空へのぼる

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062832243

作品紹介・あらすじ

ただ産んでもらったんじゃない。だれもが、自分の力をつかって生まれてきたんだ。姉・桐子の妊娠を通して、小5の乙葉が感じた"真実"が胸をうつ、ふたりの姉妹の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 以前読んだ時面白くて、そういえばレビューを書いてなかったなと思い再度読んでみたけれど、やはりとても好きなお話でした。

    一冊の、おそらく小学校高学年向きのお話の中に、家族のこと、姉妹のこと、生い立ち、小学生女子の友達関係、恋愛、職業、老い、生命の誕生について…、ととても盛りだくさんの内容が描かれているにも関わらず、詰め込みすぎることもなくとても自然で、ホロリと泣かされる。
    私はこの物語に描かれる世界がとても好きだ。それはおそらく、「おばあちゃん」の家の空気を感じ取っているからだと思う。この物語の中心には、「おばあちゃん」がいて、この「おばあちゃん」の存在がとても大きい。

    物語は小学5年生の女子・乙葉から始まる。
    乙葉は南運動場のタイワンフウの木に登って、落ちた。ヒナを守ろうとしたカラスに攻撃されたからだ。
    「じゃ、守ってもらえんかったうちらは?」
    乙葉が姉の桐子に聞くと、桐子は怒ってタオルをふりあげた。近ごろ桐子はやけにおこりっぽい。

    とてもうまい書き出しだなぁと思う。
    桐子と乙葉の生い立ちとこれから起こることがさり気なく盛り込まれている。

    この物語の主人公は、乙葉と桐子の二人の姉妹だ。
    乙葉から始まる物語は、乙葉・桐子・乙葉…と交互に紡がれていく。
    乙葉は、学校で『いのちの授業』を受けている。教室に助産師さんを招き、いろいろなお話を聞いたり、体験をしたりする授業だ。乙葉は『いのちの授業』の中で、自分の生と向き合っていく。
    桐子の章では、彼女の生き様が描かれる。彼女の経験、選んだ職業、恋人である軍ちゃんとの出会い。彼女を象るものが順番に描かれていく。

    そして、おばあちゃん。
    桐子と乙葉の親は、桐子が中学生、乙葉が7ヶ月の時に蒸発する。それ以来、二人の大叔母に当たる「おばあちゃん」が二人を育ててくれた。
    おばあちゃんと桐子と乙葉の三人は、ねこのじゃらしと一緒に、線路わきの古いおばあちゃんの家で、女ばかりで暮らしている。そこに桐子の彼氏の軍二が晩御飯を食べに来たりする。

    最初に読んだ時は、乙葉の章よりも桐子の章にドキドキした。軍ちゃんとのもどかしい恋愛の顛末を見届けたいと思ったからだろう。
    二度目の今回は、「乙葉」という存在がとても魅力的に感じられた。乙葉は、いわゆるいい子ではないが、かと言って荒んでいるわけでもない。自分が在る状態の中で、それを受け入れ、ある意味のびのびと暮らしているように見える。彼女の中から溢れ出る思いや行動や葛藤や悩みが、それぞれ描かれる世界のものではなくて本当に「乙葉」という存在が生きているようにリアルに感じられ、魅力的に思った。そして、その乙葉を心底愛おしいと思う桐子の気持ちに共鳴した。

    おばあちゃんについては本文から引用。
    桐子の章より。
    「十五歳のあの日。自分はありったけの勇気をふるいおこして、おばあちゃんのふところに飛びこんだ。そうしてなんとか乙葉とふたり、生きのびることができた。おばあちゃんはうちらを裏切ったか? いいえ、けっして。」
    おばあちゃんの懐の深さと生き様が、桐子に一つの決心をさせる。
    「人を信じなければ、自分も人も守れない。」
    私の涙腺決壊シーンの一つ。

    人と人とが薄い縁を繋ぎ合わせて、寄り添って生きていくさま。
    表紙にも見られる、青々と茂る木々の描写の数々。
    そして、最後の一行で、これから紡がれていくであろう新しい縁と無限の可能性を感じさせて幕を引く。

    好きにならずにはいられないお話です。ぜひ。

  • 中学生と赤ちゃんの時、親に捨てられ、大おばあちゃんの育てられた姉妹の話。
    途中、ポロポロ泣かされた。
    ジャンルは児童書に入るのかもしれない。
    でも、大人も子どもも読んで欲しい。
    生まれただけで偉いってこと。
    命の凄さ。
    お姉さんカップルの仕事もいい。
    命の重み。
    生きるということ。
    ぜひ読んで欲しい物語。

  • 親に捨てられ、祖母に育てられた姉妹。姉が妊娠したことで、命について考える。

  • 小学生。家族。祖母。空師。樹木。命。自分が生まれてきたことを自分で肯定する、誰かに肯定してもらう。新しく誕生した命に触れた時に広がる温かさもまた肯定だと思う。

  • 命の尊さを知る
    人間の命は 親から子へとと引き継がれていく
    子供は自分から生まれてくる

  • 2015.07 市立図書館

  • いろいろと詰め込みすぎてる。

    いのち。

  • 気風のいいお姉ちゃんがいいです。木の仕事も、またいい。
    本屋で見つけたから購入できた。

  • 資料番号:020246096
    請求記号:Fヤツカ

  • だいぶ前に読了。八束さんは4冊目くらいかしら。
    いろいろ話題を詰め込みすぎて、散逸になった印象。たぶんいちばん中心にしたかったのは出産なんだろうと思うのだけど、それにしては表面的なことしか描いていないし、それにタイトルが庭師と空師寄りすぎる。じゃあそちらがメインかというと、そっちの描写も軽くて、説明的な感じ。家族っていいもんだよ、というのをともかく書きたくて書いた、という印象で、それが押しつけがましく思えたのが残念。
    でもいちばん気になったのは、とくに乙葉の方の描写で、文体がわざとらしくて浮いていたこと。年齢に合わせて軽さを出そうとしているのがあからさまで、単なる軽々しさにしか感じられなかった。年齢に合わせようとしない方が、むしろいい文章になったのじゃないかしら。

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著者プロフィール

児童文学作家、日本児童文学者協会会員

「2017年 『ぼくらの山の学校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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