すごく助かりました』と標準語で書いてあるだけよりもその場の雰囲気がよく伝わってくるように思います。さらに原田さんは右側に振るルビを標準語にするか、逆に『沖縄語』にするかを巧みに使い分けられています。ここで例に出した『でーじ』は、この後同じ言葉が出てきても標準語のルビが振られることはありません。これはこの言葉は読者に覚えてもらおうという意図があってのことだと思いますが、こういったルビの振り方の工夫一つとってもとても細かい部分まで丁寧に練りあげられた作品だと思いました。

    そして、『沖縄のさとうきびから生まれた酒。沖縄の風に吹かれて育った酒。もしも、そんな酒があったなら。飲んでみたい。いや、違う。造ってみたい』というまじむのラム酒造りにかける強い思い。そしてそんな彼女の思いに魅かれて、彼女を様々な形で力強く支えていく人々をリアルに描いたこの作品。明るく、まっすぐでまじむ(真心)という名前そのままに、目の前の人、一人ひとりに真摯に真心を込めて向き合っていくまじむ。起承転結のメリハリがスッと入ってくる巧みな構成もあって、そんなまじむの熱い思いが作品を超えてストレートに伝わってくるのを感じました。

    実話を元にしながら、島の風景の巧みな描写、島の雰囲気を伝える『沖縄語』の表現の工夫、そして島を大切に思うまじむのまっすぐな気持ちを丁寧に描いたこの作品。沖縄という、今は訪れることのできないその島に、再び訪れることのできる日を願って、その大地でとびきりの沖縄の風に吹かれてみたい、風を感じてみたい、そう強く感じさせてくれるとてもあったかい作品「風のマジム」。素直に感動しました。

    • shukawabestさん
      shukawabestです。こんばんは、僕も数時間前にこの作品読み終えました。本当に素直に感動しました。ルビの振り方もとても細やかな工夫がさ...
      shukawabestです。こんばんは、僕も数時間前にこの作品読み終えました。本当に素直に感動しました。ルビの振り方もとても細やかな工夫がされてますよね。読みながら沖縄の雰囲気を味わっていた感じです。

      少し先になりそうですが、さてさてさんの本棚から、「ある晴れた夏の朝」追いかけてみようと思っています。今後もよろしくお願いします。
      2022/08/18
    • さてさてさん
      shukawabestさん、いつもありがとうございます!
      この作品良いですよね。沖縄全開と言いますか、あげていただいた”沖縄語”のルビなど...
      shukawabestさん、いつもありがとうございます!
      この作品良いですよね。沖縄全開と言いますか、あげていただいた”沖縄語”のルビなど細かい工夫の集合体が全体としての雰囲気感を盛り上げていると思います。原田マハさんには、沖縄を舞台にした作品が他にも複数あります。そちらもおススメばかりです。
      一方の小手鞠さんの作品は2022年の上半期ベストにも入れましたが、私にとって衝撃的な一冊でした。是非手にされることをお薦めします。
      コメントありがとうございました!
      2022/08/18
    • shukawabestさん
      こちらこそありがとうございます。
      こちらこそありがとうございます。
      2022/08/18
  • 那覇のOLが会社のベンチャー制度を使って沖縄産のラム酒を製造販売するようになるという、実話をもとにしたサクセスストーリー。評価は星4.5だったが、作者の原田マハさんのあとがきを読んで星5に。この話を取材した時の原田さんはまだ小説家デビュー前で、その当時に五年後の執筆を約束していたと言う。風が気持ち良さそう。ラム酒が美味しそう。

  • 原田マハさんのあとがきによりますと、日本初、沖縄産アグリコール・ラム酒を造る。
    そう志して、起業した女性が現実に存在する。那覇市在住の金城裕子さんは、民間企業OLから立身し、現在、南大東島に本社を置くラム酒製造会社「グレイスラム」の代表取締役社長である。(中略)金城さんの物語は、その時期悪戦苦闘していた私自身のの物語であり、そして世の中で奮闘する数多くの女性たちの物語でもある。そんな気がしてならなかった。ということで金城さんに「沖縄産ラム酒を造った女性の小説を書いてもいいですか」と了解を得たそうです。

    この話は、見事にそれを再生した物語です。
    沖縄に住む、派遣社員の伊波まじむ(まじむとは沖縄のことばで真心の意味だそうです)が大切な家族や仲間たちとともに、一から計画してコツコツと、南大東島のさとうきびを使ったお酒『風のマジム』を造っていくお話です。
    幾度もの困難にも打ち勝ち、周りの人々に助けられて、ひとつのことを成し遂げた28歳の女性の4年間に渡るサクセスストーリーです。
    でも、まじむの一番の大きな夢は大好きなおばあに、風の酒を飲んでもらうことでした。


    うーじーの森の。いちめんの緑。赤々と燃え咲く、ディゴの花。
    浜辺でつまびく三線の音色。遠くに消えゆく島唄。
    口の中で溶けていく、おばあにもらった黒糖のひと粒。
    うつくしい沖縄。なつかしいふるさと。
    ああー風よ。

    ずっと、ずっと飲みたかった。私。この酒を。
    夢にまでみた。うちなーラム。
    風の酒を。

    「おばあーっ」

    『風のマジム』Island Dreamer [アイランド・ドリーマー]夢見る島人(しまんちゅ)

  • 素晴らしかった。

    いいに違いないと予感•確信して、購入後、敢えて”楽しみ”を先のばししていた。

    サクセスストーリーだが、主人公、伊波まじむが壁にぶつかりながら、周囲の人たちの叱咤激励や協力によって少しずつ成長する姿や、

    まじむの平凡さ、試行錯誤、素直さ、ひたむきさ、

    著者、原田マハさんのしっかりした取材と文章力、そして何よりこの作品に対する思い•••。

    それらが、力むことない自然な文体で、ストレートに胸の内に入ってくる。

    ときどき、劣等感や自分はダメだなぁ、と思ってしまう人、

    それでも、”いい明日”を夢想しながら、まだ一歩を踏み出せずにいる人、

    そんな人にとてもオススメの作品です。

    ああ、”伊波まじむ”に出会えて良かった。

  • 風のマジムを呼んだ後、ここのラム酒が飲みたくなりました。

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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