監査難民 (講談社BIZ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062820660

感想・レビュー・書評

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  • おもしろい。読み出したらとまらなくて一気に読んでしまいました。

    中央青山監査法人がカネボウ事件、日興コーディアル事件を経て解散に至るまでを追ったノンフィクションですが、その内幕の描写がまるで小説みたい。法人内での利害の対立、金融庁の意図、PwCの思惑、マスコミの報道、他の監査法人の対応などがそれぞれ複雑に絡み合って、業務停止から解散へという最悪の状況になだれ込んでいくさまが手にとるようにわかります。当事者の中央青山も、処分を下した金融庁も、まさか監査制度黎明期からの名門が消滅するとは思ってもみなかったことでしょう。というより、誰一人こういう結果を予想してなかったし望んでもいなかったんじゃないかなあ。それぞれがそれぞれの思惑で行動した結果がこれだったと。

    それにしても、よくここまで詳細に調べ上げたものです。07年7月の解散からわずか2ヶ月で出版されていますが、本当に詳しく描かれています。その詳細な描きこみが、ただ事実を追っただけでない生々しさを与えています。タイトルと内容がずれてたり著者の会計知識がちょっと怪しかったりといったところはありますが、それを差し引いても内容の詳しさとおもしろさどちらもとてもレベルの高い本でした。

  • 監査法人が解散に追い込まれるまでのドキュメンタリー。

  • ゼミの先生のバイトの関係で、読書。

    中央青山監査法人による粉飾決算の容認、監査法人の解体、及び解体に伴い、監査難民となる企業の発生などを、監査の歴史をたどりながら事実ベースで記述した本。

    2000~2006年くらいの監査をめぐる流れをばくっと知るためには適切だと思われる。
    個人的にためになったのは、そうした一連の流れに関する知識と、監査の意義を認識することが出来た点。

    おすすめ

  • [ 内容 ]
    2007年7月、日本監査界の巨人が姿を消した。
    みすず監査法人―かつて中央青山監査法人として、四大監査法人の一角を占めてきた名門である。
    カネボウ粉飾決算事件で所属会計士が逮捕され、監査への「疑いの眼」を生じさせた“張本人”が自主解散へと追い込まれる過程には、外資の策略、獅子身中の虫による内乱、金融庁との壮絶な攻防など、凄まじい闘いが存在した。
    名門監査法人はなぜ、自ら組織を解体せざるを得なかったのか。
    その死が開いた“パンドラの箱”には何が入っているのか。
    JALに代表される、“厳しい監査”は今後、企業にどのような影響を与えていくのか―。

    [ 目次 ]
    プロローグ 覚醒
    第1章 予兆
    第2章 強制捜査
    第3章 分裂
    第4章 vs.金融庁
    第5章 辞任
    第6章 包囲網
    第7章 分岐点
    第8章 解体
    エピローグ 遺訓

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 『プロローグ 覚醒』
    ・JALの2007年度決算を下方修正.会計監査を担当している新日本監査法人に,「繰り延べ税金資産」の大半を否認された.その結果,JALと取引関係にある各行は,同社への監視を強化し始めた.
    ・新日本監査法人には,「JAL経営陣が出してくる財務情報を鵜呑みにして決算を承認した結果,2007年度決算が赤字になれば『監査の妥当性』を問われるリスクがある」とのプレッシャーがあった.
    ・企業が情報開示に消極的であるという情報は,会計士業界をあっという間に駆け巡る.「札付き」と目された問題企業は,監査の引き受け手が存在しない「監査難民」となる.
    ・企業が株式を公開すれば,証券取引所は新規上場時やその後も定期的に手数料を受け取ることができる.また,主幹事として上場を手伝った証券会社には,増資や社債発行など,上場後の資金調達に絡んで手数料を稼ぐチャンスがある.また,監査法人にとって上場会社が支払う監査報酬は大きな収入源だ.三者のこの蜜月関係に,終焉をもたらそうとしている.

    『第1章 予兆』
    ・中央青山の奥山章雄代表社員は,次期理事長就任を要請された.当時,中央青山は,ヤオハンジャパン,山一證券,足利銀行,カネボウなど,「ずさんな監査で粉飾を見逃していた」.
    ・「スルー取引」.決算期の異なる複数の企業が示し合わせ,架空のソフトウェアなどを順々に発注することで,見せ掛けの売上高を計上する仕組みで,ベンチャー企業がよく使う.
    ・監査法人は,巨大企業の複雑化した組織や会計処理に対応するため,巨大化,その結果寡占化が進んだ.日本はあずさ,トーマツ,中央青山,新日本の四大法人体制ができた.
    ・他の監査法人と監査契約のシェア争いを演じていた最中だけに,現場には「営業中心」の査定と移った可能性は否定できなかった.また,合併前の出身事務所の会計士が集まってできる「寄り合い所帯」に,ある特定の人たちによる「クライアントに甘い体質」が,連綿として引き継がれている.

    『第2章 強制捜査』
    『第3章 分裂』
    『第4章 金融庁』
    『第5章 辞任』
    『第6章 包囲網』
    ・カネボウやライブドアの事件以降,公認会計士個人のみならず,所属する監査法人の刑事責任を問う規定を証券取引法に取り込むことを請求する金融審議会が再開された.
    ・アーサー・アンダーセンは,米司法当局が刑事訴求の可能性に言及しただけで,クライアントと会計士の大量流出に見舞われ,あっという間に崩壊したのだ.
    『第7章 分岐点』
    ・あらたは会計士を引き抜くことにより,トヨタやソニーといった中央青山のクライアントを露骨に引き抜き始めた.その割合は36%にあたる300社強に膨らみ,片山執行部は当初,「上場企業で契約解除しそうなのは全体の10~15%」と踏んでいたため,重苦しい雰囲気に包まれた.また,会計士の流出に頭を痛めていた.
    『第8章 解体』
    ・大手監査法人も,人手不足でクライアントをどんどん引き受ける余裕はない.会計士とセットでなければ受け入れられないとのところもある.「監査難民」の発生が,現実味を帯びてきた.

    ----------以下感想----------
    身近な存在ではなかった公認会計士,監査法人について知ることができた.

    公正であるべき監査も企業の思惑が入る余地がある.
    公認会計士も組織の理論に流される.

  • 中央青山→みすずの解散について、書かれた本。

    非常に勉強になった。
    どのような調査手法をとったかは知らないが、ものすごく生生しい。
    必ずしも網羅的かつ正確であるとはいえないものの、解散に至るまでの経緯がよくわかった。

    共感できる部分も少なくなかったです。

  • 監査ミス、粉飾の見逃し、あるいは積極的な粉飾に対する協力…監査法人が揺れています。

  • リスク管理社会では、値しない組織・個人は市場・社会から退場させられる。果たして社会は進歩しているのであろうか。

  • 中央青山監査法人が解体され、みすず監査法人になり、結局みすずも解散になる経緯をかなり詳しく書いてあります。金融庁と監査法人との対立等、よく調べたと思います。当時私が担当していた一法人の任意監査を、中央青山に依頼していたので、仕事に影響が出たこともあり、経緯を知りたく興味深く読みました。もう会計士資格をとっても、会計監査業務をするより、投資銀行業務や企業内会計士のほうが、今後は楽だし仕事が楽しい気がします。若い会計士がサラリーマンのように、監査法人から言われてきた意見をそのまま繰り返すだけで、自分から意見を出さず、ミーティングをめちゃくちゃにしたことを経験してから、特にそう思います。

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