大英帝国という経験 (興亡の世界史)

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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062807166

作品紹介・あらすじ

連合王国にとって、アメリカを失うという経験こそが、19世紀、ヴィクトリア朝の帝国ネットワークを築く画期となった。奴隷貿易の支配者から博愛主義の旗手へ、保護貿易から自由貿易へ。植民地喪失と帝国再編に揺れ続けた国民のアイデンティティ。帝国となった島国の経験とは、どのようなものだったのか。

感想・レビュー・書評

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  • ・現在の世界の枠組みを理解するために読んでみた。
    朧げながら、自分なりの像が結べたように思う。
    ・レディ・トラベラーだった、明治期の日本を記録したイザベラ・バード。
    何故イギリス人女性が日本にやってきたのか、不思議に思っていたのが、少し理解できた。
    ・見てみたい映画:「愛と野望のナイル」「インドへの道」「アラビアのロレンス」

  • 君塚直隆「ヨーロッパ近代史」つながりで。通読して思ったのは、大英帝国にとって、アメリカの喪失が、大きな転換点だったこと。そして、奴隷貿易のメインプレーヤーから、奴隷貿易廃止、奴隷を救う慈悲深き帝国への鮮やかな転換。最も19世紀、20世紀に世界各地でやってきたことは、慈悲深き...などという言葉でくくれるものではなかったことを後世の我々は知っているわけだけれども。ただ大英帝国がどういった思想に突き動かされ、それが崩壊していったかは興味深く読めた。各自治領も20世紀には大きく成長し、イギリス本国の政策さえ左右するようになっていったことが描かれる。また、ヴィクトリア女王の治世、サラ・フォーブズ・ボネッタ、ボーア人に心を寄せたメアリ・キングズリ、アリス・グリーンのような人たち、そしてガートルード・ベルといった女性たちの生涯についてもっと知りたい思いが湧いた。

  • 風とと共に去ぬからボーア戦争など、いろいろな視点から大英帝国や現在のイギリスまでをも、軽い筆致で描き出しています
    かつての帝国が、現在、そして未来へどう国民的意識を伝えるか、なかなか考えさせてくれる内容です

  • 英国にあって日本になかったもの、それは「コーヒーハウス」の存在が最も大きいなあと痛感。コーヒーハウスの存在が、近代市民を育て、やがては逆説的に女性の自立(と紅茶文化)を生んだと。
    あと、大英帝国の拡大は、例えば、近年アメリカによるグローバリズムとは一味違った印象を受け、なんというか、あらゆるものを「蒐集」していった印象が強い。大英博物館(とくにここではエジプトに関する記述を占める)や王立キュー植物園はその最たる例といえるだろう。

  • 入門的だが、「イギリス人」という意識と帝国経験との関わりが書かれていて面白かった。奴隷貿易・スコットランド・アイルランド・アメリカ独立というトピックに重点が置かれていて、エピソードの紹介が多い。

  • [ 内容 ]
    連合王国にとって、アメリカを失うという経験こそが、19世紀、ヴィクトリア朝の帝国ネットワークを築く画期となった。
    奴隷貿易の支配者から博愛主義の旗手へ、保護貿易から自由貿易へ。
    植民地喪失と帝国再編に揺れ続けた国民のアイデンティティ。
    帝国となった島国の経験とは、どのようなものだったのか。

    [ 目次 ]
    第1章 アメリカ喪失
    第2章 連合王国と帝国再編
    第3章 移民たちの帝国
    第4章 奴隷を解放する帝国
    第5章 モノの帝国
    第6章 女王陛下の大英帝国
    第7章 帝国は楽し
    第8章 女たちの大英帝国
    第9章 準備された衰退
    第10章 帝国の遺産

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 大英帝国がアメリカ独立までと後で植民地政策をどの様に変換していったかを解説。
    度重なる戦争で国費が疲弊したイギリスはアメリカに砂糖税等の重税を課す。
    その事がきっかけになり、アメリカは独立へ向けて動き出す。
    アメリカ独立後は政策の比重を東のアジアに向けていく。
    そしてそれは、移民、奴隷に関わらず様々な人種を世界規模の移動へと促すことになる。

