峠うどん物語 上 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062779463

作品紹介・あらすじ

市営斎場前に建つ、一軒のうどん屋。暖簾をくぐるのは、命の旅立ちを見届けたひとたち。一杯のぬくもりが、静かな感動を呼び起こす。

感想・レビュー・書評

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  • 重松さんの本を一度読んでみたい!と思って数年。
    『峠うどん』というタイトルに惹かれ、この本が記念すべき重松さん初読。...どれだけ食いしん坊なんだ、私。

    登場人物は皆明るく、話の語り口もソフト。
    でも作者の伝えたいテーマはきっと「生と死」。
    ドスンと心に響く。

    私は今までの人生の中、敢えてこのテーマについて考えないように目を逸らしてきたように思う。永遠って言葉はないのに。もしかしたら現実逃避とも言えるかも。
    でも自分も歳を重ね、子供たちも大きくなり、両親も年老いてきた今、しっかり向き合う時が来たのかもしれない。
    このタイミングでこの本を読めたことに、感謝。
    食いしん坊に感謝。(え?)

    いつでも「メメント・モリ」を心に。
    そして下巻に続くー。もちろん読みますよ。

  • 大好きな重松さんの作品の中で未読だったため読んでみたのですが、やはり私は重松さんの作品が好きだなと改めて感じました。
    2014年と約10年前の作品であったのには驚きました。あらすじなどは見ずに読み始めたのですが、ただのうどん屋の話ではなく斎場の真ん前にあるうどん屋の物語であると分かった時はかなり衝撃でした。
    あまり見た事のない設定だったので不思議な感覚でしたが、自分にとってはこの作品を通して良い経験が出来たのではないかと感じました。
    重松清にしか書けない人間の様々な感情がありました。

    1つ難点あげるとすればこの本を読んでいる間は一生うどんが食べたくなること!!笑

  • 中学二年生の淑子は、おじいちゃんとおばあちゃんが営むうどん屋で手伝いをしている。
    うどん屋は、14年前に『長寿庵』から『峠うどん』に名前を変えた。
    目の前に、市営の斎場ができたからである。

    淑子の両親は小学校の教師だ。
    二人は…特に父親は、淑子が峠うどんを手伝うことを苦々しく思っている。
    中学生は勉強をするものだと思っているし、斎場帰りのお客がほとんどという特殊な空間に若い娘を置くのも良くないとも思っている。
    淑子を教師にしたいお父さんと、うどん屋を継いでほしいおばあちゃんの間で、淑子はただただ、うどん屋の手伝いが好きで出かけていく。

    お葬式やお通夜では、身内や近しい人には精進落としがふるまわれるから、うどん屋に来るのはその周辺の人たち。
    すぐには帰り難い、様々な思いを抱えてのれんをくぐるのだ。

    第一章 『かけ、のち月見』
    急なお通夜が二つ入ったので手伝いに来て欲しい、とおばあちゃん。
    何と一件はお父さんの昔の同級生、もう一軒はクラスメイトのハトコ。
    二人とも、「顔も思い出せないし、お通夜なんてめんどうくさいなあ」と、似たようなことを言っている。

    第二章 『二丁目時代』
    お母さんの少女時代。
    罪を犯した男に、子供たちの複雑な思い。

    第三章 『おくる言葉』
    転出する先生のお別れ会でお礼の言葉を読む係に選ばれてしまった。
    習ったこともない、数カ月もいなかった代理教員の若い女の先生。
    さすがの淑子も困った。

    第四章 『トクさんの花道』
    長年、霊柩車の運転手を続けてきたトクさん。
    いいお葬式かそうでないかは、扉を閉める時の重さで分かるという。

    第五章 『メメモン』
    小六担任のお父さんのクラスの子が、夏休みの自由研究でお葬式を見学したいという。
    そして、うどん屋でお昼を食べる場所を提供し、淑子にも見学のサポートをしてやってくれと。
    提案した、宮本さんという女の子は、真面目で頭のよい子らしい。
    その非常識さに、淑子もおばあちゃんも目をむくが…

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    お葬式も本も、「泣くことがベストでマスト」ではない、と私は思います。

  • 相変わらず高度な文章表現力がある重松清さん。今回の主人公も中学生の女の子だが、テーマとしては大きすぎる「生と死」について「葬儀場近くのうどん屋」という視点から伝えてくることに斬新さを覚えました。最初は少し重いかな?とも思いましたが、読了後はいつもと同じ、心が穏やかな気分になります。下巻が楽しみです。

  • 中学二年生の淑子が、祖父母が営むうどん店の手伝いを続けることで、学校では教えてくれない人生の大切なことを学んでいく連作長編小説。
    味に自信があるのに、店は斎場の真ん前という設定が面白い。頑固一徹の祖父のこだわりはうどんだけではなく、人として生きる道にも厳しく、明るくおしゃべりな祖母の一言にも優しさと厳しさが同居している。あったかいうどんが食べたくなる、そして命の大切さを改めて知る物語である。

  • 相変わらずの重松清節に、心がホッコリ。
    職人気質で頑固な祖父と、陽気でおしゃべりな祖母、そしてともに教師の父と母と、素敵な家族に囲まれた中学三年生淑子の眼を通した、人生の大切なことを気づかせてくれる物語。
    なかでも、「トクさんの花道」は◎。

  • 斎場の近くにあるうどん屋さんでお手伝いする女の子と斎場を通して知り合った人々との出来事を通して成長していく。

    人の死が関わってくるので、どうしても暗い雰囲気は拭えない。しかし、それぞれの話の中には、暗いだけでは済ませられない、心を打つ部分が必ずある。じんときました。

  • 長寿庵という峠のうどん屋の真ん前に、市営斎場が建設された。衝撃的なオープニング。しかし、うどん屋は移転せずに、店名を替えて葬送と共に続けることを選択した。主人公で中学生の淑子の、祖父母が営むそのうどん屋を手伝う中で人生の終焉という現場の経験を積む。核家族という言葉が陳腐化された現代では、死は遠いところ、目に触れないところにあるのだ。5章の連作短編という構成だが、それぞれにほろっと読ませるのは、さすが重松氏だ。

  • 重松清さんの初作品がこれでした!何ですかねぇ ほんとにホッとする物語でした
    無性に普通だけど頑固オヤジさんが作ってくれるうどんが食べたくなります

  • 重松さんの作品が好きなので背表紙もレビューも見ずに手に取ってみました。なかなかスポットがあたることが少ない場所で綴られる物語りに心暖まるとともに人と人との繋がりをあらためて考えさせられる作品だと思います。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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