しんがり 山一證券最後の12人 (講談社+α文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062816090

作品紹介・あらすじ

負け戦のときに、最後列で敵を迎え撃つ者たちを「しんがり」と言います。戦場に最後まで残って味方の退却を助けるのです。
四大証券の一角を占める山一證券が自主廃業を発表したのは、1997年11月のことでした。店頭には「カネを、株券を返せ」と顧客が殺到し、社員たちは雪崩を打って再就職へと走り始めます。
その中で、会社に踏み留まって経営破綻の原因を追究し、清算業務に就いた一群の社員がいました。彼らの一部は給与も出ないまま、「しんがり」を買って出て、無一文に近い状態になっています。この中心にいたのは、会社幹部に裏切られながら業務の監査をしていた人間たちで、証券会社では「カネを稼がない、場末の連中」と陰口を叩かれていた人々でした。・・・
山一證券の破綻を、記者会見で号泣した社長の姿とともに記憶している方も多いことでしょう。「社員は悪くありませんから!」という絶叫でした。
社長までが泣く、その大混乱にあって、「しんがり」の彼らはなぜ筋を通そうとしたのでしょうか。逆襲なのでしょうか、意地でしょうか、優しさなのでしょうか。
山一が消えたあとも、彼らは不器用な人生を送っています。しかし、決して不幸ではないと言います。「会社の破綻なんて人生の通過点に過ぎないよ」「潰れたって、何とかなるんだ」と。
一生懸命生きていれば、きっと誰かが見ていてくれる。――そんな彼らのメッセージは、どんな会社が潰れても不思議のない、リスク多き時代を生きる人々の励ましとなるのではないでしょうか。

感想・レビュー・書評

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  • 当時、山一證券が破綻したというニュースが世間を騒がせていたのは、なんとなく覚えている。

    この本は最後まで山一證券の終焉を見届けた12人の物語。

    ニュースの裏側にこんな業務を行った人たちがいて、その人たちがどのような気持ちで業務にあたっていたかがよくわかった。

    オススメです!

  • 山一證券の自主破綻についてのノンフィクション。
    大変お恥ずかしい話ですが、この作品に出会うまで興味もなければ、この自主破綻についてほとんど知りませんでした。当時は世の中について本当に無関心というか、別のことに夢中になっている学生でした。

    実際に働いていた社員の方々と同じ目線で書かれている作品のため、当時の実情が良く分かるように感じました。

    「しんがり」というタイトルですが、負け戦の最後尾の隊員たちではなく、最初から最後まで、隊の中心であきらめずに隊員のために働いたという重要な役割であったと思いました。

    このように最後まで隊のために尽くすことは自分には無理だなと思いました。隊の一員という帰属意識が薄いのかもしれません。責任を負わされているというように感じ取ってしまうのも理由のひとつかもしれないです。同じような事件が山一證券の後もあったと思います。他の事件のとき、その当事者はどうだったのでしょうか。

  • 負け戦のときに、最後列で敵を迎え撃つ者たちを「しんがり」と言います。戦場に最後まで残って味方の退却を助けるのです。
    四大証券の一角を占める山一證券が自主廃業を発表したのは、1997年11月のことでした。店頭には「カネを、株券を返せ」と顧客が殺到し、社員たちは雪崩を打って再就職へと走り始めます。
    その中で、会社に踏み留まって経営破綻の原因を追究し、清算業務に就いた一群の社員がいました。彼らの一部は給与も出ないまま、「しんがり」を買って出て、無一文に近い状態になっています。この中心にいたのは、会社幹部に裏切られながら業務の監査をしていた人間たちで、証券会社では「カネを稼がない、場末の連中」と陰口を叩かれていた人々でした。・・・
    山一證券の破綻を、記者会見で号泣した社長の姿とともに記憶している方も多いことでしょう。「社員は悪くありませんから!」という絶叫でした。
    社長までが泣く、その大混乱にあって、「しんがり」の彼らはなぜ筋を通そうとしたのでしょうか。逆襲なのでしょうか、意地でしょうか、優しさなのでしょうか。
    山一が消えたあとも、彼らは不器用な人生を送っています。しかし、決して不幸ではないと言います。「会社の破綻なんて人生の通過点に過ぎないよ」「潰れたって、何とかなるんだ」と。
    一生懸命生きていれば、きっと誰かが見ていてくれる。――そんな彼らのメッセージは、どんな会社が潰れても不思議のない、リスク多き時代を生きる人々の励ましとなるのではないでしょうか。

  • 山一證券が破綻に至った原因を徹底的に追及した面々の物語

    個人的に、山一證券の破綻そのものにずっと興味があったので、その内幕を知るために手に取りました

    破綻の要因について、内幕を含めて詳細にまとめられているのはもちろんですが、その調査過程、何の見返りのない調査そのものに奮闘する残された「しんがり」と呼ばれたメンバーの深層心理なども描かれていて、一会社員としての日は過ごしている自分自身とも照らし合わせながら読み進めることもでき、とても面白かったです

  • TVドラマ化もされた山一證券破綻の内幕もの。

    同じく世界を震撼させた米国のヘッジファンド、ロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の経営破たんのドキュメンタリー(「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」(R.ローウェンスタイン著、日経文庫))を思い出しつつ、「山一」「LTCM」それぞれのドキュメンタリーとしての性格を比較しておく。

    以下、ネタバレと感じる方もいるかもしれません、楽しみにされている方はスルーしてください!

