見えないアメリカ-保守とリベラルのあいだ (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062879491

作品紹介・あらすじ

アメリカ人はみんなワシントンが嫌いだ!日本からはわからないその意外な素顔。スタバ好きはリベラル!?知らないアメリカ発見の旅へ。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年に出た本だけど、全然古くない。むしろ新しいと思った。
    というか、大統領選で報道されるアメリカ(人)の姿を見ていると、オバマさんが「チェンジ」と言って熱狂したところで、結局、アメリカ(人)というのは、その根っこの部分は全く変わってない、というより、それは変わらないということなんだろう。
    トランプさんは反マスコミということで、日本のマスコミの報道は反トランプ、親バイデンさんに偏向しまくりだけれどw
    それでも、ニュースに出てくる、トランプさんを支持する市井の人たち(いわゆるラストベルトに住む白人労働者たちとその家族たち)の顔が「日本人とそんなに変わらないんだなー」と、妙になじみ深く感じてくるのだ。
    この本を読む前は、(ニュースに映るそういう人たちを見て)日本人が“アメリカ(人)を同じ価値観を共有していると思うのは勘違いも甚だしいのかも?”とさえ思っていたのに。
    (ちなみに、自分はトランプさんを支持しているわけではないし。著者も共和党寄りの人ではない)

    茶化して極論しちゃうなら、アメリカ人の頭の中というのは“映え”しかないんだろう(爆)
    個人主義なだけに、群れてみんなで盛り上がって、大騒ぎして、その興奮を分かち合うということを何よりも優先しちゃう。
    今、報道でみられるような、トランプさんを支持に熱狂する人たち、民主党を(トランプさんを支持する人たちよりは温度低めに)支持する人たちに別れて、お祭り騒ぎを楽しむ大統領選がまさにそうだし。
    ブラック・ライブス・マターも、その前の#ミー・トゥーも。野球のワールドシリーズやアメフトのスーパーボールも、スターウォーズやアップルの新しい製品で盛り上がるのも。
    さらに言えば、イラク戦争やテロとの戦い、第二次世界大戦も、KKKや禁酒法も、同じメンタリティーなんだと思う。

    そんなこと言うと、戦争とブラック・ライブス・マターや#ミー・トゥーを一緒にするんじゃない!と怒る人もいるかもしれない。
    でも、それらはきっかけや目的は違うが、アメリカという国に住む人たちが自分の時代なりの熱狂をしたいという欲求によって、それが盛り上がるという構造は同じなんだと思う。

    “「保守」「リベラル」の双方にまたがって偏在する原理主義的な芽の中に、アメリカの民主主義を動かしてきた原動力の一部もある。
    フェミニズム、アニマルライツ、銃所持、人種隔離、市場経済など様々なアジェンダの後ろに原理主義的な性格が潜んでいるのだ。”
    “原理主義的なエネルギーが、公共性の方向にシフトした時、何かを信じて突き進む「運動するアメリカ」は、他の国にない大きな力を発揮できる。
    この国の原理主義的なエネルギーは常に諸刃の剣である。”
    「第4章:信仰-共同体にひそむ原理主義」に書かれていたそれらを読んだ時、自分は上記のようなことを感じた。

    ただ、それはアメリカ(人)の一面でしかないのだ。
    一つの街に、そういう人たちが住むエリアがあって、その隣にはそれとはまったく違う価値観を持った人たちが住むエリアがある。
    その隣にはまた違う価値観を持った人たちが住むエリアがあって、郊外にはまた違う価値観の人たちが住んでいる。
    西海岸と東海岸で違うし、中西部と南部でまた違う。共和党支持者と民主党支持者で違って、プロテスタントとカトリックで違う。
    そのプロテスタントやカトリックも教会によってはまた違う。
    高学歴者と労働者、職種、人種、男女、世代でも違う。
    価値観がそれらそれぞれ違うというのは、もちろん日本人の自分もわかる。日本だって、それは同じだからだ。
    でも、日本人がそれらで違うレベルとは全然違う、というか、もはや、つまんねー意地張って違ってみせてるだけじゃねーの?と思うくらい違うのがアメリカ(人)らしいのだ。
    どうやら!?