    歴史の変遷はもちろん、当時の風俗をより重点的に解説している点がおもしろい。
    コーヒー、紅茶がもたらしたもの。
    早くも民衆のイメージを意識しだした王室。
    ツアー旅行の発明そして個人旅行へ。
    若者の劣化、フーリガンの登場。
    移民政策での女性の台頭。等
    今日本で議論されているようなことが、18,19世紀イギリスですでに起こっている。

    広大な植民地を抱えたが故に多くの移民を生んだイギリス。
    そして現在もスリランカやアラブ諸国等でその爪あとは残っており、深刻な民族問題や内戦を引き起こしている。
    そんな中、今だ多種多様な民族を抱えたイギリス人はどの様なアイデンティティーを持てばよいのか。

    もうちょっと20世紀の記述が欲しかった。

  • 講談社の『興亡の世界史』シリーズを読んだのは3冊目なのですが、外れがないですね。どれもこれも面白い。作者はイギリス近代史・大英帝国史がご専門の井野瀬久美恵先生です。内容は、大英帝国を巡る植民地、人(とくに女性や“人”扱いされなかった奴隷など)、物、意識、記憶などを手がかりにパクス=ブリタニカの“経験”を語ってくれます。大英帝国を経験したのはいわゆる“イギリス”だけではありません。かつての植民地や自治領、またはそれらに訪れた周辺の人びと、彼らがもたらした言語や物など、世界帝国であった大英帝国から無関係でいられた地域など無いのではないでしょうか。イギリスは、かつては奴隷貿易の最先鋒であったはずなのに、突如として“解放者”となります。しかしそれでも、かつての奴隷貿易の支配者という記憶はいたるところからフラッシュバックのように蘇ります。そして蘇るたびにイギリス人に“大英帝国とはなんであったのか”をつきつけるのです。それにしても、敵味方区別せず手をさしのべる看護婦の象徴であるナイチンゲールが、実はその看護団に参加することを熱望した黒人(と白人との混血)女性シコールの入団を認めなかったことは少々ショックでした。明確な理由は伝えられていないようですが、著者は混血であるシコールには良きイギリス女性=レディ(女性の美徳として強調された自己犠牲的な献身や従順さ、思いやりなど)をナイティンゲールは認めなかったためと推測しています。ただ、救いなのは2003年のBBCによる「偉大なる黒いイギリス人(ブラック・ブリトンズ)」を選ぶ投票で、シコールがナオミ・キャンベルなどをおさえて1位になったことです。19世紀後半では「クリミアの天使」ですら認められなかったことが21世紀には認められるようになったということは、イギリス人は“大英帝国という経験”を通して何かを学んだということだと思います(そう思いたい)。

  • 講談社の記念出版シリーズということで、大変力の入った装丁。
    この本は通史として「帝国の」あるいは「女王陛下の」というスタンスではなく、
    何が帝国らしさであったか、何が彼らに帝国を想起させたか、という視点に立っている。
    内容は通史らしく、政治や芸術、風俗まで一通りである。
    章ごとに大きく内容が変わってしまうので要約は難しいのだが、叙述の基調を一つ挙げるなら、英国人の開拓精神や未知への好奇心への注目だろうか。
    難はといえば、上述の視点では絞込みが甘く、固有名詞が必然として洪水のように流れてくる為、なんとなしに初めて通して読むか、というのは大変むずかしい。
    その意味で、最初から順番に、ではなく、目次で興味を惹いた所から飛ばし飛ばし読む方が分かりやすい(恐らくそうした読み方を配慮した作りにもなっている)。
    この時代に興味や知識がある人にとっては、この本の索引、略伝、年表、参考文献などの付録の使い勝手は非常に役立つもので、個別分野の知識を広げるベースキャンプとして活用するのが最適(シリーズ全般がそうした傾向にある)。

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著者プロフィール

甲南大学文学部教授
『大英帝国という経験(興亡の世界史16)』(講談社、2007年;講談社学術文庫、2017年)
『「近代」とは何か―「昨日の世界・ヨーロッパ」からの問い』(かもがわ出版、2023年)

「2024年 『「世界」をどう問うか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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