壊れる心 警視庁犯罪被害者支援課 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062778961

感想・レビュー・書評

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  • 復讐が大きなテーマ、復讐することが唯一願いとなっていくことで、心が壊れ闇に堕ちていく。被害者も加害者と同類の人間になってしまうことでもある。
     被害者に寄り添い加害者に罪を認めさせていくこと、同じ被害を繰り返さないための糸口を見つけ出していくことが再生の道であるように思えた。

  • 視点が面白い。殺人犯を負う猟犬のような捜査一課ではなく、被害者側に寄り添う警察組織。
    いつもながら、丁寧な筆致で登場人物が描かれ自然に楽しめる1冊。

  • 犯罪に巻き込まれて亡くなった遺族に寄り添う支援課だが、思わぬ事件に発展したのは、驚きました。

  •  月曜日の朝、豊洲の小学校の前の通学児童の列に暴走車が突っこんだ。妊娠7ヶ月の女性が亡くなった。園児なども含めて死者は5人。警視庁犯罪被害者支援課の村野が主人公であり、ラストラインのスピンアウト小説。主人公の村野は、自らも事件の被害者、交通事故に遭って怪我を負い、捜査一課から志願して犯罪被害者支援課に移動した。被害者の心に寄り添い、傷が癒えるのを助ける。正解も終わりもない仕事。警察において、犯罪被害者の心のケアをするという仕事があるのだね。
    「100の事件には、100通りの哀しみがある」という表現がいい。
     暴走車は、ボルボ。そして、運転手は逃亡する。ひき逃げ犯であり、荒木を割り出した。
    ブレーキ痕も、なかった。荒木は、酒酔い運転なのか?それとも故意に暴走したのか?そのことが、次々に暴かれていく。
     大住茉奈は妊娠7ヶ月で、母子とも死亡。夫の大住は妻を失うことで、悩み、苦しみ、そして、失踪、さらに復讐をする。支援課の村野の眼差しは、優しい。被害者家族にとことん寄り添う。
     この大住という男が、被害者の一つのパターンとなる。
     支援課には、大学時代の同級生、松木優里がいる。常に冷静で的確なアドバイスがある。また、村野の元恋人も同級生で、二人が復縁することを期待している。新人の女子支援員を、丁寧に村野は教育する。支援課は、警察の中で、落ちこぼれのような部署だと思っている。
     同僚の長住光太郎は、支援課にいながら、支援課の仕事を馬鹿にしている。こういう人物を配置することで、村野の心情が鮮明となる。

  • シリーズもの。
    他の話を先に読んでしまっていたが、それはそれで楽しんで読むことが出来た。
    人の心を扱う仕事って難しいよなぁと。

  • 正解のない仕事。
    1つの大事故が大きな事件へなるなかで、正解でないかもしれないが、事件と向き合う主人公の行動がかっこよかった。

  • 説明調な文章な感じがするものの頭の中で絵が描ける作品。

    物語のすべてが現実味がないストーリーであれば割り切って読むのかもしれないが、最初の事件(事故)の時点では、自分の身に起きてもおかしくないようなできごとなので、そこから終盤の展開に向けては気持ちの切り替えが必要だった。それは作品の出来良しあしとは関係ないけど。

    刑事でない警察官が事件と関わる新しい視点が面白い。
    今刊行されている本シリーズ、全部買っちゃいました^^
    未読がたくさんあるって幸せ~

  • 警察には被害者のケアをする仕事があるんだなぁと知った。

    これは事故なのか?事件なのか?
    ちょっと犯行の動機が薄い気もしたし
    いくら犯人を恨んでいたとしても
    そう簡単に復讐しようとできるものなのか…。

  • 犯罪や事故に巻き込まれ、図らずも被害者となってしまった人たち。
    突然に愛する者を奪われてしまった遺族たちのやりきれない思い。
    物語の中にも書かれているけれど、加害者に対しては声高に人権が叫ばれる昨今。
    なぜか被害者や被害者家族に対しては、さほど人権が重要視されていない。
    各局のレポーターなどが遺族に対して「今のお気持ちは?」などと聞いているのを見ると、心底頭が悪いのかと思ってしまう。
    そんなことしか聞けないのなら何も言わずに手を合わせていればいいのにと。
    被害者支援課の仕事は初期対応にある。
    長期にわたることもある被害者側へのサポートは、いずれ支援センターへと引き継がれる。
    主人公である村野秋生は自ら事故の被害者となった経験があり、その時の傷がもとで刑事課から支援課へと異動してきた経歴を持つ。
    けっして同じ痛みではない。
    けれど、何万分の一かでも何も経験のない人たちよりは被害者の心に寄り添える。
    被害者を支えサポートする。
    村野はそのことに誠心誠意取り組んでいた。

    警察小説としては珍しい題材で新しさを感じた。
    思いがけない展開を見せる事故後の捜査。
    どうしても犯人を許せなかった被害者たち。
    丁寧に描かれた人物像は、読んでいてときに痛みにもにた苦さを感じてしまった。

  • これは面白かった。警察物なのに刑事じゃなくて被害者支援の人間が主人公なのが珍しくて面白い。今までの堂場瞬一最高記録塗り替えた。特に後半の被害者遺族の心情の描写が震えるほど良かった。事件としてはがっかりだし課題の多い終わり方だと思うけど、物語としては上手に最後まで一気に終わって好感が持てた。続編を予感させる登場人物達も感情移入ができて良かった。

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著者プロフィール

堂場瞬一(どうば しゅんいち)
1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」「警視庁犯罪被害者支援課」などのシリーズ作品のほか、『八月からの手紙』『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『砂の家』『ネタ元』『動乱の刑事』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『チーム3』『空の声』『ダブル・トライ』など多数。

「2023年 『ラットトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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