しんがり 山一證券最後の12人 (講談社+α文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062816090

感想・レビュー・書評

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  • ビジネス・ノンフィクションに手を出すのは我ながら珍しい。
    私自身は自分の体験と重ね合わせられない、そんな時代の話。けれど、あの出来事は衝撃だったと、よく耳にする。

    会社が倒産するまでの話ではなく、会社が倒産したあとの話である。
    だから、どうあがいても、会社は復活しない。
    何を見出しても、覆水盆に返らず、とはこのこと。

    しかし、「しんがり」を務めた社員たちは、何かを見出すために奮闘する。
    自分の行く先さえ不安定で、周りには心ない言葉を浴びせる人たちばかりなのに。

    なぜ彼らはそれを全う出来たのだろう。
    そう考えると、やはり、それだけの会社であったのではないか、と私は思うのだ。
    もちろん仲間意識、責任感、そういった個人の持つ資質による所も大きい。
    けれど、そうした人を育てる懐もあった、そういう会社なのだろうなと感じた。

  • 1997年に多額の簿外債務の発覚がトリガーとなり、自主廃業を迫られた山一證券において、破綻後に簿外債務の事実関係の調査や顧客対応等の清算業務に従事した12名の社員の活動をまとめたノンフィクション。

    丁寧に時系列を追いながら、経営破綻後の会社でどのようなことが行われるのか、そしてその雰囲気をここまでリアルに体感できるのに驚くと同時に、会社が消えゆく様を最後までやり遂げた12人に去就する使命感とは何か、これを知れることに深い感動を覚える。12名のメンバーは精算業務に従事していた関係で他の一般社員に比べると再就職のタイミングは遅くなり(そのため、必然的に多くの社員が引き抜かれたメリルリンチのような有望な転職先は既に残されていない)、またその後も複数回の転職を余儀なくされるメンバーも多い。その姿は、終身雇用制度が終焉しても何とか生きていけるという現実的な楽観性を感じることもでき、感慨深い。

  • 山一証券自主廃業の際に破綻原因を追求きた人たちのノンフィクション。
    よくここまで調べたなぁと思いました。山一の人も、著者の清武さんも。
    不正、隠蔽、先送り。
    そんなことをしても、意味がないとわかりつつも、保身や自己の利益のため、手を染めてしまう人たち。それを暴くことの難しさ。そういったことが描かれています。

  • 山一証券の破綻のドラマを深く追った、読み応えのあるノンフィクション作品

    ある一定の年代以上の皆様はを覚えているでしょう。山一証券の自主廃業の謝罪会見で社長の「社員は悪くありませんから!」という泣きながらの謝罪を。その社長は、前任の社長から引き継いで数ヶ月後たったばかりであった。
    山一証券の自主廃業発表のあと、会社を清算や不正を追及する業務を行った業務管理本部のメンバーを中心に調査が行われていったが、そのことを知るひとはあまりいない。そんな、戦に敗れて退くときに軍隊の最後尾に踏みとどまる「後軍(しんがり)」のように、清算業務を行った会社員たちをジャーナリストの清武英利さんが取材したノンフィクションがこの「しんがり」です。
    あの山一証券の自主廃業の背景、そしてそれに関わり不正に手を染めた人々、関わり不幸にも命を落とした人たちと色々な山一に関わった人々が書かれています。

    最後には、そのしんがりをつとめた人たちの山一をやめたその後が書かれていますが、色々と複雑な気持ちになります。

    読み応えもある1冊となっていますし、テレビドラマにもなっているので、ぜひ気になる方は手にとって頂きたいです。

  • 企業の不祥事を美化することは、私は好きではありません。
    でも、不祥事の裏で「どのような動きがあったのか?」内部の人間でなければわからないことがあります。

    半沢直樹が企業エンターテインメントなら、「しんがり」はノンフィクション。

    山一證券が破綻した時、社長の涙、涙の記者会見。
    あの裏にあったことを、あらためて知ることができたのは、左遷された社員が最後まで会社に残り徹底的に原因究明をした社内調査委員会があってこそ。

    山一の会見・事件から、私たちは何を学んだのでしょうか?

    悪い部分があったのなら質し、正すことをしようとする
    部署があっても機能しているのか。
    うまく不祥事を隠すための社内調査は、あってはならないはずです。

    現在も様々な不祥事があります。
    調査委員会が設置され、記者会見が行われても納得できないことがあります。

    昔の事件ではなく、今の時代だからこそ一読しておきたい一冊だと思います。

  • 【会社の破綻なんて人生の通過点に過ぎない】、そんな風に思えている自分には心の奥にしまった怒りなのか淋しさなのかむなしさなのかが沸き起こってくるようなノンフィクション。
    日本企業の病巣の深さを改めて思い知らさせる小説を読みながら、某デベロッパーのお粗末な施工詐欺のニュースをみて、進歩のない国だと思う。

    今さら山一証券?
    いやいや、いまだからこそである。

  • 会社とは恐ろしい。
    非常識が常識になってしまう。
    私はこの本の方たちのように当たり前のことを当たり前のようにできる勇気のある人間になりたい。

  • 山一證券破綻の経緯は何かで読んだ覚えはあるが、調査委員会については良く知らなかった。余りにもひどい隠蔽だったけど、日本の会社にしては良くまあここまで調べたなと。自分の勤めている会社がある日突然潰れたらどうするか?答えはひとつではない。

  • 正直者がバカを見るようなことは、あってほしくない。
    貧乏くじと言われた清算業務にあたったメンバーにありきたりだとは思うが、尊敬の気持ちを持った。そのメンバーが最終的には頑張りが認められたこと、更に本人達も前向きに捉えられている描写が心に残った。

    また、仕事が原因でメンタルをやられた経験もあったため、
    会社はあくまで会社
    会社のために働くのではなく自分がどうありたいか
    家族が知って悲しむようなことをしていないか
    といった、働き方に対する考え方のサンプルとしても見ることができた。

  • 山一證券の破綻は、本当に衝撃だった。
    何も知らずに突然自社が破綻となった社員の気持ちを考えるといたたまれない。
    知らずに、直前に高額な住宅ローン組んだ人だっていたかもしれない。

    清武さんは、あの巨人のイメージしかなかったけど、なかなか素晴らしい取材力の方なんだなと見方が変わった。

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著者プロフィール

きよたけ・ひでとし/元読売新聞編集委員。2004年より巨人軍球団代表を務め、2011年に解任。現在はノンフィクション作家として活動する。2014年『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社文庫)で第36回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『トッカイ 不良債権特別回収部』(講談社文庫)、『サラリーマン球団社長』『後列のひと 無名人の戦後史』(ともに文藝春秋)など。


「2023年 『どんがら トヨタエンジニアの反骨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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