    一つ目、両者の差は人間ドラマか企業ドラマか。

    「山一」は、会社が積み上げた膨大な簿外債務についての専門的説明にはあまり時間を割かず、むしろ泥船から次々と「エリート」たちが脱出する中、失業を覚悟しながら会社に踏みとどまり不正追及にまい進する企業戦士のドラマにフォーカスする(元上司を調査する苦しみ、無給のため住宅ローンを返せなくなる苦悩など)。
    そして、日本人にとってなじみ深い「愛社精神か転職か、カネか志か」といった葛藤について語り尽くす。平時には報われない境遇を呪っていた非エリートたちがこの有事において「誰もが逃げたがった仕事を勤め上げる」、その背後にあったものを突き止めようとしている。合理性の議論では答えのでないことを探る、それがテーマと言えるかもしれない。

    一方「LTCM」は、登場人物の魅力的なバックグラウンドももちろん簡略には紹介するが、むしろ破綻か回避かのそれこそラスト1日のギリギリの攻防にフォーカスする「会議モノ」活劇。また、「そもそもデリバティブって何?」みたいなところを歴史を振り返りながら一般読者に伝える技術はさすが。マーケット全体を守るために救済するか、優勝劣敗を貫徹するために破綻させるか、ここでは過酷なまでに「合理性」が問われ、そして同時にそれぞれの当事者の貪欲なまでの思惑のぶつかり合う「交渉」こそがハイライトである。

    二つ目、個人的により印象に残るのは「ヒーロー像」の違い。

    山一では、清算業務、社内調査を最後まで成し遂げた「12人」が決してその後恵まれた再就職を果たしたわけではないことを共感を込めて示唆しつつ、「真の働き甲斐」について問う。一方、「LTCM」ではこれだけ世界を激震させた中心人物たちが不死鳥のように再び金融の表舞台にも舞い戻ったそのバイタリティを、(もちろん幾分かの批判をにおわせつつも)概ね肯定的に描いていた。

    黙々と報われない責任を果たしただ去る老兵、どれほどの挫折にあっても表舞台復帰への挑戦を止めぬ強烈な自負、どちらの中にも本当の意味で仕事に必要な何かが潜んでいるということだろう。

    ほぼ同じ時期(1997-8年)に起きた2つの破綻の物語は、実は「日本的な働き方と米国的な働き方」の間に明確な線引きのあった最後の時代を映し出しているのかもしれない・・・。

  • あの時代、社会人なりたてホヤホヤで、総務・秘書業務にだったものの金融業界の片隅に生息していて、色々なことを見聞きし、大丈夫なのかな世の中は?とただ漠然と思ったものです。社会のからくりが少しわかるようになり、社会経験も積んだ今だからこそこの本で触れられているあの時代の、あの日々の壮絶さとずるさが人ごとではなく、感じ取れます。どんな立場、仕事であっても誠実に取り組むことが大切なことなのだと、当たり前だけれど思います。

  • うーんなんとも身につまされる話。規模は山一とはかなり違うが、当方もサラリーマン。最近、監督官庁からお叱りを受け、世間も多少騒がした。非常時の対応、経営陣の不甲斐なさ、かなりオーバラップするところがあって、他人事とは思えなかった。

    山一も多くの社員は筋の通った、人間であったのだろうが、利益追求の名の下誤った道を歩んでしまった。その後始末に奮闘した、12人の戦いは、本人が望むと望まないに関わらず賞賛に値する。

    自分が同じような行動をとれたかというと、全く自信がない。真っ先に逃げ出していたかもしれない。とても、嘉本さんのように、毅然とは立ち向かえなかっただろう。


    本書で、一つだけ残念なのは、大蔵省側の不正?(見て見ぬ振り)について、深く踏み込めなかった点だけである。

    今の所、今年一番の本である。

  • 不正会計により自主廃業する山一證券の中で、筋を通すべく社内調査や精算業務にあたった12人の姿を描いたノンフィクション。

    危機感の薄い経営陣がいたり、聖域を作っていたりする会社は危険。そういった会社は、かつての山一證券のように、いずれは崩壊していきます。

    筋を通す人は苦労します。しかし、その苦労はどこかで報われます。誰かがその姿をしっかりと見ているから。

  • 人に教えてもらった一冊。あの社長の会見はうっすら覚えてる。山一破綻の内幕を垣間見れた。会社の最期を看取る後ろ向きな業務を真摯にこなす人達には感服です。

  • 当時の事を思い出します。
    しかしここまでの詳細は初めて知りました。飛ばし。。などが長年行われていた実態、最後まで戦い続けた社員、精算業務に携わった人たち、何度も転職を重ねた方たち。。それぞれの苦労や心労、山一證券に対する思い。。など改めて感じました。
    しかし、時が経っても不祥事はなくならない現実に、残念な思いも。

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著者プロフィール

きよたけ・ひでとし/元読売新聞編集委員。2004年より巨人軍球団代表を務め、2011年に解任。現在はノンフィクション作家として活動する。2014年『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社文庫)で第36回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『トッカイ 不良債権特別回収部』(講談社文庫)、『サラリーマン球団社長』『後列のひと 無名人の戦後史』(ともに文藝春秋)など。


「2023年 『どんがら トヨタエンジニアの反骨』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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