人類はどこへ行くのか (興亡の世界史)

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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062807203

作品紹介・あらすじ

歴史を問うことは、現在を問うことである。人口と資源、海と人類、宗教と社会、世界史の中の日本、そして人類誕生の地・アフリカの現状。文明の来し方とこれからを「人類史」の視座から多角的に論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 海、宗教がよかった。

    インド洋海域の交易は、インド南西部のマラバール地方を結節場として形成された。マラバール地方は、コショウの産出地でもあった。パレンバンを根拠地とし、マラッカ海峡一帯を支配するシュリーヴィジャヤ・シャイレーンドラー帝国(3世紀?14世紀)によって、マラッカ海峡の安全航行が実現した。8世紀中期には、唐からイスラム帝国を経由してビザンツに至る文明圏が結ばれた。

    19世紀に蒸気船と蒸気鉄道が登場すると、港には水深が深く、埠頭や給炭・給水施設の建設が可能であることが求められたため、マラバール地方は衰退し、ムンバイ、チェンナイ、コルカタに集中するようになった。港を起点として鉄路を伸ばすと、沿線一帯の農作物や鉱産物などの開発や搬出が容易になり、列強が植民地として支配することが多大な利益を生みだした。

    明治期の国家神道の起源は、江戸時代中期の国学にあった。国学者は、記紀や万葉集などの古典を研究して、儒教や仏教が渡来する以前の日本の文化的精神の原像を主張し、復古神道に展開して幕末期の尊王攘夷論につながった。

  • 全21巻の最後を飾る1冊。
    このシリーズのうち4巻読んでいるので、さぞかし興味深いまとめ方をしているのではないかと期待を持って読んだ。

    一般に世界史の範疇から外されがちな、海の歴史、宗教の歴史、人口の歴史、そしてアフリカの歴史を取り上げていて、意欲を感じる。

    ところが、編集者から字数制限付きのお題を頂戴したので書きました感が強く、各章じつに淡白な内容になっていたのは残念。

    最後に、座談会形式で4人の識者(?)が人類はどこへ行くのかというテーマで語るのかというと、実にスケールの小さい会話で終始している。

    読者が期待していたのは、このシリーズのまとめであって、各巻のどこが良かったか、足りなかったかを語り合い、そこから見えてくる人類の未来を歴史を通してどう展望するのかではなかっただろうか。

    日本人歴史家によるとても意欲的なシリーズだったので、このまとめには正直ガッカリしてしまった。

  • 興亡の世界史シリーズの最終巻にあたる本です. 刊行順とか私の読んだ順は順番通りでなく,私は0巻を読んだ後にこれを読みました.

    シリーズのまとめのような本なので,特定の時代や地域に限ったものではないですが,人類史を大きく見て,最後にこれからのことについて触れられています.
    特に,中盤の章で,人と海についてのところが面白く.また,アフリカについての章が考えさせられるところでした.

    本書が書かれた時期が,リーマンショックの後で,3.11の前であるというところ,また,領土問題などで中韓との関係が悪くなる前ということを意識する記述が終盤は出ていました.

  • 興亡の世界史シリーズ、ついに読了。最終巻はオムニバス形式なので、興味深かったフレーズを羅列。

    【われわれは過去を問うことで、現在の歴史的な根拠をあきらかにし、その歴史性を明確にすることを、意識・無意識を問わずおこなっているのではないだろうか。過去に照らして、現在の位置を明確にしている、ということである】
    【歴史的過去について問い、歴史像を構築することをつうじて、我々は現在の自明性を問い直すとこができる、といってもよい。いま当たり前とみなされていることがら、当然と判断されていることが、どこまで本当に当たり前であるのか。あるいはいつから当然のことと見なされるようになったのであろうか】

    イスラーム社会に対する幻想。イスラーム社会の寛容性。砂漠を「海」としてとらえた時に立ち上がってくるイメージ。つまり、イスラーム社会とは、砂漠という「海」と「実際の海(インド洋)」のうえに成り立つ交易世界なのである。

    我々がアフリカという大陸をみるときに抱く「アフリカ・スキーマ」問題。具体的にいうと「部族対立スキーマ」。それは、非アフリカ世界が造り出した概念にすぎない。それに囚われるのは、非アフリカ世界だけではない、アフリカ自身も囚われている。

    1965年、ロナルド・トビ氏がはじめて羽田に降り立ったときの印象。「くさいというと語弊があるけど、それまでまったく経験したことのない日本独特の―敢えていえば醤油と魚のまじったようなにおい」がした。非常に示唆に富む言葉。

  • まだ全巻完読しているわけではないが、一巻々々個性があり楽しく読ませていただいている「興亡の世界史」シリーズの最終巻として期待して読んだがかなり期待外れだった。
    章毎に大げさなテーマを掲げて期待させておきながら。内容は未消化で不十分なものばかり。唯一アフリカ編の内容だけは読めるかなと感じたが。
    1冊分のテーマにならない細々とした文章をごった煮にした一冊と感じた。

  • アフリカについてと、最後の対談がよかった。
    後はマニアックすぎてどうでもいい話がほとんど。
    人類はどこへ行くのかというテーマは内容に反映されていないと思う。残念。
    これだったらアフリカについて書いた本を読んだほうがヨカタ。

    アフリカへの偏見を根本から取り払うのは難しい。
    実際書いているヒトだってどこまでそう思っているかわからない。
    幼いころから何となく感じる国民的な先入観のようなもの…
    先入観っていうのは違う状況に慣れたら、たとえばそこに行って暮したらだんたん覆されていくものだと思うのだけど、それは不可能なわけで。
    メディアにも問題があるんだよね。貧困特集みたいなのは嘘とはいわないけどあの目線はまさに先入観を煽ってる、「かわいそう」みたいな感じ。
    自分がそうだったら絶対されたくないです。それがいい結果だけじゃなくいろんなものを産み出してることを知ってほしい。

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著者プロフィール

学習院大学文学部教授
フランス近現代史
〈主な著書〉
『フランス史』世界各国史12(山川出版社、2001年、編著)『ヨーロッパ近代の社会史――工業化と国民形成』(岩波書店、2005年)『歴史学入門』(岩波テキストブックスα、2006年)『近代ヨーロッパの覇権』「興亡の世界史」第13巻(講談社、2008年)など多数。

「2016年 『ドイツ・フランス共通歴史教科書【近現代史】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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