許永中 日本の闇を背負い続けた男 (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062813938

作品紹介・あらすじ

大阪・中津からスタートし、数多くのバブル企業家、政治家、ヤクザ、企業舎弟、フィクサーたちを取材して得られた許永中の実像は、「稀代の詐欺師」などではなかった!「バブルの申し子」は何を守り、何を実現しようとしていたのか。

感想・レビュー・書評

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  • 田中森一の本を読んで、許永中に対する思い入れが強い。
    一体、許永中は、どんな人物か興味があった。
    森功の文体は、独特のものがあり、
    取材に基づいて、淡々と書いていくところがあり、
    人物の心の動きは、あまり書かない。
    そんな書き方をしていても、許永中の人たらし能力が
    あることを、感じさせる。
    もっと、行間が読めるようにならないといけない。
    敵のはずでも、味方にする能力がある。
    かなりの権力を持った人にも、擦り寄ることができる。
    力任せに、半グレ集団のリーダーだった在日の許永中。
    西村嘉一郎、大谷貴義というフィクサーに会うことで転機を迎える。
    野村雄作に会うことで、父親の野村周史につながり、可愛がられ
    息子のように、扱われる。
    そして東邦生命の創業者の6代目の太田清蔵にあって、
    許永中のスポンサーとなり、後ろ盾になってもらい、
    さらに、日本と韓国をつなぐ、国士になれと言われる。
    許永中は、裏と表をつなぐ、顔役になっていく。
    激しくお金を回し、そのお金で、人のつながりを作り
    政治家にも、影響力を持ち、ケツ持ちに、宅見勝が駆けつける。
    政治家は、金丸信、亀井静香、竹下登。いやはや。すごいなぁ。
    いくら渡したという話もあり、そりゃ賄賂だろという感じだが、
    あえて、目的を限定しないで、渡しているような感じ。
    お金を配るのが趣味で、女にもモテる。
    実にきめ細かで、マメなのだ。
    イトマン事件の絵の取引も、最初は買うのだが、
    そのあとは、いつの間にか売りつけてしまう。
    それにしても、イトマン事件は、住友銀行が犯人だった。
    そして、うまく回らなくなり、逃げることになる。
    逃亡生活の中でも、お金を動かしているのがすごい。
    石橋産業から合計約179億円の約束手形をだまし取った
    詐欺事件(石橋産業事件)で、懲役6年の実刑判決。
    イトマン事件で、懲役7年で、罰金5億円。
    詐欺にはなりたくなかったという許永中の気持ちはわかる。

  • 許永中氏に関する本は山ほど存在するが、非常に精緻な取材に基づく読み応えのある本。
    印象としてはイトマン事件そのものというよりは、その事件に至る許永中氏を中心とした人間相関図をしっかりと描き、かつ、その人物像は、実は政・官・財こそが許永中氏に期待し求めていたのではないか?と思わせられる内容だった。

  • 2019/04/07
    フィクサーとか裏社会

  • 恐慌が生んだベストセラー!
    日本で最も恐れられ愛された男の悲劇

    ●封印され続けてきた原稿が語る驚愕の真実!
    ●「裏社会の帝王」「最後の黒幕」「謎の日韓大物ロビイスト」の素顔
    ●獄中の許永中との60通を超える往復書簡が語る悲劇
    ●「朝鮮部落」と呼ばれた被差別部落の不条理
    ●政財界と裏社会をつなぐ「闇の伝達人」の役割

    出版社から忌避され、封印され続けた原稿は、ベストセラーに――そして待望の文庫化!! 大阪・中津からスタートし、数多くのバブル企業家、政治家、ヤクザ、企業舎弟、フィクサーたちを取材して得られた許永中の実像は、「稀代の詐欺師」などではなかった! 「バブルの申し子」は何を守り、何を実現しようとしていたのか!?

  • 大阪市の在日韓国人地区に生まれた彼がいかにして「日本のフィクサー」としてバブル時代の日本を表社会と裏社会を自由に行き来し、その『思い』を実現していったのか?それが丁寧な取材で明かされております。

    思えば彼もバブルの時代に咲いた『徒花』の一人だったのかも知れないのかな、とそんな思いを抱きながら最後のページを閉じました。 許永中。日本のフィクサーの一人とも言われ、表社会と裏社会を自由に行き来しながら巨額の金を動かす男。本書を読む前の彼に関する知識はそんなところで、確か、実話系の雑誌で本社が原作の漫画が連載されていたかと思うのですが、詳しいことはよくわかりません。

    在日韓国人として大阪に生を受けた彼は、その腕っ節の強さでたちまち不良グループのリーダーとなります。大学を中退後、ある不動産会社社長の運転手兼秘書として働きながら、経営というものを学んでいったのだそうです。後に、フィクサーとして当時世の中を騒がせていた事件に数多くかかわり、ここの中に記されている話でも相当の修羅場を潜り抜けてきたんだな、ということと、やり取りされる天文学的な現金に、活字を追いながら『これがバブルか…』と何回もうなってしまいました。

    しかし、そんな時代も終わりを告げようとした平成初期に起こったいわゆる『イトマン事件』から彼の運命は徐々に暗転して行くのです。長きに渡る逃亡生活の末、司直の手に落ちた彼はイトマン事件と石橋産業事件の判決により、服役を余儀なくされるのです。筆者と面会した許が『トンネルの出口は断崖絶壁だった』ともらしていたことが非常に印象的で、一人の人間として、彼の人生は多くの毀誉褒貶をもたらすものではあったにせよ。禍々しくも強烈な光を放っているのではあるまいかと。読み終えてそんなことを考えておりました。

  • イトマン事件という戦後最大の不正経理事件、石橋産業事件という手形詐欺、政治家への賄賂が絡んだ事件で、現在服役中の許永中の半生を追った本である。

    大阪の中津で在日の貧しい家庭で育ち、暴力団員、建設会社の経営者、大阪国際フェリーの立ち上げ、、様々な大企業のトラブル処理、大物フィクサーとして暗躍と、その経歴がダークな「わらしべ長者」のようだ。で、暴力団人脈、同和事業人脈、在日の人脈を駆使し、竹下登、亀井静香ら政治家とも渡りあうほどの顔となっていく様は、こう言っては、なんだが、痛快さを覚えてしまう。

    ここで描かれている許永中は、荒っぽくて胡散臭い山師だが、徒手空虚な人間の強さ、育ちが悪い人間のたくましさを感じ俺には、魅力的に映った。ハッタリと腕っぷし、度胸であくどい事しながら駆け上がって行った一方で、今もなお戦災の後遺症に苦しみ、顔に火傷の跡が残る姉や、ホテルのマッサージ師、屋台のおばちゃんに優しく接したりと意外な一面もありと、また親しみを感じてしまうのだ。

    まあ、この様な人物は誉めるべきではないかもしれない。が、良かれ悪しかれ、裸一貫から登りつめた人間は、カッコいいし、特にダークな人物に惹かれてしまう、この本でダークな読書にまた磨きがかかっちまいそうだ。わかっちゃいるけど、やめられん。

  • 何故こんなことが起こるのだろう。まさしく日本の闇。

  • 主人公の出自からたどれる点で、水谷功事件を題材とした「泥のカネ」よりおもしろい。まるで「血と骨」のアナザーワールドを辿るような物語というべきであろうか。「血と骨」の主人公はまるで魅入られたように朝鮮総連に全財産を寄付し、北の果てに消えていく。この主人公はフェリー会社の新設に出自の夢を抱いていたのか?カネを操り、操られた彼らは今何を思うのか?

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお) 
1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に2年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』など著書多数。


「2022年 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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