今ウェブは退化中ですが、何か? クリック無間地獄に落ちた人々 (講談社BIZ)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062821278

作品紹介・あらすじ

ブログもSNSも何もあなたを変えない。ブロガーイベントも企業の業績を上げない。ウェブの集合知なんて、一部の頭の良い人たちだけの話だ。もうネットへの「期待」と「夢」を語るのはやめよう。もっと現実とリアルな世界を見ようぜ!炎上上等!かかってこい。

感想・レビュー・書評

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  •  昨年大きな話題を呼んだ『ウェブはバカと暇人のもの』の、続編ともいうべき本。 

     著者はニュースサイトの編集者であり、企業向けにネットでの情報発信に関するプランニングやコンサルティングもしている。ネット最前線の現場を知り尽くしたプロなのだ。

     そのプロの目から、ネットのネガティヴな側面をえぐり出した本。つまり、『ウェブはバカと暇人のもの』と同テーマなのだが、随所にちりばめられた“ネットで起きたおバカ事件”の事例は、前著とほとんど重なっていない。それほど、バカな事件が頻発しているのがネットの世界なのである。

     にもかかわらず、「ネットへの期待と幻想」だけは相変わらず根強い。そうした幻想に冷水をぶっかける著者の筆鋒は、前著同様、アイロニーに満ちて鋭いものだ。

    《芸能人のブログにコメントを書いて何になるというのだ? 別に彼らはあなたのことなど気にもしない。どうせあなたと彼らは会わない。接点は生まれない。生まれるのは、あなたがカネを払った時だけだ。》

    《テレビもゲームもネットも、同じくらい安上がりな「暇つぶしツール」である。それなのにネットとそのユーザーだけは、「高尚だ」「最先端だ」「何かを生み出す」「世界を変える」などと過大評価されているのだ。》

     ネットへの過剰な期待と幻想の最新ヴァージョンである「ツイッター礼讃」についても、著者はかなりの紙数を割いて冷水をかけてみせる。「ツイッター否定派」(笑)である私としては、そのあたりがじつに我が意を得たりで、快哉を叫んだ。

    《(ツイッターについて)私は徹底的に観察し続けたのだが、結局、「先端的ユーザー(ネット教信者)による、先端的なことをさも分かっているかのように振る舞っている自分大好き自慢」と「暇人による、暇つぶし駄文垂れ流し」としか思えなかった。》

     いわゆる「デジタルネイティヴ」(生まれたときからネットやパソコンのある生活環境で育った世代)が「時代を変える」という論調についても、一刀両断にしていて痛快。

    《『デジタルネイティヴの時代』を読んで、彼ら「デジタルネイティヴ」とはいったい何者かを考えてみた。私の結論は以下の通りだ。

     「携帯電話が物心ついた時から近くにあった『デジタルネイティヴ』とやらって、単に『いい加減な約束をするヤツ』『受動的な暇つぶししかできないヤツ』に過ぎないんじゃね?」
     「あと、携帯電話がもたらすものなんて『暇つぶし』がほとんどなんだから、それにハマっていて、能力は上がるの? そいつらの生産性は上がるの?」》

     前著がかなり「お笑い」要素の強い本だったのに比べ、本書は終盤、かなりシリアスな調子になっていく。とくに、終章(第5章)「本当に大切な人も仕事も人生も、ネットにはない」には、「ネットでの体験は人生の『思い出』になるのか」なんてことが大マジメに書かれている。
     そうした“転調”については、評価の分かれるところだろう。私は興味深く読んだけど。

  • ディープなネット利用者の異様な世界が描かれている。

    顔の見えない不特定多数の人間の悪意が向けられる可能性があるとなるとかなり怖い。
    最先端の技術に詳しくなれば、その恐怖から解放されるような気がしていたけど、この本を読んで認識を改めた。

    同じテーマの本を他にも読んでみたい。

  • 「ウェブはバカと暇人のもの」を読まれた方は5章のみ読まれても良いのかも。著者の主張はそこにあると感じます。ウェブの問題というよりコミュニケーションの問題、もっと言えば人間の問題なのかな。

  • タイトルは過激だが、ウェブのすべてを否定しているわけではない。
    ウェブのよいところは認めつつも、過剰な、何となくの期待を抱き続けるのはもう終わりにすべきだと断じる。
    ウェブはツールであり、結局は使う人間のモラル次第で良くも悪くもなるということだ。

  • ネットのネガティブな側面をできる限りピックアップしてまとめたような本。こういったことを知っておくことも重要

  • タイトルの「何か?」とついているところが案外、気に入ったりしました。で、こうしてブログに読んだ本を駄文で紹介している私には、「本当にそうだ!」と思うことも多くって、そんな賛同をまたブログに書くと、まさに自己否定みたいになっちゃうところが面白いです。

    でも、筆者は決してネットを否定しているわけではないです。むしろ素晴らしいツールと思っています。問題はその使い方にあるのでしょう。多かれ少なかれ、ネットに依存することの危うさをかぎ取ったことのなる人なら、分かっているのでしょうけど。

    ネットをツールとして使っていたはずが「何か書かなくては」「今日も更新しなくては」と忙しくなったり、言い方を気にしたりするように気を使ったりするようになっていく。
    そうなんだよなあ。何か忘れちゃっているんですよね。
    何なんだろうなあ。

    でも、この本では
    「リアル世界で知り合う人とビールが生み出すコミュニケーションはなんと尊いのか」
    とあった。

    そうそう。そんなところに解があるのかもしれない。と言いながら昨日は日記の更新を忘れました!!と焦るからいけない(^^;

  • リアルが主、ネットは従。それを忘れないこと。

  • 1

  • 確かにネットは暇つぶしだなって思った。
    他人が何して何食べたどこ行ったとかどうでもよくて、大事なのは今ここ、現実のリアルな世界。それを改めて感じた。そうかぁ…なるほど、そうだよなって純粋に楽しめた本です。

  • ウェブの負の部分を具体的に書いている本。著者の中川淳一郎さんだからこそ、書ける内容だと思いました。

    ウェブのマイナス面に免疫がない人には結構ヘビーかなと思います。

    同氏の『ウェブはバカと暇人のもの』とメッセージは同じで、ネットの実態を論証した上で、「リアルな人間関係がやっぱり大切だよ」ということをまとめとして訴えていると感じました。

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著者プロフィール

編集者、PRプランナー、ライター
1973年生まれ。東京都立川市出身。大学卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社し、しばらく無職となったあとフリーライターとなり、その後『テレビブロス』のフリー編集者に。企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々なネットニュースサイトの編集者となる。主な著書に、当時主流だったネット礼賛主義を真っ向から否定しベストセラーとなった『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!』『内定童貞』(星海社新書)など。無遠慮だが本質を突いた鋭い物言いに定評がある。

「2020年 『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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