    そういえば、去年、日本では「1チーム」という言葉が流行ったが。
    いや、その「1チーム」が流行ることとなった、いろんな国の人が日本のラグビーチームとして闘ったことを否定するさらさらない。
    ただ、アメリカ(人)の多様性ということを考えた時、その「1チーム」という、やけにきれいなメンタリティーでいいものなのか?
    分断や対立がいいことだと言う気は全くない。でも、時には”ちゃんと対立や分断をする”ことも必要なんじゃないだろうか?とも思うのだ。
    それは、「オールジャパン」とかいうお題目の元に集められて出来た会社が調子がいい話を聞いたことがこととか。
    あと、野球やサッカー等で日本のチームが国際試合でいいとこにいったりするのは、そもそも国内で激しく闘っているからこそではないか?とか。
    トヨタだって、日産やホンダ等と国内でしのぎを削ってきたからこそ、今の企業になっているんじゃないだろうか?
    もちろん、アメリカ(人)のような分断や対立で盛り上がるのは日本人のメンタリティーには合わない面があると思うが。
    でも、「1チーム」や「オールジャパン」がメンタリティーの今の日本のままではアメリカにどんどん置いてかれて。
    結局、見捨てられるか。もしくは、月々の給料をアメリカの企業にサブスクで吸い上げられるだけの国になっちゃうんじゃない?

  • ふむ

  • 『アメリカ政治の壁』に同じ。

  • リベラルと保守というアメリカを二分している政治的立場について掘り下げた一冊。
    リベラルも保守も、居住地域、生活レベル、教育レベルなど様々な要因が複雑に絡み合っており、グラデーションのようにその意味する内容は幅広いということが解説されている。
    アメリカの政治の歴史と現代アメリカ人が親しんでいる政治的娯楽についての話がメイン。選挙事務所や大学などで出会った実際のアメリカ人の話など、著者の経験談も豊富で面白い。
    この本自体はトランプ大統領の誕生以前に書かれたものだが、そこに繋がる背景が少し見えたと思う。
    意味が取りにくい文章に不慣れな固有名詞やカタカナの政治用語、事実の羅列的な記述もあり、少し読みにくく感じるところもあった。

  • アメリカに駐在していた間に、アメリカ人となかなか
    できなかったのが政治と宗教の話。
    駐在する前に本書の内容を理解していれば、そうした
    話もできたかもしれない、と思えるような一冊。

    日本人が書いたアメリカ本としては秀逸。
    その大きな理由は、一般に外国人が入り込み難いような
    ところ(議員事務所や選挙本部、ラジオ局のアシスタント
    など)に著者が身を置いた経験があるから。
    ここから来る臨場感が、本書に大きな説得力を与えて
    いるのはまちがいない。

    これからアメリカに留学する人や駐在する人には強く
    オススメしたい一冊だ。

  • 2008年刊行。保守とリベラルで大きく色分けされる米国の国民性。その2項対立的な分析枠組について、地域による色分け(南部と都市部)、宗教等から検討し、一方、大衆化が亢進する現代の特殊性をメディアを切り口として検討。著者はジョージ・ワシントン大学ガストン・シーグル研究センター客員研究員。

  •  日本人でありながらシカゴで政治を学んだあと、民主党の議員事務所で集票戦略を練る仕事をしたという著者ならではのアメリカ政治についての解説。「保守」と「リベラル」に単純に分けられない事情を、具体的なエピソードも交えて分かりやすく解説している。
     アメリカでの経験があるから書けることがたくさん載っており、単純な二項対立で終われない微妙な部分をうまく解説しているところがとても良かった。共和党=保守、民主党=リベラルには決してならず、保守とリベラルの中にスペクトラムがあって、さらに土着保守、土着リベラル、アカデミック保守、アカデミック・リベラルといった志向の違いがあり、様々なアジェンダについて賛成から反対、中立、無関心など多くのパラメーターが設定された結果、現実は多様で、その多様性が「保守」と「リベラル」というイデオロギーの陰に隠れてしまう「見えないアメリカ」ということがよく分かった。
     実社会での経験があるからこそ、という部分で言えば、まず「いちばんやってはいけないのが、黒人英語や黒人のラップを表面的に真似ること」(p.134)で、政治現場で「安易なリベラル思想で気楽に扱ってはならないアンタッチャブルな聖域」(同)らしい。人種問題は日本人が想像できない奥深い部分があることが分かった。あとこの本を読んで得るところが大きかった部分は「原理主義」についてだ。「何かひとつの原理に忠実にありたいという姿勢のこと」(p159)が原理主義で、「アメリカでは、なにかひとつのことを信仰することにかけては、特別な重きがおかれやすい」(p.178)ことと相まって、結果として色々なイシューをめぐって原理主義になってしまうということは納得できた。「アメリカでシングルイシューにのめり込むときに、はたしてどこまで原理主義とは無縁でいられるだろうか。」(p.177)、「宗教右派を軽蔑する人」も、「彼ら自身が別の原理主義にとらわれていることはないか。」(同)という疑問は納得だった。そして、「見えざる公共性」に目をみひらく(p.181)ことの意義まで述べてあって、一応の解決のための姿勢まで示されているのが良かった。他にも選挙のキャンペーンは内側に向けてのものであり、棄権させないためであるとか、銃規制が進まないのはハンティング文化の影響であるとか、今までにない視点が得られたのが有意義だった。(16/07/21)

