日中戦争 殲滅戦から消耗戦へ (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879002

作品紹介・あらすじ

戦地の将兵も嘆いた泥沼の戦いに日本が踏み込んだ本当の理由とは-敗北の歴史から学ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • ソフトパワーとハードパワーに分けて、日本は短期決戦の発想しかなく、長期戦の戦略で負けた。とする本。
    日本人がそういう特性があるのは理解できるかな。ただソフトパワーとハードパワーを本の中心に持ってくるなら、もう少し定義をはっきりさせて欲しかった。定義が曖昧なだけに後付の理論に聞こえてしまう。結局アメリカに好かれたのはどっちかって話だし。日露戦争は明石さんがロシアで工作成功したからと考えればソフトパワーで勝ったし。
    日本の新聞の体質がこのころから同じなのは勉強になった。外国メディアが正しいことを正確に書くために、検閲対象だという時代があったのだ。

  • 日中の戦争観の違い(殲滅・消耗→ハード・ソフト)を切り口とした枠組みを用いた説明は確かにわかりやすい。が、わかりやすさは紋切り型の歴史観にもなってしまうので、歴史を単純・短絡的に解釈してしまう危険もある。
    満州事変の首謀者である石原莞爾が総力戦・消耗戦を想定し、日中戦争には反対であったにも関わらず、なぜ突き進んでしまい、ズルズルと長引いてしまったのか?フレームワーク的歴史学では、政治体制および意思決定システム論への言及が不十分になってしまう限界を感じた。

  • 国民党の情報戦に関して国民党の発した言葉をナイーブに全て信じてるのは頂けない。それを除けば非常に良い本だと思った。蒋介石は日本留学時に、日本軍のことを非常によく観察していたんですね。

  • 国民党の情報戦に関して国民党の発した言葉をナイーブに全て信じてるのは頂けない。それを除けば非常に良い本だと思った。蒋介石は日本留学時に、日本軍のことを非常によく観察していたんですね。

  • 日中の戦略に関する分析はよいが、筆者には左翼思想が根にあると思われ、誤解を招きあるいは誘導するという側面もあった。
    また、新書であるせいか網羅性にも欠いていた。
    よい面と悪い面の両面を持つものである。

  • 読みやすいが、内容は深くない。日中戦争を殲滅戦争、消耗戦という2代対立概念で説明しようとした書籍だが、説得力に欠ける。引用史料もあるのかないのか、根拠も不明確で、そもそも、ハードパワー、ソフトパワーという概念で説明しようとしているが、結局は短期決戦主義と長期戦主義ということで収まる。読後感は消化不良感を覚えた。著者の研究対象は巻末の参考文献を観ると蒋介石の戦略にあるようであり、それは本著の作品でも表れている。特に蒋介石の戦略思考とその背景についての紹介は詳細である。その分だけに、たとえば「日本」(これ自体も当時の「日本」を考えられるだけでも、陸海軍、政党、重臣、議会など様々な要素で構成され、それぞれ志向性は異なるであろう、しかし著者はそれらを「日本」とひとまとめにし説明を進めてしまう)の分析が単純化しすぎており、時々ある「日本の指導部」などといった本著の記載の仕方がはたしてどのあたりの「日本」を示しているのか(関東軍であろうか)、案内不足の感を否めない。日中戦争の時系列的把握には役立つが、著者の見解説明は少々雑である。背景となる著者の先行研究論文などの詳説や史料事例の紹介がほしいところだった。

  • 本書の切り口は2つある。1つは「ハードパワーとソフトパワー」、もう1つは『関東憲兵隊通信検閲月報』である。この2つの切り口に殆んど関連性がなく、全体としてのまとまりを欠く憾みはあるが、それぞれ興味深い内容ではあった。

    「ハードパワーとソフトパワー」は本書の副題にある「殲滅戦」と「消耗戦」に対応している。殲滅戦略思考の日本はソフトパワーを軽視し、消耗戦略思考によりソフトパワーを駆使した中国に敗れたという図式である。この図式そのものは目新しいものではないが、消耗戦略を選択するに至る蒋介石の日本軍分析は現在でも耳が痛い。

    「蒋介石は、日本軍が規律を守ることに優れ、研究心が旺盛で、命令完遂能力が高いという長所を持つ反面、視野が狭く、国際情勢に疎く、長期持久戦には弱いという弱点を持っていることを指摘している。(略)そして、日本軍の長所は兵士や下士官クラスにおいて発揮されやすいものであり、彼らはよく訓練されて優秀だが、士官以上の将校レベルになると、逆に視野の狭さや国際情勢の疎さといった短所が目立って稚拙な作戦を立案しがちであることを喝破していた」

    本書を書き終えて、著者は日本には「したたかさが足りない」と慨嘆する。今日の日本外交において典型的に欠如している資質であろう。

  • 第6章「関東憲兵隊通信検閲月報」で紹介された資料は、日中両国の庶民の目線から当時の時代を見ることができました。
    近現代史は、権力者側から見た歴史とは違う視点で書かれたものが必要だと感じます。

  • [ 内容 ]
    戦地の将兵も嘆いた泥沼の戦いに日本が踏み込んだ本当の理由とは?
    敗北の歴史から学ぶ。

    [ 目次 ]
    序章 殲滅戦争と消耗戦争
    第1章 開戦への歩み
    第2章 破綻した戦略
    第3章 傀儡の国
    第4章 見果てぬ夢
    第5章 二つのパワー
    第6章 『検閲月報』を読む

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 日中戦争は、日本の殲滅戦略と中国の消耗戦略の激突であった。殲滅戦を支える原動力は軍事力や産業力などのハードパワーであり、消耗戦のそれは政治力や外交力などのソフトパワーである。

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著者プロフィール

1943年東京生まれ。東京都立大学法経学部卒。同大学大学院社会科学研究科博士課程修了。駒澤大学経済学部教授を経て、現在早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授。
著書に『「大東亜共栄圏」の形成と崩壊』(御茶の水書房)、『昭和ファシストの群像』(校倉書房)、『大東亜共栄圏』『日本軍政下のアジア』(以上、岩波書店)、『満州と自民党』(新潮新書)、『満鉄調査部―「元祖シンクタンク」の誕生と崩壊』『ノモンハン事件』(以上、平凡社新書)、『日本近代史を読み直す』(新人物往来社)、『日本の迷走はいつから始まったのか』(小学館)、共著に『満鉄調査部事件の真相』(小学館)、『一九三〇年代のアジア社会論』(社会評論社)など多数。

「2011年 『論戦「満洲国」・満鉄調査部事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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