折口信夫――いきどほる心 (再発見 日本の哲学)

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著者 : 木村純二
  • 講談社 (2008年5月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062787567

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折口信夫――いきどほる心 (再発見 日本の哲学)の感想・レビュー・書評

  • [ 内容 ]
    日本の神とは何か?
    そのこよなく深い思索に分け入る。
    日本の「神」とはいったいどのようなものか。
    日本の「神」を検証し、独自の民俗学をうちたてた折口信夫。
    古代研究の魅力や歌人として注目されてきたが、はじめてその思想の哲学的意味を跡づける力作。

    [ 目次 ]
    序章 折口の情念―「いきどほり」と「さびしさ」
    第1章 国学者折口信夫(新しい国学;「神の道徳」と「人の道徳」;折口と平田篤胤;折口の学問的位置;古代の理想―愛欲・猾智;残虐;自由への憧憬)
    第2章 『古代研究』における神(常世神;神と精霊;天皇霊;ほかひびと;天つ罪)
    第3章 戦後の折口学(神道宗教化に向けて―ムスビの神
    既存者
    贖罪者としてのスサノヲ
    贖罪論の矛盾

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    [ 参考となる書評 ]

  • 国学者・折口信夫の「神」の概念がどのようなものであり、また戦中から戦後にかけてどのように変化したのかを探求した書です。
    さて、書名には「いきどほる」とあり、また帯には「怒りを忘れた日本人へ」と書かれています。が、これを見て「日本人よ、もっと怒れ」という意味に解しては、本書の意図を読み違えることになります。この言葉が真に意味するのは「日本人よ、神々の怒りを直視せよ」というメッセージです。著者は、折口が持っていた「神」のイメージが「人間に対して不合理な怒りを振るう存在」であったと論じます。異界である「常世」から来て、たびたび災いをもたらす存在である神を前にして、それは自身に罪があるせいだと感じたがるのが人間です。しかし、神の示す怒りは、人間が持つ道徳という尺度では測れない「神の道徳」に従っているため、人間には決して怒りの対象である「罪」の内容を理解できない、とするのです。
    著者は、折口がしばしばスサノヲの論考をしていることに注目し、彼がそこに、怒れる神の典型を見ていたと指摘します。著者は折口の論考に添う形で、徹底して神の目線から読み解くことで、「怒り」という神イメージを浮かび上がらせます。しかし、それを逆に人の側から見ればどうなるか。理由の分からぬ神の怒りを突きつけられたとき人間が抱くのは、本書で語られるような、言い知れぬ罪の意識だけではないはずです。私が本書を読んで想像したのは、身を潰されるような根源的な恐怖という感情でした。体が震えるといったレベルのものではなく、全身が凍りつき、一切の動きができないような恐怖を、そうしたときに人は体験するのではないでしょうか。
    さらに著者は、折口がスサノヲに「不合理に怒れる存在」と「天つ神によって不当に罰せられ追放された存在」という、2つの相反するイメージを重ねていたとも論じます。神概念の根本に孕んだこの矛盾は、折口が敗戦後に「神道宗教化論」を展開するころになっても解消されず、未解決のままとなってしまいます。しかし私には、折口が見ていたとするスサノヲ像は、実は矛盾ではなく、きわめて人間らしいという点では一貫したものだったように思われます。私が感じた「恐怖」を考えあわせるならば、そうした心の動きは、もっとも卑近な関係であるところの親子関係にこそ収斂できるような気がしてくるのです。罪への恐れと怒りとを抱くスサノヲを、親からの適切な養育を受けられずにアタッチメントに障害をもった存在と捉えてしまうのは、私見にすぎるでしょうか。
    こうした、複雑で矛盾に満ちた神概念を折口が構築するに至ったのには、折口と家族との関係、男性僧侶である藤無染との初恋、そして養嗣子である春洋の死があったと著者は言います。怒れる神、死、そして霊魂。神道宗教化にむけた論理構築を目指す中で、折口は終着点をどこに見定めていたのか。私の中でまたひとつ、課題が突きつけられた気がします。

    (2008年9月入手・2009年8月読了)

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折口信夫――いきどほる心 (再発見 日本の哲学)の作品紹介

日本の神とは何か?そのこよなく深い思索に分け入る。

折口信夫――いきどほる心 (再発見 日本の哲学)はこんな本です

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