  • 南部、都市、メディア、信仰…さまざまな切り口から、文学、映画、音楽など日本人でも触れることの多いアメリカとはちがった「見えないアメリカ」が描かれる。ポピュリズムがいい意味でも使われるケースがあるという背景、ヒューイ・ロング、ジョージ・ウォーレスら何人かのポピュリストから描かれる世相、政治も扱うテレビ番組が大勢に与えた影響。「保守」と「リベラル」といっても、そのなかでもさまざまな濃度、志向、傾向が見られること。自由主義という国是のなかでもさまざまな意見を持つ人々がいる。以下備忘録的に。/個別の例外をはじめから気にして分類そのものを拒むと、現存する傾向がなにも見えなくなってしまい、結果として統合的な理解にも到達しないからだ。/ノックして話してみないと、その地域の本当の「活気」はわからない。エスニック集団の流入具合や対立の緊張もキャンバシングでわかる /日本であまり知られていないことの一つに、アメリカ民衆の「反ワシントン政治」感情がある。/「無神論者」というのは、ある意味で「宗教の臭い」にきわめて敏感なひとたちである。/ハンティング愛好地域の素朴な「地域文化の否定」に対する反発と不安が、NRAなどのガンロビーとむすびつくことで強大な銃規制反対の流れになっている。/メンバー以外に利益をもたらす公共活動に身を捧げるには、ただ乗りの「フリーライダー」を大目見ないといけない/都市の移民マイノリティにみられるエスニックなアイデンティティ、「南部」などに代表的にみられる強烈なアメリカの地域性、「人民」の熱情としてのポピュリズム精神、なんらかの強い「信仰」、メディア環境。こういったものは「アメリカン・エッグ」のなかの二項対立の陣地にアメリカ人をとりむすぶ、”ミクロの接着剤”かもしれない。

  •  日本人が抱くアメリカに対するイメージは人に様々だ。ハリウッド映画、自由の国人種問題、軍事大国、覇権国家etc…。多種多様なイメージが錯綜して実態は容易には見えない。
     政治的にはよくリベラルと保守の二項対立が語られる。確かにアメリかは二大政党制で民主党と共和党はリベラルと保守掲げている面もある。しかし政治に関心のある層とない層、宗教に熱心な層、そうでもない層など党内の中にもさまざまな断裂がある。
     アメリカは複雑で見えないことが多いが見えないことを認識して見えるアメリカから推測することはアメリカを理解する上で確かに有効だ。

  • アメリカの「保守」と「リベラル」の単純ではない様相を、著者の実体験も踏まえて、多角的に描いている。リベラルはスターバックスを好むというように、特定の商品や店と保守、リベラルが結びついて捉えられていること、共和党=保守、民主党=リベラルではないということ、アメリカの保守、リベラルには、アカデミック保守とアカデミック・リベラル、土着保守と土着リベラルがあるということ、反「中央政府」ポピュリズムの根強い伝統があることなど興味深い内容が多かった。ただ、記述が随筆的で、全体的にやや散漫な印象は受けた。

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著者プロフィール

広告業やアグリテックの分野で活動する機械学習エンジニア。2017年10月に株式会社iMindを設立。PythonよりもJuliaの方が好きですがあまり使う機会に恵まれません。

「2020年 『数式をプログラムするってつまりこういうこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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